| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

―運命の決闘者―

 エドのプロデュエリストツアーに万丈目と同行して数日。何とか仕事に慣れてきたどころか、万丈目は目覚ましい仕事をしてみせ、もはや本職の秘書のようでもあった。俺は今まで同様に雑用をこなしていたが、俺自身の目的であるエドへの謝罪を果たすことは出来ずにいた。

 そんなある日。エドにデュエル・アカデミアでの、講演を兼ねたデュエルの仕事が舞い込んできた。対戦相手はかの十代であり、どうやら俺と万丈目はそこでお役御免になりそうで。仕事が立て込んでいるために、いつもエドが使っている船ではなく、ヘリコプターでの移動となり、遂に当日を迎えたのだが――

「エドの野郎はどこに行ったぁ!」

 千里眼グループのヘリポートに万丈目の怒声が響く。そろそろヘリコプターの出発時刻だというのに、エドの姿はどこにも見あたらなかった。刻一刻と近づいてくる出発時刻に、万丈目はイライラと地を踏みつける。

「チッ、仕方ない……おい遊矢。俺様がアカデミアで開始時刻を遅らせておく。貴様はふん縛ってもエドの野郎を連れてこい!」

「……わかった!」

 万丈目の指示にひとまず従うことにすると、スタッフと万丈目は先にアカデミアへとヘリで移動していく。一部のスタッフと俺はこの街に残り、エドの捜索を続けることとなったが……やはりどこにも見当たらず。

「まさか……」

 街中を探したような錯覚に駆られるものの、探していない場所がもう一つあった。万丈目とともに目撃していた、エドが極秘で特訓しているデュエルステージ――天啓に導かれるように走り、路地裏を越えていくと、そこには。

「エド!」

「……遊矢か」

 デュエルステージに一人立つエドの姿がそこにはあり、何をしているんだ、と聞こうとした時――俺はその場に満ちる気配に気づく。独特の無の気配とも言うべきこれは、もはや間違えようもなく。

「僕もペガサス会長から聞いて知っている……敵だ」

「ダークネスなのか……?」

 デュエルステージに立ったままのエドを救おうとしたものの、何故かデュエルステージに昇ることが出来ない。俺を相手にしてる訳ではないらしく、ならばなおさらエドが危険だ――と焦る俺に対して、エドの言葉が飛んだ。

「異世界でのことなら僕は気にしていない。全て僕の弱さが招いたことだ」

 エドは、こちらの心を見透かしたようにそう呟いた。異世界におけるデュエルで――俺はエクゾディオスの力で持って、この手でエドを消滅させていた。とても許されることではないそれを、エドは自身の弱さが招いたことだと言ったのだ。

「だから僕は強くなる。何度負けようがこのヒーローたちと。だから――」

 ステージを覆い尽くしていた闇が一点に収束していき、エドの対面のデュエルステージへと集まっていく。いつしかその闇は人間の形となっていき、デュエルディスクを装着していった。

「――もう一度セメタリーへ送り返してやる。DD!」

 闇が収束し終わった後にそこにいたのは、かつてのプロデュエリスト《DD》。チャンプにまで上り詰めた後に行方不明になった彼は、確かエドの後見人という顔も持っていて。二人の間に何があったかは知らないが、どちらにもデュエルの準備を完了させる。

『デュエル!』

エドLP4000
DD LP4000

「僕の先攻!」

 デュエルディスクが選んだ先攻はエド。五枚のカードをデッキから引き抜き、一瞬だけ確認した後にすぐさま行動に移る。

「僕はモンスターをセット。カードを二枚伏せて、ターンエンド!」

「私のターン。ドロー」

 デュエルの進行以外は何も語ることはなく、DDはニヤリと不気味な雰囲気を漂わせながら、旧型のデュエルディスクからカードを引き抜く。先のエドの発言を信じるならば、ダークネスは死者をも蘇らせる力があるのか。それとも、DDはダークネスに取り込まれていたのか。

「このモンスターは手札からHEROを墓地に送ることで、特殊召喚出来る。現れろ《V・HERO ファリス》!」

「HEROッ……!」

 DDの手札から特殊召喚されたのはHERO系モンスター。奇しくもHERO使いのミラーマッチとなったこのデュエル、エドが奥歯を噛み締めつつ相手を睨みつけたが、DDは淡々とデュエルを進行させていく。

「《V・HERO ファリス》が特殊召喚に成功した時、デッキからV・HEROを墓地に送ることが出来る。バトルだ、ファリス」

 十代やエドが使うHEROとは違う、新たなHEROである《V・HERO》。恐らく下準備だろう動きである、着々と墓地へと送られていく姿を見せながら、同時にエドの布陣へと攻撃を仕掛けた。

 セットモンスターに二枚のリバースカード。そこに何の躊躇もなく攻撃したファリスは、その腕から衝撃波を放つと、予想に反してセットモンスターを軽々と破壊する。

「破壊されたセットモンスターは《Dボーイズ》。このモンスターがリバースした時、デッキから新たな《Dボーイズ》を特殊召喚する」

 セットモンスターのまま破壊されたモンスター《Dボーイズ》だったが、エドのフィールドには即座に二体のモンスターが現れた。ただしその効果にはデメリットがあるが、エドのリバースカードがさらにもう一枚表側となっていた。

