英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第236話
~真・煌魔城~
「フフ、まさか”福音計画”に深く関わった者達が”教授”達と再戦をする事になるなんてね。」
「うふふ、冗談抜きでエイドス様のお導きかもしれませんわね♪」
昇降機が上へと昇っている中苦笑しながら呟いたクロチルダの言葉にシャロンは微笑みながら答え
「だから私のせいにしないでくださいと何度言えばわかるんですか!?」
エイドスはシャロンを睨んで声をあげてその場にいる全員を脱力させた。
「お、落ち着いてください、エイドスさん!」
「ハハ、それやったらこれからは”ブライト家”のお導きって言わなあかんかもしれんな~。」
「ケビン……それは冗談になっていないわよ?」
「エステルさん達―――”ブライト家”は女神の一族ですしね……」
リースはエイドスをいさめようとし、ケビンは苦笑しながら呟き、プリネは苦笑しながら疲れた表情をしているルフィナと共にケビンに指摘し
「ちょっと、ケビンさん?あたしやナユタ君達は”本物の女神”のエイドスやフィーナさん、後はクレハちゃんやサティアさんと違って”普通の人間”なんですけど?」
ケビンの言葉を聞いたエステルはジト目で反論し、エステルの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
(エ、エステルさんだけはそれを言う資格がないよな?)
(そうだよねぇ。エステルさんって僕達と同じ人間とは思えないくらい”非常識”で”規格外”過ぎるし。)
(実際翼を生やすことができる上、”女神”の魂を宿していますしね……)
小声のマキアスの言葉にエリオットとセレーネは苦笑しながら同意し
「フフ、ラピス姫とリン姫、そして”古神”の”魂”を宿してなお、自分の事を”普通の人間”と言い切るとは大物ですわね。」
「そうだな……リフィア殿下達も本当に素晴らしい出会いをされたのですね。」
「うむ!エステル達との旅の日々は余達にとって素晴らしい日々だったぞ!」
エステルの様子を微笑ましそうに見守るシグルーンの言葉に頷いたゼルギウスに視線を向けられたリフィアは自慢げに答えた。
「フフ、正確に言えば私は”神の民”と言われた”ミトスの民”の末裔であって、”神”ではないのだけどね。」
「お母さん、さりげなく私も入れないでよ。幾ら前世は”女神”だったとはいえ、私は普通の人間として産まれたのよ?」
「サ、サティア様!?お気を確かにしてください……!」
「ふえ~?どうしてシュリ姉様が慌てているんですか~?人間のエステル様から産まれたサティア様は普通の人間ですよ~?」
「そういう問題じゃないのよ………」
「というか”使徒”になった時点で既に”普通の人間”じゃなくなっているじゃろうが……」
クレハが苦笑している中、エステルに指摘したサティアの言葉を聞いて慌てている様子のシュリを見て首を傾げているサリアにマリーニャは疲れた表情で指摘し、レシェンテは呆れた表情で溜息を吐いた。
「えっと………随分と変わった性格をしているのね、”正義の大女神”は。」
「ロカ……サティアがああなったのはエステルが原因だ。断じてサティアは元からあんな性格ではない。」
(クク、まさかセリカが突っ込み役を務める羽目になるとはな。これも女神の性格を変えたエステル嬢ちゃんの影響じゃろうな。”神殺し”であるセリカもエステル嬢ちゃんの影響を受けるのも仕方ないという事か……ハハハハハハハッ!)
