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インフィニット・ストラトス~黒衣の創造神~

作者:黒鐡
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第5巻
  敗者への屈辱×学園祭後の結果

「一夏!」

「楯無か、スマンが逃げられてしまったようだ。別働隊はどうだ?」

「今簪ちゃんらが対応中だけど、どうやら相手は自爆したようね」

「そう言う事なら俺は休ませてもらうが、この指輪はお前にやる。どうせしばらく住むと思うだろう」

「ありがと、一夏♪」

一方自爆して逃げたオータムはIS学園の敷地を走り抜けながら、頭の中で何度も毒づいていた。簡単な仕事のはずが逆にやられてしまい、終いにはIS無しの相手と戦い敗れた事が一番腹が立っていた。

「(何が簡単な仕事だ、潜入する事自体が予定外な事よ。大体あのガキは組織に来た時から気に入らない)」

いつでも他人を見下したような目をした少女を思い出していたが、自らの能力の高さと相手の能力の低さを確信している。リムーバーと今回の潜入計画を用意した本人であって、今回使用せずに逆に木端微塵となってしまった自分。

「(殺す・・・・殺す殺す殺す!この私の顔によくも泥を塗ってくれたあのガキと織斑めぇ!何時か殺してやる!)」

忌々しさに奥歯を噛み締めていると、やっと自分がIS学園から離れた場所にある公園まで辿り着いた。だがそこにいたのは織斑一夏の差し金である隊員達が、二人だけいた事で水を飲んでから戦闘態勢を取ったオータム。

「おやおや、私らを見てどう思ったのかしらね。真夜」

「私達に気付けない程、疲弊してるって感じかしら。深夜」

「その制服は国連軍か、だがすぐに駆けつけるような部署ではないとすればブラック・シャーク隊!?」

「私達がそう安々と逃がす訳がない」

そう言って近接格闘術で簡単に背中から倒される、両腕を固定されたままなのでオータムが動こうとするとその場で電気ショックする程だ。だがここで想定外が発生した事なのか、深夜と真夜は空中にいるドウターを倒しに行った。

「おっと動くなよ、狙撃手がお前を狙っている」

「くっ・・・・!」

「二人は対ドウター戦で行ってしまったがすぐに援軍が来るだろうね、洗いざらい吐いてもらわないと困るよ」

玄信は秘密結社の情報を持っているし、喋らなくとも亡国機業(ファントム・タスク)がどう言う存在かを見据えている。今回の襲撃、主にIS戦闘だがそれについては織斑総司令官が粉砕したのでわざと逃がした。そんで今回の外史には記憶共有者が居る訳だが、どうやら味方だけではなく敵にもいると知っているのも織斑少将だけだ。

「さてと、君のISはアメリカの第二世代型であるアラクネだね。どこで手に入れたのかな?」

「言う訳ねーだろうが!」

まあそうだな、と思っただろうがISコアを製造技術は一般的に公開されていない。作れるとしたら篠ノ之束か織斑一真であるが、国防に関する重大な過失によってどの国も盗まれたと公に出来ないのが現状だろう。ISの強奪計画全て、それを実行するだけの組織力は小さくないだろう。

「ま、ここで尋問するだろうから長い付き合いにはなりそうかな」

『玄信さん、そこから離れて下さい。一機来ます!』

「どうやらそうらしいね、君のお迎えかな」

オータムから離れた事で、レーザーが当たる事はなかったがすぐにステルスモードを解除した簪が盾となって出現する。玄信は簪の背に隠れて、通信機で現状を報告していた。続けて撃ち込んで来た二発を防いでから、敵が一体どこにいるのかすぐに発見した事でセシリアが構えた。

「なるほど、遠距離レーザーを撃ってくるISは一機しかありませんわ。アレはBT二号機である『サイレント・ゼフィルス』で、シールドビットを試験的に搭載した機体」

「基礎データは一号機であるブルー・ティアーズが使われているらしいが、今のセシリアに敵無しと言いたいな」

機体がブルー・ティアーズなら兎も角、ケルディムを使っているのでスナイパーライフルによる狙撃をするが相手はシールドビットを展開させて有効打を与えられない。だがこちらもビットを持っている、回避をハロに任せて超高速機動下による精密射撃と連射速度はこちらが上。

