英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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3章~金の道、銀の道~ 異伝~遥かなる記憶 第2話~
………ごめんな………ごめんな………ケビン………でもお母さん………もう………疲れてしもうたんや………だから………だからな…………ケビン………このまま………お母さんといっしょに………
~紫苑の家~
「!!!はあっ、はあっ、はあっ、はあ………………また、か。くそっ、あれから何年経ったと思ってんねん……よりにもよって姉さんのせっかくの晴れの日に………こんなんじゃ、いつまで経っても心配かけてしまうだけやんか………」
夢にうなされ、起き上がった少年は息を切らせた後、舌打ちをした。
「………そんなのいまさらだと思うけど………」
「!!!」
誰かの声に気付いた少年が声が聞こえた方向を見上げると、そこには掃除用具を持った少女が少年を見つめていた。
「リ、リース………脅かすなや!いつからそこにいたんや!?」
「さっきから、ずっと。礼拝堂の掃除当番なのにケビン、起きてこないから。見に来たらうなされてたからゆすって起こしてあげた。」
少年――ケビンに尋ねられた少女――リースは淡々とした口調で答えた。
「そ、そっか………はは、なんか心配かけてしもたみたいやな。」
「べつに………いまさらだし。ケビンがヘタレなのは今に始まったわけじゃないもの。」
「ぐっ………コノヤロ………まあいい、せっかくのルフィナ姉さんの晴れの日や。朝飯に遅れへんよう、とっとと済ますとしようか。」
「………うん。」
そして2人は礼拝堂に向かった。
「……………」
礼拝堂に向かうとそこには一人の娘が地面に膝をおって、強く祈りを捧げていた。
「姉さん………!?」
「………姉さま………」
「おはよう。リース、ケビン。ふふ、早いのね。2人で掃除当番かしら?」
「そうだけど……」
「な、なんでこんな早く起きてんねん?ちゃんと寝てへんと旅の途中でへばってしまうで。アルテリアってとこ、ここからかなり遠いんやろ?」
自分達に気付いて優しい微笑みを浮かべられて尋ねられたルフィナにリースは戸惑い、ケビンも驚いた後尋ねた。
「ふふ、そうなんだけどね。しばらくは、ここでお祈りを捧げることもできないから………まとめてお祈りしようと思って早く起きちゃったの。」
「なんやそれ………」
「ふふ………姉さまらしい。………でも………そんなに忙しくなりそう?めったに帰って来れないほど………」
ルフィナの話を聞いたケビンは呆れ、リースは微笑んだ後、不安そうな表情で尋ねた。
「うん………ごめんね。従騎士になったばかりだし、最初のうちはそれこそ寝る暇もないくらいだと思うの。お仕事に慣れてきたら少しは余裕も出来ると思うけど。」
「そっか………」
「………ったく、だったら尚更、今のうちに休んどけばいいやん。今からでも、朝飯まで寝といた方がええんとちゃうか?」
「………ケビン………冷たい………」
「へ………?」
自分の言葉を聞いて寂しそうな表情をしたルフィナを見たケビンは呆けた。
「お姉ちゃんが最後の一時を一緒に過ごそうとしているのに邪魔者あつかいするだなんて………ううっ………育て方間違えちゃったかしら。」
「じゃ、邪魔なんて一言も言うてへんやろ!?それに世話にはなったけど育てられた覚えはないし!」
「………ケビン、素直じゃない。本当は姉さまと話せて嬉しいくせに。」
寂しそうな表情で語るルフィナにケビンが慌てて言っている所をリースは静かな口調で呟いた。
「なっ………!?」
そしてリースの言葉を聞いたケビンは驚き
「あらあら、ほんと?そっかぁ………うふふ、男の子だもんね。つい照れ隠しに素っ気なくしちゃうのか~。」
「反抗期まっさいちゅう。」
ルフィナは喜んだ後ケビンをからかい、リースも続いた。
「ぐっ………このマイペース姉妹が………最初っから最後までいたいけな少年の心をもてあそびやがって………」
2人にからかわれた事に気付いたケビンは唸った後、ふてくされた表情をした。
「ふふ………あれから5年になるのか。そうだ、列車に乗る前に街でチョコレートを買おうかな。もちろん、クインシー・ベルのね。」
「あ………」
懐かしそうな表情で語ったルフィナのある言葉にケビンはアルジェント姉妹との出会いを思い出した。
「………今だと新作のミントチョコがおすすめ。コクがあるのにあと味がスッキリしてていい仕事してる。」
「ふふ、それも美味しそうだけどやっぱり定番のミルクチョコレートかな。私達の想い出の味だしね。」
そしてリースの助言に微笑んだルフィナはケビンに優しい微笑みを向けた。
「お、想い出の味って………」
「……………………ケビン、やらしい。」
ルフィナの言葉を聞いたケビンは顔を赤らめ、その様子をリースは表情をわずかに不機嫌そうにした後、ジト目でケビンを見つめて呟いた。
「な、なんでやねん!?」
リースの言葉を聞いたケビンは慌てた表情で叫んだ。
「ふふっ………私達みんなの想い出の味よ。あれから色々あってケビンがここの子になって毎日みんなで一緒に過ごして………ここで過ごした想い出は私のかけがえのない宝物だわ。」
「姉さま………」
「ルフィナ姉さん…………………だったら何で騎士なんかになったんや。どう考えても姉さんに似合ってるとは思えへんのに………普通のシスターやったらここから街の礼拝堂にだってじゅうぶん通えたハズやろ………それに姉さん、たまたま街に来ていたイーリュンのシスターからわざわざ習った治癒の秘印術まで使えんねんから、イーリュンのシスターになったら各地を飛び回って傷ついた人達を癒せるし………どうせならそっちの方が騎士よりも危険が少ないし、姉さんに似合っているのに………」
「…………………………………」
「………ごめんね。でも………私には適性があるらしいから。イーリュンのシスターになる事と迷ったけど、どうせだったらそれを両方活かしてみんなの役に立ってみたいの。ふふ、すぐに落ちこぼれて出戻ってくるかもしれないけど。」
寂しそうな表情で呟いたケビンと黙っているリースにルフィナは申し訳なさそうな表情で答えた後、苦笑した。
「ふ、ふん………姉さんみたいなお人好しにそんなハードな仕事が務まるとも思えへんしな………いつでも出戻ってくればええ。」
「…………………」
そしてケビンの次の言葉にリースは何度も頷いた。
「ふふ、そうなった時は優しく迎えてくれると嬉しいな。さてと―――掃除をするなら私も一緒に手伝わせてね?どうせなら、隅から隅までピカピカにしちゃいましょう。」
その後ルフィナはケビン達に見送られ、七耀教会の総本山、アルテリア法国へ旅立った…………
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