「《Dボーイズ》は自身のエフェクトで特殊召喚された時、その数×1000ポイントのダメージを受ける。だが発動していたリバースカード《レインボー・ライフ》の効果により、ダメージは回復へと変換される」

エドLP4000→6000

 手札を一枚コストにするものの、受けるダメージをライフに加える罠カード《レインボー・ライフ》により、ライフを2000ポイント回復しながら、エドはフィールドに二体のモンスターを揃える。

「バトルを終了。カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「僕のターン、ドロー!」

 最初の攻防を経てエドのフィールドには《Dボーイズ》が二体にリバースカードが一枚、DDのフィールドは攻撃力1600の《V・HERO ファリス》に、同じくリバースカードが一枚。

「僕は《D-HERO ダイヤモンドガイ》を召喚!」

 そしてターンが一巡すると、エドの主力モンスターがフィールドに現れる。全身に金剛石を埋め込んだその英雄は、マントを翻しながら《Dボーイズ》二体を守るように立つ。

「ダイヤモンドガイのエフェクト発動。デッキトップを捲り、魔法カードならば墓地に送る。ハードネス・アイ!」

 エドが次のターンに引くべきカードを見通し――魔法カード《終わりの始まり》だったため、そのカードはエドの墓地へと送られる。次のターンのスタンバイフェイズでの発動が確定され、エドはさらに一枚のモンスターをデュエルディスクに置いた。

「さらに三体のモンスターをリリース! カモン、《D-HERO ドグマガイ》!」

 エドの切り札の一種たる《D-HERO ドグマガイ》。三体のモンスターのリリースという重い召喚条件にもかかわらず、僅か二ターン目に登場したとともに、フィールドをその威圧感で制圧する。

「バトル! ドグマガイで《V・HERO ファリス》に攻撃! デス・クロニクル!」

「…………」

DD LP4000→2200

 ドグマガイの一撃にたまらずファリスは吹き飛び、DDのライフポイントは半分ほど消し飛んだ――瞬間、DDのフィールドに新たなモンスターが現れる。

「私がダメージを負った時、墓地のV・HEROは幻影としてフィールドに現れる」

「幻影……?」

 しかしてフィールドに現れた二体のHEROは、どちらもモンスターのように力強く実体化されておらず。事実モンスターカードゾーンではなく、ヨハンのかの【宝玉獣】のように、魔法・罠カードゾーンに置かれているようだ。

「さらにファリスが破壊されたことにより、リバースカード《出幻》。デッキから《V・HERO ヴァイオン》を特殊召喚する」

 さらにファリスがドグマガイに戦闘破壊されたことにより、V・HERO専用であろう《ヒーロー・シグナル》の亜種、《出幻》により実体化したヒーローも現れる。今度は魔法・罠ゾーンではなく、きっちりとモンスターカードとしてだ。

「そして《V・HERO ヴァイオン》は特殊召喚に成功した時、デッキからV・HEROを墓地に送る」

「……メイン2。僕は《D-フォーメーション》を発動し、ターンを終了する」

 エドのバトルフェイズだということを忘れるほどに、DDは相手ターンで怒涛の効果発動を果たし。エドは永続魔法《D-フォーメーション》を発動し、警戒しているような表情でターンを終了する。

「私のターン。ドロー」

「スタンバイフェイズ、ドグマガイのエフェクト発動! 相手ライフを半分にする! ライフ・アブソリュート!」

DD LP2200→1100

 その高い攻撃力だけではなく、ライフポイントを半分にするという恐るべき効果。ドグマガイにライフポイントを半分にされ、エドとDDのライフ差は約5000ともなる。さらにその効果は、ライフを半分にする、というダメージとはまた違う効果のため、どうやらV・HEROの効果も発動しないらしく。

「私は《V・HERO グラビート》を召喚」

 しかしそのライフポイント差だろうと、DDは飄々としたまま――むしろ意識があるか不安になるほどの――新たなV・HERO、ヴァイオンを召喚する。それによって、DDのフィールドはモンスターカードゾーンには《V・HERO グラビート》に《V・HERO ヴァイオン》。そして魔法・罠ゾーンには、幻影として二体のV・HEROが控えている。

「そして《V・HERO グラビート》の効果発動。このモンスターをリリースすることで、幻影となったV・HEROを二体解放する!」

 召喚されるや否や《V・HERO グラビート》がリリースされ、幻影となっていた二体のV・HEROがモンスターとなり、モンスターカードゾーンとなって実体化する。そのV・HEROたちのレベルは3、グラビートやヴァイオンは4と、恐らく幻影となるレベル3にそれをサポートするそれ以外、という構成か。

 そして幻影から解放されたことにより、V・HEROたちの脅威が解禁される。

「幻影から解放された《V・HERO ポイズナー》の効果。相手モンスターの攻守力を半分にする!」

 幻影として現れていたうちの一体、《V・HERO ポイズナー》のレーザーがドグマガイに放たれると、その攻撃力と守備力が永続的に半減する。ただし下級V・HEROの攻撃力は軒並み低く、半減したところでドグマガイの突破は不可能。

「さらにもう一体の《V・HERO インクリース》の効果。デッキからV・HEROを特殊召喚出来る。現れろ、《V・HERO ヴァイオン》!」

 二体目のレベル3V・HEROの効果は、新たなV・HEROをデッキから特殊召喚する効果。その効果によって《V・HERO ヴァイオン》が、ヴァイオンの特殊召喚時のV・HEROを墓地に送る効果を発動しながら、DDのフィールドにはV・HEROが四体揃う。

