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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第93話

~ケルディック・元締めの家~



「皇女殿下、その服装……聖アストライア女学院の制服ですよね?それにエリスもどうして一緒になって……」

それぞれが身に纏っている聖アストライア女学院の制服を見たリィンは目を丸くした。

「ええ、お忍びで元締めにご挨拶に着たところでして。エリスには申し訳ないと思ったのですが、付き合ってもらったのです。こうして一緒に行動できる機会や自由に出歩ける機会はもうそれ程残っていませんし……」

「姫様…………そんな、私の方こそ姫様に”友人”として一緒に来てほしいと誘われてとても嬉しかったです。」

「ありがとう、エリス。」

「………………」

二人の会話からエリスがメンフィルがエリスに下した”処分”によってアルフィン皇女の付き人を既に辞めている事や近い将来レンの専属侍女を務めなければならない事、そして戦争回避条約によってアルフィン皇女は一生メンフィル帝国領に過ごさなければならない事を思い出したリィンは複雑そうな表情をした。



「……あの、リィンさん。もしよかったらこの後……」

「はい?」

「………………」

アルフィン皇女に見つめられたリィンは不思議そうな表情をし、エリスは目を丸くして二人の様子を見守っていた。

「い、いえっ。何でもありませんわ。」

「(皇女殿下、何か言いたい事があるみたいだけど……)皇女殿下、何か気がかりがあるなら是非おっしゃってください。俺が力になれることなら何でもお手伝いしますし。」

「ほ、本当ですかっ?……その、実はわたくし、大市というものをちゃんと見た事がなくって……できればこの機会に色々と見て回りたいのですけど。」

「姫様……そのような事でしたら私に仰って下さればお共しますのに……」

アルフィン皇女の頼みを聞いたエリスは目を丸くして言ったが

「気持ちは嬉しいけど、わたくしと一緒にいる事で起こる可能性がある危険にこれ以上エリスを巻き込みたくないのよ……それにエリスに付き人のような真似をさせていたら、またメンフィル帝国に怒られちゃうしね……」

「それは………………」

寂しげな笑みを浮かべるアルフィン皇女の言葉を聞き、辛そうな表情で黙り込んだ。



「………………(女学院の制服を着てるなら何とか騒ぎにならずに済むか。)わかりました、だったら俺が案内させていただきますよ。勿論エリスも付き合うだろ?」

「ほ、本当ですかっ?ふふっ、それではあとでちょっとだけお付き合いください。」

「兄様……はいっ!フフッ、一緒に街を見て回るのなんて本当に久しぶりですね……」

アルフィン皇女の用事が終わった後、リィン達は一緒に大市へと向かった。



~大市~



「ここがケルディックの”大市”……」

「噂には聞いていましたが、やっぱり賑やかですね。内戦の影響で若干縮小されたという話ですが活気は十分みたいです。」

初めて見る大市にエリスとアルフィン皇女は興味ありげな様子で周囲を見回していた。



「ええ、ひとえに商人たちの努力あってのことでしょう。」

「ふふっ、燃える商魂というやつですわね。ああっ、あちらの屋台からいい匂いがします!行きましょうっ、リィンさん、エリス!」

「ひ、姫様!はしたないですよ……!」

(はは、すごく嬉しそうだな。皇女殿下とエリスにとっても久々の息抜き……俺も存分に付き合ってやらないとな。)

はしゃいでいるアルフィン皇女を慌てた様子で諌めているエリスを微笑ましく見守っていたリィンは二人に付き合って屋台を周って様々な食べ物を買って食べ歩きをしていた。



「うふふ、屋台の食べ物はどれも大変美味ですわね。バリアハートの職人が手がけた美しい調度品も見れましたし……ケルディック特産の地ビールもできれば味わってみたかったです。」

「姫様……私達はまだ成人していないのですから、お酒は駄目ですよ。」

アルフィン皇女の言葉を聞いたエリスは呆れた表情で指摘した。



「クスクス、冗談よ。ただ、やっぱり帝国西部の商品はほとんど見かけませんね。鉄道網の規制で流通に制限がかかってしまっているのは仕方の無い事だと思いますけど。」

「ええ、この内戦が終わらない事には……それにしても殿下もよくそんなところに目がいきますね。」

アルフィン皇女の話に頷いたリィンはアルフィン皇女の目利きに気付き、目を丸くした。

「ふふっ、これでも皇族の端くれですから。あ、でもリィンさんに嫁いだ際には皇族ではなくなりますけどね♪ちなみにわたくしは後何年皇族でいられるのですか?リィンさ―――いえ、あ・な・た♪」

