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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第226話

~第三学生寮~



(さてと……時間も時間だし、そろそろ寝ようかな……?)

「お帰りなさいませ、リィン様。」

「シャロンさん。」

リィンが学生寮に入るとシャロンが出迎えた。

「うふふ、随分とお帰りが遅かったですが、もしかして新たな女性と関係を深めておられたのでしょうか♪」

「う”っ。(す、鋭い……さすがはシャロンさんだな……)え、えっと……みんなはもう帰って来ているんですか?」

からかいの表情をしているシャロンに図星を突かれたリィンは表情を引き攣らせた後話を逸らそうとした。



「ええ。ゲルド様を除いて全員お戻りになっております。勿論若旦那様の”奥様”も若旦那様のお部屋で若旦那様のお戻りを首を長くして待っておられますわ♪」

「そ、そうですか………というか、何ですかその”若旦那様”って。」

アルフィンが自分の自室にいる事を察したリィンだったがシャロンの自分に対する呼び方が気になり、冷や汗をかいて指摘した。

「クスクス、会長からもお嬢様との結婚を認められている事に加えて、近い将来お嬢様とも籍を入れられるのですから、私にとってリィン様は若旦那様になるのですが、どこかおかしいのでしょうか♪」

「そ、それは…………え、えっと……せめてアリサと籍を入れるまでは今まで通りの呼び方でお願いします。」

シャロンの正論に反論できなかったリィンは大量の冷や汗をかきながら疲れた表情でシャロンを見つめて言った。



「フフッ、かしこまりました。………………」

「?シャロンさん?」

微笑んだ後静かな表情でジッと自分を見つめるシャロンの行動にリィンは不思議そうな表情で首を傾げ

「―――リィン様。このような遅い時間に突然の申し出をし、申し訳ないのですが、お部屋に戻る前にお時間を頂いてもよろしいでしょうか?リィン様と話したい事がありますので。」

「へ……え、ええ。別にいいですけど。」

シャロンの突然の申し出に目を丸くした後戸惑いの表情で頷いた。



「ありがとうございます。私は自室でお茶の準備をしておりますので、大変申し訳ないのですが少しだけお待ち下さい。」

「わかりました。(シャロンさんが俺に話……一体何だろう?)」

(うふふ、これはもしかしてのもしかしてかしら♪)

(ふふふ、今まで私達の期待を一度も裏切らなかったご主人様ですから、間違いなく”そうなる”でしょうね。)

(まあ、今まで二人っきりになった女性とはフィーを除いたら全員肉体関係の間柄になったからね……)

(リ、リィン様…………アリサさんのご実家のメイドでもあるシャロンさんとも関係を深めたら、アリサさんが今まで以上に怒ると思いますから止めた方がいいと思うのですが……)

(本当に懲りない方ですね、マスターは。)

シャロンの思惑にリィンが首を傾げて考え込んでいる中、ベルフェゴールとリザイラは興味ありげな様子で見守り、アイドスは苦笑し、メサイアは疲れた表情をし、アルティナは呆れた表情をしていた。その後リィンは準備を整えたシャロンに呼ばれるとシャロンの自室に入った。



~シャロンの私室~



「フフ、こうして自分の部屋にお客様を招くなんて、初めてで少しだけ緊張してしまいますわ。」

リィンと対峙して自分が淹れた紅茶を呑んだシャロンはリィンに微笑み

「へ……は、”初めて”って……アリサやイリーナ会長を招いた事はないのですか?」

シャロンの言葉を聞いて目を丸くしたリィンはシャロンに尋ねた。



「私にとって雇い主であり、仕える主でもある会長達を招く等そのような恐れ多い事はとてもできませんわ。」

「ハ、ハア………え、えっと……できればアリサ達には黙っていて欲しいのですが……シャロンさんに部屋に招かれて二人っきりになったなんて事をアリサに知られたら、アリサにもそうですがエリゼ達に何を言われるか……」