 ――そしてそれは、レベル3のモンスターが二体と、レベル4のモンスターが二体ということと同じで。

「レベル3のV・HERO二体、レベル4のV・HERO二体で、それぞれオーバーレイ・ネットワークを構築!」

「DD……」

 二体と二体がそれぞれ重なっていくV・HEROの姿を見ながら、エドは一瞬だけどこか寂しげな表情を見せた。それにDDが気づくことはなく、エドの表情もこちらの気のせいだったかと思うほど一瞬で。

「ダブルエクシーズ召喚!」

 そして二つのエクシーズ召喚により、DDのフィールドには二体の――予想通り、《ナンバーズ》が現れていた。ダークネスの尖兵と分かるその独特なオーラを放ち、エクシーズモンスターである《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》に《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》がフィールドに鎮座した。

「DD……魂まで敵に売ったか!」

「……そうさ、エド」

 今まで淡々とデュエルを進行していたDDが、遂に薄気味悪い笑みを浮かべながらエドの問いに答える。驚愕するエドに対して、さらにDDは言葉を重ねていく。

「ダークネスの尖兵となることで、私はBloo-Dなどを遥かに越す力を手に入れた! ナンバーズの力を!」

 ナンバーズを自在に操ってみせるDDは、先のレイのようにナンバーズに操られているわけではなく、もはやミスターTと同等の存在になっているらしく。耳障りな高笑いと闇に溶け込む身体が、俺とエドの目と耳へと届く。

「私は魔法カード《エクシーズ・ギフト》を発動し、カードを二枚ドロー。そして体感させてやろう、ナンバーズの力を……ラプソディ・イン・バーサークの効果を発動!」

 二体のエクシーズモンスターの素材を一枚ずつ取り除くことで、二枚のカードのドローに変換する魔法カード《エクシーズ・ギフト》で手札を補充しながら。さらにもう一つのエクシーズ素材を使い、ナンバーズの片割れこと《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》が効果を発動する。

「相手の墓地のカードを除外し、さらに攻撃力1200ポイントアップの装備魔法として、アシッド・ゴーレムに装備する!」

 エドの墓地のカードを除外する効果と、他のモンスターの装備カードとなるどちらも独特な二種類の効果。除外されるカードは、エドの主力モンスターたるダイヤモンドガイか――と思いきや、選択されたカードは魔法カード《終わりの始まり》。ダイヤモンドガイの効果で墓地に送られていた、エドに言わせれば未来に送られたカードだった。

「除外すれば、いくらダイヤモンドガイの効果だろうと発動しない。そして、ラプソディ・イン・バーサークを装備したアシッド・ゴーレムの攻撃力は、4200!」

 未来に送るダイヤモンドガイの効果を、墓地から除外することで対応し、エドが誇る切り札の一種たるドグマガイには、その攻撃力を大幅に勝ることで対応する。柔も剛も隙を見せないその戦術に、DDはエドの戦術を知り尽くしているのだ――と、確信する。

「バトル。アシッド・ゴーレムでドグマガイに攻撃!」

「ぐぁぁっ!」

エドLP6000→3500

 さらにドグマガイの攻撃力は、幻影から解き放たれた《V・HERO ポイズナー》の効果により、本来の半分しか発揮出来ておらず。《レインボー・ライフ》で回復していなければ、致命傷ともなるほどのダメージだった。

「クク……私はカードを一枚伏せ、ターンエンド」

「くっ……僕のターン、ドロー!」

 これでエドのフィールドには、ドグマガイの破壊に反応して、専用のカウンターが一つ乗った永続魔法《D-フォーメーション》に伏せカード。DDのフィールドは《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》を装備した《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》に、リバースカードが一枚。

「僕は《デステニー・ドロー》を発動! D-HEROをセメタリーに送り二枚ドロー!」

 エドが優勢のまま攻め立てていた状況はまるで幻影だったかのように、一転して二体のナンバーズを擁するDDの圧倒的有利と化した。ただしドグマガイが攻め立てたライフは、エドの攻めが幻影ではなかった、と証明しているようであり。

「さらにセメタリーの《D-HERO ディアボリックガイ》のエフェクト発動! このカードをセメタリーから除外することで、デッキから同名カードを特殊召喚する! カモン、アナザーワン!」

 DDの残るライフは僅か1100。いくらナンバーズを持っていようと、そのライフを0にしてしまえばエドの勝利だ。ダイヤモンドガイの効果の《終わりの始まり》が発動出来なかったのはダメージだが、エドは《デステニー・ドロー》の効果により、手札の損失なく《D-HERO ディアボリックガイ》を特殊召喚してみせる。

「さらに《D-HERO ディバインガイ》を召喚!」

「ほう……?」

 ただしディアボリックガイは守備表示なことに加え、そもそも攻撃を得手としたD-HEROではない。代わりに攻撃を担当するモンスターとして、背中に銀色のチャクラムを背負ったD-HEROが召喚された途端、DDが少しだけ顔色を変える。

「懐かしいな。ディバインガイ……それで私を殺したのだから」

「心配しなくとも、もう一度引導を渡してやる! フィールド魔法《ダーク・シティ》を発動!」

 十代の使う摩天楼と同義のフィールド魔法。路地裏の奥底のデュエルスタジアムが、イギリスの都市のような風情を漂わせたフィールドに変わっていき、その建物の一つにディバインガイは鎮座していた。

