ハイク
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第五章
「それじゃあわからないよ」
「片目だけ見えていてもな」
「顔全体は見えないし」
「スタイルだってな」
「全然わからないぜ」
「それだけだとな」
「ああ、それか」
老人の一人は二人の話を聞いて言った。
「御前さん達はまだ子供だからわからないな」
「ガキだから?」
「まだ中学生だからか」
「わからないっていうのか」
「それだけだと」
「美人ってのはな、顔全体でわかるものじゃないんだ」
こう言ったのだった、二人に。
「これがな」
「あれっ、そうなのかよ」
「顔全体でわかるものじゃないのかよ」
「美人かどうかって」
「それだけじゃ」
「よく見るんだ」
老人は二人の少年に確かな声で言った。
「その人をな」
「ハイクの人をかい?」
「顔が全く見えない人をかい」
「そうだ、片目だけじゃない」
見るものはというのだ。
「もっと言えば片目の光からわかるんだがな」
「目の光か」
「それからか」
「そうだ、片目だけでもな」
それと、というのだ。
「わかる様になるんだがな」
「片目のその光だけでか」
「美人かどうかってわかるのか」
「目の光が強く輝いている人は美人なんだよ」
それだけでというのだ。
「表情、顔の感じがきりっとしてるからな」
「ああ、表情か」
「表情がいいとか」
「美人なのか」
「そうなんだな」
「顔立ちが整ってるよりもな」
それ以上にというのだ。
「表情がどうかなんだよ」
「それがいいと美人」
「そういうことか」
「御前さん達はまだ子供だからな」
それで、とも言う。
「まだそこはわからないな」
「俺達中学生だしな」
「爺ちゃん達よりずっと短く生きてるしな」
「だからだな」
「もうだな」
「それこそな」
「人生経験なんてまだまだだな」
二人もそのことは認める、言われずともだからだ。
「だからか」
「そういうこともわからないか」
「ああ、そこからわかるんだ」
片目の光からだけでもというのだ。
「見ればな、それに片目だけでなくてもな」
「わかるのかよ」
「目の光だけからじゃなくて」
「御前さん達ハイクを見たか」
老人は今度は二人にこのことを問うた。
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