英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第27話
~ゼンダー門~
「ふう……ようやく辿り着いたか。」
「ここがゼンダー門……」
「先程の戦闘が影響なのか、警備が厳重ですわね。」
ゼンダー門にリィン達と共に到着したエリオットは目を丸くし、セレーネは警備が厳重な事に真剣な表情をした。
「ああ、さっきみたいな戦闘が何度も起こっているんだろう。なんとか中将とコンタクトをとれればいいんだが……」
「お前達―――ここで何をしている!?」
リィンがゼクス中将とのコンタクト方法を考えると見張りの兵士達がリィン達に駆け寄って銃剣をつきつけた。
「わわっ……!?」
「あ、あの。わたくし達は”貴族連合”の者ではありませんわよ?」
突如銃剣をつきつけられたエリオットは驚き、セレーネは戸惑いの表情で自分達は”敵”でない事を伝えようとした。
「なぜこんなところに人が……」
「どうやら高原の住民ではなさそうだな。」
「手を上げろ!」
「お待ちください。我々は怪しい者ではありません。訳あって軍服ではありませんが、私は鉄道憲兵隊のクレア・リーヴェルト大尉と申します。できれば、ゼクス・ヴァンダール中将にお取り次ぎを願えないでしょうか。」
兵士達がリィン達を警戒している中、クレア大尉が自分の身分を説明し
「て、鉄道憲兵隊―――あの”氷の乙女”か!?」
クレア大尉が名乗ると兵士達は驚いた。
「自分達はトールズ士官学院の者です。わけあって先程この地に辿り着きました。」
「トールズ士官学院……?」
「たしか数ヵ月前に実習とやらで来ていた……そういえばそちらの黒髪、どこか見覚えがあるような。」
「うむ―――彼らの身分は私が保証しよう。」
リィン達の正体を知った兵士達が戸惑っている中、ゼクス中将が近づいてきた。
「中将閣下……!」
「お疲れ様であります!」
「この人が……」
エリオットは初めて見る自分の父親と同等の存在を目を丸くして見つめていた。
「トールズ士官学院”Ⅶ組”にしてかの”聖魔皇女の懐刀”の兄―――リィン・シュバルツァーだったな。前回の実習にはいなかったがそちらは同じクラスの仲間のようだ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「は、初めまして……!」
「お疲れ様です、中将閣下。」
「ふむ、この内戦の最中よくぞ無事にここまで辿り着いた。詳しい話は司令室の方で聞かせてもらうとしよう―――」
その後リィン達は司令室で情報交換を行った。
~司令室~
「―――”監視塔”が貴族連合の手に落ちた……!?」
ゼクス中将から聞いた驚くべき事実を知ったリィンは血相を変えて声を上げた。
「うむ、内戦が始まって間もなくのことであった。以降、貴族連合はそちらを拠点にゼンダー門を攻めてきている。アイゼンガルド方面からの領邦軍と挟み撃ちにする形でな。」
「かなり厳しい状況みたいですわね……」
「下手したらガレリア方面の父さんたちよりも……」
ゼクス中将の説明を聞いたセレーネとエリオットは不安そうな表情をし
「……ああ、戦況は決していいと言えないだろう。旧式戦車まで駆り出して、これまで何とか凌いできたが……」
二人の言葉を聞いたゼクス中将の副官は厳しい表情で頷いた。
「ふうん……よくわからないけど。要するに、ここが落ちるのも時間の問題ってワケね?」
「セリーヌ……!」
セリーヌの指摘を聞いたリィンは慌てていたが
「………いや、事実だろう。このままでは一月経たぬうちにゼンダー門は陥落する。無論、そうならないように最善の手は尽くすつもりだが。」
対するゼクス中将は声を荒げて否定する事もなく、冷静な表情で答えた。
「そもそも、何故”監視塔”は奪われてしまったのでしょう?共和国方面の拠点なら、警戒も万全だったのでは……?」
その時ある事が気になっていたクレア大尉が質問した。
「うむ……以前、攻撃を受けた教訓もあって抜かりはないはずであった。だが、貴族連合のとった作戦がこちらの予想を上回るものでな。信じ難いことだが……―――どうやら貴族連合は一時的に共和国と手を結んだらしい。」
