μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜
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第8話 まきりんぱな
μ'sのライブが終わって数日後の授業。私はあることに悩んでいました。
それは2年生教室前と掲示板に貼られた新入部員募集のポスター。
確か部活動として認めてもらうには5人以上必要だということを知っています。私が知っている中でμ'sのメンバーは高坂さんと南さん、園田さん
そして、笹倉さんの4人。
つまりあと1人必要です。
『はなよちゃんはしょうらいなにになりたいの〜?』
『ええっ?わたしは...わたしはおおきくなったらあいどるになりたい!』
『へぇ〜そうなんだ〜。じゃあだんすとかうたとかぜんぶおぼえてるんだ〜!』
『ええっ!そ、それは....その...』
『がんばってね!おうえんしてる』
『う...うん』
小学生の時からずっとアイドルを夢見ていた私にとってμ'sのライブはまさに夢の時間。
一生懸命さが伝わってきた。あの中に私も入りたい、と思った。
でも私にはできない。声も小さいし恥ずかしがり屋だしアイドルに向いているような顔をしていない。
「....さん」
「はぁ......」
「小泉さん!」
「は、はい!」
名前を呼ばれて無意識に立ち上がってしまった。
みんなからクスクスと笑いが溢れる
.....恥ずかしいよ
「小泉さん、58ページの最初から呼んでください」
「...はい」
先生から指名され渋々たちあがる。できれば当たって欲しくなかったな〜
「The new company first products were----
自信なさげにもにょもにょと話しているため先生も少し眉をひそめた。
「もう少し大きな声で」
「は、はい......。The new company first ------ 」
それでもやっぱり恥ずかしくて大きな声は出せない。
痺れを切らした先生は「はいそこまで」と、中断し私を席に座るように促す
私をはアイドルになりたい。それは昔も今も変わらない。だけど....
「...無理だよね....こんなんじゃ....」
1人呟き、頭を抱える。
〜☆〜
校舎の裏側にアルパカと呼ばれる動物を飼育しているらしい。
らしいというのはことりがそれを見に行きたいと言ったからだ。
というわけで昼休みに4人で校舎裏に行き、様子を伺った。
一言で言うなら奇妙な動物だった。
全身はもふもふの毛まみれで首が長くつぶらな瞳がこっちをじっと見ていた。
俺は....可愛いとは思えない。
穂乃果と海未も俺と同じ微妙な表情をしていた。
ことりはというと
「うわぁ〜....ふぇぇぇ〜♪」
すっかりアルパカにメロメロだった。
こんな動物のどこに惹かれるのか俺にはわからない。
「最近ことりちゃんよくここに来るよね」
「え?そうなんだ」
「はい...先日のライブ後も1人ここに来てアルパカと話をしてるんです」
あぁだから帰るときにことりだけ、いなかったのか。納得納得
「なんでまたアルパカに?」
「急にはまったみたいですよ」
「ねぇことりちゃん〜チラシ配りに行くよ〜」
かれこれ10分はずっとこうしている。ことりは穂乃果の声に耳をくれずずっともふもふを触っている。
「うぅ〜ん...♡あとちょっとぉ〜」
「もぅ...」
絶対あとちょっとどころではない気がする
「部員を5人にして認めてもらわなければ部活動として活動できないのですよ!」
海未はジェスチャーをしながら抗議する。
「う〜ん、そうだよねぇ〜」
「.....かわいい...かな?「ええっ!可愛いよ!」
穂乃果の疑問にことりは即答する
「首のあたりとかもふもふしてるし〜あぁ〜幸せ〜♡」
「「「......」」」
俺たちは肩をすくめる。
「ふぇぇぇぇっ!!」
と、ことりはいきなり後ろに下がりぺたんと尻餅をつく
「どうしたことり?」
「ふぇぇ..舐められた〜」
なに!?こんな不明な動物がことりをprprしただと!!!!
