真田十勇士
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巻ノ四十三 幸村の義その七
「奥方を持ち」
「そしてですな」
「お子ももうけられるべきです」
「そうなりますな」
「よいお考えです」
幸村のその考えにだ、兼続は再び賛意を述べた。
「是非そうすべきです」
「さすれば」
「しかしそれがしと伊佐は」
ここで言ったのは清海だった。
「一応仏門にありますが」
「そうです」
伊佐も言う。
「破戒しておるにしても」
「破戒なら問題なかろう」
その二人に猿飛が言う。
「別にな」
「そもそも一向宗でもじゃ」
根津はこの宗派を話に出した。
「坊主でも女房を迎えておるぞ」
「そういえば出家された方でもな」
穴山は世間によくいる出家した者達の状況に言及した。
「普通に奥方がいたりするな」
「信玄様にしろそうであったな」
由利は真田家の主のことを思い出した。
「出家されても奥方がおられた、側室の方々もな」
「公に持たずとも持っておる坊主も多い」
海野は所謂生臭坊主の話をした。
「今更じゃな」
「それに御主達は破戒しておるうえに今は士分」
武士であることをだ、望月は二人に言った。
「ならばよいであろう」
「二人に問題はない」
筧は己の見解を述べた。
「出家していても破戒しており士分なら還俗したのと同じ」
「法力はそうしたものでもあるまい」
妻帯とは関係がないとだ、最後に霧隠が言った。
「まして二人は肉も酒も常に楽しんでおるではないか」
「拙者も問題ないと考えておる」
幸村もこの見解だった。
「だから二人も話に含めておるのじゃ」
「その通りですな」
兼続も幸村と同じ考えであった。
「お二人も妻帯しても構いませぬ」
「今は士分故」
「破戒もしているからこそ」
「そう思いまする、それに肉食妻帯していても破戒されていても」
どうしてもというのだ。
「法力は別です」
「法力は修行で手に入れるもの」
「そうだというのですな」
「そうです、お二人は日々僧侶の修行を欠かしておられませぬ」
清海も伊佐もというのだ、実際に二人は法力の修行も怠ってはいない。清海はどちらかというと力技の修行の方が多いにしても。
「ですから」
「それで、ですな」
「我等」
「奥方を迎えられるべきです」
兼続は二人にあらためて言った。
「是非」
「それでは」
「殿の勧めでもありますし」
「それならば」
「我等も」
「そうされるべきです、では」
二人が頷いたのを見てだった、兼続は。
一同にだ、新しい肴を出した。その肴はというのと。
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