「ええっ……!?」
「”共和国”と言う事はまさか……」
「”カルバード共和国”と……!?ま、待ってください……帝国と共和国は対立関係にあったはずですでは!?いくらなんでも何かの間違いじゃ……」
ゼクス中将の口から出た信じ難い話にリィン達は驚いた。
「いや、監視塔に詰めていた兵士からの確かな証言だ。あの日、共和国の空挺部隊が大規模に領空を侵犯した。そして監視塔の部隊がそちらに対処している隙に……西の空から、機甲兵を運んだ貴族軍の軍用艇が急襲したのだ。」
「それは……」
「……疑う余地はなさそうですね。」
「エレボニア帝国とカルバード共和国は決して相容れない仲だとの事ですよね?」
「貴族連合だってそれはわかってると思うけど……」
「ま、敵の敵は味方ってことかしらね?」
ゼクス中将の説明を聞いたリィン達はそれぞれ表情を引き締めた。
「それと、監視塔が奪われて以来なぜか高原全域で導力通信が使えなくなっている状況でね。そのせいで、本土から増援を呼ぶ事すらできず、消耗戦を強いられているんだ。」
「そうだったんですか……流石にそれも偶然とは思えませんね。」
「うむ……我々も何らかの工作を疑っている。だが、通信設備自体が故障しているわけでもなくてな。こんな時、グエン殿と連絡が取れればよかったのだが。」
「あ……」
ゼクス中将の呟きを聞いたリィンはノルド高原の特別実習の時に出会ったアリサの祖父、グエン・ラインフォルトを思い出した。
「グエン・ラインフォルト氏―――RF社の元会長ですか。そういえばノルドに滞在されているんですよね。」
「確かにアリサのお祖父さんなら原因がわかりそうですが……その連絡を取る為の通信設備がないというのはジレンマですね。」
「やっぱり……僕らも、何か協力するべきなのかな。」
「それにメンフィル帝国の問題も残っていますものね……」
「いや……この内戦は正規軍と貴族連合、そして内戦に巻き込まれたメンフィル帝国の問題だ。君達が気にする必要はない。」
エリオットとセレーネが話し合っていると副官が制した。
「うむ―――すでに諸君の諸君の目的があるようだ。我らの事情に関係のない異種族達や”騎神”とやらの力を貸してもらう必要もない。戦火に巻き込まれぬよう、己の身を守るために使うがいい。――――この地にいるガイウスたちと無事に再会するためにもな。」
「やはりノルドには、ガイウスが戻ってきているんですね!?」
ゼクス中将から仲間がノルド高原にいる話が出るとリィンは血相を変えて尋ねた。
「うむ、私は兵からの言伝で聞いただけだが……一ヶ月前、精霊とやらの力によってこちらに辿り着いたそうだ。”しばらく内戦の状況を窺う”と集落から連絡があったらしい。」
「ガイウスさんは故郷に辿り着いていたんですね……」
「うん………これで居場所が掴めたね!」
仲間の居場所がわかった事にセレーネとエリオットは明るい表情をした。
「高原での戦闘は日に日に激しさを増している。巻き込まれぬうちに仲間達と合流するがいい。北のノルドの集落でも避難を開始しているようだ。」
「そ、そうなんですか……?」
「なら、なおさら早く出発しないとね。」
「うむ――――門で世話をしている馬たちに乗って行くがいい。実習の時と同じ馬だから扱いに困ることもなかろう。」
「……ありがとうございます。」
「ご協力、感謝いたします。」
そして司令室を後にしたリィン達はこれからの方針について話し合っていた。
「よし、このまま急いで集落に向かおう。馬を使えば1時間ほどでたどり着けるはずだ。」
「でも、どうしよう?僕、馬に乗ったことないんだけど……」
「わたくしは乗馬経験はありますが……」
「私も一応乗れますからエリオットさんは私達の誰かと二人乗りでいいかと。とにかく急ぎましょう。」
「はい……!」
その後ゼンダー門が世話をしている馬を借りたリィン達は騎乗して集落に急行した。
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