う....うらやましい!!できれば俺もことりをprp---
ゴンっ!!!!
「って〜な!なにすんだ海未!」
「あなたが破廉恥はことを考えているからです!」
「なんでそんなことわかるんだよ!だからってゲンコツ落とすこと無いだろ〜」
「ふんっ!!」
海未はそっぽを向く。なんで心読めるの?エスパーなの?
「ことりちゃん大丈夫?」
「うん大丈夫。嫌われちゃったのかな〜」
「あ、大丈夫ですよ。楽しくて遊んでただけだから」
そう言って目の前に現れたのはメガネと胸が特徴の1年生、小泉さんだった。
「お〜よしよし〜お水交換しなきゃね」
小泉さんは空のペットボトルと水の入ったペットボトルを取り替え、アルパカの首のあたりを撫でる。
飼育委員かなにかだろうか
「アルパカ使いだね!」
穂乃果は興味津々のように小泉さんに近づく。
「えっ?あ、あの...私飼育委員なので」
彼女は顔を真っ赤にして俯き、小さな声で話す。
「そっか〜?あれ?あなた花陽ちゃんじゃない!」
「え?あ、いえ....」
「駆けつけてくれた1年生!」
「ねぇあなた!.....アイドル、やりませんか?」
穂乃果が花陽の肩をがしっとつかみ、獲物を狩るような目で接近する。
「え?いえ......あの......」
「大丈夫!君は光っている!悪いようにはしないから!」
「おいこら穂乃果、小泉さん...怖がってるじゃないか」
「そうですよ穂乃果、無理に勧誘するのはよくありません」
俺は無理やり穂乃果を引き剥がして小泉さんを開放する。
「あはは...でも、これくらい強引にいかないと」
「...悪人め(ぼそっ)」
「何か言った?大くん?」
こっちを見てる穂乃果の目にはハイライトが無くなっていた
「......すいません」
穂乃果は怒ったら怖いんだろうな〜たはははは(^_^;
「あ、あの...」
「なに?花陽ちゃん」
「に、西木野さんが....」
小泉さんの言葉はなにも聞こえなかった。俺より小泉さんの近くにいる穂乃果ですら聞き取れなかったようだ。
「え?ごめんね、もう一回言って」
穂乃果は注意深く耳をすました。
「に、西木野さんが...いいと思います。歌も...上手なんです」
つまりは西木野さんを勧誘した方がいいんじゃないかと言いたいのだろう
「そうなんだよね!穂乃果も大好きなんだ!彼女の歌声!」
「確かにそうですね」
ことりも海未もうんうんと頷く。
「ならスカウトに行ったらいいんじゃね?」
「行ったよ〜そしたら『オコトワリシマスッ』って言われたんだよ!」
「あ、あのすいません。なんか余計なことを....」
小泉さんはバツが悪そうに頭を下げる。
どうしてこんなに自分の評価を下げているんだろう...
そんなに自信ないのかな
「だ、大丈夫だよ!気にしないで」
「で、でも....」
「小泉さん」
「は、はい」
俺はひとつ気になることがあったので聞いてみることにした
「君はどうして自分の事卑下にしているんだい?俺からすると君がアイドル始めたらきっとモテモテになると思うんだよね。歌声は聞いたことないからわからないけど、普段の声も可愛いし見た目だってそんなに自信なさげになるほどじゃない、むしろ可愛いと思うよ?」
「え...ええええぇっ!!!?」
「「「....................」」」
....あれ?おかしいな...なんか間違えました?
俺は思ったことを素直に言っただけなんですけど
「え!あ、あの!そ、その.,....し、失礼します!」
小泉さんは俺の質問に答えず顔を真っ赤にして走り去っていった。
「え?どうしたんだろう...まぁいいや、じゃあ授業始まるし教室戻ろう........か?」
3人に呼びかけると穂乃果と海未はじとっと俺を睨み、ことりは気味悪い笑顔でニコニコしている。
「あ、あの....なにか?」
明らかによくない雰囲気なのは確かだ。
「大くんって...相変わらず見境無しにあんなこと言うよね」
「そうですね....これは大地に説教しなくてはいけませんね...」
「そうだねぇ......まずはことりのおやつ確定だね♪」
.............
