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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第85話(幕間終了)

12月15日――――



~カレイジャス・ブリッジ~



「クロイツェン州上空に到達後、天候、風向きともに変化なし。」

「現在速度、3000CE/h。対空レーダーの導力波なども今のところ感知していません。」

「このまま雲間を航行しつつ”双龍橋”を迂回します。貴族連合の警戒網に触れないよう充分に注意してください。」

「イエス・マム。」

大人の船員達の報告を聞いた艦長席に座っているトワは躊躇いなく指示をしていた。



「す、すごいな……さすがハーシェル会長。」

「ああ、たった一日でここまで板につくなんてな。」

「うん、父上の代理を立派に務められているようだ。」

「あはは、やっぱり頼んで正解だったみたいだね。」

「トワ自身は最初、凄く恐縮していたけどね……」

「ん、相変わらずマスコットっぽいけど。」

「ふふ……それも器の一つなのだろう。」

仲間達と共にトワの様子を見守っていたゲルドはある事を思い出して苦笑し、フィーとガイウスは静かに呟き

「フフッ、まるでエリゼお姉様を見ているみたいですわね。エリゼお姉様もミルス城で大人のメイドの方々に躊躇いなく指示をしていましたし。」

「そ、そうなのですか……?」

セレーネの言葉を聞いたエリスは信じられない表情でリィン達に尋ね

「アハハ……まあね。とにかく、今日からいよいよ行動開始ってわけね。」

エリスの疑問に苦笑しながら答えたアリサはリィンを見つめた。

「ああ……昨夜、話し合った通りだ。」

リィンは昨夜の会議を思い出した。



~昨夜・ブリーフィングルーム~



「カレイジャスの運用は基本的にトワ会長たち先輩にお願いできることになった。本格的に行動を開始できるのは明日からになりそうだけど……―――問題は、これから”どう”動いていくかだな。」

「この艦のおかげで、自由に帝国各地に足を運べるのはいいけど……現状、ほとんどの場所は貴族連合に占領された状態なのよね。」

「そういった場所には、さすがに不用意に近づけないね。捕まるか、下手をしたら撃ち落されちゃうかもしれないし。」

「エ、エリオットさん……縁起でも無い事を言わないで下さいよ……」

エリオットの言葉を聞いたセレーネは不安そうな表情をし

「―――ですがその推測は強ち間違ってはいませんわ。」

「はい……先日のメンフィル軍の空からによる帝都襲撃を知って相当警戒しているでしょうし……」

静かな表情で呟いたシグルーンの言葉を聞いたエリスは不安そうな表情で呟いた。



「現時点で降りられる場所は意外と少ないかもしれませんね。」

「たしかに……サラ教官は、何か意見はありませんか?」

エマの意見に頷いたマキアスはサラ教官に助言を求めた。

「あー、自分達で決めなさい。あの渋いオジサマが降りちゃってテンション下がっちゃったし。何ならゲルドの”予知能力”とやらに頼ったら?ラジオの番組とかでやっていた今日の運勢の占いより効果はあるかもしれないわよ?」

しかしサラ教官はやる気のなさそうな様子で答え、それを聞いたリィン達は脱力した。



「そんな事を言われても…………ごめんなさい、今は何も見えないわ。」

「ゲ、ゲルドさん。」

「アンタも真面目に予知能力を使わなくてもいいわよ。というか予知能力をそんなものと一緒にしないでよ。」

その場で集中した後リィン達に謝罪するゲルドの様子を見たエマは冷や汗をかき、セリーヌは呆れた表情で指摘し、サラ教官を見つめた。

「サラ、不真面目すぎ。」

「ふむ、そう言ってくれるのは娘冥利に尽きるというものだが。」

フィーはジト目でサラ教官を見つめ、ラウラは苦笑し

「あはは、今度ラウラに仲立ちしてもらったらー?」

ミリアムは無邪気に笑いながら冗談半分に提案した。



「冗談よ、冗談。今後、君達の進む先で切った張ったが必要になるなら目一杯付き合わせてもらうわ。でも―――”カレイジャス”を託されたのはあくまで君達よ。相談には乗るつもりだけど、大切な決断は自分達でしなさい。」

「サラ教官……」

「フッ、もっともらしい事を。」

「いつも真面目に答えてくれたら、教官として完璧ですのに……」

(普段はどういう方なのかしら……?)

