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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第100話

~アイゼングラーフ号~



「―――止まれ!」

「あ……!」

「母様!!」

リィン達が一際豪華な部屋の車両に辿り着くとそこにはソファーに座っているイリーナ会長と、イリーナ会長の傍には猟兵がいた。



「―――遅かったわね、アリサ。発車した列車に飛び乗るなんて強引かつ無計画なことをするとは思わなかったけど……まあ、ここまで辿り着いただけでも及第点としておきましょう。――――それとリィン・シュバルツァー君。まだまだ未熟な娘だけど、未来のクロスベルにラインフォルトグループが処罰されない為にも今後も娘とは”良い関係”でいてね。何なら学院退学後か内戦終結後にアルフィン皇女殿下や他の女性達と一緒にアリサと籍を入れてもいいわよ。」

猟兵が傍にいるにも関わらず全く取り乱さずに立ち上がっていつもの調子で話し始めたイリーナ会長の様子にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「フフ、こんな状況でもイリーナさんはイリーナさんか。」

「せ、せっかく助けに来たのにその言い草はないでしょ!?しかもさり気なくこんな状況で私とリィンの結婚を勧めるとか何を考えているのよ!?」

「というかどうしてイリーナさんが俺とアリサの関係や救済条約の件を含めた色々な事を知っているんですか……」

「え、えっと……アリサさんのお母様であるイリーナ会長に結婚を許されてよかったですわね、お兄様……」

「フフ、ある意味大物ですわね……」」

アンゼリカは苦笑し、アリサは信じられない表情で声を上げ、リィンは疲れた表情で指摘し、セレーネは苦笑しながらリィンを見つめ、シグルーンは感心した様子でイリーナ会長を見つめた。



「別に助けに来て欲しいだなんて頼んでいないと思うけど……まあ、よく無事だったわ。それなりに頑張ったみたいね。」

「………あ……」

「イリーナ会長……」

「フン、何を悠長に話している。この女を傷つけられたくなければとっとと武器を捨ててもらおうか?」

そして猟兵はイリーナ会長に銃口を向けたがイリーナ会長は恐れる事無くめんどくさそうな表情で猟兵を睨んでいた。



「か、母様っ……!」

「―――よろしいのですか、その方を傷つけて。状況を考えると依頼者には許可されてないと思うのですが?」

アリサが心配している中、シグルーンは静かな表情で問いかけた。

「フン、我らに与えられた任務はあくまでこの女の”確保”だ。殺しさえしなければ傷つけようが多少は構うまい。」

「っ……」

「貴様……」

「………………」

猟兵の言葉を聞いたアリサとリィンは猟兵を睨み、ゲルドは静かな表情で猟兵を見つめていた。



「このまま一緒にルーレまで来てもらうぞ。貴族連合(クライアント)がお前達の身柄を押さえたがっているようだからな。大人しくしてさえいれば、まもなく――――」

「確かに、あと少しでルーレ市に到着するわね。戯れはこれくらいにしておくとしましょう。――――”いいわよ、シャロン”。」

「承知いたしました。」

「!?」

「へっ……」

突如聞こえて来た女性の声に猟兵とアリサが驚いたその時天井からワイヤーが現れて銃を持つ猟兵の腕ごと拘束し

「なっ―――!?う、うおおおおおっ!?」

更にワイヤーは一瞬で猟兵の全身を拘束して天井へと釣り上げ、同時にシャロンがリィン達の目の前に着地した!



「一丁あがり、ですわね♪」

リィン達の前に現れたシャロンはリィン達に微笑んだ。

「あ……!」

「シャ、シャロン!?」

「やれやれ、いいタイミングでお出ましね。」

「フフ、さすがは”執行者”と言った所ですか。」

リィン達が驚いている中、サラ教官とシグルーンは苦笑しながらシャロンを見つめた。



「お久しぶりです、皆様。とはいえ、ほんの数日ぶりですけれど。それとゲルド様。予言、ありがとうございましたわ。ゲルド様の予言のお蔭で、軟禁されている会長の居場所を割り出す際に凄く参考になって助かりましたわ♪」