授業始まって放課後になるまで口をガムテープで塞がれてしまったのは別の話。
〜☆〜
授業が終わっても彼....笹倉さんから言われたことが頭から離れなかった。
『普段の声も可愛いし見た目だってそんなに自信なさげになるほどじゃない、むしろ可愛いと思うよ』
そう男性から言われて嬉しかった。でも...私には無理。アイドルになるなんて夢のまた夢なの。
笹倉さんやμ'sの皆さんと一緒に頑張りたいって思うけど私にはできない
引っ込み思案な私にできることはファンとして応援することだけ。
「か〜よちん!」
荷物をまとめてさぁ帰ろうとしたとき、幼馴染みの凛ちゃんに声をかけられた。
「決まった?部活」
凛ちゃんに聞かれたのは来週の月曜から始まる部活動のこと。
「今日までに決めるって先生言ってたよ?」
「そ、そうだっけ.....」
知っていたけど決めていないため知らないふりをする。
「明日....決めようかな?」
「だめだよかよちん!そろそろ決めないと。みんな部活始めてるよ?」
「う、うん...。えと、凛ちゃんはどこにはいるの?」
「凛?凛は陸上かな〜?」
「陸上....かぁ」
凛ちゃんは昔から走るの得意だし、凛ちゃんらしいと言えばらしいな。
いいなぁ....凛ちゃんはやりたいことが決まってて。
「あ、もしかして〜」
何を思ったのか凛ちゃんは私の前に来て耳打ちするように小声で話す。
「スクールアイドルに入ろうとか思ってたり?」
凛ちゃんに当てられてどきっとした。まぁ幼馴染みだしわかっちゃうのかな。
「え?そ、そんなこと.....ないよ?」
私を目を逸らした。
「ふぅ〜ん、やっぱりそうだったんだね〜」
「そ、そんなことな--「だめだよかよちん、嘘つく時必ず指合わせるからすぐわかっちゃうよ〜」
抗議しようとしたら凛ちゃんに指で口を抑えられ、さらには私の嘘つくときの癖まで言った。
え?そうだったんだ...私無意識に指合わせてたんだ。
小学中学のときも何度か指摘されたけど今回も合わせちゃってたんだ。
「一緒に行ってあげるから先輩たちのところに行こ?」
凛ちゃんに腕を引っ張られ無理矢理席を立たされる
「え!?ま、待って!違うの....私じゃほんとに..アイドルなんてなれないから....」
「かよちんそんなに可愛いんだから〜人気出るよ〜」
『むしろ可愛いと思うよ』
笹倉さんに言われたことがまた頭の中で再生される。
違うの....そうじゃないの
「でも...待って!待って!」
再度引っ張られた私はなんとか踏み止まり凛ちゃんを止める。
「ん〜?」
「あ、あのね.....我が儘...言ってもいい?」
「なぁに〜?かよちんの我が儘なら聞いてもいいよ〜」
「もしね...わたしがアイドルやるって言ったら....一緒にやってくれる?」
ある意味私がアイドルをやる最後の手段なのかもしれない。凛ちゃんがいてくれたら寂しくなく頑張っていけそうな気がするの。
「凛が....?アイドルに......?」
凛ちゃんは自分がアイドルになっているのを想像したのか、微妙な顔をして顔を横に振る
「無理無理無理無理。凛がアイドルなんて似合わないよ〜。ほら、髪だってこんなに短いし〜」
凛ちゃんは否定して自分の短い髪をアピールする。
「で、でも.....」
「それにほら!昔も」
凛ちゃんは小学の頃から元気で、運動神経もよく、サバサバした性格なので男子からよく『おとこおんな〜』とか言われて女子扱いされなかったことがよくあった。凛ちゃんはその事をそんなに気にしていなかったけど、ある日今までズボンだった凛ちゃんが初めてスカートを履いてきた時があった。
『うわぁ〜っ!かわいいよ〜!りんちゃんすかーとすごいにあうよ〜!!!』