「バトル! ディバインガイでアシッド・ゴーレムに攻撃!」

 そしてフィールド魔法《ダーク・シティ》の効果を得ることで、自らより攻撃力の高いモンスターに攻撃する時、ディバインガイは攻撃力を1000ポイントアップさせる。それでもディバインガイの攻撃力は2600――4200のアシッド・ゴーレムには遠く及ばない。

「ディバインガイのエフェクト発動! このモンスターが攻撃する時、相手フィールドの装備カードを破壊し、500ポイントのダメージを与える!」

「…………」

DD LP1100→600

 ディバインガイが背負ったチャクラムが放たれると、先んじてアシッド・ゴーレムの装備カードとなっていた《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》を破壊し、さらに残り少ないDDのライフにもバーンダメージを与えていく。

「さらにリバースカード《D-チェーン》! 発動後装備カードとなり、その攻撃力を500ポイントアップさせる!」

 さらにエドのフィールドに伏せられていた、リバースカード《D-チェーン》が発動され、ディバインガイの攻撃力はさらに500ポイントアップする。ラプソディ・イン・バーサークを失ったアシッド・ゴーレムの攻撃力は3000ポイントであり、二つの強化を得てディバインガイは3100ポイント。

DD LP600→500

 たかだか100ポイント程度の差ではあったが、それでもディバインガイはアシッド・ゴーレムを打倒する。さらにディバインガイに装備された《D-チェーン》は、その100ポイントを重要とした効果を持ち合わせていた。

「《D-チェーン》を装備したモンスターが相手モンスターを破壊した時、相手のライフに500ポイントのダメージを与える!」

 DDのライフポイントはディバインガイのバーンと攻撃により、ちょうど《D-チェーン》のバーンダメージ分500ポイント。ディバインガイが装備した鎖を、DDの心臓めがけて投げ放ち――

「何!?」

「リバースカード《ナンバーズ・ウォール》を発動していた。このカードがある限り、ナンバーズはナンバーズでしか破壊されない!」

 ――《D-チェーン》を破壊されなかったアシッド・ゴーレムが受け止め、DDのライフポイントは500ポイントを残し、エドのバトルフェイズは終了してしまう。ナンバーズ以外のモンスターとの戦闘破壊耐性と、全般的な効果耐性――ナンバーズを持っていないこちらが、あの《ナンバーズ・ウォール》に対抗する手段は、あの永続罠カード自体を破壊することしかない。

「こちらも二度も同じ手で死にたくはないんでねぇ。さらに私がダメージを受けたことで、墓地の英雄たちが幻影となって蘇る!」

「……そんな吹けば飛ぶような奴らを、英雄と認めるわけにいくか! カードを一枚伏せ、ターンエンド!」

 さらにDDにトドメを差しきれずにダメージを与えたことで、DDのフィールドにまたもや幻影となって《V・HERO》たちが現れる。これでエドのフィールドには、ディバインガイにディアボリックガイ、そして《ダーク・シティ》に《D-チェーン》、カウンターが一つ乗った永続魔法《D-フォーメーション》とリバースカード。

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時、アシッド・ゴーレムのエクシーズ素材は一つ取り除かれる」

 DDのフィールドは、今し方エクシーズ素材を全て失った《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》に、永続罠《ナンバーズ・ウォール》に幻影となった《V・HERO》が三体。ライフポイントはエドが3500でDDが500ポイントと、圧倒的にエドが優勢ではあったが……

「アシッド・ゴーレムは破滅のナンバーズ。エクシーズ素材を取り除かなくては、攻撃すら許されない」

 DDの宣言した通りにアシッド・ゴーレムは沈黙し、ピクリとも動かなくなっていった。《エクシーズ・ギフト》に自身の効果により、二つのエクシーズ素材はもう失われたために。

「だがエド。私の破滅は既にお前の手で訪れている。……ならばその破滅、お前にやろう。魔法カード《強制転移》を発動!」

 魔法カード《強制転移》。ピクリとも動かなくなったアシッド・ゴーレムが、次なる瞬間にはエドのフィールドへと移行する。そしてエドのフィールドのモンスターを一体、DDのフィールドへと移す必要があるのだが……アシッド・ゴーレムのコントロールを得たエドが、突如として全身に痛みが伝わったかのように苦しみだした。

「痛いか? 熱いか? それが私に訪れた破滅だ。お前に殺されたあの業火の!」

「っ……僕は……ディアボリックガイを選択!」

 しかしてエドはその問いには答えようともせず、痛みに苦しみながらも《強制転移》の効果処理を行っていく。そして結果としては、エドの《D-HERO ディアボリックガイ》とDDの《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》のコントロールが入れ替わる、という結果に終わり。

「業火……殺された……?」

「そうだ。エドは殺したのだよ、この私を。私は《V・HERO マルティプリ・ガイ》を召喚!」

 話の見えない俺がつい呟いた俺の言葉に反応しながらも、DDは新たなV・HEROを通常召喚する。そんなDDを、エドが痛みに耐えながら睨みつける。

「それは……お前が僕の父を殺したからだろう……!」

「確かに。確かになぁ。それでもお前は、私というもう一人の父を殺したのに変わりはない。フィールドの《V・HERO》をリリースすることで、幻影となった《V・HERO》を解き放つことが出来る! 現れろ《V・HERO インクリース》!」

