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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第157話

同日、11:30―――――



~リベール王国・グランセル城・女王宮~



「し、失礼します………!」

アリシア女王とクローディア姫が女王宮で休憩を取っていたその時、ユリア准佐が慌てた様子で部屋に入って来た。

「ユリアさん……?」

「ユリアさん、いかがしました?貴女がそのように取り乱すのは珍しいですね。」

ユリア准佐の様子にクローディア姫は不思議そうな表情をし、アリシア女王は尋ねた。

「……失礼しました。今しがた、ハーケン門のモルガン将軍より連絡がありまして。余りに異例だったのでご休憩の所、失礼かと思ったのですが陛下たちのお耳に入れようかと……」

「異例の連絡………しかもハーケン門からですか……」

「それでその連絡とは一体何でしょうか?」

ユリア准佐の話を聞いたアリシア女王は考え込み、クローディア姫は不安そうな表情で尋ねた。



「ハッ。――――エレボニア皇家である”アルノール家”所有のアルセイユⅡ番艦―――高速巡洋艦”カレイジャス”がハーケン門に通過の許可並びにグランセル空港の寄航の許可、更に女王陛下達との面会を望んでいると通信で伝えて来たとの事です。」

「ええっ!?カ、”カレイジャス”が国境に……!?一体何故私達に……エレボニア帝国はメンフィルとクロスベルの侵攻を受けている真最中なのに……―――あ。まさか……!」

「……それで私達との面会を希望する方はどなたですか?」

ユリア准佐の説明を聞いて驚いたクローディア姫だったがある事に気付いて目を見開き、アリシア女王は真剣な表情で尋ねた。

「ハッ。エレボニア皇帝ユーゲント三世を始めとした”アルノール家”全員との事です。勿論その中にはオリヴァルト殿下もいらっしゃるとの事です。」

「!!」

「ユ、ユーゲント皇帝陛下どころか、エレボニア皇家の方々全員ですか……あら?でも確かユーゲント陛下達は”貴族連合”によって幽閉の身のはずですが……」

ユリア准佐の報告を聞いたアリシア女王は目を見開き、クローディア姫は信じられない表情をした後ある事に気付いて戸惑いの表情をした。



「……恐らくメンフィルとクロスベルの侵攻の際にメンフィルとクロスベルによって救出されたのでしょうね。しかしユーゲント陛下達が救出される程二国による侵攻が進んでいるとなると……エレボニア帝国はもはや風前の灯火なのでしょうね。」

「あ…………」

アリシア女王の推測を聞いたクローディア姫は悲しそうな表情をし

「…………それでいかがなさいますか?」

複雑そうな表情をしていたユリア准佐は気を取り直して尋ねた。

「通行の許可並びにグランセル空港の寄航の許可、そして面会にも応じると伝えてください。それとグランセル空港に”カレイジャス”寄航の手配と、ユーゲント陛下達を送迎する車を大至急手配してください。後は”彼”にもオリヴァルト殿下達がいらっしゃった連絡を。」

「御意!」

アリシア女王の指示に敬礼で答えたユリア准佐は部屋から去って行った。そして1時間後――――”カレイジャス”はグランセル空港に着陸した後、ユーゲント三世を始めとしたエレボニア皇家の面々やレクター少尉、そしてユーゲント三世達の護衛として”Ⅶ組”のC班とトワ、アンゼリカがリベール王家が手配した送迎用の車によってグランセル城に入城し、晩餐会等の際で使われる広間で面会を始めた。





同日、12:40――――



~1階広間~



「―――女王陛下、王太女殿下。此度は突然の訪問に応えて頂き、心より感謝する。」

「いえ……貴国の事情はある程度理解しておりますので、どうかお気になさらず。それより陛下達は内戦が勃発した際”貴族連合”によって幽閉の身になってしまったと伺っておりましたが……やはりメンフィル帝国とクロスベル帝国の侵攻が関係しているのですか?」

ユーゲント三世の言葉に静かな表情で答えたアリシア女王はユーゲント三世達を見回して尋ね

「はい……昨日二国による連合軍によって帝都ヘイムダルは制圧され……更に”貴族連合”の”主宰”であるカイエン公を始めとした”貴族連合”の幹部たちも二国によって拘束され、その際に私達は二国に救出され、その後リウイ陛下達の配慮によって一時的に自由の身にして頂いたのです。」

