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大丈夫、な訳がない。

作者:箱庭
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序の章
  ハジマリ×シュッパツ

 
前書き
もう少しだけ、オリキャラのターン。 

 
 ふと瞼の裏に差し込む柔らかな光に、私は瞼をゆっくりと開けた。視線を窓の方へ動かせば、そこには窓際に佇むハオの姿。
 視線を動かした事で私が目を覚ましたと気付いたのか、腰に手を当てて仁王立ちしたハオは緩慢な動作で私の方へ顔を向けた。

「おう、おはようさん。良く眠れたか?」

 私はそれに頷くと、身じろぎして布団を剥がし、大きく伸びをした。
 欠伸を一つ噛み殺したところで、私は何か可笑しい事に気が付く。まっすぐ壁を見ていた視線を、ハオに向けた。

「……なんでいんの?!」

 私はそばにあった枕を投げ、勢いよく身を引く。枕は見事に標的(ターゲット)の顔面へと命中し、ぼふりと鈍い音を立てて床に落ちた。

「何も枕投げなくても良いだろ? 大体、もう六時なんだ、寝坊してたから起こしに来たんだよ」
「あ、ああなんだそういう……えっ、六時?!」
「おう、六時だ。ほれ」

 納得し脱力しかけたところに、聞き捨てならない事が舞い込んだ。慌てて周囲の時計を探ると、ハオに私の目覚まし時計を投げつけられた。
 危なげなく受け取って見た時計の針は、ものの見事に六時を指し示している。普段五時に起きる私。きっかり一時間の寝坊だ。

「もっと早く起こしてよ……」

 早く支度しろ、と修行着を投げつけるハオに、肩を落とした私の呟きは届かない様だ。

 私が着替えて1階へ降りると、空気を入れ替えたかのように真剣な顔をして腰掛けるハオが目に映る。テーブルには、水が一杯まで張られたコップが置いてあった。コップには、葉っぱが一枚浮かんでいる。
 ハオは私を見て、やっと来たかと呟いた。そして、私に椅子を引いて立つように促す。
 私はそれに従って、じっとコップを眺めた。

「……師匠、これ何?」

 そっと指で示して尋ねると、ハオは何も答えずにそこに練をしろとだけ言った。私は訝しげにハオを見ながらも、渋々練を行使する。
 すると、驚くべき変化が起こった。
 硝子が砕ける様な高い音がすると、中の水が消え失せ、コップが割れる。
 辺りには一時水蒸気が漂い、コップは破片も残さず硝子の山へと変わり果てた。
 しん、と静まり返った部屋の中、暫らくするとハオが一人鼻で笑う。面白いじゃねぇか、と呟いたのが確かに聞こえた。

「ユリカ、どうやらお前は特質のようだな。おめでとう」
「は? とく……え、何???」

 豪快に笑い拍手をするハオに、私は呆然と疑問符を浮かべる。それと同時に特質という言葉に、先日説明された念能力の系統を思い出した。
 もしかしなくても、今ので系統を調べ終わったのだと理解して、やはり唖然とした。

「えっ、今ので終わり?」
「おう、終わりだ。にしても特質かあ、変わりものってことだな」

 腕を組み、一人でうんうんと納得しているハオに置いて行かれるまま呆けていれば、思い出したようにハオが棚の引き出しを漁り始めた。

「あ、あったあった。ほらよ、これ手首に巻いとけ」

 そう言って私に投げ渡したのは、幾何学的な文様の入れられたミサンガ程の腕輪だった。話を聞けば、約束を破ると強制的に千切れ、それがハオに伝わるらしい。因みに守ってる間は何をしても千切れ無いそうだ。
 私が腕輪をつけると、ハオは以下二つの制約……約束事を取り付けた。私は期間内中、ずっとそれを守らなければならなくなる。
 一つに、試験中でも基礎の修行を続けること。二つ目は、己に充分な力がつくまで発を他者に発動させないこと。
 二つ目の意味が良くわからないが、ハオ曰くそのうち直感する時が来る、らしい。とりあえず信じて待ってみようと思う。
 息を付く音が聞こえ、その方向を見ると、ハオが深く椅子に腰掛け背もたれに体重をかけて、天井を仰いでいた。

「これで俺がすべき事はした。特質の修行なんざ、放出系の俺にはわかんないからな」

 ハオはここで一度言葉を区切り、私を見据える。これまで見た事が無いんじゃないかって程に真剣な目で、そっとテーブルに人差し指をつけた。

「……いいか?遅くとも一週間後にはここをでろ。もうハンター試験には応募してあるから、お前は支度をしてこの国を出るだけでいい。地図はやるから、それを頼りに行くといい」
「……はい、師匠。お世話になりました」

 雰囲気に押されながらも返事をした私は、深く礼をして二階へと続く階段を上がる。
 普段の私なら、今までの私なら、こんなに悲しくならなかったかもしれない。案外この場所に情が写ってしまったようで、ぽろぽろと熱い液体が頬を伝う。アームウォーマーでそれを拭いながら階段を駆け上がった。

↑↓

said ?

