艦隊これくしょん【転移した青年の奮闘記】
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日常
第6話 大本営へ初の出頭
前書き
大本営へ出頭。他の提督ともご対面。
……主人公サイド……
歓迎会の翌日
≪カタカタカタ……≫
いつもの様に執務室でデスクワークする俺の下に、大本営からある封筒が届いた。
中身は俺が横須賀鎮守府の正式な司令官になった事への祝電と、中将の階級である事を証明する取付式の階級襟章。そして一枚の手紙だった。
その内容は……
“新たに横須賀鎮守府に着任した君の顔が見たいから、今すぐ大本営へと出頭してくれ。
追記:出頭の際、艦娘の同行を許可する。
大本営 海軍部より。”
と言った内容だった……
座蒲郎「俺に出頭命令が来るなんてな」
長門「無理も無いだろう。お偉方は、ここにお前が来る事を楽しみにしてたし、これまでの活躍にとても期待していたのだからな。行くしかあるまいな」
座蒲郎「そうなんだ」
長門の話しだと、上の方が俺の事を期待してるらしい上に、顔を見たいとの事だった。
ーーーー
数分後……
座蒲郎「じゃあ、留守は任せたよ」
陸奥「勿論よ」
大淀「お任せ下さい」
長門「それじゃ、行って来る」
陸奥「行ってらっしゃい」
大淀「お気をつけて」
支度を終えた俺は、陸奥と大淀に留守を任せて、長門と共に大本営へと出頭して行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして……
座蒲郎「ここが…大…本営……か……」
長門「ああっ、私がここに来るのは、お前が提督になったことを報告し来た以来だな」
日本の軍最高司令部“大本営”に到着。
最初は昔風の東京駅のような姿を想像してたけど、そこは新築したばかりの大学のような外装を持つ立派な所だった。
長門「さぁ行くぞ、ついて来い」
座蒲郎「あ…ああ……」
出頭しろとか言われても、どこへ行けば良いのかわからない俺は、長門の言う通りに後をついて行くしかなく、後を尾けて敷地内に入った。
が……
≪ザシャッ≫
兵1「止まれ!」
兵2「貴様ら何者だ⁈」
「「⁉︎」」
そこへ現れたのは、銃を持った2人の兵士。警備の兵なのか警戒されてるみたい。
兵1「名前と階級を言え!」
座蒲郎「え…えっと……横須賀鎮守府の提督、沢小路 座蒲郎……」
兵1「何⁉︎」
兵2「証拠は?」
座蒲郎「これ」
名前と階級を聞かれたから、所属と名前を言い、証拠を求められたから身分証明書を提示した。
兵1「し、失礼しました!あなたのご到着をお待ちしていました」
兵2「さっ、どうぞ。こちらです」
身分証明書を見た兵は急に態度を改めて、俺と長門を中へと案内した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
案内されたのは、海軍部作戦会議室と札が書かれてある部屋の前だった。
座蒲郎「ここ?」
兵2「はい、そうです。
では、自分はここで失礼します」
ここまで案内してくれた兵は、案内を終えるとそそくさと去って行った。
ーーーー
長門「分かってるだろうな?
入る前に必ずノックするんだ」
座蒲郎「勿論分かってる……」
部屋に入る前に長門から注意を受けるけど、そのくらいは大学入試での面接でよく身に付いてるから問題無い……
≪コンコンコンッ≫
ドアを3回ノックし……
「入りたまえ」
≪ガチャッ≫
座蒲郎「失礼します」
長門「失礼します」
声が聞こえてドアを開けた。
室内は入試の際の面接会場そっくりな内装で広く、中央には4人が使える程の長いテーブルを4つ四角形になる様にキチンと並べられている。
そして……
「君が新たに横須賀鎮守府の提督に着任した、沢小路 座蒲郎君だね?」
座蒲郎「はい、そうです!」
部屋の奥の方のテーブルに、明らかに身分が高そうな5〜60代くらいの怖そうな3人の男性が備え付きの椅子に腰掛けていた。男性達側のテーブルの上には、中央に“海相(海軍大臣)”,左側が“海軍部 参謀総長”,右側が“海軍部 連合艦隊司令長官”と書かれた札が置かれていた。
参謀総長「そう畏まる必要は無いぞ」
司令長官「そうだ。君のおかげでこの国は救われたんだ」
海相「そうとも。もっと誇りを持つべきだ」
座蒲郎「は…はい……」
なんか…親しみ易そうな人達だな……あれでも海軍のお偉方なのかな……?