サラ教官の答えを聞いたリィンは目を丸くし、ユーシスは静かな笑みを浮かべ、セレーネの言葉が気になったエリスは不思議そうな表情でサラ教官を見つめていた。



「それなんだけど……まずはこの艦の”大目標”と”指針”を決めるべきじゃないかな?」

「”大目標”と”指針”?」

(あら……驚いたわね。真っ先にそれに気付くなんて。)

トワの提案を聞いたゲルドは不思議そうな表情で首を傾げ、シグルーンは感心した様子でトワを見つめ

「みんなで一丸となれるある程度大きな将来の目標……そして、そこに至るための具体的な方針でしょうか。」

考え込んでいたエマは真剣な表情でトワを見つめた。



「うん、生徒会でもそうだけどそれが有るのと無いのとじゃ勢いとかやる気が全然違うから。」

「例えば学院祭なんかがそうだね。君達だって、ステージをやるために色々と頑張ってきただろう?」

「なるほど……」

「確かに、実習の前後や最中に色々打ち合わせもしたっけ………」

「何とか中止させまいと異変を食い止めた事もあったな。」

「うん、しかも”Ⅶ組”だけでなく他のクラスの意志も尊重して……」

「個々の目的はそれぞれある……だが、それらをまとめて引っ張っていけるような何かか。」

その場にいる全員は黙って考え込んでいたがやがてリィンが答えを出した。



「そうなると―――やはり”士官学院”そのものか。」

「あ…………」

「―――”貴族連合”に占領された皆様の学院ですわね。」

「リィン達の学院……」

リィンの言葉を聞いたエリスは呆け、静かな表情で呟いたシグルーンの話を聞いたゲルドはリィン達を見回した。



「ああ………僕もそれは思った。」

「あの日、わたしたちが撤退するしかなかった場所……」

「確か今まで回って来た街等に士官学院からの脱出に成功した生徒達もいましたが……」

マキアスとフィーの言葉に続くようにセレーネは心配そうな表情で呟いた。

「会長、ジョルジュ先輩。トリスタと士官学院は現在、貴族連合の管理下でしたね?」

「うん、学院長たちが一応、頑張っていらっしゃるけど。」

「知っての通り、学院生の多くはトリスタから離れている状況にある。貴族連合に捕まる心配のなかった貴族生徒は残っているみたいだけど。」

リィンの質問にトワとジョルジュは学院の現状を答えた。



「―――状況はわかりました。だったらやはり、俺達の大目標は”士官学院の奪還”になると思います。」

「そうね……カレイジャスで各地を回れても最終的な拠点は必要でしょうし。」

「この内戦において少しでも状況を良くする……」

「それを続けながら目指していく将来の目標ということだな。」

「正直、厳しいとは思うけど。」

「んー、帝都も近いし守りも固いだろうからねー。」

「だが―――目標というのは大きい程やり甲斐があるものだ。」

「他の誰でもない――”俺達ならではの目標”というのも大きいだろう。」

「ああ……!何とかそこに辿り着ければ―――」

「ふふっ……」

「―――なるほど。これが”Ⅶ組”ですか……」

リィン達の様子をサラ教官は微笑ましそうに見守り、シグルーンは静かな笑みを浮かべ

「……何というか凄いですわね、皆さん……」

「はい……それに互いを信頼しあっているのが目に見えていますね……」

「……私達もいつかそうなるようにみんなともっと仲良くなればいいと思うわ。」

アルフィン皇女とエリスは苦笑し、ゲルドは静かな笑みを浮かべて呟き

「ま、前向きってのが最大の武器でしょうからね。」

セリーヌは静かな表情で呟いた。



「ふふっ、わたしたちも同じ事を考えてたんだ。……そこで提案なんだけど……今後、君達が地上に降りて用事をするついででいいの。各地にいる学院生達に声をかけてこの艦に呼んでもらえないかな?」