プリシラ皇妃がアリシア女王の質問に答えた。



「そうですか……既に帝都まで……」

「………………その、そちらのお二方が”帝国の至宝”と名高い陛下達のご子息達ですか?」

プリシラ皇妃の説明を聞いたアリシア女王は重々しい様子を纏い、クローディア姫は重苦しい空気を変える為にアルフィン皇女達に視線を向けた。

「はい。――――エレボニア皇帝ユーゲント三世とその妻プリシラの息子、セドリック・ライゼ・アルノールと申します。お初にお目にかかります。アリシア女王陛下、クローディア王太女殿下。」

「セドリックの双子の姉、アルフィン・ライゼ・アルノールと申します。リベールでは兄オリヴァルトがお二方に随分お世話になったと聞いておりますわ。」

クローディア姫に視線を向けられた二人はそれぞれ自己紹介をした。



「フフッ、私達の方もお世話になりましたから、お互い様です。―――お久しぶりですね、オリヴァルト殿下。行方不明と聞いておりましたが、ご無事で何よりです。」

「お心遣い痛み入ります。女王陛下達も壮健そうで何よりでございます。」

アリシア女王に視線を向けられたオリヴァルト皇子は静かな表情で会釈し

「あの………少々よろしいですか?何故学生の方々が陛下達の護衛の任についているのでしょうか?確かそちらの方達の何人かはオリヴァルト殿下が立ち上げたトールズ士官学院の特科クラス”Ⅶ組”の方々でしたよね……?」

クローディア姫は戸惑いの表情でC班の面々に視線を向けた。



「王太女殿下達もご存知かと思われますが、現在メンフィル・クロスベル連合の侵攻により貴族連合軍は崩壊し、領土が制圧され続けている状況です。連合は幸いにも正規軍には危害は加えず正規軍には待機命令を出しておりまして。今後の事を考えますと連合の指示に無暗に逆らう訳にはいきませんし、何より急な訪問に応えて頂いた貴国に我が国に対する不信感を抱かせてしまうわけにはいきませんでしたので、内戦では第三勢力であった”トールズ士官学院”に所属する彼らに陛下達の護衛を依頼し、承諾して頂いた所存でございます。」

「彼らは彼らと共に内戦終結に向けて”第三の風”として活動していたこのわたくし、アルフィン・ライゼ・アルノールが保証致しますので、どうかご安心ください。」

レクター少尉の説明に続くようにアルフィン皇女がレクター少尉の説明を捕捉した。

「……わかりました。それで本日リベールを訪問した理由は何でしょうか?」

「エレボニア帝国が滅亡しない為に私達エレボニア皇家はメンフィルとクロスベルに情状酌量の交渉の場に就いて頂く事を希望している。だが帝都が制圧され、エレボニアの領地のほとんどが制圧された今の状況では例えエレボニア皇家である私達の嘆願に応えない可能性が非常に高いと思われる。よって、”不戦条約”によって”クロスベル問題”を緩和し、メンフィルと同盟関係である貴国にクロスベル帝国とメンフィル帝国に仲介して頂きたく参上した。」

アリシア女王の問いかけに対し、ユーゲント三世が静かな表情で答えた。



「仲介ですか……しかし話を聞く限り、既に貴国の領土のほとんどを制圧した二国が情状酌量の交渉に応じてくれるとはとても思えないのですが。」

「その件については恐れながら自分が説明させて頂きます―――」

アリシア女王の疑問に対し、レクター少尉が申し出てアリシア女王達にメンフィルとクロスベルに情状酌量を求める方法を説明した。

「リフィア殿下の専属侍女長であられるエリゼさんの兄であり、”Ⅶ組”のリーダー的存在でもあるリィン・シュバルツァーさんと三国の皇族の方々との婚姻によって三国の皇族がそれぞれ”縁”ができる事を理由に情状酌量を求める……ですか。確かにそれでしたら二国が情状酌量に応じる可能性があるかもしれませんね……」

「………ちなみに当事者であるリィン・シュバルツァーさんやアルフィン殿下を除いたリィンさんと婚姻を結ぶ事になる二国の皇族の方々はこの場にいらっしゃるのでしょうか?」

説明を聞き終えたクローディア姫は考え込み、アリシア女王はユーゲント三世達を見回して尋ねた。



「え、えっと、それは……」

「―――シュバルツァー卿のご子息であるリィン・シュバルツァー殿はメサイア皇女殿下のお母上であられるマルギレッタ皇妃に婚姻の許可を頂く為に現在メサイア皇女殿下と共にクロスベル帝国の首都、クロスベル市に入国中でございまして。また、ルクセンベール卿の妹であられるセレーネ嬢はルクセンベール卿に婚姻の許可を頂く為にバリアハート市にいらっしゃっている為、この場にはおりません。」

アルフィン皇女が答えに詰まっている中レクター少尉が静かな表情で説明し

(はわわっ!?)