「機体性能ではこちらの方が有利ですわ!」

「セシリア気を付けて、どうやら敵さんはビット兵器の高稼働時に可能な偏光制御射撃が出来るみたいだよ」

「了解ですわ!」

「・・・・・」

ビームが曲がる事を承知でミサイルを撃ち、シールドビットと偏光射撃で撃ち落としたと思わせた瞬間にセシリア自身がサイレント・ゼフィルスに近距離まで来た事で体当たりした。

ワンオフであるトランザムによってすぐに移動出来たが、問題発生と言えばサイレント・ゼフィルスがオータムの目の前にいた事だった。簪はすぐにビームサーベルで攻撃したが、ピンク色に光るナイフで火花が散ったと思えば簪に向けてビット攻撃。

「今の内、迎えに来たぞオータム」

「テメェ・・・・私を呼び捨てにするんじゃねぇ!・・・・だが、今は脱出だけを考えるだけのようだぜ」

本来なら捕獲するラウラと援護としてセシリアだが、ここは外史であり何が起きるかは分からない。ドイツの遺伝子強化素体(アドヴァンスド)を知っている奴は、オータムを掴んでそのまま飛来した方向へと離脱して行った。簪とセシリアを足止めしていたビットは、用済みとばかりに自爆した。

「簪さん、学園に連絡したとしても逃げられますわね」

「うん。それに織斑少将による報告だと、オータムに発信器を付けられた事が得したと思うよ」

「二人共お疲れ様でした。深夜と真夜の二人は無事にドウターを退治した事で、とりあえず任務としては成功と言っていいでしょう」

玄信達は敵が飛翔した方向を見ていたが、デモンストレーションにはなったと思った。今回の任務としては、敵がどのぐらいの戦力を持っているか。イギリスにて報告があった強奪されたサイレント・ゼフィルスの性能及び機能について、今回が前菜ならば何時か大嵐と言う名による戦いが待っているであろう。

学園祭が無事に終えてからしばらくして、俺の部屋にはセシリア、シャル、楯無、簪が事後報告として来ていた。

「・・・・以上が私らのご報告ですわ」

「報告ご苦労さん、にしても妙な組織が動き始めたと国連軍や暗部でも知っていたようだ。ま、俺達ブラック・シャーク隊は既に秘密結社亡国機業(ファントム・タスク)の狙いが俺のISだったらしいけど結局生身だけで叩き潰した。独立部隊と暗部との連携として取った行動が、吉に出た事で結束力が生まれたな」

「更識家は元々裏工作=搦め手専門と言えばいいのかしらね、対暗部用暗部を露払いした事で結局私の出番はなかったけどね」

「しょうがないよお姉ちゃん、一夏は元から強いし最近手に入れた剣だけで倒しちゃうんだから」

今回楯無の活躍はなかったけど、当面の危機は去ったようだけどもう少しここにいる楯無。それは俺の指輪をゲットした事で、自動的に同居人になる事はここにいる皆も分かり切っていた。そろそろ寝るかと思い、楯無以外の者らは自分らの部屋に行ったが俺と楯無はそれぞれのベッドにて寝る所だった。

「今日は流石に疲れたが、明日から忙しくなりそうだな楯無」

「お休みなさい、一夏。今だけは疲労回復していてね」

明かりを落として、布団の中に入り込むが自動的に二人で一つとなって寝る事が予想出来た。そんで明日になると既に姿はなかったが、今回の争奪戦に関して結果発表として体育館に集まっていた。ちなみに俺は生徒会長である楯無の隣にいる。

