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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第78話

~カレイジャス・ブリーフィングルーム~



「ヴァイスお兄さ―――いえ、クロスベル側から様々な技術がメンフィルに提供されたのよ。魔導、魔術技術……そのどれもがメンフィルにはなかった技術でメンフィルはあらゆる面で恩恵を受けたわ。で、技術提供をする代わりにクロスベル側がメンフィルに求めたのは二大国―――つまりエレボニア帝国とカルバード共和国に一緒に攻め入る事や兵器の提供等を要求してメンフィルは快く同盟を組んだのよ♪」

「なんだとっ!?」

「技術提供で二大国に戦争を仕掛ける事を決めるなんて……」

「……メンフィルがそこまでするほどの”技術”……一体どんなものなのよ。」

レンの説明を聞いたトヴァルは厳しい表情で声を上げ、ジョルジュは信じられない表情をし、セリーヌは目を細め

「なお、技術提供をして頂いたクロスベルにも既に報酬の一部としてメンフィルの兵器―――ユミルに現れた戦艦を含めた多くの兵器を贈与しました。」

「なっ!?」

「あの戦艦の部隊をクロスベルまで所有しているのか……!?」

「……かの戦艦を使えば、正規軍、領邦軍共に圧倒できるであろうな……」

「そだね。多分見た感じでも火力が既存の兵器とは比べ物にならないと思うし、何より空からの攻撃だと戦車(アハツェン)を主力に使っている正規軍もそうだし、機甲兵を使っている領邦軍も攻撃が届かず、一方的に攻撃されて”全滅”するだろうね。」

エリゼの話を聞いたクレア大尉とラウラは信じられない表情をし、アルゼイド子爵は厳しい表情で呟き、フィーは真剣な表情で推測した。

「なお制圧した二大国の領地はメンフィルと4:6の割合で分ける事になっていまして。”戦争回避条約”の中にあるラマール州と”ルーレ”を含めたメンフィルに贈与されるノルティア州の領地はクロスベルが納める事になっていますわ。ちなみに先程の説明にあった割合の内、6割の方がクロスベルです。」

「!!…………」

「嘘でしょう!?ルーレがクロスベルの領地になるなんて!?」

ルイーネの説明を聞いたシャロンは目を見開いて真剣な表情でルイーネ達を見つめ、アリサは信じられない表情で声を上げた。



「し、しかもエレボニア帝国どころかカルバード共和国にまでメンフィルと共に戦争を仕掛けるって……!」

「そんな事になったら西ゼムリア大陸は大混乱に陥るぞ!?」

「あ、あんた達……!あんた達の仕掛ける戦争によってどれだけの民達が苦しむと思っているのよ!?」

不安そうな表情をしているエリオットに続くようにマキアスは表情を青褪めさせて声を上げ、サラ教官は怒りの表情でルイーネ達やレン達を睨んだ。



「心外ねぇ。レン達―――メンフィルが”その気になれば”、”二大国如き”2,3日くらいあれば簡単に滅ぼせるし、メンフィルは基本戦争の際、エレボニアと違って”百日戦役”の時のようにあからさまに民達に危害を加える事はしないし、制圧した領地の民達も自国の民として大切に扱うわよ。」

「―――暴論になりますが、エレボニア帝国、カルバード共和国共に内戦状態です。そこに第3者である私達が二大国を滅亡させて、”新たな秩序”をもたらせば、少なくとも民達には平和が訪れますわ。」

「そ、そんな……!」

「クッ……!――レン姫!そのような事をすれば、貴国と同盟を結んでいる”不戦条約”を提唱したリベール王国が黙っているとお思いですか!?」

レンとマルギレッタの説明を聞いたアルフィン皇女は表情を青褪めさせ、クレア大尉は厳しい表情で問いかけた。



「――黙っているも何もリベール王国はメンフィルとクロスベルが二大国に戦争を仕掛ける事を承認して、二大国との国境であるハーケン門、ヴォルフ砦のメンフィル軍の通過を認めましたわ。」

「なっ!?”不戦条約”を提唱したリベール王国がですか!?」

「……一体どうやってアリシア女王陛下達を説得したんだい?」

シグルーンの説明を聞いたリィンは驚き、オリヴァルト皇子は厳しい表情で尋ねた。



「IBCが実行した例の資産凍結の件があるでしょう?その時にリベールも経済恐慌が起こりかかっていてね。そこに同盟国であるレン達―――メンフィル帝国が救いの手を差し伸べたのよ。」