『そ、そうかな?えへへへ....///』
すると男子はスカートを履いてる凛ちゃんを見てこう言ったの
『うわぁ〜、すかーとだー!』
『りんがすかーとだ!いっつもずぼんなのに〜っ!』
『りんにすかーとあわね〜!!あ、そうだ!こうえんまできょうそうしよーぜ!』
『お!まけねーぞー!!』
そう言って男子たちは走り去っていった。
残された私と凛ちゃん。凛ちゃんは肩を震えて俯き
『り、りんやっぱりきがえてくるね』
と、言って帰っちゃった。
その時から凛ちゃんは自分は女の子らしくないと言い聞かせ、制服以外でスカートを履くことが無くなった。
「--だから凛にはアイドルなんて絶対無理だよーあはは」
凛ちゃんは笑いながら頭の後ろをかいた
凛ちゃんのその笑顔は苦痛な表情にも見えた。
「凛ちゃん.....」
〜☆〜
俺は放課後になるとやっとガムテープを剥がされ、穂乃果とことりは帰宅し、海未は部活があると言って弓道場に向かった。
「ふぅ....息苦しかった...なにも授業中までつけることなんてないだろ」
1人愚痴りながら荷物を整理し、教室を離れる。
授業中の先生の目と何も知らない女子生徒からすると俺はただのバカみたいな光景になっていた。心が痛い........
うちの学校の職員室は一階にあり、昇降口に行くには必ずと言っていいほど職員室前を通る。そのとなりには掲示板と理事長室。
ふと、掲示板に見たことのある後ろ姿があった。
何故か無意識に隠れてしまい、様子を伺った。
.....西木野さんが新入部員募集のチラシを手にして眺めていた。
まさか興味があるのだろうか。
「あ、あの.....」
「えっ?」
振り向いた先には小泉さんが立っていた。
「や、やぁ....なに?どうしたの?」
「い、いぇ....どうして隠れているのかなと思ったので....」
小泉さんは真っ赤にして...ていうか顔を合わせてくれない。目を見ようとすると逸らされてしまう。嫌われちゃったのだろうか
だとしたらショックだ...こんなに可愛い子に嫌われてしまうなんて
とまぁ..そんなことは置いといて。俺は何故か隠れているのかを答えるべく西木野さんの方を指さす。
「ほら、見てみ」
小泉さんも陰からこっそりと除く。俺の後ろから覗きしかも密着しているため、小泉さんの柔らかな匂いをかぎ、大きな2つの実が俺の背中でむにゅむにゅと形を変えているのを感じる。
......や、やばい.....理性が.....理性が.....
こ、ここは天国ですか!?俺は死んだのですか!?
「あ、西木野真姫さんいっちゃいましたよ」
「ふ、ふえ?」
小泉さんの呼びかけに変な声を出してしまった。でもお陰で天国から戻ってこれた。
「あ、あぁほんとだ」
小泉さんは西木野さんがさっきいた場所へ駆け寄り何を見ていたのか確認する。
「新入部員募集.....?西木野さんが?」
「やっぱりな」
「でもなんで.......あれ?」
小泉さんポスターに目を向けているとなにか落ちていることに気づく。
どうやら生徒手帳のようだ。
「一体誰のだろう.....」
小泉さんはそれを拾い中をパラパラとめくる。
「あ、これは.....」
顔写真で持ち主を判断した。
西木野さんの手帳だった。
「ふ、ふぇぇぇぇっ」
「こ、これは...すげぇな」
俺と小泉さんはあまりの家の大きさに驚きを隠せない。俺んち何個分のお金かかったんだろう。
俺は小泉さんに上目遣いで懇願され西木野さんの家に手帳を届けにやってきた。
ことりに続き、小泉さんの上目遣いのお願いは絶対断らないと今日ここで誓った。だってとても可愛いんだもん、抱きしめたいくらいに....