『皆さん、先日の学園祭ではお疲れ様でした。それではこれより、投票結果の発表を始めます。・・・・一位は、生徒会主催の観客参加型劇「シンデレラ」!』

「「「・・・・え?」」」

ぽかんと全校生徒が口を開くけど、俺としては予想通りのリアクションだったので口元が歪みそうになったが何とかポーカーフェイスに直した。数秒後、我に返った女子一同から一斉ブーイングが起きた。

「卑怯!ズルい!イカサマ!」

「何で生徒会なのよ!可笑しいわよ!」

「私達頑張ったのに!」

そんな苦情を手で制してから、楯無は言葉を続けるけど俺は軍服ではなくIS学園の制服を着ている。

『劇の参加条件は「生徒会に投票する事」なのよ、でも私達は別に参加を強制した訳ではないから立派に民意に言えるわ』

ま、そうだな。条件次第では驚きもしないが、俺が驚く訳も無ければ一部の生徒のみ驚愕していないのでこれは用意周到な計画の一つである。楯無の説明だとブーイングが収まらないので、俺が楯無の代わりに答えたのだった。

『落ち着けお前ら、俺が生徒会メンバーになれば適宣各部活動に派遣する事となった。俺としての肩書は最強の座と生徒会特別顧問の二つであって、思い出してもらいたいが国連軍少将なので大会参加は不可能だが各部活動の特別顧問としての司令塔だ。だがそれだけだと納得しないのであれば、俺らの部下を貸す事でマネージャーやら庶務をやらせる。それらの申請書は生徒会に提出するようにな』

「な、なるほど。それなら・・・・」

「仕方無いわね、それなら納得してあげましょうか」

「ウチの部活勝ち目なかったし、これは良い塩梅ね」

と言う声が周囲から聞こえる事で各部活動のアピール合戦が始まる、俺の立場を冷静に考えてくれた事で何とかなった。

「じゃあまずはサッカー部に来てもらわないと!」

「何言ってんのよ、ラクロス部の方が先何だから!」

「料理部の方が織斑さんの技術を見れるから、こっちが先よ!」

「はい!はいはい!茶道部ここです!」

「剣道部は後程でもいいですよ、織斑さんは剣道じゃなくて剣術だけど強いからねー」

「柔道部も同じく!体術やら寝技も大抵やりそうだし、コーチとしてなら納得する!」

俺の意志はあるが、特に問題無さそうなので生徒会特別顧問として所属する事となった。以後、普通なら楯無に従うが俺の方が強いので基本的に従う方となる。俺が簡単に締めると生徒達からは拍手と口笛で湧き起こる。俺の指示に従うと言う事は生徒会長より強い事で、俺が生徒会長になる所を特別顧問として生徒会の更に上の方へとなった。

「織斑一夏さん、生徒会特別顧問着任おめでとう!」

「おめでと~」

「おめでとう一夏」

「おめでとうございます、これからは同じ者同士よろしくお願いします」

楯無、本音、簪に虚さんの言葉によりクラッカーが盛大に鳴らされた。ついでに言えば、武装神姫である四人は俺と簪の肩に座っている。場所は生徒会室、豪勢な机と窓が鎮座しているけどブラック・シャーク隊総司令官の象徴的でもある。

「やはり俺の考えによって、無事に解決したか」

「そりゃそうだよ、元々一夏がどこにも部活動入っていない理由として国連軍とIS学園生徒の板挟みだからね」

「簪ちゃんも知っているようだけど、学園長からも生徒会権限でどこかに入部させるようにと言われていたのよ。でもそれが斜め上の方に行った事で、これからも楽しめそうな感じがするってね」

「おりむーがどこかに入れば諦めてくれるだろうけど、特別顧問としてならコーチをすると言うなら自然的に諦めるだろうね~」

「その他大勢の生徒が『ウチの部活に入れて』と言い出すでしょう。それを解決してくれた一夏さんには感謝致しますが、特別顧問になれば必然的に忙しくなりますよ?」

「俺としては国連軍を長期休暇してるから、その分体が鈍ってしまう。ならば全部活動を把握し、それぞれ無駄な所を省きつつコーチを受ける事で必然的に解決。忙しいのは軍に居た頃だから問題ない」

