英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第86話
その後各地を回って依頼の消化や学院生との合流を果たしていたリィン達はトワから来た連絡―――行方がわからなかったⅦ組の家族の所在がわかった為、それを聞く為にカレイジャスに一端戻った。
~カレイジャス・ブリッジ~
リィン達がブリッジに現れると待機メンバーも集まっていた。
「あ、リィン君達……!」
「……お帰りなさい、皆さん。」
リィン達をトワとアルフィン皇女は暗い表情で迎えた。
「ただいま、戻りました。」
「みんな、どうしたんだ?浮かない顔をしているようだが……」
「えっと……その……」
ガイウスの疑問にセレーネは答えを濁し
「一言で言うならゲルドさんの”予言”が当たったというべきですわ。」
「……うん。私の”見えた”通りになったみたい。」
シグルーンとゲルドは静かな表情で答えた。
「え…………と言う事はまさかアリサさんかエリオットさん……どちらかの家族がゲルドさんの予言通り……!?」
二人の答えを聞いたエリスは血相を変え
「……………………」
「エリオット?まさかフィオナさんが……!」
辛そうな表情で黙り込んでいるエリオットに気付いて何かを察したリィンは真剣な表情でエリオットを見つめた。
「その、実は……行方がわかったのはフィオナ・クレイグさんなの。」
「エリオットの姉上か……!」
トワの答えを聞いたラウラは帝都で出会ったフィオナを思い出し
「連絡が取れなくなっていたと聞きましたが……一体どちらに?ゲルドの”予言”通りと言う事はまさか……」
リィンは真剣な表情でトワを見つめた。
「うん、ケルディックのプリネちゃん達から入って来た情報なんだけど……昨日、帝都から”双龍橋”に列車で移動したみたいなの。それも……無理矢理連れてこられる形で。」
「まさか―――!?」
「人質というわけか……!?」
「まー、間違いないだろうねー。クレアの推測通りガレリア要塞方面にいる”第四機甲師団”を牽制するためにさらってきたんじゃないかな。」
「…………姉さん……」
ミリアムの推測を聞いたエリオットは心配そうな表情で呟いた。
「家族を人質にとるとは……さすがに卑劣すぎるだろう。」
「貴族連合はどこまで卑劣になれば気がすむのでしょうか?」
ガイウスとエリスは厳しい表情をし
「……そうでしょうか?”灰の騎神”の操縦者であるリィンさんを貴族連合に引き入れる為にエリスさんとアルフィン皇女を誘拐し、更には再びユミルを襲撃してユミルに手を出さない代わりにパンダグリュエルに来るように脅迫して誘導したのですから、”今更”かと思いますが。」
「……確かにその通りね。」
静かな表情で呟いたシグルーンの言葉をサラ教官は頷いた。
「どうやら貴族連合というよりはクロイツェン領邦軍の独断みたいでね。貴族連合の将軍達の意向を無視して独断でやったみたいなんだ。」
「恐らく………ユミルに猟兵が送りこまれた時と同じだと思います。」
「あ…………」
(……やはり、アルバレア公ですか。)
ジョルジュとアルフィン皇女の話を聞いたリィンは辛そうな表情でユーシスを見つめ、リィンの身体の中にいるアルティナは真剣な表情をし
「俺の父―――アルバレア公が貴族連合の主導権を握るためにやったというわけだ。……阿呆が……」
静かな表情で答えたユーシスは厳しい表情をした。
「ユーシス……」
「……ユーシスのお父さんがやったのね……」
ユーシスの様子をガイウスとゲルドは心配そうな表情で見つめ
「で、でも……姉さんを人質にしても父さんは絶対に降伏しないと思う。どんなに辛くても、絶対に……軍人としての決断をするはず……このままじゃ……」
エリオットは不安そうな表情で推測した。
「ああ……フィオナさんの身が危ない。―――みんな。俺達で何とかしてみよう。」
「え……」
「ええ……そうね。」
「はい……いくら戦争とはいえ、このようなことは許されません。」
「相手に勝つために民間人にまで危害を加えるなんて間違っていますわ……!」
リィンの言葉にエリオットが呆けている中、アリサやエマ、セレーネは頷き
「身内の愚行……何としても止めてみせよう。」
ユーシスは決意の表情で言った。
「で、でも……」
「―――それじゃあ君達はこの一件に介入するのね?”正規軍と貴族連合の争い”に。」
「………………」
サラ教官の問いかけに続くようにシグルーンは静かな表情でリィン達を見回した。
「いえ――――あくまでエリオットのお姉さんを助け出すだけです。」
「必要以上に攻撃せず、正規軍と連携しなければ……」
「一応、大義名分は立つ筈。」
「ノルドの監視塔の妨害装置を止めた時と同じだねー。」
「まあ、かなり苦しいのは承知ですが……」
「私も”協力者”として、皆さんのお役に立てるように全力で協力致します……!」