「う”っ!?」

「なっ!?姫様、抜け駆けはずるいです!」

アルフィン皇女に微笑まれたリィンはアルフィン皇女との結婚が決まっている事を思い出して表情を引き攣らせ、エリスは驚いた後アルフィン皇女を睨んで指摘した。

「フフッ、次はあちら側も回ってみましょう、リィンさん、エリス!」

そして二人の反応を面白がったアルフィン皇女は再び二人と共に大市を見て回り始めた。



「……ったく、いつになったらこの内戦は終わるのかねえ。」

3人が大市を歩いていると商人の声が聞こえて来た。

「領主様達のお蔭で売上税は半分になったとはいえ、内戦が続く限りは肝心の商品の値段が馬鹿みたいに跳ね上がったままだからお先真っ暗だぜ。こんなときにエレボニアの皇帝はいったい何をしているんだ?セドリック皇太子や噂のオリヴァルト皇子ってのもめっきり話を聞かなくなってるし。」

(あ……)

商人と話している仕入れ商人の話を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情をした。



「一応、エレボニアの皇帝陛下は帝都で無事でいらっしゃるという噂は聞いたぞ?」

「貴族どもによって占領された帝都でか?まったく、皇族が聞いて呆れるよ。もっと威厳を示して欲しいもんだね。むしろ領主様達を含めたメンフィルの皇族達の爪の垢を呑んで欲しいくらいだぜ。領主様達はこのケルディックの為に色々と手を尽くしてくれている上内戦の影響で苦しくなった俺達の暮らしもちゃんと考えてくれている所か内戦に巻き込まれない為にこっちに避難して来たエレボニアの難民の連中を受け入れている懐の広さもあるし、確かリフィア皇女殿下はこの前帝都で監禁されていた自分のお付きの侍女長の家族を助ける為にメンフィル軍に貴族連合に占領された帝都を襲撃させてその隙に助け出したって話だろ?それと比べて、エレボニアの皇族達と来たら…………」

(あ…………)

(姫様……)

(皇女殿下……)

呆れた表情で言った仕入れ商人のエレボニア皇家に対する厳しい意見を聞いて辛そうな表情をしているアルフィン皇女をエリスとリィンは心配そうな表情で見つめた。



「……おい、滅多なことを言うもんじゃないぜ。話に聞く限り、双龍橋から領邦軍を追っ払った”紅い翼”はエレボニアのアルフィン皇女殿下が率いたそうじゃないか。」

「む……そうなのか?」

商人の指摘を聞いた仕入れ商人は目を丸くした。

「きっとエレボニアの皇族の方々だってそれぞれどこかで頑張ってるさ。俺達は俺達で事態が良くなるのを信じて大市で頑張っていこうぜ。」

「ふうむ……まあ、内戦さえ終わってくれりゃ俺はどっちだっていいけどな。おっと、そろそろ行くぜ。邪魔したな。」

商人の言葉に首を傾げた仕入れ商人は溜息を吐いた後その場から去って行った。


仕入れ商人がその場から去って行くとリィンとエリスはアルフィン皇女に声をかけた。



「姫様……その……」

「……大丈夫ですか?」

「……はい。この内戦下で、エレボニアの民達だけでなくエレボニア帝国領に隣接しているメンフィルの民達のわたくしたちエレボニア皇族への不満は、どうしたってあると思ってましたし。先の双龍橋での作戦を良く受け取ってもらえただけでも、十分に救われた気がします。」

二人に心配されたアルフィン皇女は寂しげな笑みを浮かべて答えた。



「………そうですね。俺達のやってきたことは決して無駄ではないはずです。」

「これからも、わたくしたちはできることを頑張るしかないですよね。お父様やセドリックのためにも……そしてお兄様の期待に応えるためにも。」

「一緒に頑張りましょう、殿下。俺達Ⅶ組も、殿下やカレイジャスと共に在りますから。」

「勿論私も共に在りますよ、姫様。」

「……はいっ。」

心から愛する男性と親友の心強い言葉にアルフィン皇女は嬉しそうな表情で頷いた。するとその時かつての盗難事件でリィン達の世話になった商人がリィン達に気付いた。



「あれ、よく見たらお前さん、士官学院のボウズじゃ……―――って、そっちの金髪のお嬢さんはアルフィン皇女殿下!?」

(しまった、騒ぎに……!)