四人の連携として見事と言い様がないけど、これから増々忙しくなるのでは?と質問してきた虚さんだったので問題無しの理由を言うと納得してくれた。美少女四人いるけど、俺としては小娘として見ているので大人の態度を取れる訳だ。

「で、当面は放課後に集合となるのか?」

「本来ならそうですが、一夏さんは特別顧問と言う司令塔なので派遣先の部活動が決まり次第行ってもらいます。・・・・ところで一つだけ良いでしょうか?」

「何がです?」

虚さんにしては珍しく歯切れが悪い事を言ってきたので、俺らは考えるが答えとしては誰かに惚れたのか?と思うと当たりであり、学園祭の時にいた俺の友を聞いてきたので俺は正直に答えた。

「アイツの事か、五反田弾と言って今は市立の学校に通ってると言ってたけ」

「そ、そう・・・・ですか。歳は織斑さんより下・・・・でしょうか?」

「俺の歳と弾の歳では九つ下であり、虚さんより二つ下だと考えた方がいいかと」

「そうなのですか・・・・ありがとうございます」

虚さんは丁寧に一礼していたが、頬を見ると赤くなっていたので俺と更識姉妹は念話で惚れたようだなと。今日は生徒会特別顧問としてだが、メンバーが揃った事を祝って事前にケーキを焼いておいた俺である。お茶を虚さんがやり、のほほんさんは取り皿の準備をして俺は焼いたケーキを一皿ずつ切ってから渡した。そして紅茶と共に乾杯してから、生徒会所属が決定した。

「失礼します」

重厚なドアを開いて学園室に入ってきた俺ら軍属組の四人、窓の外は暗く夜のように包み込んでいた。ここに来るのは実に久しぶりだが、今回はエヴォルトシステムではなく事件に関してだ。

「ああ、織斑少将。丁度良かったですが、まさか他の者らも来るとはね。まあいいけど」

俺らを迎えたのは穏やかな顔をしている初老の男性で、表向きは妻である学園長をしているが実務に関してはここにいる男性が取り仕切っている。

「今回の報告書は先程送らせてもらったが、改めて報告をするぜ。十蔵さんや」

「表での学園長は知っていたけど、まさか表裏によって違うのですね」

十蔵さんは立派な机に組んだ手を置きながら、その頭は白髪で顔にも年相応の皺が刻まれている。柔和さを感じさせるこの男性は、轡木十蔵こそがIS学園を実質的に運営している側である。

「オルコット中佐達は私の妻と話した事はあるけど、今回が初だから改めて自己紹介をする。普段なら校務員の仕事をしているけど、実質的に運営側が私である。人柄も良さそうだから『学園内の良心』とも呼ばれてるよ」

「それよりも改めて報告を、まずは篠ノ之箒に関してだが彼女の訓練は順調だとオルコット中佐とデュノア中佐から聞いている」

「はい。私も驚きましたが、やはり篠ノ之束博士の妹ですのでとても筋があります」

「一度教えた事を数回で反復で覚えたり、理解の早さに関しては織斑少将が一番分かってると思います」

「今まで見てきた隊員の中だと、中の中という感じです」

「そうでしょうね。あの篠ノ之束博士の妹なら、どんな訓練でも覚えて損はないかと」

「篠ノ之箒に関してもですが、問題はテロリストとされている亡国機業(ファントム・タスク)だけど今回確認されたので二機。その内一機はコアを抜き取り自爆したので、再度すぐに行動を起こすとは思いません」

コアを心臓と例えるなら、装甲は肉であるのでコアだけを抜き出せば当然それまであった肉体を失う事になる。再度装甲を馴染ませるには時間が掛かるし、電池交換のように抜いてすぐ動く訳ではない。

「織斑少将には板挟みでありますが、苦労を掛けますね」

「これも仕事の内と考えれば大丈夫ですよ、俺らの機体であればどんな敵にも対応可能だと思います」

「エヴォルトシステム搭載機ですよね。完全オリジナルシステムと言う事で、一時はどうなるかと思いましたが色々と活用されるので心配はしていません。そちらはそちらで、自由に動いてもらって構いませんから」