 とある神の使い、そう、所謂天使ってヤツね。そいつは、ものすごい面倒くさがりだった。
 あまりのものぐさな態度に、神が面白がって神格の一歩手前まで位をあげるほどに。
 それでも仕事だけはスピィーディーに、なおかつ丁寧にこなしていくんだから、そいつはいつでも引っ張りだこで、休む暇が無いんだと。
 で、今。今ね、なう。
 そ い つ に 休 暇 が 降 り ま し た 。
 いやー、こんなに嬉しいことは無いよね。これで漸く肩の荷が降りるってもんだよね。

 ……あ、今ので気づいたと思うけど、その引っ張りだこな天使って俺の事ね。
 なんかこの前異世界転生させた女の子と過ごせって話になってるけど、俺ロリに興味無いし。てかその子精神年齢は人間で言うと成人したかしないかくらいなんだから、手なんてかからないと思うしぶっちゃけ休暇だよね。
 報告とかもしなくて良いみたいだし? もう心の中はパーリナイ! つって、まあ今はそんなウキウキ気分で空路からその子の部屋に移動中。
 てかこの世界物騒過ぎない? やばくない? さっきもなんか人喰いそうな鳥に襲われかけたし。まあ俺強いから返り討ちにしたけどね。殺さないよ? 俺天使だし。殺生はね、流石にね。……とか言って俺普通に肉も魚も食ってたわ。ダメだねこりゃ。まあ神でも食べるしね。うん。

「とと、みーっけた」

 空からふと覗いてみたら、例の子を発見した。え、てか何あれ超順応してない? 強くない?
 まあ、と、とりあえずは本人見つけたし、なんか進展するタイミングでちょっとあの子の師範的な人の記憶弄って登場しちゃえば良いよね。
 ……とか考えてたらなんか進展してるし。え、なんであの子泣いてるの?ああなるほどなるほどそういう事ね、あー、了解了解。
 じゃ、とりあえずここら一帯の人の記憶弄らせてもらって……あー、この作業メンド。
 とりあえずなんかいつもの通り手紙でも入れておいてあげるかな、よいしょっ……と。

 あれ、ナニコレ引き出し開かない。ガタガタしてるのに開かない。なにこれ。
 あっこれやばい奴じゃない?あの子戻ってきちゃうやつじゃ……。

said out

↑↓

「っぎゃあああああああああっっ?!」
「ぐぁっっ!!」

 泣きながら扉を開けたらイケメンが居た。前髪で目を隠した今風の金髪のイケメンがいた。何このシリアスを壊すような展開。とりあえず私は何がなんだか分からなくて叫びながら飛び膝蹴りをかました。
 見事にイケメンの鳩尾に吸い込まれた。吹っ飛んだイケメン。なにこれ。なにこれ!!!
 突然の出来事に脳がついていけるわけも無く。どうしたどうしたと駆け上がってくるハオに泣きついていた。

「師匠!! 部屋に変なイケメンがいる!!! なにあれ!!」
「なにって……あっ、てめサリエルまた勝手に上がり込んでたな」

 不思議そうに目線を動かした後イケメンに怒鳴りつけたハオ。っていうかサリエルって天使の名前じゃね? えっ、どういうこと?
 私がぽかんとしていれば、サリエルと呼ばれたイケメンはハオに土下座をして平謝りしている。気が済んだのか、ハオはほんとお前らは……と文句を垂れて出ていった。待って、なんで私も込みなの?
 閉じられた扉を眺め、恐る恐るイケメンに顔も向けると、目が見えていなくてもわかるほど怒気に孕んだ表情をしていた。今にも癇癪を起こしそうだ。

「くっそ、なんで俺が土下座なんて……!」
「……で、誰?」

 物凄い音を立ててベッドを殴った彼に、ベッドの安否を心配しつつ尋ねる。
 イケメンは心底驚いたような顔を一瞬した後、何か思い出したようにあそっか見えてなかったんだ、と呟いた。

「まあいいや、勿論覚えてるよね? 俺だよ俺、サリエル」
「覚えてないです」
「即答?!え、説明めんどいんだけど」

 ドヤ顔をして自信アリげにいう彼に抱いた第一印象は、なんだこの人。
 がくりと項垂れてベッドに顔を埋めた彼に、それをしたいのはこっちだ、と言いたくなる。

「とりあえず、出る支度したいんで帰ってもらっても?」

 私は以前誕プレで貰ったトンファーの片割れを両手で握りしめ、にっこりと最大限の笑顔で言った。 
 

 
後書き
オリキャラ四行紹介

・サリエル
天使奴の金髪イケメン。前髪で目の色がわからない。赤いタンクに白い長袖のレイヤードTシャツ。黒いカーゴにグラディエーター履いててリュック装備。身長180のものぐさ野郎。
 
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