(全部正直に答えているけど大丈夫なのかしら?)

(……この場合下手に隠すより、正直に答えた方が良いと判断したのかもしれないね。)

(ええ………嘘が判明し、それを理由に口利きを断られる訳にはいきませんものね……)

説明を聞いたトワは慌て、セリーヌの疑問に答えたアンゼリカの小声にラウラは頷き

(問題はリベールがそれに関してどんな反応をするかだね。)

(はい……その、ゲルドさん。”予知能力”で何かわかりませんか……?)

フィーの言葉に頷いたエマはゲルドに尋ねた。

(…………”試練”を越えれば大丈夫よ。)

(ふえっ……?し、”試練”……?)

(それは一体どういう事だ?)

ゲルドの答えを聞いたトワは戸惑い、ラウラは不思議そうな表情で尋ねたが

(……すぐにわかるわ。)

ゲルドは静かな表情で答えを誤魔化した。



「なるほど…………――――どうやらリウイ陛下とヴァイスハイト陛下の予想通りの展開になっているようですね。」

するとその時アリシア女王の口から予想外の話が出た。

「え…………」

「……それは一体どういう事でしょうか?」

アリシア女王の答えを聞いたプリシラ皇妃は呆け、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。

「その……実はメンフィルとクロスベルはエレボニアが滅亡を阻止する為に、リィンさんとアルフィン殿下達の婚約を理由に情状酌量を求める事まで想定しているんです。」

「ええっ!?そ、その……もしかしてリベール王国もその件について何か言い含められているのでしょうか……?」

「………………」

クローディア姫の答えを聞いて驚いたセドリック皇子は表情を青褪めさせ、ユーゲント三世は重々しい様子を纏って答えを待っていた。



「……私達リベールはメンフィルとクロスベルよりエレボニア皇族の方と”有角の若獅子”の皆さんに”試練”を受けて頂き、その”試練”を無事越える事ができれば貴国の嘆願を受けて頂きたいという要請をされ、その要請に私達は承諾しました。」

「し、”試練”ですか……?」

「という事は皇族の方々とこちらにいる学生達がその”試練”を乗り越えれば、貴国は私達の嘆願に応えて頂き、メンフィルとクロスベルは貴国の仲介に応えて頂けるのでしょうか?」

アリシア女王の話を聞いたプリシラ皇妃は戸惑い、ある事に気付いたレクター少尉は真剣な表情で尋ねた。

「はい。なお、アルノール家の方々に関しては代表者として一人でいいそうです。ただし、あくまで私達リベールの仲介に応えるだけで、リィンさん達との婚姻の件を理由に情状酌量を認める事に関しましてはその際の貴国の交渉次第と言い含められております。」

「……それでその”試練”とやらは一体どんな内容なのだ?」

クローディア姫の答えを聞いたユーゲント三世は表情を引き締めて尋ねた。

「エレボニアの滅亡を阻止する”意志”と”覚悟”を示してもらう為にメンフィル、クロスベル、そしてリベールが手配したある人物と戦って頂きます。そしてその人物に勝利、もしくはその戦いで私達が十分と判定できる程の”意志”と”覚悟”が証明できれば、貴国の嘆願に応える事になっています。」

「ええっ!?それじゃあリィンさん達も……!」

「……ちなみに何故二国がエレボニアの存亡をかけた試練に学生である彼らに受けさせる事にしたのか、理由は伺っていないのでしょうか?」

アリシア女王の答えを聞いたアルフィン皇女は驚き、レクター少尉は戸惑いの表情で尋ねた。



「ヴァイスハイト陛下から”Ⅶ組”の皆さんに対する”詫び”代わりだと伺っております。」

「え……」

「私達に対する”詫び”ですか?」

「なにそれ。」

「一体何に対する”詫び”なのでしょうか?」

クローディア姫の答えを聞いたエマは呆け、ラウラとフィーは不思議そうな表情をし、トワは戸惑いの表情で尋ねた。



「詳しい話は伺っておりませんが、かつて”Ⅶ組”の皆さんの成長に関わった者として皆さんの”大切な約束”を知らなかったとは言え土足で踏み込み、台無しにした”詫び”だと仰っておりました。」

