深海棲艦の発生と艦娘の出自記録
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最終文書
特別任務実動部隊兼任調査員および全職員へ
我々はいつ何時も秩序を保つ為に動いてきた。
尊敬に値すべき同志達は世界中で人類の明日の為に戦っており君達もまたその一人だ。
もちろん尊い犠牲もある。
偉大な先人達、志を同じくする者、妻や夫、恋人、父や母、兄弟姉妹や息子や娘達。
我々は愛する者の屍の上で争っている、だがいつも相手は地球上の者達だった。
しかし今回は違う。
我々の敵は"外側"から来た。
彼女達はその圧倒的な戦力を持ってして人々を海から追い払い、その恐怖を人々の頭の中に植え付けた。
今我々が立ち竦んでいる土や岩、この陸地こそが我々の最後の砦となっている。
我々は失敗し、そして追い詰められた。
だが諸君らも知っているように最大の味方もまた"外側"から来た。
彼女は我々を理解しようとし、情を持って接してくれた。
自身の故郷とは違うこの土地の者を愛し、最大限の努力をしてくれている。
彼女は命を懸けてくれた。
彼女の従者は小さく、とてもか弱く見えた。
だが実際、彼らは勇気ある者達であり偉大な開発者でもある。
彼らの協力は必要不可欠であろう。
そして我々はここまで辿り着いている。
人工体、そう君達の間では"艦娘"というあだ名が付いているだろう。
彼女からの最大の贈り物だ。
第1世代の人工体がすでに試験的実戦に投入されており近海の水鬼を殲滅しているという知らせは誰の耳にも入っている事だろう。
もちろん、年端も行かない少女達を戦場に送り出す事について倫理委員会との衝突が幾度もあった。
だが最終的には彼らもこの状況を理解してくれた。
これから第2、第3世代と次々に人工体が投入されていくだろう、だが我々は高見の見物とは行かないし彼女達に甘えるつもりもない。
諸君らは別の文書で作戦について説明を受けているだろう。
彼女達の変わりに私達が戦えれば一番良いのだがそうも行かない。
"戦乙女の従者"は彼女達の為の最大規模の支援作戦だ。
我々はこれを実行する。
私はこの文書を本部の保育施設にて執筆している。
彼女の娘達の笑顔が私の部屋からでも見える。
あの少女達はいずれ爆炎と水柱と砲弾が舞う海を駆けていく事になる。
あの子達だけに重荷は背負わせない。
諸君、我々はやり遂げなければならない。
局長 伊賀崎 聡介
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