「……そう。よかった……」

シャロンに微笑まれたゲルドは静かな笑みを浮かべて答えた。

「ば、馬鹿な……!いったいどこから!?この列車に入り込む隙など―――!」

するとその時拘束された猟兵が信じられない表情で指摘した。



「クスクス……”最初から車両におりましたが”?ゲルド様のお蔭で、発車する前に潜りこめましたわ。」

シャロンの答えを聞いたリィン達は猟兵と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「どうやら俺達とは別にイリーナさんを助け出そうとしていたみたいですね。」

「そして完全に気配を絶って車内で気を窺っていたわけか。フフ、この主人にしてこのメイドありといった所かな。」

「さすがはシャロンさんですわね……」

「ま、まったくもう……」

リィンやアンゼリカ、セレーネは苦笑し、アリサは呆れた表情で肩を落とした。



「さて、そろそろルーレに到着するわ。RF本社の真下に停車して、そのままビルを制圧するわよ。シャロン、操作を頼んだわ。」

「お任せ下さいませ。」

その後列車はシャロンの操縦によってRFビルの地下の貨物ホームに到着した。



~RFビル貨物ホーム~



「ここがRF本社の貨物ホームか……」

「ええ、ルーレ市の基部にある鉄道路線と直結しているわ。普段は製錬された鉄鋼なんかの運搬に使われているけど……」

リィン達が列車からホームに降りると人形兵器達がリィン達に近づいてきた。



「結社の”人形兵器”か……!」

「前に鉄鉱山でも似たような物が放たれていたが……叔父上………面倒なものを。」

「シャロン、母様をお願い!」

「お任せ下さい、お嬢様……!」

そしてリィン達は協力して人形兵器達を僅かな時間で撃破した。



「よし……!」

「ふふ、この程度の敵など、恐れるに足らんな。」

「皆さん、怪我はないようですわね。」

「でも、本社ビルであんなものを運用してるなんて……!」

「……どうやら好き勝手にやってくれているようね。あなた達はこのまま非常用エレベーターからビルの制圧を開始なさい。」

イリーナ会長の指示を聞いたリィン達は意外そうな表情をしてイリーナ会長に注目した。



「イリーナさんは……?」

「どうせまっすぐ向かっても取締役の元には行けないでしょう。まずはセキュリティを無力化して、会長室の警備を丸裸にするわ。シャロン、護衛を。」

「かしこまりました。」

「母様、シャロン……!」

「こちらは心配しなくていいわ。私はラインフォルト社の会長として成すべき事をしに行くだけ。貴方達は貴方達の”役割”を成し遂げなさい。」

「あ……わかったわ。そっちも気を付けて。全てが終わったら、改めて話をさせてもらうから。これまでと………そしてこれからのことを。」

イリーナ会長の言葉に頷いたアリサは決意の表情でイリーナ会長を見つめた後微笑んだ。



「ふふ………せいぜい力を尽くしなさい。」

「それでは、皆様。またすぐにお会いしましょう。――――我が”友”達よ!今こそ、私に御力を!”エウシュリー”!!」

イリーナ会長の後にリィン達に会釈したシャロンはその場で叫んだ。すると異空間からエウシュリーちゃん達が現れた!


「ええっ!?」

「ハアッ!?」

「天使……?」

「て、天使のメイド……?」

「しかも4人共凄まじい魔力をその身に秘めていますわね……」

「ちょっとシャロン!?そのメイド達は確か……!」

「レグラムの戦いの時にシャロン殿が呼び出した謎のメイド達か……」

エウシュリーちゃん達の登場にリィンとサラ教官は驚き、ゲルドは呆け、セレーネは戸惑い、シグルーンは真剣な表情で呟き、アリサは表情を引き攣らせ、ラウラは苦笑した。



「私達に何か御用でしょうか~?」

「はい。ビルの制圧を少しでも早める為に少々皆様の御力を借りてもよろしいでしょうか?勿論”報酬”もご用意していますわ」

エウシュリーちゃんに尋ねられたシャロンは微笑みながら問いかけ

「………………」

「何をくれるんですかー?」

「ズルズル……私達は……モグモグ……お金では動かないわよ……?」

シャロンの言葉が気になったエウクレイアさんは興味ありげな表情をし、アナスタシアは首を傾げ、ブラックエウシュリーちゃんは手に持った容れ物に入っている麺らしき食料をフォークで食べながらシャロンに指摘した。