驚いている商人の様子を見たリィンが判断に迷ったその時アルフィン皇女はリィンと腕を組んだ。



「ふふ、よく似てるって言われますけど人違いですわ。ねえ、リィンお兄様?」

「!?……………………兄様、一人だけ贔屓をするのはずるいですよ?」

リィンに微笑むアルフィン皇女を見たエリスは目を見開いた後ジト目でアルフィン皇女を見つめた後アルフィン皇女のようにもう片方の空いているリィンの腕を自分の腕を組んでリィンに微笑み

(あらあら♪微笑ましい焼き餅ね♪)

(ふふふ、これぞまさに『両手に花』ですね。)

(クスクス、他の男性からしたら恨ましい光景でしょうね。)

(アハハ……確かにそうですね。)

(マスターの場合ですと両手に埋まるどころか体全部を使っても埋まらないかと……どちらにしても不埒な事には違いありませんが。)

その様子を微笑ましく見守るベルフェゴールとリザイラ、アイドス念話を聞いたメサイアは苦笑し、静かな表情で推測したアルティナはジト目になった。



「(エリスまで、何で対抗意識を燃やしているんだよ……)……コホン。ええ、そうなんです。」

一方エリスの様子に呆れたリィンはその場をしのぐ為に商人に説明した。

「へえ~、坊主にそんな妹さんがいたとはねえ。でも、二人ともあんまり似てないよな?」

「クスクス、わたくし達は血は繋がっていませんから。だから結婚もできるんです♪」

「!?」

「……そうですね。確かにその通りですね。」

商人に微笑むアルフィン皇女の言葉を聞いたリィンは驚き、エリスはアルフィン皇女に続くように頬を赤らめて静かな表情で答え

「え”。」

商人は表情を引き攣らせてリィン達を見つめた。



(殿下……!?エリスも止めろよ……!?)

一方リィンはアルフィン皇女とエリスを制止しようとしたがアルフィン皇女は制止を無視して話し始めた。

「それなのにお兄様ったら酷いんですよ。女学院にも滅多に顔を見せてくれなくて……薄情だと思いません?」

「しかもあまりにも薄情でしたから、この間私自ら顔を見せに行った時には凄く驚かれてしまいました……その事についてどう思われますか?」

「は、はは……えーっと。まあ、仲が良くって何よりだな……?」

アルフィン皇女とエリスに問いかけられた商人は苦笑しながら答え

「……ど、どうも……」

リィンは表情を引き攣らせながら答えた。その後3人は街の出入り口まで移動した。



~市内~



「ふう……なんとか騒ぎにならずにすみましたけど。あれはさすがにやりすぎでしょう?それにエリスも止めるどころか何で一緒になって事態を悪化させようとするんだよ……」

「あれはエリスとエリゼさんの気持ちを代弁させていただいたまでですわ。」

「私は事実を申したまでですが?」

「う”……(女学院に中々顔を出さなかった事にまだ根に持っていたのか……)」

アルフィン皇女と共に答えたエリスの答えを聞いたリィンは疲れた表情をした。その後、一足先に艦で待つというアルフィン皇女とエリスをカレイジャスまで送り届けたリィンは街に戻ろうとしたがアルフィン皇女に呼び止められた。



「リィンさん、申し訳ないのですがわたくしの部屋まで送って頂けないでしょうか?」

「え……」

「?は、はあ。わかりました。それじゃあエリス、後でな。」

アルフィン皇女の申し出を聞いたエリスは目を丸くし、戸惑いの表情をしたリィンはアルフィン皇女と共に4Fの貴賓室に向かい始めたが

「で、殿下!?一体何を……」

アルフィン皇女が突如自分の腕と組んだ事に驚いて立ち止まった。



「フフッ、さあわたくしの部屋に行きましょう?」

「??」

「…………………ハア………………」

アルフィン皇女の行動からある事を察した後ジト目で二人を見つめ続けていたエリスは溜息を吐いた。



~カレイジャス・貴賓室~



「で、殿下?部屋に着きましたが……一体どこまで送ればよろしいのですか?」

アルフィン皇女の執務室兼私室に到着したリィンは未だ腕を離さずどこかに向かっているアルフィン皇女に戸惑いの表情で尋ねていると、ベッドの前まで連れてこられた。

「え”。あ、あの……殿下、これは一体……?」

ベッドに連れてこられたリィンはある事を察して表情を引き攣らせた後アルフィン皇女を見つめて尋ねると

「えいっ♪」

アルフィン皇女はリィンをベッドに押し倒した。



「!?殿下、一体何を―――――なっ!?で、でででで、殿下!?一体何を……!んんっ!?」

押し倒した自分のズボンのベルトに手をかけてズボンを脱がし、下着までも脱がそうとするアルフィン皇女の行動を見たリィンが慌てたその時アルフィン皇女は自分の唇をリィンの唇に押し付けた。