小泉さんはあまりの豪邸さにあたふたしてインターホンのを鳴らせないでいた。でも意を決してインターホンの押す。
しばらくして若い女性の声がインターホン越しに聞こえる。
「...はい、どちらさまですか?」
「ふえっ!え、えっと...同じクラスの小泉花陽と」
「2年の笹倉大地....です」
「....ちょっと待っててね」
そのあとすぐに玄関が開き出てきたのは先ほどの女性。
若くて美人で目の当たりを見ると西木野さんとおんなじだな〜と思った。
西木野さんのお姉さんかなと思ったけど、ことりの母つまり理事長もあの若さで母親だから質問していいのかして悪いのか悩んでしまった。
「ふふっ、ごめんなさいね今真姫は病院の方に顔をを出してるから少し家でくつろいでいって」
「は、はい....」
「病院...ですか」
「ええっ、うちって病院を経営していて将来あの子が継ぐことになってるの」
衝撃事実発覚!西木野さんはいいとこのお嬢さまだった。だとしたらこの豪邸も頷ける。
「さ、入って入って。高校生になってから友達1人連れてこなかったから心配だったの」
「そ、そうなんですか....」
そりゃそうですよ西木野さんの....お姉さん(??)
だってあの子いつもツンツンして棘のある子ですからみんなに誤解されると思いますよ。多分典型的なツンデレなんだと思います。
俺と小泉さんはそのままリビングに通され、わざわざ紅茶とクッキーまで出してくれた。
周りを見渡すと壁に賞状とか写真とか飾られ、棚には他種類のトロフィーやメダル。近づいてよく見るとピアノの最優秀賞とかとか書かれていた。
やっぱり....それくらいの実力はもってるよな。
「じゃあ少しだけ待っててね」
そう言い残して西木野さんのお姉さん(?)は奥へ消えていった。
取り残された俺と小泉さんは何をしたらいいかわからず、紅茶を飲む音と、時計の針の音だけがこの部屋を支配していた。
数十分後、玄関のドアが開く音と「ただいま〜」という西木野さんの声が聞こえた。
「あら真姫、お帰り。」
「ママなに?友達が来てるって?」
「「っ!!」」
2人は驚いて顔を見合わせる。なんと姉だと思っていた方は西木野さんのお母さんだった!!!!!
なんで俺の周りにいる人のお母さんはこんなに若いのでしょう...
「いいからいいからリビングにいるわよ」
「まったく.....あ」
リビングに入ってきた西木野さんは俺らも見てちょっと驚いたような顔をした。
「あ、あなたたち....」
「ど、ども」 「こんにちは...西木野さん」
後ろで西木野さんのお母さんは微笑み、「真姫の紅茶を持ってくるわ」
といってキッチンへ消えた。
西木野さんはため息をついて向かい側のソファに座る
「なんのよう...?」
「あ、あの...これ」
小泉さんはバッグから生徒手帳を取り出し本人に渡す。
「な、なんであなたがこれを持ってるの?」
「ご、ごめんなさい....」
「なんで謝るのよ....」
「.......」
「や..その.....ありがとう」
小泉さんの表情をみてしまったと思ったのか目をそらしてお礼する。
「なぁ西木野さん」
「な、なによ」
なんで俺の時だけそんなに睨むんですか?俺何か悪いことしましたかね?
