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真田十勇士

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巻ノ四十三 幸村の義その十二

「果たしてどうなるか」
「お子が次の天下人になられるにしても」
 猿飛の言葉は瞑目している感じだ。
「果たしてどうなるか」
「関白様も不惑を超えられていますし」
 伊佐は秀吉の歳のことを言った。
「そうそうお子は出来ませぬか」
「人間五十年」
 霧隠は信長が愛した敦盛の一句を口にした。
「関白様もまた同じ」
「うむ、関白様に確かなお子が出来ねば」
 根津も考える顔になっている。
「天下が定まっても次は危ういであろうな」
「関白様は大層おなごが好きでも」
 清海は袖の中で腕を組んでいる。
「お子が出来ぬとはな、世の中はわからぬ」
「殿がいつも言われるが」
 最後に言ったのは由利だった。
「まことにそうであるな」
「うむ、拙者もそれは同じ」
 幸村も自分のことから言うのだった。
「やはり家を持ち子をもうけねば」
「天下には関わらずとも」
「それでもですな」
「家を続ける為に」
「お子は必要ですな」
「その通りじゃ、昨日大谷殿とお話をして痛感した」
 まさにというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
「そのうえで、ですな」
「我等もまた」
「家をですな」
「持つべきじゃな」
 十勇士達もというのだ。
「そして子をもうけるべきじゃ」
「それでは」
「上田に戻りまして」
「そしてですな」
「それからは」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 主従は大坂も見てだった、そしてだった。 
 大坂を見て回ったのだった、今度は城を見るのではなく大坂の地をじっくりとだ。幸村は十勇士達と共にだった。
 歩いてだ、こう言ったのだった。
「この地は平地であるがな」
「はい、川がですな」
「実に多いですな」
「しかし山が遠く」
「遠くを守るにはですな」
「適しておらぬ、だから戦になれば」
 その時はというのだった。
「兵の数によるが」
「外で戦うには」
「その時には」
「相手とどう戦うか」
「それが肝心ですな」
「そうじゃ、籠城すれば確かに守りやすいが」
 しかしというのだ。
「孤立しておるとどうじゃ」
「籠城に至らえると」
「それだけで、ですな」
「危ういですな」
「籠城は味方がおる時にするもの」
 援軍が来る時にというのだ、確実に。
「しかしな」
「それがいないと」
「到底ですな」
「囲まれ続け」
「滅びますか」
「兵糧は尽きる」
 何時かはというのだ。 
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