人徳こそ
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第三章
「菊池クリーニング店か」
「そう、ここがね」
「御前がアルバイトしてるお店か」
「そうよ」
その通りとだ、優子も答える。二人共今は通っている高校の制服のままだ。青のブレザーで優子は短いスカートから太めだが奇麗な脚が出ている。
「じゃあ今からね」
「お店に入ってか」
「アルバイトするけれど」
「じゃあ俺はな」
「その人が来たらやっつけるとかしないわよね」
「悪事の証拠なしにそんなことしたら駄目だろ」
浩輔はそれはしないとだ、優子に即座に答えた。
「流石に」
「そんなことしたらね」
「逆に捕まるのはこっちだからな」
「刑事ドラマとかでよくあるわね」
「ああ、それこそ悪い奴の思うツボだよ」
「だからしないのね」
「ああ、そんなことはな」
絶対にと言うのだった。
「俺もな」
「そうよね、やっぱり」
「ああ、けれどな」
それでもと言うのだった。
「その人はな」
「お店に来たら」
「見るからな」
こう話してだった、浩輔は優子と共に店に入った、店に入ると如何にも人のよさそうな顔の青年がいた。
黒髪を短く刈っていて一七五位の背で身体つきはほっそりとしている。店のエプロンの下はラフなシャツとジーンズという格好だ。
彼がいるカウンターの後ろから奥にかけてクリーニング済のビニールに包まれた服が並べられていた、優子はその店を目で見回して。
そのうえでだ、青年に笑顔で言った。
「こんにちは」
「うん、こんにちは」
青年はその優子に笑顔で応えた。
「それじゃあね」
「はい、今から入ります」
「それだけれど」
青年は浩輔を見て言った。
「こっちの子は」
「クラスメイトです」
優子は微笑んで答えた。
「私の」
「ああ、お友達だね」
「はい、そうです」
「誰かって思ったら」
「ちょっとこいつについてきました」
浩輔の方も青年に話した。
「同じクラスの横山浩輔です」
「宜しくね、この店の店長西川敬太郎だよ」
「西川さんですか」
「うん、そうだよ」
敬太郎は浩輔に優しい笑顔で応えた。
「こちらこそね」
「はい、宜しくお願いします」
「じゃあ今から行って来るから」
「今から?」
「クリーニング出来た服をお客さんのお家まで届けに行くんだ」
こう浩輔に話すのだった。
「それで優子ちゃんはその間ね」
「お店で、ですね」
「そうだよ、あと君は傍でかな」
「見させてもらっていいですか?こいつを」
「いいよ、じゃあね」
敬太郎は浩輔にここでも笑顔で応えてだ、そのうえで。
店を出て車に乗ってだった、実際に服を届けに向かった。浩輔はその彼を店の中から見送ってからだった。エプロンを着けてカウンターに入った優子に言った。
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