「μ'sのポスター..見てたよね?」
「ゔぇえ!?そ、そんなの知らないわ!人違いじゃない?」
あんな特徴のある髪の色した子を見間違えるわけないだろ。
「でも.....手帳も...そこに落ちてたし」
俺のフォローするように小泉さんは後を続ける。
「ち、違うの!それは違「ゴツっ!」痛っ!!え?ちょ...まっ...きゃあぁっ!!」
いきなり立ち上がった西木野さんはテーブルに足をぶつけそのままソファごとひっくり返った。
.....おちゃめなところがあるんだな...
「だ、大丈夫??」
小泉さんが心配そうに近くに駆け寄り手を差し延べる
「だ、大丈夫に決まってる!」
「ぷっ......くく」
俺は笑ってしまった
「ちょっと!!なんで笑うのよ!!」
「だって...くく...はは」
「ふふふ....」
俺につられて小泉さんもクスクス笑った。俺らに置いてけぼりにされた西木野さんは顔をトマトのように真っ赤にして「まったくもう!」とそっぽをむいた。
「私がスクールアイドルに?」
「うん...私放課後いつも音楽室の近くに行ってたの。西木野さんの歌..聴きたくて」
少し落ち着いてから本題に入る。俺から説明した方が良かったのかもしれないけど口を挟むと西木野さんが俺を睨んでくるのでここはあえて蚊帳の外にいることにした。
「私の?」
「うん。ずっと聴いていたいくらい好きで....だから「私ね...」
「うん?」
「大学は医学部って決まってるの。だから私の音楽は終わってるの」
「そう....なんだ」
「嘘だ」
「え?」
俺は口を挟んでしまった。あんなわかりやすい嘘をつかれていい気分になるわけがない。
「音楽は終わってるのって...それは嘘だよな」
「はぁ?何言ってるの?嘘なわけ無いでしょ」
俺は睨まれているがそんなの気にせず話を続ける
「嘘だっていうならどうしていつも音楽室でピアノを弾いてるんだよ.......」
「..........」
「答えられない.....か」
「......そんなのあなたには関係ないでしょ」
「確かに関係ない」
即答だった。自分でもびっくりするくらいの即答だった。
「はぁ?あなた、自分で何を言ってるのかわかってるの?」
「あぁ....わかってる」
「じゃあどうして.....」
「あんなに楽しそうに歌ってピアノ弾いて..それがもう終わりって言われてはいそうですかって言えるわけない。医学部目指してるんだっけ?それが自分でやりたい夢かなんてそんなのは本人にしかわからない。でも俺から見るとその夢は君にとって本当にやりたいことなんだと言っているようには思えないんだよ。さっきだって医学部の話をする君の目はとてもやりたいという目ではなかったよ......どうなんだい?」
「..........」
暫しの沈黙。そして、西木野さんは口を開く。
「それよりあなた、アイドル。やりたいんでしょ?」
「えっ??えっ?」
俺の問に答えず話を切り替えて小泉さんに話をする。
急な話題転換に小泉さんは俺のことをちらちら見る。答えなくていいのですか?と言いたいのだろう。俺は頷き、小泉さんに話をさせる。
西木野さんにはまだ考える時間が必要だろう。きっと頭で理解できていても心では葛藤しているだろうし。それにアイドルをやることを強制させても意味はない。自分が本気でやりたいと思わないとダメなんだ。
「この前のライブのとき、夢中で見てたじゃない」
「え?西木野さんもいたんだ」
「いや、私はたまたま通りかかっただけだから」
あんなところを『たまたま』通りかかるわけ無いだろ
コイツはほんとに.....素直じゃないんだから
「やりたいならやればいいじゃない。そしたら....少しは応援...してあげるから」
『やりたいならやればいいじゃない』
これはきっと自分でも無意識に言ったんだろう。言い聞かせて素直になりたいんだろう。
この一言で俺は確信した。
西木野真姫は.....音楽が大好きなんだ.....と。
「うん、ありがとう」
小泉さんはニカッと笑った。
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