「まさか援助した事を盾にリベールに承認させたのですか?」

レンの説明を聞いたアルゼイド子爵は真剣な表情で尋ね

「それだけではありませんわ。―――メンフィルがリベールに対して”謝罪金”として長期間メンフィルの税金の一部―――それもリベールにとっては20倍以上にあたる1年の国家予算を支払う事に加え、メンフィルとクロスベルが二大国との戦争によって得た領地の一部をリベールに贈与するという内容があった事が一番の理由だと思われますわ。」

「なっ!?」

「ふ、普通に考えてもありえませんわ、そのような滅茶苦茶な内容の契約は……!」

「だけどその滅茶苦茶が通じるのがメンフィル………」

「クッ……まさか我らの知らぬ所でそのような事が起こっていたとは……!」

ルイーネの答えを聞いたクレア大尉は厳しい表情で声を上げ、信じられない表情をしているセレーネの言葉にフィーは真剣な表情で答え、ラウラは唇を噛みしめた。



「なるほどね……リベールにとっては良い事ずくめだから、その件を知ったら確実にリベール政府の役人たちは全員賛成すると確信している上リベールのデメリットはないから反対する理由も見当たらない為、アリシア女王陛下達も仕方なく認めたと言う事か…………」

「………それにリベール王国は”百日戦役”の件で、エレボニア帝国に対して色々と思う所があったからかもしれませんわね……………」

オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って呟き、アルフィン皇女は辛そうな表情で呟いた。

「―――それと。遊撃士協会もメンフィル、クロスベルによる二大国侵攻については黙認するとの事です。」

「何だとっ!?」

「ゆ、遊撃士協会まで……!」

「一体どうやって遊撃士協会を黙らせたのよ!?」

エリゼの話を聞いたトヴァルは声を上げ、エリオットは表情を青褪めさせ、サラ教官は厳しい表情で尋ねた。



「―――レマン自治州にある遊撃士協会の本部に制圧したエレボニアの地域内に情報局の手によって次々と撤退させられた遊撃士協会の支部の復活の許可や100兆ミラを”寄付”する話を持ち掛けたら、案外素直に応じてくれたそうよ♪勿論、戦争を起こした際は可能な限り市民達の被害を抑える事や、”百日戦役”のようにあからさまに市民達に危害を加えない事と市民達の避難誘導を行う遊撃士達の妨害はしないという誓約はしたわよ。」

「っ!!」

「うわっ!?遊撃士協会はあの件についてまだ根に持っていたんだ!?」

「……そしてそのツケがよりにもよって今になって返ってきたんだ。」

レンの答えを聞いたクレア大尉は辛そうな表情で唇を噛みしめ、ミリアムは驚き、フィーは真剣な表情で呟き

「クソッ!本部の連中は何を考えているんだ!?支部の復活と金の為だけに戦争を黙認するなんて……!」

「エレボニア帝国の国家予算をも軽く越えると思われる”寄付金”だとさすがに考えるでしょうし、加えて支部の撤退の件で元々エレボニア帝国自体に対していい感情を持っていなかった事も要因でしょうね……」

トヴァルは怒りの表情になり、サラ教官は厳しい表情で考え込んだ。



「そ、そうなると唯一仲裁してくれる組織で残っているのは”七耀教会”だけじゃないのか!?」

「―――いえ、七耀教会も恐らく仲裁に動かないわ。」

マキアスの言葉を否定するようにセリーヌは静かな表情で答えた。



「セ、セリーヌ……?一体どういう事……?」

「何故七耀教会が動かない事がわかるんだ?」

セリーヌの答えを聞いたエマは不安そうな表情をし、ガイウスは真剣な表情で尋ねた。

「忘れたのかしら?”七耀教会が崇めている女神”――――”空の女神(エイドス)”自身がエレボニア帝国の内戦やメンフィルとの外交問題について介入するつもりはないって本人が言っていた事を。」

「あ…………」

「確かに本人も言ってたね。」

「その代わりに私とエマに”餞別”を授けてくれたのであったな……」

セリーヌの指摘を聞いてある事を思い出したアリサは表情を青褪めさせ、フィーは真剣な表情をし、ラウラは複雑そうな表情をし

「め、女神様が本当にそのような事を……!?」

アルフィン皇女は表情を青褪めさせた。

「崇めている存在であるエイドス様自身が介入しないのならば、当然七耀教会もエイドス様の意を組んで動かないのでしょうね……」

「クッ……あんなふざけた女神でも、”空の女神”はゼムリアの多くの人々が崇める”女神”。七耀教会―――いや、ゼムリア大陸全土に対して絶大な発言権を持っているのは確かだな……!」

