龍が如く‐未来想う者たち‐
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冴島 大河
第二章 裏切者
第三話 信じていた者
追っ手を倒し、訪れたのはピンク通り。
夜の顔だけではなく、昼の顔も併せ持つその地に、足立の事務所はある。
ビルの階段を上り、3階にある事務所の扉に手をかける。
簡単に扉が開いたかと思えば、プツンと糸が切れたかの様に足立が前のめりに倒れこんでしまう。
「組長……!!」
冴島たちを見て駆け寄ってきたのは、麻田だった。
秋山も心配そうに見つめるが、冴島の方へと歩み寄る。
「冴島さんは、大丈夫ですか?」
「俺は心配いらん。追っ手も撒いたし、もう安心や」
「そうですか。助けていただき、ありがとうございます」
「礼はいらんわ。それより、足立の治療をしたってくれ」
秋山は頷くと、麻田に手を貸し足立をソファーに寝かせた。
治療されている足立を横目に、事務所の中を見て回る。
何か情報が欲しかった。
今の東城会にまつわる事、欲を言えば桐生の情報を。
だが、そう簡単に見つかるはずがなかった。
部屋の奥に見えた、少し大きめの金庫。
大事な物は、そこにしまい込んでいるのだろう。
そう考えたら、少し厄介だった。
聞き出すのも怪しまれるし、かといって強引にやる訳にもいかない。
悩みにうな垂れていると、突然背後から声をかけられる。
立っていたのは、麻田だった。
「冴島さん、組長が目を覚まして冴島さんを呼んでくれと……」
「そ、そうか……」
気が動転したまま足立のもとに向かうと、ソファーで少し苦しそうに座る姿が見えた。
行方不明の間に何があったのか?
そもそも何故行方をくらませたのか?
答えはもう、本人に訊くしかない。
「冴島さんにお礼を申し上げたくて、すみませんお呼びして」
「構わん。俺も聞きたい事あるんや」
「お先に言ってください。私の分は後で大丈夫なので」
そう促され、もう言うしかなかった。
今更引き下がれない。
「行方をくらませたって聞いた。何処におったんや?」
「何処に、ですか……」
言い淀む足立の顔を、冴島は見逃さなかった。
「東城会の本部に行っていました。ちょっと、会わなければいけない人がいたので」
「誰や?」
またもや、口を閉じてしまう。
何かを隠しているのは、明確だ。
だが誰を隠しているのかわかるはずも無く、それ以上詮索する事も出来なかった。
「冴島さん、6代目が誘拐されました」
突然話が変わったかと思えば、それは大吾の誘拐話に思わず驚く。
一瞬硬直し、口を開く事も出来なかった。
「何でや……誰に……」
大吾には、真島が付いていたはずだった。
その真島を打ち負かす男など、そうそう居ない。
だからこそ、盲点だった。
「犯人は、真島さんです」
真島が犯人。
そう思っていなかったからこそ、盲点だったのだ。
「真島さんは、裏で宮藤と繋がっていたようです」
「あの時からか……」
大阪で宮藤が接触してきた時、真島は迷っていた。
吐き捨てて帰ったあの言葉も、虚勢だったのだろうか。
真島の裏切り。
それは冴島にとって、ショックなニュースだった。
「冴島さん、手を組みませんか?」
「何やと?」
「一時的な共闘の為に、手を組みたいのです。真実を見極めるために、一緒に6代目を助けに行きましょう」
真実を見極める。
それは真島が、本当に裏切ったかどうかを見極めようという誘いだった。
隣を見ると、やる気満々の麻田と静かに俯く秋山の姿が。
見極めるにせよ、6代目は絶対に助けださなければならなかった。
「あてはあるのか?」
「それは……」
足立が話そうとした瞬間、冴島の胸ポケットから何かの音が鳴る。
少し驚きながらも胸ポケットに手を突っ込み、取り出したのはスマホだった。
「携帯持っとらんと、何かと不便やろ?」
そう言った真島が渡してくれた物だった。
慣れない手つきでスマホを触ると、冴島に少し笑みが溢れる。
「居場所がわかった。東城会の本部や」
灯台下暗し。
当たり前に存在する場所だからこそ、あまり注意の向かない地だった。
後書き
次回5/28公開
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