「あ……!」

「そうか……それもそうですね!」

「実際、この艦には現在、必要最低限のクルーしかいなくてね。臨時で働いてくれている人達もいずれは艦を降りてしまうらしい。その意味でも、士官学院のみんなに協力してもらいたいんだ。」

「そうして仲間を増やしていけばすぐには無理でも……いずれ―――機会があった時に士官学院を取り戻せる可能性が高められると思うんだ。何より、わたしたち自身の力で。」

「……会長……」

「ん、いいかも。」

「まさに”指針”ですね。」

「――わかりました。しばらく、この艦を拠点に帝国東部の状況を見極める……そうして各地に散らばった学院生たちを集めていく――それを俺達”Ⅶ組”の当面の任務としたいと思います。―――ゲルド、エリス、シグルーン中将閣下。改めてご協力、よろしくお願いします。」

仲間達の意見を纏めたリィンは新たな協力者の面々を見つめ

「ええ。私は私の未来の為にも貴方達について行くと決めたのだから、どこまでもついて行くわ。」

「元よりその所存でこの艦に乗船しました。未熟者ですが、皆様の足を引っ張らないように致しますのでよろしくお願いします。」

「期間限定とはいえ、私も皆様への協力は惜しまないつもりです。改めてよろしくお願いします。」

協力者の面々はそれぞれ答えた。



~現在・カレイジャス・ブリッジ~



「当面の任務は決まったが……まずはどこに向かうかだな。」

「ええ、降りられそうな場所はレグラム、ユミル、ケルディック、ノルド高原……一応、第四機甲師団の拠点にも降りられるのよね?」

「うん、昨日確認したら父さんの方も大丈夫だって。」

アリサに尋ねられたエリオットは頷いて答えた。



「ああ、できれば一回り回ってみたいが……」

「――それなんだけど。実は、皇子殿下から君達に”依頼”も回ってきてるのよね。」

「依頼、ですか?」

「なにそれ。」

サラ教官の言葉を聞いたリィンは首を傾げ、フィーはジト目になった。



「ふふっ。そこの端末を見てみて。」

「端末と言うと―――」

トワの言葉を聞いたエマは仲間達と共にブリッジ内に設置されてある導力端末に視線を向けた。



「これは……導力端末か。」

「学院の授業で習ったが……」

「百聞は一見に如かずよ。そちらにあるからまずは確認してみなさい。」

「ええ、それでは―――」

そして導力端末をアリサが操作し、リィン達は依頼内容を確かめ始めた。



「エプスタイン財団製の端末……授業で使ったのと同じタイプね。」

「凄い……文字が次々と……」

「わたくしも最初は驚きましたわ……」

アリサが操作する導力端末の画面に出る文字を見たゲルドは目を丸くし、セレーネは苦笑し

「導力技術は私達からすれば当然の技術なのですけどね……」

「―――逆に言えば、異なる世界の技術は私達にとって驚くべき技術なのでしょうね。」

ゲルドの反応を見たエリスは苦笑し、エマは真剣な表情で呟いた。



「――出たわ。」

「なるほど……」

「端末だとこういう風に表示されるのか……」

「情報局でも一部はこんな風になってるかな。」

そしてリィン達は依頼内容を確認し終えた。



「ノルド高原にレグラム、ガレリア演習場からの依頼……確かに各地で色々な問題が起きているみたいね。」

「な、なんだか見たような名前が書かれていた気がするんだが……」

「父さんの方面からの依頼もちょっと気になるけど……」

「ノルドに現れた不可思議な魔獣というのはさすがに気になるな……」

「これを全て、皇子殿下が集めて送ってくださったんですか?」

「すごいねー。帝国西部に行ったばかりなのに。」

仲間達が依頼内容を読んで考え込んでいる中、オリヴァルト皇子の手腕にエマとミリアムは感心していた。



「顔の広い人だし、遊撃士協会のネットワークも使っているみたいね。そんな感じで、君達ができそうな依頼を送ってくださるそうだから。やるかどうかは君達に任せるけど緊急度の高いものはやった方がいいかもね。」