セレーネは重々しい様子を纏い、ユーシスは唇を噛みしめた。



「……本当に”空の女神”がそのような事を言ったのかい?」

「はい……確か”空の女神”御自身は介入する”権限”がないと仰っていました。」

「”介入する権限がない”…………」

「一体どういう意味なんだろう……?」

オリヴァルト皇子の質問に答えたリィンの答えを聞いたアルゼイド子爵とトワは考え込み

「うふふ、元々”空の女神”は”ゼムリア大陸自身”を護る為にゼムリアの地に降臨したのだから、人々の愚かな争いに介入する訳がないでしょう?」

「え…………」

「……その口ぶりだともしかして空の女神と接触して、彼女がゼムリアの地に降り立った理由も聞いたのかい?」

レンの答えを聞いたアルフィン皇女は呆け、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。



「接触するも何も向こうからメンフィル大使館にいるパパ―――メンフィル大使リウイ・マーシルンを訪ねてきたそうよ?ゼムリア大陸内で活動する為にレン達―――メンフィルに偽の戸籍を作ってもらう為に。」

「ええっ!?」

「め、女神様がメンフィルに!?」

「しかも何故リウイ陛下に……」

レンの説明を聞いたアリサとエリオットは驚き、ガイウスは目を丸くした。



「さあ?それこそ言葉通り”女神のみぞ知る”よ。で、空の女神がレン達―――メンフィルとクロスベルの二大国侵攻について介入しない理由だけど…………『私は本来ならこの時代に存在してはいけない者。この時代の事はこの時代に生きる人々が決める事……それが自然の”理”です。』―――そうパパに伝えたそうよ。」

「!!」

「ほ、”本来ならこの時代に存在してはいけない者”……?」

「まるで自分自身がこの時代にいる存在ではない言い方に聞こえるけど……」

「………………!(まさか……空の女神は”時代を越えて来た”の!?)」

レンの答えを聞いてすぐに事情を察したオリヴァルト皇子は目を見開き、レンの答えの意味がわからなかったマキアスとジョルジュは戸惑い、意味がわかってしまったセリーヌは目を細めた。



「ハハ…………なるほどね。”至宝”が絡んだリベールの”異変”に介入しなかった”眷属”の件を考えると、”空の女神”自身が人々の愚かな争いに介入する訳がないね…………―――レン姫、一つ聞きたいのだけどいいかな?」

「何かしら?」

「”空の女神”が”今のゼムリア”に現れたのはやはり”彼女”が関係しているのかい?」

「ええ。ちなみに”空の女神”の両親や先祖も一緒に来ているわよ♪」

「そうか……”彼ら”もこの時代に来ているのか…………ハハ……喜んでいいのやら、悪いのやら。」

「お、お兄様……何か知っていらっしゃるんですか……?」

レンとオリヴァルト皇子の会話が気になったアルフィン皇女は戸惑いの表情で尋ねたが

「……まあね。―――ただ悪いが”その件”についてはみんなには教えられない。空の女神がゼムリアの地に現れた”方法”が第3者に知れ渡れば、ゼムリア大陸自身の”歴史”が滅茶苦茶になる可能性が非常に高いからね。」

「殿下、それは一体どういう意味なのですか?」

「……………」

「ブーブー。誰にも教えないから、ボク達にも教えてよ~。」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたアルゼイド子爵は尋ね、クレア大尉は真剣な表情で考え込み、ミリアムは不満そうな表情で言った。



「うふふ、話が随分逸れてしまいましたけど……―――これでおわかりでしょう?エレボニア帝国とカルバード共和国はまさに”四面楚歌”の状況である事を。」

「唯一仲裁をしてくれそうな西ゼムリアの組織や国家で残っているのは”レミフェリア公国”くらいだけど”不戦条約”を提唱したリベールが沈黙し、七耀教会や遊撃士協会も沈黙した今の状況で、仲裁する”義理”もない上、”利”もなくエレボニア帝国とカルバード共和国の為に果たして仲裁してくれるかしらねぇ?」

「クッ……!」

「今まで動きがなかったのは、”百日戦役”のように第三者からの仲裁をさせない為に裏で動き回っていたのね……!」

「チッ、徹底してやがるな……!」

ルイーネとレンの問いかけを聞いたクレア大尉は唇を噛みしめ、サラ教官とトヴァルは厳しい表情でレン達を見つめた。



「…………レン姫、ルイーネ殿。メンフィルがエレボニアを滅ぼそうと戦争を仕掛ける事は理解できますが……クロスベルと共に二大国を滅ぼそうとする事は”筋が通らない”のではありませんか?」

するとその時考え込んでいたリィンが真剣な表情でレン達を見つめて問いかけた。 
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