「もう。二人っきりの時や愛し合う時は”アルフィン”と呼ぶようにと前にも”命令”しましたわよね?」

「…………あ、あの…………誰か来たら本気でマズイので……お願いですから自重してください……」

頬を膨らませるアルフィン皇女の言葉を聞いたリィンはアルフィン皇女が求めている”行為”を察して表情を引き攣らせた後、何とかアルフィン皇女を思いとどまらせようとしたが

(うふふ、これなら問題ないでしょ♪)

「!?こ、これはベルフェゴールの…………」

ベルフェゴールが展開した結界に気付き、逃げ場が無くなった事に気付いて表情を引き攣らせた。



「ふふ、お気遣いありがとうございます、ベルフェゴールさん♪遅くなりましたが、わたくしをパンダグリュエルから助け出してくれた時にも伝えた通り、たくさん奉仕をしてさしあげますわ♪」

その後リィンはアルフィン皇女との”行為”を終えた。



「フフッ、今ので赤ちゃんができているといいですね、あ・な・た♪」

「う”…………」

”行為”を終えて事後処理をした後”行為”の最中に脱いだ下着とスカートをはいたアルフィン皇女に微笑まれたリィンは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「…………どうやらその様子ですとやはり”していた”ようですね……?」

するとその時エリスが部屋に入って来た。



「エ、エリス……」

「兄様。兄様も殿方ですから、私や姫様達とするなとは申しませんがせめて時と場所を選んでからしてください。幾ら結界で外部からの侵入を阻んでいるとはいえ、他の方達が結界に気付いたら何事かと思いますよ?姫様も兄様と男女の営みをするのでしたらせめて皆様が寝静まる夜にしてください。」

冷や汗をかいているリィンをエリスはジト目で見つめながら指摘した後アルフィン皇女に視線を向けた。

「うふふ、今度からそうするわ。そ・れ・よ・りも♪早くリィンさんと結婚しないと結婚する前にわたくしが産んだ赤ちゃんにとって腹違いの”母親”ではなく、リィンさんと結婚するまでは”叔母”になるから、エリスも早く結婚した方がいいと思うわよ?」

「!!!!??…………兄様。まさかとは思いますが……!」

アルフィン皇女にウインクをされて目を見開いたエリスは膨大な威圧を纏って全てを凍りつかせるかのような絶対零度の目でリィンを見つめ

「……………………」

リィンは表情を青褪めさせて身体を震わせていた。

(うふふ、実際どうなのかしらね♪)

(ふふふ、本当に”できていたら”興味深い事になるでしょうね。)

(フフ、みんな怒った後、みんなもリィンの赤ちゃんを求めてくるのではないかしら?)

(ア、アイドス様……冗談になっていませんよ?その推測……)

(結婚もしていないのに、妊娠させるなんて不埒すぎます……まあ、マスターなら十分にありえそうですが。)

ベルフェゴールとリザイラと共に微笑ましく見守っているアイドスの念話を聞いたメサイアは表情を引き攣らせ、アルティナはジト目になった。



「エリスの予想通りわたくし、避妊処置を一切せずにリィンさんにたくさん中に出してもらいましたわ♪危険日ではありませんけど、安全日でもありませんし、それに零れるくらいたくさん出してもらいましたから、今ので赤ちゃんができたかもしれませんわ♪うふふ、もし本当に赤ちゃんができていたら名前は何にしますか、あ・な・た♪」

「で、殿下!?」

そして幸せそうにお腹をさするアルフィン皇女にウインクをされたリィンが慌てた様子で声を上げたその時

「に・い・さ・ま~~~~~~??少しだけお時間を頂いてもよろしいですよね??」

「ハイ……………」

背後に大地震が起こり、火山からマグマが噴き出す幻影が見えるほどの膨大な威圧を纏って微笑むエリスに見つめられ、肩を落として頷いた。



その後エリスの説教を受けてからカレイジャスを後にしたリィンはケルディックに戻った。 
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