英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~ミルモの願い~
~ラクリマ湖畔~
「待って!」
「ミルモ?どうかしたのかしら?」
突如自分から出て来たミルモを見たアリサは不思議そうな表情で首を傾げた。
「う、うん……えっと、リィン。リザイラ様を呼んでくれないかな?」
「リザイラを?わかった。――――リザイラ!」
「私に何か用ですか、ミルモ?」
リィンに召喚されたリザイラはミルモに問いかけた。
「お願いします、リザイラ様!わたしを”昇格”させて下さい!」
「へっ!?」
「しょ、”昇格”って……!」
「”昇格”……ミルモがリィン達が最初に出会った時の姿から今の姿になった時のあの光景か。」
「えっと、一体何なのでしょう、その”昇格”というのは………?」
ミルモの願いを聞いたリィンとアリサは驚き、ガイウスは考え込み、セレーネは戸惑い
「……………自ら”昇格”を望む理由を聞きましょうか。」
予想外のミルモの頼みに少しの間呆けて固まっていたリザイラはすぐに気を取り直して真剣な表情で問いかけた。
「はい……トリスタでアリサがリィンと悲しい別れをした時、わたしはアリサを守る”守護精霊”なのに何もしてあげられませんでした……アリサが2度と悲しまない為にもわたしはアリサを守る”力”がもっと欲しいんです!」
「………………」
「ミルモ…………ありがとう、その気持ちだけで十分よ。それに今のミルモでも私は十分助かっているわ。」
ミルモの話を聞いたリィンは辛そうな表情をし、アリサは呆けた後優しげな微笑みを浮かべた。
「ありがとう、アリサ。でもわたし、決めたの。わたしの大好きな人に”幸せ”になってもらう為にもっと強くなろうって……!」
「ミルモ……」
「おおおお~……!ミルモ、カッコイイね♪」
「………ミルモさんの気持ち、私もわかります。」
「……僕もです。もっと強かったら何とかできたかもしれない場面もあったと思います……」
ミルモの決意を聞いたアリサは呆け、ミリアムは尊敬の眼差しでミルモを見つめ、クレア大尉とエリオットは静かな表情でミルモを見つめた。
「それで?その精霊に新たな”力”を与える事については貴女はどう思っているの?幾ら貴女が精霊達を束ねる存在で精霊に新たな”力”を与える事ができるとはいえ、そんな簡単にホイホイと与えられるものじゃないのでしょう?」
「それは……」
セリーヌの指摘を聞いたリィンは複雑そうな表情でリザイラを見つめた。
「……………………ミルモ自身は今までの”特別実習”とやらでの戦闘や、その際に何度も起こった激戦を貴方達と共に潜り抜けた経験のお蔭なのか、短期間でありながら”昇格”が可能な経験は積んでいます。―――ですが一つだけ確認したい事があります。アリサ、貴女に一つ尋ねてもよろしいでしょうか?」
「わ、私!?一体何なの……?」
リザイラに突如名指しされたアリサは驚いた後戸惑いの表情でリザイラを見つめた。
「……次のミルモの”昇格”は”最上位昇格”―――つまり私のような王族種を除けば精霊達を束ねる存在である”最上位種”―――貴女達人間に例えるならば”貴族”に値する精霊へと”昇格”する事になります。」
「ええっ!?精霊の”貴族”!?」
「ミ、ミルモさん、そんなに偉くなるんですか……」
「それに最上位クラスの精霊となると相当な”力”を持っているのでしょうね。」
リザイラの話を聞いたエリオットは驚き、セレーネは呆け、セリーヌは目を細めてミルモを見つめた。
「リザイラ、その最上位クラスの精霊にはどのくらいの”力”を秘めているんだ?」
「そうですね……―――”機甲兵”、でしたか。最低でもあの人形の数体は一人で余裕で葬れる程の”力”はあります。」
リィンに問いかけられたリザイラは考え込んだ後真剣な表情で答え
「あの”機甲兵”――――しかも数体をたった一人で…………!」
「ほえええええ~!?最低でも機甲兵数体を余裕で撃破できる強さって、滅茶苦茶強いじゃん!」
「”精霊”の力が偉大な証拠だな……」
クレア大尉は信じられない表情をし、ミリアムは目を丸くして驚き、ガイウスは静かな表情でリザイラとミルモを見つめた。
「…………それで私に聞きたい事って何?」
信じ難い話の連続に口をパクパクして絶句していたアリサは我に返って真剣な表情でリザイラに尋ねた。