「私も。私自身の為にもみんなについて行くと決めたんだから。」
「みんな……」
仲間達の答えを聞いたエリオットは目を丸くして仲間達を見回した。
「フフ、それがわかってるならあたしも反対しないわ。フィオナさんはあたしの友達でもあるし……そもそも遊撃士協会には”規約”ってのがあってね。その第一項である”民間人の安全を守る”ためにはどんな無茶もOKなのよね~。」
「そ、それは凄いですね……」
「フフッ、遊撃士協会にとっては”切り札”ともいえる抜け道ですわね。」
「まったく、焚き付ける気マンマンじゃない。」
サラ教官の話を聞いたエマは驚き、シグルーンは微笑み、セリーヌは呆れた。
「ふふっ……それじゃあ―――決まりだね!」
「君達がその気なら僕達も肚を括るだけさ。」
「わたくしも……皆さんの行動の正当性を保証させていただきますわ!」
「ありがとうございます!」
「みんな……本当にありがとう……!……姉さん……絶対に助けてみせるから……!」
心強い仲間達に感謝したエリオットは決意の表情で姉を必ず助ける決意をした。
その後、会議室に集まったリィン達はフィオナの救出作戦の案を練った。その結果―――”双龍橋”の西側から騎神をもって裏側の守りを突破し……混乱の隙を突いて突入部隊が砦に潜入するという段取りとなった。
そして翌日―――――
12月17日――――
~カレイジャス・ブリッジ~
「―――さっき入った情報によると……現在、第四機甲師団の主力が双龍橋手前まで来ているらしいの。すでに領邦軍の機甲兵部隊との戦闘も始まってるみたい。」
「それは……第四機甲師団がかなり優勢みたいですね。」
「対機甲兵戦術のおかげか。……だからこそ父も人質まで持ち出したわけだな。」
トワの話を聞いたマキアスとユーシスは真剣な表情で呟いた。
「とにかく、これから双龍橋に向かうことになる。―――皇女殿下の宣言の後、”灰の騎神”で西側に降下……守備の機甲兵を撃破して砦内部の混乱を誘った上で突入班がフィオナさんを救出する。」
リィンは作戦開始前に打ち合わせの内容を確認する意味で仲間達を見回して言った。
「昨日のブリーフィングで打ち合わせた通りね。」
「ふふっ、しっかりと第一声を務めさせていただきますわ。」
アルフィン皇女はいつも迷惑をかけていた自分がようやくリィン達の力になれる事に嬉しさを隠せず、微笑みを浮かべた。
「作戦通り私はルチアと共に”灰の騎神”を援護し、機甲兵撃破後は陽動班をバックアップしますわ。」
「あたしは突入班をバックアップしつつ、艦との連絡を受け持つわ。できればリィンもそのまま合流してちょうだい。」
「了解しました。それと……領邦軍に雇われた猟兵団にも気を配ったほうがよさそうだな。」
シグルーンとサラ教官の言葉に頷いたリィンは考え込んだ。
「ん、気を付けた方がいいかも。」
「監視塔の件同様猟兵達を雇っている可能性は高いでしょうね……」
リィンの言葉にフィーは頷き、セレーネは考え込み
「怖いけど……僕も突入班としてがんばるよ。そして、この手で姉さんを助け出してみせる……!」
エリオットは決意の表情をした。
「残りのメンバーも内部で陽動と警戒を受けもつのだったな。」
「失敗は許されない……力を合わせる必要があるな。」
「今は”見えない”けど……みんなで力を合わせれば、きっと上手く行くと思うわ。」
ラウラとガイウスは真剣な表情をし、ゲルドは静かな笑みを浮かべ
「フフ、既に的中しているゲルドさんのが言えば成功する事間違いなしの心強い”予言”ですね。」
「ま、あんまり”予知能力”に頼りすぎるのもどうかと思うけどね。」
「そうね……未来は自分達で掴み取るからこそ、素晴らしいものなのだから………」
ゲルドの言葉を聞いたエリスは微笑み、静かな表情で呟いたセリーヌの言葉にエマは頷いた。
「あはは、なんだか武者震いしてきたかもー。」
(相変わらず彼女の思考は理解できません。)
無邪気な笑顔を浮かべるミリアムの言葉を聞いたリィンの身体の中にいるアルティナはジト目になった。
「君達、心の準備はできているかい?」
「はい―――迷いはありません。フィオナさんの救出……必ず成し遂げてみせます。」
ジョルジュの問いかけにⅦ組を代表して答えたリィンは決意の表情でジョルジュを見つめた。
「ま、こうなったらやるしかないわね。」
「頑張りましょう……!」
「それじゃあみんな、配置について!クロイツェン州北東部―――”双龍橋”に向けて発進します!」
「イエス・マム♪」
「全速全身っ、レッツゴー!!」
トワの指示にカレイジャスの船員となった学院生達はそれぞれ気楽な口調で答えた。
「…………………」
(猟兵団、か……―――とにかく、あたしも気を引き締めていかないとね。)
フィーは決意の表情をしたサラ教官に視線を向けていた。
そしてカレイジャスは作戦を開始する為に双龍橋方面に向かった!