その他、学園についてと対ドウター戦に関して二~三つを伝えてから俺らの報告を終わらせる。俺もそうだが楯無に関しても人気者なので、互いに微笑合っていた。堅い報告を終えたので、ここからは張り詰めた空気を霧散させてお茶タイムとなる。

「そう言う事ですので、ここからはフリータイムとしてお茶にしましょうか。いいお菓子が入ったのですが、皆さんの口に合うかどうか」

「十蔵さんのお菓子チョイスは俺と同じように外れがない、楽しみにしてましたが俺からの提供もしておきます」

「一夏さんが作った物はどれも美味しいですけど、私の方こそ大したものではないのですよ」

「ではこちらからはお菓子ではなくお茶にしておきますか。セシリア、最近手に入れたお茶を準備してくれ」

俺らがチョイスしたお茶はどれも美味しい事で有名だが、ここからはお茶会として仲の良い友達のように俺ら五人も差し向かいで座ってお茶を始めた。その光景を見て、IS学園のそれぞれの長とブラック・シャーク隊の長であろうとは誰も思いもしない。

こことは違う場所である高級マンションの最上階、豪華な飾りで溢れ返っているその部屋でオータムは少女に詰め寄っていた。

「テメェ!どう言う事だよ!?」

「・・・・・」

「何とか言え!このガキが!」

少女を壁に叩き付け、それでもまだ怒りを収めるには足りないオータムは腰からナイフを抜く。

「その顔、切り刻んでやる・・・・!」

「止めなさい、オータム。うるさいわよ」

バスルームから出て来たのは美しい容貌をした女性で、薄い金色の髪が明かりに照らされてキラキラと透明の光を放っていた。

「スコール・・・・!」

「怒ってばかりいると老けるわよ。落ち着きなさい、オータム」

スコールと呼ばれた女性はバスローブのままソファへと腰を下ろすが、そんなスコールをオータムは悔しそうに見つめていた。まるで恋人か?と思われる。

「お前は・・・・知っていたのか?こうなると言う事を」

「ええ」

「だったらどうして私に言わない!私は・・・・私は、お前の!」

「分かってるわ、オータム。ちゃんと分かってる。貴女は私の大切な恋人」

「わ、分かっているなら・・・・いい」

先程までの怒りはスコールの笑みによって消されて、オータムは頬を赤くして俯いていたがどうやらこの二人の関係は恋人で正解だった。初恋の相手を前にした少女のようにあどけなく、そんな可愛らしい様子にスコールは嬉しくなったのかまた微笑んだ。

「おいでなさい、オータム。髪を洗ってあげる。今日は疲れたでしょう?」

「あ、ああ・・・・」

そんなやり取りを少女は退屈そうに眺めていたが、馴れ合いや情も否定するような少女は冷めた瞳のまま部屋を出て行く。

「エム、ISを整備に回して頂戴ね。『サイレント・ゼフィルス』はまだ奪って間もない機体だから、再度調整が必要よ」

「分かった」

エムと呼ばれた少女は短く返事してドアを閉じるが、実はこの少女も記憶共有者の一人であり敵の中に味方が潜んでいると言う事を知っているのは俺だけである。

本来なら復讐が始められるそうだが、記憶共有者として表では亡国機業(ファントム・タスク)の一員であり、素顔も織斑千冬と同じとされている。その名は織斑マドカで、体には監視用ナノマシンが注入されていて命令違反を犯せば数秒で脳中枢を焼き切られる。

「(織斑少将、何時か貴方に会う事を楽しみにしている。私の兄さん)」

何時か出会う時、監視用ナノマシンが発動しないよう無効化。それが発動したとしても自己修復機能として、新たに注入される事で解放される。そして何時か出迎えるのが俺達の使命であり、それが何時になるのかはこの俺でも分からない。 
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