「そのような絶大な”力”を持ったミルモを貴女は”どう使役する”つもりなのですか?ミルモは貴女の指示一つによって戦場の戦況を変えられる程の”力”を手に入れるのですよ?」
「リザイラ………………」
アリサを試すような視線で問いかけるリザイラの問いかけにリィンはリザイラの意図―――絶大な”力”を得たミルモをアリサが”兵器”のように使わないか心配している事に気付いて真剣な表情をした。
「―――――その問いかけ、最初から間違っているわよ。」
「?どういう事ですか?」
そして静かな表情で自分を見つめるアリサの指摘にリザイラは不思議そうな表情をした。
「私はミルモを今まで”使役”した事はないし、これからもそんなつもりは一切ないわ。私にとってミルモはかけがえのない”友達”よ。確かに”契約”しているから形式上は主従の関係だけど、私とミルモは”対等”な友達よ。戦闘の時は私がお願いする形でミルモに”協力”してもらっているだけ。」
「アリサ………」
「…………………」
アリサの話を聞いたミルモは嬉しそうな表情でアリサを見つめ、リザイラは真剣な表情でアリサを見つめ続けていた。
「だから……”友達”を”兵器”のように”使役”するなんて間違った事は絶対にしない!例えどんな苦しい戦いになっても、私は絶対にミルモに任せっきりにしないで、一緒に戦うわ!」
「アリサ………!」
「えへへ……それは僕達も同じ思いだよ!」
「ええ……!それにアリサさんやミルモさんにはわたくし達がいますわ……!」
「……アリサだけでなく、ミルモもオレ達にとって大切な”仲間”だ。」
「そーそー!ボク達だって、そんな酷い事は絶対にしないよ!」
決意の表情をしたアリサの答えを聞いたリィン達は明るい表情をし
「ったく、相変わらず暑苦しい連中ね。」
「フフッ、さすがこれまでの苦難を共に解決して来た”Ⅶ組”ですね……」
その様子を見守っていたセリーヌは呆れ、クレア大尉は微笑んでいた。
「……………ふふふ、ミルモ。貴女は本当に恵まれていますね。”決意”と言う名の”光”を力強く輝かせ続ける人間と共に生きてきたのですから。」
アリサ達の決意を見て呆けていたリザイラは優しげな微笑みを浮かべてミルモを見つめ
「えへへ……でもそれはリザイラ様も同じですよね?」
リザイラに微笑まれたミルモは微笑み返し
「ふふふ、まさかミルモに一本取られる日が来るとは。――――いいでしょう。貴女達が私が求めていた以上の”答え”を出した事を評してミルモを”昇格”させます。――――精霊達よ!我らが同胞に新たなる力を!!」
リザイラは静かな笑みを浮かべた後ミルモの頭上に両手をかざして膨大な魔力を解放した。するとミルモは強烈な光に包まれた!
「クッ……!」
「わわっ!?」
「キャッ!?」
「ッ!?」
(ミルモ……!)
突然の出来事にリィン達が驚いて目を閉じている中、アリサは両手で目を庇いながら光に包まれたミルモを見つめ続けた。そして光が消えるとそこには”精霊”とは思えない姿―――まるでおとぎ話などに出てくる”戦乙女”のように甲冑を身に纏い、背中には一対の白き翼があり、光の弓を武器として持ち、リィン達と大して変わらない身体の大きさの姿へと変貌し、雪のような白い髪を一束に束ねて腰まで靡かせているミルモの容姿を残した美しい容姿を持つ謎の種族が現れた!
「こ、これは……!」
「”天使”―――いや、”戦乙女”……?」
変わり果てた姿のミルモ――――まるでおとぎ話などに出てくる”戦乙女”のように甲冑を身に纏い、背中には一対の白き翼があり、光の弓を武器として持つミルモを見たリィンは目を見開き、ガイウスは呆けた表情をして呟いた。
「これは驚きました……フローラと同じ”ルファニー”に”昇格”すると思ったのですが、まさか”フェスプニーレ”に”昇格”するとは。」
「ね、ねえリザイラ。えっと……目の前のミルモは”精霊”なのよね?何だか伝承とかに出てくる”戦乙女”みたいに見えるけど……」
アリサは目を丸くして翼を持つ戦乙女のような姿をした擬人化した精霊種――――”フェスプニーレ種”に昇格したミルモを見つめ続けるリザイラに戸惑いの表情で尋ねた。
「ええ、見た目は天使や戦乙女のように見えますが、精霊です。―――ですが、”天使族”同様”光の翼”の力を主に付与する事が出来ます。」
「へ?”光の翼”??」
リザイラの説明を聞いたアリサが首を傾げたその時
「今体験させてあげるね!」
「ちょっ、ミルモ!?」
(光よ、わたしの大好きなアリサの翼となって!)