「クスクス……もちろんお嬢様達には内緒にしておきますのでご安心ください。今この瞬間だけはリィン様にご奉仕するための一人のメイド……何なりとご命令ください。誠心誠意お応えしますので♪」

「な、何なりと……?―――じゃなくて!」

シャロンの意味ありげな言葉を聞いて息を呑んだリィンだったがすぐに我に返って疲れた表情で声をあげ

(うふふ、今エッチな事を考えたわね、ご主人様♪相変わらず初心なんだから♪)

(ま、まあ殿方ですからどうしてもそういう方向に考えてしまうのは仕方ないかと……)

(その意見には同意しますが、マスターの場合、意図しなくても不埒な展開へと持って行くのですから冗談になっていません。)

(ふふふ、あのメイドの事ですから本当に応じてくれるのではないですか?)

(彼女ならしてもおかしくないように見えるから、冗談になっていないわね……)

からかいの表情をしているベルフェゴールに苦笑しながら答えたメサイアの念話を聞いたアルティナはジト目で呟き、リザイラの推測を聞いたアイドスは冷や汗をかいた。



「ふふ、申し訳ありません。リィン様が可愛いからついからかってしまって。本日お呼びしたのは他でもありませんわ。リィン様のこれまでの頑張り……僭越ながら、わたくしのほうから労わせていただきたくて。」

「え………」

シャロンの口から出た意外な答えにリィンは呆けた。

「リィン様は本当に、よく頑張ってこられました。トリスタでの戦いから無事に生き延びられて……お嬢様のこともちゃんと見つけて頂いて……クロウ様やプリネ様達も含めて”Ⅶ組”がこうして無事に揃ったのもそうですが、エレボニアが国として存続できるようになれたのもひとえにリィン様のおかげでしょう。」

「俺の、って………………そんなことはありません。俺だって、みんなやシャロンさんが助けてくれたから……」

「ふふ……わたくしの助けなど細やかなものですわ。リィン様が中心にいたからこそ今の”Ⅶ組”やエレボニアがあるかと思います。リィン様が立ち上がり、エレボニアが二国に攻め落とされた時も諦めず何とか救う方法を探すという決意をし、皆様がそれを信じ抜いたからこそ、こうして集まり、エレボニアを存続させることができた……ですから……本当にお疲れ様でした。」

「……あ…………――――ありがとうございます。ですがまだ全ては終わっていないので、労うのは早いですよ。」

シャロンの指摘で目を丸くしたリィンは静かな表情で頭を下げた後真剣な表情で呟いた。



「双界を救う為に挑むオズボーン元宰相との決戦、ですわね。……リィン様はお辛くはないのですか?既に死去されたとはいえ実の父親と剣を交える事になってしまいますが……」

「……複雑な気持ちはありますが、辛いとは思った事はありません。俺にとっての家族は父さん達――――シュバルツァー家で、オズボーン元宰相との関係を知らされた時も正直他人事としか感じず、今も実感が湧いて来ないんです。……白状者ですね、俺は。実の親を殺す事に躊躇いすらも沸いて来ないのですから。」

「―――そんな事はありませんわ。わたくしもシュバルツァー家に少しだけお世話になってわかりましたが……リィン様と男爵閣下達との関係は普通の家族以上に強い”(えにし)”を感じました。互いを大切な家族だと思っている証拠であり、そこに何者であろうと踏み込む事はできませんわ。例え実のご両親であろうと。」

「シャロンさん……―――ありがとうございます。そう言って貰えると少しだけ楽になった気がします。」

シャロンのフォローによってリィンは安堵の表情になった。



「フフ、お役に立てて幸いですわ。…………―――リィン様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「はい、何でしょうか?」

