八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十二話 夜の電話その一
第七十二話 夜の電話
百貨店から帰った僕達はそれぞれの部屋に帰った、そして僕は何か身体がなまっている感じがしていたので。
八条荘のトレーニングルームに行くことにした、このアパートにはこうしたものもあって使用人の人達も使っている。
ジャージに着替えて中に入るとだ、そこに小野さんがいて自転車の機械を使っていた。その小野さんを見てだった。
僕は目を瞬かせてだ、小野さんに尋ねた。
「ルーム使われてるんですか」
「はい、時々」
こう僕に答えてくれた。その足を止めて。
「こうしています」
「そうなんですか」
「シェフの仕事も体力勝負ですから」
「トレーニングもしてなんですね」
「そうなんですよ」
僕に笑って答えてくれた。
「実は走ったりもしてます」
「ランニングもですか」
「走らない日はこうしてです」
「トレーニングルームを使っておられるんですね」
「そうしています」
「シェフも大変なんですね」
「本当に体力が必要でして」
小野さんはまた僕に話してくれた。
「身体は鍛えています」
「ずっと立ちっぱなしですしね」
「あと食器を洗ったりフライパンを持ちますね」
「力仕事ですね」
「しかも始終身体を動かす」
「そうしたお仕事なので」
「身体を鍛えていますか」
僕は小野さんの言葉に頷いた、そして。
小野さんの隣の自転車に座ってだ、こう言った。
「僕もこぎますね」
「自転車ですか」
「これ案外汗かきますよね」
「はい、自転車何気なくです」
「凄い運動ですよね」
「カロリーを消費します」
つまり汗をかくというのだ。
「いい運動です」
「そうですね、本当に」
「だから私もこうしてです」
「ここに入られるとですか」
「まずは自転車をこぎます」
そうするというのだ。
「それから腕を鍛えています」
「フライパンを持つからですか」
「あと鍋も」
「鍋が一番重いですよね」
「お水を入れていますので」
だからというのだ。
「ですから一番重いですね」
「フライパンよりもそっちですか」
「ですから」
それでというのだ。
「腕を鍛えることも忘れていません」
「大変ですね、シェフも」
「鍛えていないと」
それこそともだ、小野さんはこぎはじめた僕にご自身もこぐことを再開させてそのうえで言ってくれた。
「それだけ体力が落ちてです」
「動けなくなるんですね」
「だからなんですよ」
「鍛えてるんですか」
「畑中さんみたいにずっと働きたいですからね」
「ああ、畑中さんもうかなりお歳なのに」
とっくに年金だけで生活をしているお歳だ、けれど畑中さんはまだまだ現役だ。そのことだけでもかなり凄いことだ。
「バリバリ働いておられますしね」
「あの人もいつも鍛えてるんですよ」
「剣道で、ですね」
「剣道九段で」
相当な腕前だ、達人と言っていい位の。
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