 幻影となった《V・HERO》は、モンスターゾーンにいる《V・HERO》をリリースすることで、幻影から解き放つことが出来るらしく。通常召喚された《V・HERO マルティプリ・ガイ》をリリースすると、幻影となっていた《V・HERO インクリース》が代わりにフィールドへと現れる。

「《V・HERO インクリース》の効果により、デッキから《V・HERO グラビート》を特殊召喚。さらにグラビートをリリースすることで、幻影となっているV・HEROを二体、フィールドに特殊召喚する!」

 先のターンでも効果を発揮していたインクリースの効果により、デッキから新たなV・HERO――《V・HERO グラビート》が特殊召喚される。自身をリリースすることで、幻影となった《V・HERO》を二体解き放つ効果を持ち、さらにV・HEROが展開されていく。

「幻影から解き放たれた《V・HERO ミニマム・レイ》と二体目のインクリースの効果。相手のレベル4以下のモンスターを破壊し、デッキから新たなV・HEROを特殊召喚する!」

 現れた二体のV・HEROがそれぞれ効果を発動し、《V・HERO ミニマム・レイ》はエドのフィールドのレベル4以下のモンスター――つまり《D-HERO ディバインガイ》をその頭部からのレーザーで破壊し、二体目のインクリースは新たな《V・HERO ヴァイオン》を守備表示で特殊召喚する。

「ぐっ……だがディバインガイが破壊されたことで、《D-フォーメーション》にカウンターが乗る!」

「ふん……《V・HERO ヴァイオン》は特殊召喚された時、デッキからレベル4以下のV・HEROを墓地に送る。さらに魔法カード《タンホイザーゲート》を発動!」

 フィールドがほとんどがら空きという状態から、V・HEROはあっという間にDDのフィールドを埋め尽くしながら、エドの布陣をボロボロにしてみせる。一応は永続魔法《D-フォーチュン》に二つ目のカウンターを乗せたり、攻撃力3000の《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》が控えてはいるが、DDから《強制転移》で送りつけられてきた、今なおエドに苦しみを与え続けるモンスターを信頼するわけにはいかない。

「《D-HERO ディアボリックガイ》と、《V・HERO ミニマム・レイ》をどちらもそのレベルの合計、レベル9とする」

 そして発動された魔法カード《タンホイザーゲート》は、攻撃力1000以下で同じ種族のモンスター二体を、その二体のレベルの合計に合わせるという魔法カード。その効果によりレベル3だった《V・HERO ミニマム・レイ》と、レベル6だった《D-HERO ディアボリックガイ》がどちらも同じレベル9と化す。《強制転移》でディアボリックガイを選択したのはミスだったか、それともそれすらDDには見抜かれていたか――いや、DDのフィールドにはレベル4の《V・HERO ヴァイオン》もいる。

 どちらにせよ――再びのエクシーズ召喚は止められない。

「私はレベル9の《V・HERO ミニマム・レイ》に《D-HERO ディアボリックガイ》と、レベル3の《V・HERO インクリース》二体で、それぞれオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 《V・HERO ヴァイオン》を除いた四体のモンスターが、それぞれオーバーレイ・ネットワークを構築し重なっていく。二ターン連続のダブルエクシーズ召喚――しかも、その片方はレベル9という最上級ランク。

「ダブルエクシーズ召喚! ランク3《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》! ランク9《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》!」

 先のターンでエクシーズ召喚されていた、《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》に、《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》に続く二体のナンバーズ。ランク3のナンバーズ《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》は、DDの腕に乗るような小さな鳥だったが……《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》は違った。

 その名の通りまるで星。フィールド魔法《ダーク・シティ》を覆う巨大な――星。

「ダイソン・スフィアの効果。このカードより攻撃力が高いモンスターがいる時、エクシーズ素材を取り除くことで、このモンスターは直接攻撃出来る!」

「何!?」

 《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》の攻撃力は、その巨体に見合った2800。エドのフィールドに送りつけられた《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》により発動条件を満たし、ダイソン・スフィアの中心となっているコアは、エド本人へと狙いを定めていった。

「ダイソン・スフィアでダイレクトアタック! ブリリアント・ボンバードメント!」

「リバースカード、《D-フォーチュン》! セメタリーのD-HEROを除外することで、ダイレクトアタックを無効にする!」

 《ダーク・シティ》の上空から放たれた熱線を、エドのリバースカードによって現れた半透明のディバインガイが、その身を呈してエドへと届く前に防ぐ。《D-フォーチュン》にはバトルを終了する効果もあり、DDのターンはメインフェイズ2へと移行する。

「……ならばカードを一枚伏せ、ターンを終了」

「僕のターン、ドロー!」

 DDのフィールドは攻撃表示の《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》に、守備表示の《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》に《V・HERO ヴァイオン》。さらに永続罠《ナンバーズ・ウォール》に、リバースカードが一枚。フィールドの布陣は万全ではあるが、残るライフポイントは僅か500。その隙を突かんとエドがカードを引き抜くと――

「ぐぁぁぁぁ!」

 ――突如として、その身が業火へと包み込まれた。

エドLP3500→1500

「エド!」

「エクシーズ素材のないアシッド・ゴーレムをコントロールするプレイヤーは、スタンバイフェイズ時に2000ポイントのダメージを受ける」

 破滅のナンバーズの名は違わず、DDはこの効果を押しつけるために《強制転移》で《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》のコントロールを変更していた。いや、アシッド・ゴーレムのコントロール変更は、ただデメリットを押し付けただけでなく、さらなるエクシーズ召喚とダイソン・スフィアの効果の発動条件にも繋ぐ。