気まずそうな表情をしているロカに視線を向けられたセリカは疲れた表情で指摘し、その様子を見守っていたハイシェラは腹を抱えて笑い
「だから何でみんな、あたしのせいにするのよ!?それとサティアさん!あたしを”お母さん”って呼ばないでって何度言えばわかるのよ~!?」
「ま、まあまあ……落ち着いてよ、ママ。」
「いや、フェミリンスの件を考えたらどう考えても君が一番の原因だよ。」
「同感ですわ。特にアストライアは私と違って赤子の頃から母である貴女に育てられたのですから、貴女の影響を受けるのが自然の節理ですわ。」
セリカとサティアを睨んで指摘するエステルをミントは苦笑しながら諫めようとし、ヨシュアとフェミリンスはそれぞれ呆れた表情で指摘し、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいて脱力した。
「え、えっと……そう言えば遊撃士の方達の中で姉様と同じ剣技を使っている女性がいましたが……もしかしてあの女性も兄様達と同じ”八葉一刀流”の剣士なのですか?」
「ええ、アネラスさんも八葉一刀流の剣士ですよ。」
「ちなみにアネラスさんはユン様の孫娘よ。」
話を変えたエリスの疑問にツーヤとエリゼはそれぞれ答え
「”剣仙”の孫娘だと!?」
「老師に孫娘がいらっしゃる話は聞いた事はあるけど、まさかあの人がそうだったなんて……!」
「ほう……機会あれば手合わせを願いたいな。」
アネラスの親類で意外な人物の名前が出るとユーシスとリィンはそれぞれ驚き、ラウラは興味ありげな表情をしていた。
「女性の遊撃士で思い出しましたが……先程のシェラザードという方がもしかしてお兄様の話にあったリベールの旅行中で出会ったというお兄様の運命の方なのですか?」
「フッ、その通り。そしてユリア准佐は私にとってのシェラ君のように我が親友ミュラーにとって運命の赤い糸で結ばれた女性さ♪」
「まあ♪」
「全くデタラメな情報をアルフィン殿下に吹き込むな、阿呆!」
自分の疑問に答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたアルフィンが目を輝かせている中、ミュラー少佐はオリヴァルト皇子を睨んで声をあげ
「心外だな。少なくてもシェラ君に関しては私は本気だよ?何せ将来の伴侶になってくれないかと本人にも伝えて、返事はまだ保留中であることは君も知っているだろう?」
「ふえええええええええ~っ!?じゃ、じゃあ本当にさっきの遊撃士の人がオリヴァルト殿下の将来の……!?」
「青天の霹靂だね。」
「フフ、これはいい事を聞いたね♪」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたトワは信じられない表情で声をあげ、フィーは目を丸くし、アンゼリカは口元に笑みを浮かべた。
「や、やっぱり”影の国”での別れ際のシェラ姉との会話は”そういう意味”だったの!?」
「フフ、何となくそんな気はしていましたけど……」
「ハハ、これでハッキリしたな。」
エステルは信じられない表情で声を上げ、リースとケビンは苦笑し
「リベールと違い、身分制度が根強い以前のエレボニアでしたら皇族のオリビエさんと平民のシェラさんの結婚は茨の道だったでしょうけど、今のエレボニアでしたらあまり問題にならないかもしれませんね。」
「フフ、言われてみればそうね。」
「”尊き血”に五月蠅かった貴族共や”四大名門”も全て皇族に逆らえない立場だからな……」
「その通り。いや~、不幸中の幸いとはこの事だろうね♪」
「アハハ……そういうちゃっかりしている所も相変わらずだよね。」
「フッ、そして転んでもただで起きない所も相変わらずだな。」
ヨシュアの推測を聞いたクロチルダとクロウは苦笑し、笑顔で答えてその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力させたオリヴァルト皇子をミントは苦笑しながら呟き、レーヴェは静かな笑みを浮かべていた。
「まあ……!という事はやはりあの女性の方がわたくしとセドリックの義理の姉になる最有力候補なのですわね♪―――という訳でゲルドさん。お兄様が将来シェラザードさんと結ばれるかどうかと、ミュラーさんがユリア准佐と結ばれるかどうかをゲルドさん得意の予知能力で”見て”ください♪」
「ちょっと待ってね……」
「ア、アルフィン義姉様!?」
「ゲルドさんに見てもらったら冗談になっていませんわよね?」
「アハハ……ゲルドの予知能力は今の所外れたことがないものね。」