ミルモがアリサの身体の中に戻ると何とアリサの背中に一対の美しき白き翼が現れた!
「な……っ!?」
「な、ななななななななななっ!?」
「ア、アリサに羽根が生えた~~~!?」
「精霊はこ、こんな事までできるのですか……!?」
アリサの背中に生えた白き翼を見たセリーヌは信じられない表情で声を上げ、翼を生やした当の本人のアリサはミリアムと共に混乱し、クレア大尉は取り乱した様子でリザイラに尋ねた。
「ふふふ、あんな事ができるのは精霊の中でも”フェスプニーレ種”のみですよ。ミルモ、試しにアリサに大空を飛ぶ感覚を教えてあげなさい。」
(はーい!)
「ちょ、ちょっと……!?」
そしてリザイラの指示によってアリサの身体の中にいるミルモはアリサの翼を羽ばたかせてアリサを大空へと舞い上がらせた!
「………………」
「ほ、本当に翼で空を飛んでいますわね、アリサさん……」
「異種族の人達の凄さには慣れたつもりだったけど、さすがにこれは今までの中でも一番驚いたよ。アハハ…………」
「さすがオレ達にとっては伝承の存在である”精霊”だな……」
大空を翼を羽ばたかせて飛行しているアリサをリィンは口をパクパクした状態で見つめ、セレーネは呆け、表情を引き攣らせていたエリオットは大量の冷や汗をかいて苦笑し、ガイウスは静かな笑みを浮かべた。
(えへへ……!どう、アリサ?自分で空を飛ぶ感覚は♪)
「凄い……!まるで本物の鳥になった気分よ……!えっと、翼を操作しているのってミルモなの?」
一方上空で自分が空を飛んでいる事に興奮しているアリサはミルモに問いかけた。
(ううん!わたしでもできるけど、アリサが頭でどう飛びたいのか思い浮かべれば、アリサの希望通りに飛ぶよ!何だったら試しに旋回や急降下もしてみたら?)
「い、今は遠慮しておくわ。それより一端リィン達の元へ降りる為にまだ慣れていないんだから、ゆっくりと降りないとね……」
そしてアリサは思念によって翼を羽ばたかせながら地上に着地し、地面に着地するとアリサの背にあった翼が消えると共にミルモが再びアリサの傍に現れた。
「フウ……」
アリサが地面に着地できた事に安堵の溜息を吐いているとエリオットが話しかけた。
「お帰り、アリサ。空を自分で飛ぶ感覚ってどんな感じだった?」
「最初はビックリしたけど、慣れたら割と楽しいわね。機会があったらまたしてみたいわ……!」
エリオットに尋ねられたアリサは嬉しそうな表情で答えたが
「あ、それならその時になったらガーちゃんとどっちが早いか競争してみない!?」
「さ、さすがにそれは遠慮しておくわ。」
「もう……何て非常識な遊びを思いついているんですか……」
ミリアムの提案を聞いて仲間達と共に冷や汗をかいた後苦笑しながら断り、クレア大尉は呆れた表情で溜息を吐いた。
「ハハ……でも、翼が生えたアリサが飛んでいる姿はまるで本物の天使が飛んでいるように見えてとても綺麗だったぞ?」
「!!!~~~~~っ!!!??」
そして笑顔のリィンの言葉にアリサは顔を真っ赤にして混乱し
「お、お兄様……」
「フフ、さすがはリィンだな。」
「ふふふ、予想通りの展開ですね。」
リィンの発言に仲間達と共に冷や汗をかいたセレーネは表情を引き攣らせ、ガイウスとリザイラは静かな笑みを浮かべ
「ったく、よくそんなセリフをいつもいつもすぐに思いついて口にできるわね?」
(それは勿論ご主人様だからに決まっているじゃない♪)
(た、確かに………)
(クスクス。でもそこがリィンの良い所であり、悪い所なのよね。)
セリーヌは呆れ、ベルフェゴールの念話を聞いたメサイアは苦笑し、アイドスは微笑んでいた。
「リザイラ様、わたしの我儘を聞いてくれてありがとうございます!」
「ふふふ、貴女は”最上位昇格”に相応しい決意を見せましたから、”精霊王女”として当然の事をしたまで。礼を言う必要はありません。」
嬉しそうな表情をしているミルモの言葉にリザイラは静かな笑みを浮かべて答え
「アリサ、この力でアリサを助けるから、いつでも呼んでね!」
「ミルモ……ええ!改めてよろしく!」
そしてミルモとアリサはそれぞれ笑顔を浮かべて握手をした。その後リィン達は馬で目的地へと向かった。
こうして……アリサは新たなる心強き力を手に入れた……!
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