「リィン様はエイドス様すら倒し切れなかった存在をも手に入れたオズボーン元宰相との決戦の勝率はどれ程だとお思いですか?」

「…………決して低くはなく、むしろ高い方だと思っています。オズボーン元宰相が手にした力―――”ユリス”との戦いに勝ち残ったエイドスさんに加えてエイドスさんの親族であり、誰もが凄まじい使い手であるエステルさんやアドルさん達、異世界の神々やセリカ殿もいるのですから。―――ですが油断はできないと思っています。ルーファスさんを始めとした貴族連合に所属していた強力な使い手達が俺達の道を阻む可能性も十分に考えられる上、双界を敵に回したオズボーン元宰相との事ですから何か”切り札”のようなものを用意していてもおかしくありません。」

シャロンの問いかけに対し、リィンは真剣な表情で答えた。

「わたくしもリィン様と同じ考えですわ。…………―――リィン様、もしよろしければわたくしの過去を聞いて頂いてもよろしいでしょうか?」

「え…………それはもしかして”ラインフォルトグループ”に来る前のシャロンさんの過去ですか?」

シャロンの突然の申し出に呆けたリィンはすぐに表情を引き締めて尋ねた。



「はい。今回の決戦の相手は尋常ならぬ相手ばかりです。幾ら”執行者”であったわたくしと言えど生き残れるかどうかわかりませんし、お嬢様に命の危険が訪れた際身を挺してでも守るつもりです。なので、お嬢様のお相手であるリィン様にだけは今の内に話しておいた方がよいかと思いまして……」

「シャロンさん…………――――すみませんが、その申し出だけは受ける訳にはいきません。」

シャロンの話を聞いたリィンは静かな表情で意外な答えを口にした。

「え………何故でしょうか?」

リィンの性格からして受けると思っていた申し出をリィンが否定した事にシャロンは呆けた後すぐに立ち直って静かな表情で問いかけた。

「シャロンさんの過去に興味があると言えば嘘になりますが……だからと言ってシャロンさんを家族同然に思っているアリサ達――――”ラインフォルト家”を差し置いてシャロンさんの過去を聞くなんて不躾な事はできません。それにそんな不吉な事を言わないで下さい。俺達が取り戻そうとしている”かけがえのない毎日”の中にはシャロンさんも当然いるのですからオズボーン元宰相に勝つだけじゃなく、みんなが生きて帰って来る……それは絶対に必要な事です。」

「リィン様………………フフ、そうですわね。リィン様達が目指している目標が叶えられない可能性がある事を思ってしまう等、第三学生寮の管理人として失格ですわね。―――わたくしにまで激励の言葉を送って頂きありがとうございます、リィン様。」

リィンの答えを聞いたシャロンは驚いた後苦笑し、リィンに会釈をした。



「ハハ、そんな大した事はしていませんよ。……シャロンさん、オズボーン元宰相との決戦が終わったらアリサにシャロンさんの過去を話してあげてくれませんか。」

「え…………」

「アリサは口には出していませんけど、シャロンさんの過去を知りたがっていると思っています。――――シャロンさんの”家族”として。」

「!!……………レーヴェ様やヨシュア様と違うわたくしにはそのような”資格”は………それにわたくしの過去を知れば、お嬢様もきっとわたくしの事を恐れ、嫌うでしょうし……」

リィンの指摘で目を見開いたシャロンは辛そうな表情でリィンから視線を逸らしていたが

「そうでしょうか?シャロンさんが”結社”の”執行者”だと知ってもアリサは何も変わりませんでした。それに……家族を大切にし、誰よりも頑張り屋で優しいアリサがシャロンさんの過去が例えどのような壮絶な過去と言えど、”その程度”でシャロンさんを恐れたり嫌いになったりするとはとても思えません。」

「…………あ………………フフ、かしこまりました。全てが終わって状況が落ち着けばリィン様のご希望通り、お嬢様にわたくしの過去をお話しますわ。―――ありがとうございます、リィン様。リィン様のお蔭でお嬢様にわたくしの過去をお話する覚悟ができましたわ。」

リィンの言葉に呆けたシャロンは微笑みながらリィンを見つめて会釈をした。



「ハハ、シャロンさんにはいつもお世話になっているのですからお役に立てて幸いです。」

「リィン様…………フフ、どうしましょう……最初は”お礼”代わりのつもりでしたが、今は”一人の女性として”リィン様に尽くしたいという気持ちでいっぱいですわ……お嬢様のメイドとして失格ですわね……」

「シャロンさん……?」

困った表情で呟くシャロンをリィンは不思議そうな表情で見つめ

(ふふふ、私達の期待通りの展開に持って行くとはさすがはご主人様です。)

(これで今夜の被害者は二人目ですね。)

(リィン様…………どうなっても知りませんよ……?)