「うふふ……エウシュリーちゃんには”結社”より”給与”の代わりに頂いた”ゼムリアストーン”を加工した新型の掃除機を……ブラックエウシュリーちゃんとアナスタシア様にもそれぞれ”ゼムリアストーン”で加工したやかんとバケツを………そしてエウクレイアさんにも”ゼムリアストーン”を加工した鉄扇を差し上げますわ。」

「なんです……って……!?」

シャロンの答えを聞いたブラックエウシュリーちゃんは目を見開き

「ホントですか~?前にウィル様に貰った掃除用具は壊れちゃって、今は予備を使っていましたから助かります~♪」

「………………」

「エウクレイアさんも以前私達同様『ウィル様に頂いた鉄製の扇子を壊してしまいましたから欲しい』って言ってます~。と言う訳でシャロンさんの依頼、受けさせて頂きますね~。それで私達はどこからお掃除をすればよろしいのですか~?」

アナスタシアは目を輝かせ、静かな笑みを浮かべるエウクレイアさんの意志を翻訳したエウシュリーちゃんは箒を取りだしてシャロンに尋ねた。



「うふふ、こちらですわ。――――時間を取って頂き、申し訳ございません、会長。それでは参りましょう。」

「ええ。……ところでそのメイド達は使えるのでしょうね?」

シャロンに促されたイリーナ会長は突然の出来事に取り乱す事無くエウシュリーちゃん達を見回した後静かな表情でシャロンに問いかけ

「はい♪そちらの方達は私を凌ぐ使い手ですから、護衛としては文句なしですし、それぞれメイドスキルも勿論あり、見習いの方もいらっしゃいますが一部の方達は家事に関してはこの私をも凌ぎますわ♪」

「そう……ならいいわ。―――それとシャロン、後でそのメイド達とラインフォルト家との長期契約の交渉を頼むわ。家事全般や家の管理をそのメイド達に任せる事ができれば貴女に秘書としての仕事を専念させる事ができるから、そちらの方が効率がいいし護衛も務められるのならこちらとしても色々と助かるわ。長期が無理ならラインフォルトグループを完全に建て直すまでの間でもいいわ。」

シャロンの説明を聞いて納得した後指示をした。

「え”。」

イリーナ会長のシャロンへの指示を聞いたアリサは表情を引き攣らせて石化したかのように固まり

「かしこまりました。―――それでは私達は一端失礼いたします。」

シャロンは会釈をした後イリーナ会長やエウシュリーちゃん達と共にその場から去って行った。



「……ハッ!?こら―――――!ラインフォルト家で雇う使用人達の事で家族の私に相談も無く、勝手に話を進めないでよ――――――ッ!!」

そしてイリーナ会長達がその場からいなくなった後我に返ったアリサは声を上げ、その様子を見たリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「ったく、本当に何なのよあのメイド達は……」

サラ教官は疲れた表情で溜息を吐いた。

「ハハ………ああいう謎の所も相変わらずだな。さてと。お次は私の叔父―――ハイデル・ログナーの拘束だ。みんな、引き続き力を貸してくれたまえ!」

一方突然の出来事を呆けた様子で見守っていたアンゼリカは苦笑しながら呟いた後リィン達を見回して号令をかけ

「はいっ!!」

アンゼリカの号令に力強く頷いたリィン達はビルの制圧を開始した!



~同時刻・RF本社ビル23F・会長室~



「……な、なんだと!?アイゼングラーフが奪われた!?しかもイリーナ会長がこちらに向かってきているだとぉ!?とっとと取り押さえるがいい!」

一方その頃アイゼングラーフ号が奪われた報告を聞いたハイデル取締役は信じられない表情で声を上げた後指示をした。

「そ、それが拘束しようとしてもメイド達に邪魔されてしまい……!いかがなさいますか?」

ハイデル取締役の指示を聞いた通信相手の兵士は戸惑いの表情で報告した後指示を促した。



「い、いかがも何も……至急警備レベルを上げろ!何人たりとも絶対にこの部屋に近づけさせるな!」

「ハ、ハッ!」

ハイデル取締役の指示を聞いた兵士は慌てた様子で答えて通信を切った。

「くっ、あの忌々しい姪が……大人しくメンフィルで働いていればいいものを……わざわざ戻って来て余計なことばかりしおって!そ、そうだ。黒竜関にいる兄上に連絡を……!」

