| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Blue Rose

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十話 弱さその十二

「そうだよね」
「優花もわかっていたでしょ」
「けれどね」
「信じきれるには」
「難しいね」
「けれどなのね」
「ううん、もう少しで」
 優花は今度は野菜炒めに箸をやった。
「そうなれるかな」
「決められるね」
「うん、あと少しかな」
「それで言うの?」
 優子は弟の目を見て問うた。
「決めたっていうと」
「言うってことがだね」
「いえ、言わないこともよ」
「そっちもなんだね」
「決めることよ」
「言うか言わないか」
「どちらにしてもね」
 選択だった、要するに。
「そのどちらかを選ぶか」
「決意するってことだね」
「そうよ」
「じゃあ」
「もうすぐで決められるのよね」
「そうなりそうだけれど」
「なら龍馬君に言うって決めたら」
 その場合の選択肢をだ、優子はあえて言った。
「言いなさいよ」
「そうだね、龍馬ならね」
「言って優花から逃げたりしないわ」
「絶対にね」
「あんな子は滅多にいないわ」
 あの様に確かで澄んだ心を持った人間はというのだ。
「しかも強いから」
「龍馬って凄いよね」
「人間誰しも卑怯なものはあるわ」
 そうした卑しむべき心はというのだ。
「それはね、けれどね」
「龍馬はその卑怯なものに勝てるんだね」
「それが強いってことよ」
「人として」
「そして誰かを信じられることも」
 このこともというのだ。
「強いことなのよ」
「そうなんだね」
「強い人は人を信じられるの」
 弟の目を見たまま言った。
「それが出来るの」
「僕が強かったら」
「それが出来るから、いえ」
「いえ?」
「優花は今強くなろうとしているわ」
 微笑んだ、ここで。
「実際にね」
「龍馬を完全に信じられるようになっているから」
「もう姉さんは信じてるわね」
「姉さんを信じられないで」
 それこそと返した。
「誰を信じるんだよ」
「家族を信じられるだけでもね」
「強いんだね」
「それが出来ない人もいるから」
「僕はその分強いのかな」
「そうよ、だから龍馬君も完全に信じられたら」
 その時になればというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