同日、12:00―――――
~クロイツェン州領邦軍拠点”双龍橋”周辺~
カレイジャスが到着する少し前、第四機甲師団との戦闘をしていた機甲兵達は第四機甲師団に圧され、次々と後退していた。
「お、おのれっ……”第四機甲師団”め!」
「とにかく体勢を立て直さねば――――」
機甲兵達が第四機甲師団が現れるトンネルを睨んでいると突如砲弾がトンネルから現れ、機甲兵達に次々と命中した!
「ぐわっ!?」
「うおおおおおっ!?」
たった一発の砲弾で機甲兵達が戦闘不能になるとクレイグ中将率いる第四機甲師団が姿を現した!
「フン、我ら第四機甲師団を嘗めてかかったのが運のツキだ。―――あと一息だ!このまま双龍橋を攻め落とすぞ!」
「で、ですが……!」
「中将、このままでは……」
クレイグ中将の指示を聞いた戦車兵達はクレイグ中将の愛娘が領邦軍によって殺される事が目に見えていた為、迷っていた。
「――止まるがいい、”第四機甲師団”よ!!」
するとその時新手の領邦軍が第四機甲師団の行く手に立ちはだかった。
「”紅毛のクレイグ”―――貴様、どういうつもりだ!?降伏勧告を無視してここまで攻めてくるとは……!娘の命が惜しくないのか!?」
「ッ……!」
「貴族連合め……!」
「メンフィルに”報復”をされてなお、懲りずに卑怯な手段を取るとは……!」
「どこまでエレボニアの恥を晒すつもりだ……!」
「中将、このままではお嬢さんが……!」
領邦軍の司令官の言葉にクレイグ中将は唇を噛みしめ、戦車兵達は悔しそうな様子でそれぞれ呟いた。
「―――狼狽えるな、兵達よ!そして貴族連合―――我が娘を甘く見ないでもらおう!あやつとて曲がりなりにも帝国軍人の娘だ!卑劣な脅しに屈せず義に殉じる覚悟はできておろう!」
「ちゅ、中将……」
「しかし……」
クレイグ中将の決意を知ってなお、戦車兵達は迷い
「クッ……!やれないとでも思っているのか!?いいだろう、ならば貴様の望み通り―――!」
唇を噛みしめた領邦軍の司令官がフィオナに危害を加える命令をしようとしたその時!
「お待ちなさい―――!」
「え――――」
「この声は……!?」
アルフィン皇女の声が聞こえて来た後、カレイジャスが上空に姿を現した!
「……あ、あれは!?」
「……”紅き翼”か……!」
カレイジャスの登場に兵達が驚いている中、クレイグ中将は予想外の勢力の介入に目を丸くした。
「クロイツェンの兵達よ、恥を知りなさい!罪もない敵将の家族を人質に取り、戦に利用しようなどという愚行―――アルノールの名において断じて許すわけには参りません!」
「お、皇女殿下……」
「ううっ……」
アルフィン皇女の怒りを知った領邦軍は士気が下がり、それぞれ複雑そうな表情をした。
「トールズ士官学院”Ⅶ組”並びに協力者一同――――作戦を開始する!!」
「行くわよ―――あんたたち!!」
「おおっ!!」
そしてカレイジャスは西側に移動するとカレイジャスからヴァリマールが飛び降り、ヴァリマールに続くようにルチアに乗ったシグルーンがヴァリマールの横に並び、更にエマの転移魔法によってⅦ組の面々やゲルドとエリスも姿を現した!すると守備隊である機甲兵達も砦の中から姿を現した!
「機甲兵―――現れたわね!!」
「―――私は二体の背後にいる隊長機を受け持ちます。無力化次第、私もヴァリマールの援護に回りますわ。」
「お願いします!行くぞ、ヴァリマール!!ここは俺達が切り開く!!」
「任セルガイイ―――!!」
そしてヴァリマールとルチアに乗ったシグルーンは機甲兵達との戦闘を開始した!
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