「それってもしかして………」

「オルディーネの件か……」

(”黄金の戦王”だったかしら……随分と”器”が大きい皇帝みたいね。学生の”約束”を台無しにしただけでそんな機会(チャンス)まで与えるんだから。)

(ええ……でも私達にとっては願っても無い展開ね。)

アリシア女王の話を聞いたゲルドは目を丸くし、アンゼリカは複雑そうな表情をし、セリーヌの小声にエマは静かな表情で頷いた。



「父上、”試練”の内容を考えますと”アルノール家”の代表者は私が適任かと思いますので、恐れながら私がアルノール家の代表者として士官学院の皆と共に”試練”に挑まさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「うむ、元よりお前に頼むつもりだった。――――エレボニアの命運はお前に託す。」

「お願いします、オリヴァルト殿下……」

「兄上……僕達は兄上が無事”試練”を乗り越えられる事、信じています……!」

「お兄様……どうかご武運を……!皆さん、皆さんの御力、後少しだけお貸しください……!」

オリヴァルト皇子に視線を向けられたユーゲント三世は頷き、プリシラ皇妃達と共にオリヴァルト皇子に応援の言葉を送ったアルフィン皇女はラウラ達を見回して頭を下げ

「はいっ!!」

アルフィン皇女の嘆願に対し、ラウラ達は力強く答えた。



「私達やユーゲント陛下達は先に王都内にある”グランアリーナ”に向かいますので、準備を整えたら”グランアリーナ”まで来てください。そこに係の者達が皆さんの”試練”の相手の所まで案内する手筈になっております。オリヴァルト殿下、”グランアリーナ”までの送迎の車は必要でしょうか?」

「いえ……久しぶりのグランセルゆえ、この足で歩いて向かいたいので必要ありません。それに自らこの足で歩いてグランアリーナに向かうのはエステル君達と共に”武術大会”に挑んだ日々も思い出しますので。」

「フフ、そう言えばそんな事もありましたね。――――わかりました。それでは私達はグランアリーナでお待ちしておりますね。」

アリシア女王の言葉に対して答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたクローディア姫は微笑み

「女王陛下、恐れながら殿下達の”試練”のお相手を務める方の情報等を教えて頂く事はできませんか?」

レクター少尉はアリシア女王にある事を尋ねた。



「そのくらいでしたら構いません。――――”剣聖の後継者”。その方が殿下達の対戦相手になります。」

「ふええええっ!?け、”剣聖”ってまさか……!」

「リベールの”英雄”―――”剣聖”カシウス・ブライト。」

「やれやれ、参ったね………”剣聖”が相手だと私達では分が悪すぎるよ………」

「さすがにその子達が”剣聖”に勝つなんて、無茶だと思うのだけど。」

「いや、女王陛下は”剣聖の後継者”と仰ったからカシウス卿ではないだろう。」

「”剣聖の後継者”……言葉から推測するとカシウス准将の後継者のように聞こえますが……」

アリシア女王の答えを聞いたトワは驚いた後表情を青褪めさせ、フィーは真剣な表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情をし、セリーヌは呆れた表情で呟き、ラウラとエマは真剣な表情で考え込んだ。

「フム……何人か心当たりはいるが、恐らく”彼”だろうね。確かに厳しい戦いになりそうだが、当時の彼と戦ったエステル君達……いや、当時のエステル君達以上の実力をつけた君達と私なら勝機はあるかもしれないね。」

「オリヴァルト皇子はその人の事を知っているの?」

静かな笑みを浮かべて呟いたオリヴァルト皇子の言葉が気になったゲルドは不思議そうな表情で尋ねた。

「まあね。――――――入念な準備をしてから、覚悟を決めてグランアリーナに向かおう。」

その後準備を整えたオリヴァルト皇子達はグランアリーナに向かい、係の者達に案内され、アリーナに到着した。 
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