「さらにエクシーズ素材がないアシッド・ゴーレムは攻撃出来ず、プレイヤーの特殊召喚をも封じる!」

「DDッ……!」

 業火が止んでメインフェイズに移行するエドは、DDを力強く睨めながらも、同じく力強く立ち上がる。特殊召喚と自身での攻撃が封じられたエドだったが、このターンで逆転の手を引き当てなければ、ダイソン・スフィアの直接攻撃かアシッド・ゴーレムのデメリットにより、そのライフポイントは0となるだろう。

 ただしアシッド・ゴーレムのデメリットはもちろん、DDのフィールドには《ナンバーズ・ウォール》に二体の効果の全容を見せていないナンバーズがいる。DDによる悪魔的な搦め手の前に、追い詰められたエドの取った手段は。

「魔法カード《モンスターゲート》を発動! 僕のフィールドのモンスターをリリースすることで、デッキトップから通常召喚が可能なモンスターが出るまで捲り、そのモンスターを特殊召喚する!」

「……ほう」

 対するエドが取った手段はなかなかの奇策。通常魔法《モンスターゲート》の発動条件により、《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》をリリースしたことにより、DDのモンスターを利用しながら逆転の芽を掴む手段を手に入れる。あとはアシッド・ゴーレムの特殊召喚封じが無くなった今、《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》を打倒出来るような、そんなモンスターが現れれば。

「僕に応えろ、運命!」

 エドのデッキから三枚目。魔法・罠カードが墓地に送られた後にデッキに眠っていた、あるモンスターがエドの手へと導かれた。そのモンスターとは。

「カモン、《D3》!」

 《D3》――D-キュービックと呼ばれる、犬型のD-HEROのサポートモンスターが特殊召喚される。さらにその特殊召喚に成功したことにより、永続魔法《D-フォーメーション》が反応していく。

「さらに《D-フォーメーション》のエフェクトを発動! カウンターが二つ乗ったこのカードをセメタリーに送ることで、特殊召喚したモンスターと同名モンスターを、二枚手札に加えることが出来る!」

 二体のD-HEROの破壊と引き換えに乗ったカウンターにより、《D-フォーメーション》はその効果を発動する。周囲を照らしていた《D-フォーメーション》という光源から、さらに二体の《D3》がエドの手札に加えられる。

「そして《D3》は手札の同名モンスターをセメタリーに送ることで、その数だけリリースに必要な数を減らす! 僕は《D3》をリリース!」

 本来ならば、もちろん一体きりのリリース素材にしかならない《D3》だが、その効果によって三体分のリリースと化す。最上級モンスターのアトバンス召喚に必要な二体を超えた、三体分のリリースを必要とするモンスターとは、もちろん。

「現れろ! 《D-HERO Bloo-D》!」

 エドのフィールドが血の池に覆われていく。その池は《D3》を飲み込んでいき、さらに何かが潜んでいるかのように泡をたて――そして悪魔のようなヒーローへと生まれ変わる。二対の翼を持ったその姿は、やはり圧倒的であった。

「来たか最強のD!」

「今度は……このモンスターでお前を止めてやる、DD! Bloo-Dの効果発動、ダイソン・スフィアを装備カードとして吸収する!」

 Bloo-Dが《ダーク・シティ》の空を飛翔し、ダイソン・スフィアの核をその血の翼で持って引きずり出す。いくら《ナンバーズ・ウォール》で守られていようが、吸収効果には無防備であった。

「バトル! Bloo-Dで《V・HERO ヴァイオン》に攻撃! ブラッディー・フィアーズ!」

 《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》を装備したBloo-Dは、その攻撃力を3300と化していき、《ダーク・シティ》の上空から血の雨を降り注がせた。その雨は一片一片が針のように鋭く、守備表示のためDDにダメージがないとはいえ、《V・HERO ヴァイオン》を跡形もなく串刺しにしてみせた。

「これで僕はターンエンド!」

「……私のターン、ドロー」

 自分フィールドの《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》の排除と、DDの《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》の打倒。敗北を免れる為には必須だったその二つをやってみせ、エドはBloo-Dを前面に立たせてターンを終了する。

「スタンバイフェイズ。フォーチュンチュンの効果が発動する、が……」

「Bloo-Dの前では無力だ」

 Bloo-Dはナンバーズだろうと例外なく、相手フィールドのモンスター効果を全て無効にする。どうやらエクシーズ召喚されていた《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》には、このタイミングで発動する効果があったようであるが、その効果が発動されることはなく。

「僕のヒーローたちは、お前になど負けはしない」

「Bloo-Dの登場程度でいい気になる。私はリバースカード《女神の加護》を発動し、それを対象に《マジック・プランター》を発動する!」

「何……!?」


 Bloo-Dの登場でペースを乱されたDDが発動したリバースカードは、発動時に3000ポイントのライフを回復する《女神の加護》。その効果によって、一気にライフの上では有利になったと思いきや、DDは即座に《マジック・プランター》の二枚ドローのコストへと変換する。

 永続罠をコストとして二枚ドローする《マジック・プランター》の発動はともかく、問題は《女神の加護》のデメリット効果である。あのカードはフィールドから離れた時、3000ポイントのダメージを自分に与える効果があるため、DDは回復した分すぐさまダメージを失うこととなった。