通信を終えたハイデル取締役はアンゼリカの顔を思い浮かべて唇を噛みしめた後ある事を思いついて明るい表情をしたが

「……だめだ、今から応援を呼んでも間に合わん!こ、このままでは……!」

すぐに援軍が間に合わない事を悟り、頭を抱え込んだ。

「クク、こうなったら――――!」

そして自分にとっての”切り札”を出す事を決めたハイデル取締役は口元に笑みを浮かべた。



その後リィン達はビル内にいる人形兵器達を撃破し、セキュリティを解除しつつ上へと目指し、ついに会長室に突入した。



「フフ………よく来たね、諸君。」

「ハイデル取締役……」

「ようやく会えたね、叔父上。」

リィン達が会長室に突入すると外の景色を見つめていたハイデル取締役が余裕の笑みを浮かべて振り向いた。



「フフ……アリサ君は久しぶりだ。そして、そちらは士官学院の学友とのことだったな。アポイントも無しに少しばかり無礼ではないかね?」

「突然の来訪、失礼します。ですが今日はどうしても外せない用事がありまして。」

「ほう……?」

「叔父上……時間が惜しいから単刀直入に言わせてもらうよ。貴方はそのデスクに座れるような器じゃない。とっととアリサ君の母上にお返しした方がいいだろう。」

「…………ほう…………シスターの格好をしている割に挑発的な事を言ってくれるな?」

アンゼリカの忠告を聞いたハイデル取締役は怒りの表情でアンゼリカを睨みつけた。



「内戦に乗じてトップを軟禁し、帝国を支える大企業を乗っ取り……私的な住居すら土足で入り込む帝国貴族とも思えぬ厚顔無恥さ。―――私はね、叔父上。これでも怒っているんだよ。父に対する感情とはまた別にね。」

「アンゼリカさん……」

「さっさとそこを退きたまえ、ハイデル・ログナー。これ以上身内の恥を晒すなら、私も容赦しない。」

「アンゼリカ―――やはりお前は兄上そっくりだなぁ。そういう意味も無いプライドで自らを縛るようなところなど特に。だから発足した貴族連合の主導権争いにも参加できないのだ。由緒正しい四大名門の一角として何とも情けない限りじゃないか?」

アンゼリカに命令されたハイデル取締役は呆れた表情で指摘した。



「それに関しては、父もあなたにとやかく言われたくないだろうね。―――父とはこれからきっちりと決着をつけるつもりだ。ここで、あなたを拘束した後でね。」

「フン、揃いも揃って……」

「……ハイデル取締役。この場は退いてもらえませんか?ラインフォルト社を――――そしてルーレのあるべき姿を取り戻す為に。貴方だって、第一製作所の責任者としてRFの一角を担ってきた筈でしょう!?」

「……申し訳ないが、アリサ君。もはや、そのような甘い考えではこの内戦下の帝国は生き抜けないのだよ!」

アリサの言葉にハイデル取締役が声を上げて答えたその時ハイデル取締役は指を鳴らした。すると突如大型の人形兵器がリィン達の目の前に現れた!



「と、突然現れましたわ……!」

「一体どうやって……」

「また人形兵器……!!それもかなりのデカブツだわ!」

「―――何かが”いる”とは思っていましたが……」

「対象者8名確認――――殲滅モードに移行する。戦闘力解析―――”シグレ”を展開。」

リィン達と対峙した人形兵器はリィン達の周囲に小型の人形兵器を展開した!



「囲まれたか……!」

「その太刀と構えは―――まさか!?」

「……どうやら”八葉一刀流”の”型”が組み込まれているみたいだな。」

「……!」

「くっ、叔父上らしからず妙に余裕があると思えば……!」

予想外の強敵の登場にリィン達は厳しい表情をした。



「ハーハッハッハッハ!私を愚弄するのもこれまでだ!我が姪よ、兄上には不幸な事故だったと伝えておこう!」

「”シグレ”の展開を完了。”レジェネンコフ零式”―――対象者の撃滅を開始。」

「来る……!―――来て、ミルモ!!」

「負けるわけにはいかない!―――行くぞ、みんな!!」

そしてリィン達は戦闘を開始した! 
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