「……了解です。正直、助かりました。」

「ふふ、具体的な目標があると我らも動きやすいからな。特に忘れてはならぬのが、士官学院生の安否確認か。」

「うん、わたしからも改めて依頼を出させてもらったよ。学院生の目撃情報も、少しずつ入ってきているんだ。そちらも端末で確認できるから、探す時に役立ててみて。」

「ふうん、便利そうね。」

「ああ、依頼と合わせて定期的にチェックした方がよさそうだ。」

「―――お待たせしましたわ。」

トワの説明を聞いたセリーヌが感心し、リィンが頷いたその時シグルーンがブリッジに現れた。



「シグルーン中将か……―――へっ!?」

「まあ……もしかしてシグルーン様の私服ですか?」

現れたシグルーンの姿―――旅装姿のシグルーンを見たリィンは驚き、セレーネは目を丸くし

「?どうして服を変えたのかしら。」

ゲルドは不思議そうな表情で尋ねた。



「さすがに甲冑を着ていては目立ちますからね。皆さんの行動を阻害しない為にも私服に着替えさせて頂きましたわ。どこかおかしい所はありますか?」

「いやいや、とんでもない!」

「あはは……すごく似合ってますよ。」

「少なくとも騎士には見えないな。」

「ああ……これならオレ達の服装とも大して変わらないから目立たないだろうな。」

シグルーンの問いかけを聞いたマキアスとエリオットはシグルーンの旅装姿に見惚れた様子で答え、ユーシスの言葉にガイウスは頷き

「いや……本気で見違えたというか……ゼルギウス将軍閣下も今のシグルーン中将閣下を見れば、惚れ直すと思います。」

リィンは苦笑しながら答えた。

「あら……フフッ、ありがとうございます。」

リィンの答えを聞いたシグルーンは目を丸くした後微笑んだ。



「リィン、そなた………」

「ついに人妻にまで手を出す気?」

ラウラは真剣な表情でリィンを見つめ、フィーはジト目でリィンを見つめた。

「リ・ィ・ン~~~~~??」

「に・い・さ・ま~~~~??」

「痛たたっ!?な、何でそこで二人が怒るんだよ!?」

膨大な威圧を纏ったアリサとエリスに両腕をつねられたリィンは反論したが

「「ギロッ(ジロッ)。」」

「う”…………」

二人にギロリと睨まれると表情を引き攣らせ、その様子を見ていたその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。



「フフッ、エリスさんがいる事で色々な意味で2倍になりましたね。」

「2倍どころの話じゃないと思うんだけどな~。」

「ア、アハハ……」

その様子を微笑ましく見守っていたエマの言葉を聞いたミリアムは口元に笑みを浮かべて答え、セレーネは苦笑し

「?エリスがいる事で、倍以上になるというのは一体どういう意味なのかしら?」

「フム……何と説明すればよいのだろうな……」

ゲルドに尋ねられたラウラは困った表情をした。



「アハハ……―――それじゃあ、行きたい所があったらわたしに声をかけてね?それと、船倉エリアでジョルジュ君が工房室を準備してくれているから。ARCUSやクオーツはそちらの方で準備してね。」

「他にも、艦内の施設は一度確認しておくといいわね。今後、君達の仲間が増えてきたら使える設備もあるでしょうし。」

「わかりました。では地上に降りるメンバーは――――」

その後メンバーを編成し、艦内を見回ったリィンは仲間達と共に各地に散っている士官学院生達との合流や依頼の消化等を開始した。 
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