 ……そう、DDはダメージを受けたのだ。

「私がダメージを受けた時、墓地のV・HEROは幻影となり蘇る! さらに魔法カード《幻影融合》を発動!」

 ダメージを受けるという条件を満たしたことにより、DDのフィールドに現れる二体の幻影。ただしそれはモンスターとなって現れることはなく、DDの発動した魔法カードによって時空の穴へと吸い込まれていく。

「《幻影融合》は幻影となったV・HEROを素材とし、融合召喚する。現れろ、《V・HERO アドレイション》!」

 エクシーズ召喚だけではなく融合召喚。いや、むしろ専用の融合魔法の存在から、むしろこちらがメインか――ともかく、漆黒のマントに身を包んだ、新たなV・HEROが融合召喚される。その攻撃力は2800と低くはないものの、効果を無効にされている今、Bloo-Dに対抗する手段はない。

 ――二体のV・HEROのレベルが同じでなければ。

「私はレベル8の《V・HERO ウィッチ・レイド》に《V・HERO アドレイション》で、オーバーレイ・ネットワークを構築!」

 二体の最上級V・HEROが重なっていく。融合から繋げられたエクシーズ召喚という召喚により、《ダーク・シティ》にそびえ立つビルと同等の体躯を持った巨人の姿。

「業火に焼けただれた醜い巨体を見せ、その拳で運命をも握り潰せ! エクシーズ召喚、《No.22 不乱健》!」

 その召喚口上が示しているように。ビルの上に陣取っているBloo-Dよりも身長が高く、その全身は焼けただれたように火傷で醜かった。それをまたボロボロの布で隠しながら、まるでゾンビのようにノロノロと動く。

「不乱健の攻撃力は4500、このまま攻撃させてもらおうか。Bloo-Dを破壊せよ!」

「くっ……墓地の《ネクロ・ディフェンダー》の効果を発動!」

 不乱健が振り上げた拳を、墓地から現れた《ネクロ・ディフェンダー》が防ぐ。その効果は墓地から除外することで、モンスターの戦闘ダメージと戦闘破壊を無効にする、というものであり。恐らくは最初のターンで《レインボー・ライフ》のコストで墓地に送っていたであろうそれは、遂に最高の局面で効果を発揮する。

「チッ……だが不乱健は破壊出来まい。カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「僕のターン……ドロー!」

 どちらも疲弊が目立つデュエルとなり、エドがデュエルを決めるべくカードを引き抜いた。不乱健の攻撃力は4500と、《ダーク・シティ》の上昇分を足しても戦闘破壊出来ず、そもそも永続罠《ナンバーズ・ウォール》で守られている。

 エドのフィールドには《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》を装備して、攻撃力が3300となった《D-HERO Bloo-D》に《ダーク・シティ》のみ。対するDDのフィールドは、《No.22 不乱健》に守備表示の《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》、リバースカードが一枚に永続罠《ナンバーズ・ウォール》。

「まずはセメタリーの《ギャラクシー・サイクロン》を発動! このカードを墓地から除外することで、相手の表側表示の魔法・罠カードを破壊する!」

 先の《モンスターゲート》の際に墓地に送られていた、墓地で効果を発揮するサイクロン、《ギャラクシー・サイクロン》が発動する。その標的はもちろん《ナンバーズ・ウォール》であり、遂にナンバーズの破壊が可能となる。

「DD。このターンで終わらせる……ファイナルターンだ!」

 そしてそれは、エドが攻撃に出ることと同義だった。

「やれるものか……私の、私自身のナンバーズを!」

「……僕は《D-バースト》を発動! 装備カードを破壊して一枚ドローする!」

 DDのナンバーズである不乱健が、持ち主の叫びに呼応して名状しがたい叫び声をあげる。全身が焼けただれた、醜い力の結晶――それを真っ直ぐに見据えながら、エドは一枚の魔法カードを発動した。

 自分の装備カードを破壊することで、カードを一枚ドローする魔法カード《D-バースト》。もちろん破壊対象はBloo-Dの装備カードとなっていた《No.9 天蓋星ダイソン・スフィア》であり、ナンバーズを代償にエドはカードを一枚ドローする。

 だがそれは、カードを一枚ドローした以上に価値がある。Bloo-Dの装備カードを破壊したことで、再びその効果を発動出来るようになったのだから。

「Bloo-Dのエフェクト発動! 不乱健を吸収する!」

 いくら攻撃力が4500とあろうとも、Bloo-Dの効果から逃れる術はない。血の針が不乱健へと発射されていき、その力を奪わんと血の網へと姿を変えていく。

「リバースカード、オープン! 《モンスター・リプレイス》! モンスター効果の対象を変更する!」

「何!?」

 奇しくも先のターンのエドの《ネクロ・ディフェンダー》のように、Bloo-Dの血の網を不乱健から《No.49 秘鳥フォーチュンチュン》が庇う。伏せられていた《モンスター・リプレイス》の効果により、Bloo-Dの効果の対象が変更されたのだ。そしてフォーチュンチュンの攻撃力は僅か600、Bloo-Dにはさしたる攻撃力の上昇も見込めず、さらにBloo-Dの効果は一ターンに一度しか発動出来ない。いや、よしんば出来たとしてもフォーチュンチュンを装備した今、不乱健を装備することは出来ない。