(フフ、アリサは間違いなく怒るでしょうね。)

(うふふ、もうこの後の展開はわかったようなものだから、結界を展開しないとね♪)

その様子をリザイラは静かな笑みを浮かべて見守り、アルティナとメサイアはそれぞれ呆れた表情をし、アイドスは苦笑し、からかいの表情をしているベルフェゴールは結界を展開した。



「こ、これは……!?(ベルフェゴール!?何でここで結界を展開するんだ!?)」

結界に気付いたリィンは表情を引き攣らせた後ベルフェゴールの念話を送ったがベルフェゴールは何も答えず

「あら………―――わたくしの為にここまでして頂きありがとうございます、ベルフェゴール様♪」

リィンと同じように結界に気付いたシャロンはリィンを見つめて微笑んだ。

「へ。――――!?ちょ、ちょっとシャロンさん!?一体何を……!?」

シャロンの言葉に呆けたリィンだったが、突然メイド服を脱ぎだしたシャロンの行動に焦り始め

「フフ、リィン様。そろそろ身体がお辛くなってきたのではありませんか?」

自身の髪の色と同じパープル色の下着姿になったシャロンはリィンに問いかけた。



「え……――――っ!?な、何でいきなり……っ!シャ、シャロンさん、まさかさっきの紅茶に………!」

シャロンに指摘された後自分の身体が凄まじい興奮をしている事に気付いたリィンは自身の体調の変化がシャロンが用意した紅茶である事を察し

「フフッ、実はリィン様が帰って来る前にクロチルダ様に媚薬の調合を依頼しまして。効果はエリゼ様が以前お使いになられた媚薬ほどではありませんが効果は抜群との事ですし、精力の増強効果もあるとの事ですのでご安心ください♪」

「あ、あの……一体どこに安心すればいいのでしょうか……?うっ……!?」

「あらあらまあまあ……我慢は身体に毒ですわよ?今楽にして差し上げますから、ベッドに参りましょうか、リィン様♪」

その後リィンはシャロンに奉仕をされた後そのまま流されるかのようにシャロンと愛し合い始めた。



~同時刻・アリサの自室~



「アリサ、少しいいかしら?」

「へ……ク、クロチルダさん!?え、ええ。ちょっと待ってくださいね。」

一方その頃アリサは自分を訪ねて来た予想外の訪問者に驚いて扉を開けた。

「えっと……クロチルダさん。私に何の用ですか?」

「”死線”が私に変わった依頼をしたから、”死線”の主である貴女に教えておこうと思ってね。」

「へ……シャ、シャロンがクロチルダさんに”依頼”、ですか?一体何の依頼をしたのですか?」

クロチルダの話を聞いたアリサは目を丸くした後戸惑いの表情で尋ねた。



「媚薬の調合の依頼よ♪」

「び、媚薬!?どうしてシャロンがそんなものを……!?」

「フフ、私が聞いた時『企業秘密です♪』って言って答えを誤魔化して、ちょっと気になっていてね……それでグリアノスに”死線”の私室を見張らせていたら”死線”がリィン君を部屋に招いたのよ♪」

「なっ!?ま、まさか……!」

クロチルダの話を聞いてすぐにシャロンの意図を理解したアリサは身体を震わせた後その場から走り去り

「それでしばらく見張っていたら面白い事に――――あら。今行っても、結界が展開されていて部屋に入れないのだけどね♪」

説明を続けていたクロチルダはアリサがいなくなった事に気付き、からかいの表情をしていた。 
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