「だからそんなくだらない事の為だけに”予知能力”を使わせようとしないでよ……それとアンタもいつも律儀に答えて予知能力を使わないでよ……」
「アルフィン殿下……お願いしますからそのタワケの言う事を真に受けないでください……」
目を輝かせてゲルドに頼むアルフィンの様子を見たエリスは慌て、セレーネとアリサは苦笑し、セリーヌとミュラー少佐はそれぞれ疲れた表情で指摘した。
「ハハ、しかしそうなると冗談抜きサラは焦らなければならないかもしれないな。」
「うふふ、”かもしれない”ではなく、既に焦っていると思いますわよ♪同僚や後輩の遊撃士の方達所か教え子であるお嬢様達まで次々と将来のお相手を決めた所か、過去の出来事で複雑な思いを抱えている人物であるわたくしやクレア大尉にも先を越される事になるのですから♪」
「しかも”紫電”にとって敵であったレーヴェや私にまで先をこされたものね♪」
「グッ……!?うっさいわね!それにあたしは婚期に焦るあまり年下で、しかもまだ学生のリィンとプリネで妥協したあんた達と違って、相手は選び放題なんだからね!?」
苦笑しているトヴァルの言葉に頷いた後からかいの表情で見つめてきたシャロンとクロチルダをサラ教官は睨んで反論し
「あら……そこまで言うのでしたら、ゲルドさんにサラさんの将来のお相手が誰か予言してもらっても問題ありませんよね?」
「ニシシ、それは良い提案だね♪」
「ゲルドの予言の的中率は今の所100%だから信憑性があるね。」
膨大な威圧を纏って微笑んでサラ教官を見つめるクレア大尉の言葉を聞いたミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、フィーは口元に笑みを浮かべ
「えっと……サラさんを”見れば”いいのよね?」
「ちょっ、止めなさい!あんたの予言は洒落になんないでしょうが!?」
クレア大尉達の話を聞いて自分をジッと見つめてきたゲルドにサラ教官は慌てた様子で制止した。
「アハハ……そういえばさっきのリベールの精鋭部隊の中にいる人達の中にエレボニアの元貴族の人達がいたみたいだけど……」
「クローゼ達と一緒に現れた水色の髪の兄妹―――ジョゼット達は元々”カプア男爵家”という名前の帝国貴族だったんだけど、借財で領地を失ったことで爵位が剥奪されたんだ。」
「そ、そんな帝国貴族がいたなんて……」
「アンちゃんはその”カプア男爵家”って知っている?」
「いや……初耳だ。」
エリオットの疑問に答えたヨシュアの説明を聞いたアルフィンは目を丸くし、トワに訊ねられたアンゼリカは考え込みながら答え
「お前達の方はどうなんだ?」
「フム……私も聞いた事はないが、ユーシスはどうだ?」
「そう言えば数年前に父上がクロイツェンの領地を借財として差し押さえられた帝国貴族の恥さらしのせいで、差し押さえられた領地を買い戻すのに余計な出費をしたという愚痴を聞いた覚えがある。」
クロウに視線を向けられたラウラは考え込み、ユーシスは静かな表情で答えた。
「という事はもしかしてさっきの人達が……」
「そだよ~。”カプア男爵家”は元々クロイツェン州の領地を納めていた貴族だったんだ~。」
「一体どういう経緯で”カプア男爵家”の方々はリベール王国にあれ程肩入れするようになられたのですか?」
ユーシスの答えを聞いたセレーネの推測にミリアムは肯定し、エリスは不思議そうな表情でエステル達に訊ねた。
「う~ん……話せば長い上色々と複雑な事情があるから今は省くけど、ジョゼット達はリベールで犯罪を犯して王国軍に捕まったんだけど色々あって”リベールの異変”の解決にも貢献した事で女王様がジョゼット達の事を許した上、更にジョゼット達の借金を返して、おまけに今ジョゼット達がやっている事業―――飛行船を使った宅急便の事業を立ち上げるのに必要なお金を貸してくれた事で女王様――――リベール王家に感謝しているみたいなのよ。」
「多分ジョゼットさん達がクローゼさん達―――リベールの精鋭部隊にいたのは今まで受けた恩を少しでも返す為だと思うよ。」
そしてエステルとミントの話を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「何と言うか……波瀾万丈な人生ですね。」
「それに義理堅い性格をしているな。」
我に返ったエリゼは苦笑しながら答え、ラウラは感心した様子で呟いた。
「実を言うとジョゼット君にも君達”Ⅶ組”の一員になってもらおうと思って、彼女にも声をかけたのだよねぇ。」
「ええっ!?」