「どうしたエド。お前のターンだ」

「……僕は《貪欲な壺》を発動! セメタリーのモンスターを五体をデッキに戻し、カードを二枚ドローする!」

 Bloo-Dの効果が対策された今、エドの策はさらにドローをするしかない。恐らくは《D-バースト》でドローしたカードであるドローカード《貪欲な壺》によって、エドの手札は三枚となった。

 そしてその手札から一枚――いや、二枚のカードを取り出した。

「僕は……魔法カード《融合》を発動!」

「《融合》だとぉ!?」

 そしてエドが発動した魔法カードは、【HERO】デッキの代名詞とも言える《融合》。フィールドにいるBloo-Dをも、その時空の穴へと飲み込まれていく。

「フィールドのBloo-Dと手札のドグマガイを融合! 融合召喚、《Dragoon D-END》!」

 Bloo-Dとドグマガイ。どちらもエドとD-HEROの切り札クラスのモンスターであり、その二体にさらに竜の意匠をも融合させた、その名の通りデュエルに終わりを告げる『最後のD』。かつてBloo-Dがそこにいたように、D-ENDも《ダーク・シティ》のビルへと飛翔すると、DDの不乱健へと正面から正々堂々対峙する。

「D-ENDのエフェクト発動! バトルフェイズをスキップすることで、相手モンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える!」

 そして効果も強力無比かつ、このデュエルを終わらせるもの。不乱健の高い攻撃力とDDの残り少ないライフポイントに対し、D-ENDは自らの身体の竜の口へと火力を溜めていく。あとはエドの号令の一つで、全てを焼き尽くす竜の息吹は放たれるだろう。

「インビンシブル・D!」

「Bloo-Dとドグマガイの融合は驚かされたよ、エド。だがBloo-Dの力を無くしたのは失敗だったなぁ! 私は不乱健の効果を発動!」

 ただし落ち着き払ったDDの指示により、D-ENDの放った竜の息吹は、不乱健の強靭な腕に防がれてしまう。そのまま不乱健は守備を固めた体勢となり、D-ENDの効果で破壊されたようには見えなかった。

「不乱健はエクシーズ素材と手札を一枚墓地に送り、守備表示にすることで相手のカード効果を無効にする。残念だったなぁ」

 狂ったような笑みを向けるDDが言った通りに、次のターンの不乱健の攻撃でエドのライフは0。守備表示になったところを狙おうにも、他ならぬD-ENDの効果によって、バトルフェイズの機会は失われている。

「……言った筈だ、DD。僕のヒーローたちは、お前になど負けはしないと」

「なにぃ?」

 しかしてエドはあくまでも冷静に、最後に残った一枚のカードを発動してみせて。

「速攻魔法《ビッグ・リターン》! 一ターンに一度と制限されたエフェクトを、もう一度発動することが出来る!」

 発動されたのは速攻魔法《ビッグ・リターン》。自分フィールドのモンスターの、『一ターンに一度』という誓約がついた効果を発動する、という速攻魔法カードであり。たとえモンスター効果が無効にされていたとしても、速攻魔法《ビッグ・リターン》の効果として、一ターンに一度という誓約を無視して再度発動される。

「デュエルも、カードも、僕も。そしてD-HEROたちも進化する。亡霊にもはや居場所はない」

「…………」

 効果を無効にされていたD-ENDがゆっくりと動き出すと、先程と同じように竜の息吹が灯っていく。それをボーッとした表情で見つめるDDには、もはやD-ENDのことを止めることは出来ないようだが――彼はそんな『最後のD』の姿を見て、何を思うのか。

「……消え去れDD! インビンシブル・D!」

 《ダーク・シティ》の夜の帳をかき消すような、まるで太陽のような熱量が籠もった竜の息吹。それは無抵抗のままの《No.22 不乱健》に炸裂し、ただ光となって消えていった……

DD LP500→0



「エド……」

 こうしてフィールドは《ダーク・シティ》から元の路地裏に戻っていき、D-ENDが消えるとともにデュエルスタジアムの電源も落ちる。辺りに広がっていた闇も消えてなくなり、対面にいた筈のデュエル相手も――まるで最初からいなかったようで。

「さようなら……もう一人の父さん……」

 誰にも聞こえないような本当に小さな声で、エドは空に向かってそう呟くと。こちらに顔を見せないように、路地裏の出口に向かって歩き出していく。

「……僕は止まらない。この父さんが遺したD-HEROとともに」

 一瞬後にこちらに振り向いたエドの顔は、いつも通りの余裕ぶった不敵な笑みを浮かべていて。D-HEROたちが装填されたデュエルディスクを、こちらに剣のように構えていた。

「お前ともいずれ決着をつける。……異世界でのことは、その時のデュエルで語れ」

「……ああ」

 それだけ宣言するように言い放つと、エドは路地裏から早足で駆けていく。次なる仕事の時間が迫っている――
 
 

 
後書き
エクシーズ次元でダイナマイトガイを核爆発させる!!!

……というのはともかく、割とエドはライバルしてます。主人公とのデュエル数も、ちゃんと数えた訳じゃありませんが多分2位で、勝利経験もありと(ちなみに1位は明日香、3位は三沢と万丈目でタイ)

近々強化も約束されてますし、いっそのことラストデュエルの相手でも~なんて考えたところで、もうラストデュエルの相手なんて考える時期なんだなぁ、とちょっとしんみり。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