「彼女にも声をかけていたのですか……」
「という事は彼女もオレ達”Ⅶ組”のクラスメイトになっていたのかもしれなかったのか。」
「………まあ、最初に出会った時ジェニス王立学園の学生のフリをしていたから、猫を被ったら違和感はなかったでしょうね。」
「ハハ……まだ根に持っていたんだ。」
オリヴァルト皇子から語られた驚愕の事実にエリオットは驚き、プリネは目を丸くし、ガイウスは静かな表情で呟き、ジト目で呟いたエステルの言葉を聞いたヨシュアは苦笑していた。
「でも結局入学していないから、断られたんでしょ?」
「ハハ、まあね。『そんな事をしている暇はないし、ボク達を見捨てたエレボニアなんかの為に学生をするくらいならリベールの為に働く方がよっぽどいいね!』って言われて断られたんだよね~。わかってはいた事だが、自分達をあっさり見捨てたエレボニアを許していないツケがここでも返ってくるとは、これもリベールのような慈悲深さを持っていなかったエレボニアの自業自得であると改めて思い知ったよ。」
「殿下……」
「帝国貴族の中でそのような義理堅い性格をしている方達は稀だったでしょうね……そのような方達まで見捨てていた事を知ると改めてエレボニアは変わる必要がある事を思い知らされますわね……」
「アルフィン義姉様……」
「”カプア男爵家”の事は皇女殿下が御気に病む必要はないかと。連中の場合はただの逆恨みです。」
エヴリーヌの指摘に苦笑しながら頷いた後疲れた表情で肩を落としたオリヴァルト皇子の様子をユーシスは辛そうな表情で見つめ、辛そうな表情で語るアルフィンをエリスは心配そうな表情で見つめ、ミュラー少佐は静かな表情で指摘した。
「え、えっと……そう言えばティータちゃん、今迄見たことない機械を操縦していたけど……」
「あ、”オーバルギア”の事だね。”オーバルギア”はティータちゃん達―――”ラッセル一家”が開発しているリベールの新兵器だよ。」
話を変えたトワの疑問にミントは答え
「リ、リベールの新兵器!?」
「確か”リベールの異変”後”結社”の技術力の一部を知り、そのことに危機感を抱いたリベールが結社や周辺諸国に対抗する為に新兵器を開発している情報はありましたが、あの兵器がそうだったのですか……」
ミントの答えにアリサは驚き、クレア大尉は真剣な表情で呟いた。
「まあ、正確に言えば”パテル=マテル”に対抗し得る人形兵器の”オーバルギア”の開発がきっかけになったそうじゃがな。」
「”パテル=マテル”?それって確かレン皇女の……」
「”リベールの異変”の際、”結社”から奪い取ったゴルディアス級の人形兵器ですわね。」
リフィアの話を聞いたゲルドは目を丸くし、シャロンは静かな表情で答えた。
「あ、あの人形兵器がリベールに新兵器を開発させるきっかけになったなんて……」
「まあ、あんな存在を知ったら誰でも危機感を抱くよな……」
リフィアたちの話を聞いたエリオットは信じられない表情をし、マキアスは疲れた表情で呟いた。
「もしかしてアンちゃんは知っていたの?レン姫の秘書をしていた関係でティータちゃん達―――”ラッセル一家”とも交流があったそうだし……」
「いや、”オーバルギア”の件については初耳だ。親しいとはいっても、私はリベールにとって元敵国のエレボニアの貴族―――しかも”四大名門”の娘だからね。ティータ君はともかく、ラッセル博士たちはリベールの新兵器の存在をエレボニアに知られるのを恐れて私には黙っていたんだと思うよ。」
「それは……」
トワの疑問にアンゼリカは静かな表情で答え、アンゼリカの答えを聞いたエマは複雑そうな表情をしていた。
「ま、自国が開発している技術を他国に漏洩させない為に情報を隠すのは当然のことだし、あんまり気にしなくていいと思うわよ?」
「ん。まあ、ラインフォルトの技術は”殲滅天使”のせいで滅茶苦茶漏洩しまくっているみたいだけど。」
「それを言わないでよ、フィー……できるだけ気にしないようにしているのに……」
サラ教官の意見に頷いた後呟いたフィーの言葉を聞いたリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中、アリサは疲れた表情で指摘した。
「フフ……―――どうやら到着したようですね。―――それではそろそろ行きましょう。」
一方その様子を微笑ましく見守っていたエイドスは昇降機が新たな道へと続く場所に到着するとリィン達を促し、探索を再開した。
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