怖そうな外見とは裏腹に、妙に親しみ易そうで、どう接したら良いのかで困る。
海相「まあとりあえずだ、君が横須賀鎮守府に着任してくれて良かったよ。今までの提督はマトモに戦果を得られずに殉職するか、辞任を申請して辞めていったりで手詰まりだったが……」
参謀総長「君が着任してからグングン戦果を上げて行き、しまいには全海域を解放するに至ったのだ。
君は正に、我が祖国の危機を救った英雄だよ」
座蒲郎「そう…ですか……」
しかも英雄とか呼んで来るからタジタジになる。
海相「とはいえだ、 雑談はこの辺にしてだ。話を本題に移そう、ここからは真剣な話だ」
座蒲郎「はい……」
と言ったところで、元帥の言葉で話は真剣な方へと移ることに……
ーーーー
海相「まずはだ。
横須賀鎮守府への着任、おめでとう。
あのクセのある艦娘を指揮出来るのは、君程の逸材でなくてはならん。本当に感謝してるよ」
座蒲郎「いえいえ、とんでもありません。みんなが“居て欲しい”と願ったからこそ、あそこに居ると決めたのです」
海相「そうか。
だが、改めて歓迎するよ。本当にありがとう」
座蒲郎「はい。歓迎のお言葉、大変有難く頂戴致します」
最初は俺が横須賀鎮守府へ着任したことへの歓迎だった。とはいえ、あれは長門達が望んでの事だったし、オマケに帰る方法も分からない上での決断だったから、感謝される程のものじゃない。
けど、それでも気持ちくらいは受け取っておく事にする。
海相「次はだな。
君はここに来てから1週間、3週間分の仕事を一気に片付けてしまったそうだな」
座蒲郎「ああ…それですか……あの時は、指先が止まらなかったもので…つい……」
参謀総長「何、別に謝るものではない。寧ろ、仕事熱心なのは関心だ。
しかし、君は今やこの国に、ましてはこの世界に無くてはならない存在。無理をしてもらっても困る」
座蒲郎「はい……」
司令長官「以降は1日分の書類を送るようにするから、その分だけやるようにしてくれ。いいね?」
座蒲郎「判りました」
次は仕事、つまりはデスクワークの件だった。あの際は指先が止められない かったからとはいえ、やり過ぎだとは薄々思ってた。けど怒られはせず、“これから送る量だけやるように。”という感じで治められた。
海相「では次だ」
座蒲郎「はい」
海相「“この艦娘と結婚したい。”とかの願望はあるか?」
座蒲郎「!」≪ズルッ!≫
それ大事な話かよ⁉︎
今度は結婚したい艦娘は居ないかという質問で、俺はズルッとコケてしまった。それを聞いて、幾ら何でも大事な話じゃないとつくづく思った。
海相「それで、どうなんだ?」
座蒲郎「いや、自分にはまだ…結婚は早いと思うのですよ。好きと言うより憧れの艦娘は居ますが、結婚したいという程ではなく……」
司令長官「何を言っているんだ、そう恥じらう必要は無いぞ。もう少し自信を持ったらどうだ?」
座蒲郎「いや、ですから……///」
なんかしつこく聞いて来るけど、そんな結婚したい程好きな艦娘は居ない。憧れなら長門が当てはまるけど、それでも結婚したいと言う程じゃない。
海相「まっ、良しとするか。別に無理に聞く気は無いからな。
とはいえ、出来たら必ず申請言いたまえ、すぐに結婚指輪と書類を用意して送るからな」
座蒲郎「はあ……」
とはいえ深く聞かれなかったから良かったものの、出来たら必要な物を用意するとか言われた俺は、人に言えないような悩みが出来た気がした。
なんか…悩みが出来た気がするなぁ……
ーーーー
海相「まぁ大事な話は以上だ。
あっ、そうだ。君は2週間ほど、休暇を取ると良い」
座蒲郎「えっ、何故ですか?」
海相「君が3週間の書類を片付けたせいで、こちらの方では多少の混乱が生じているのだよ」
座蒲郎「あ〜…すみません……」
元帥「何、別に謝る必要は無い。ただ、“今後は注意してくれ。”とだけ言って置くよ」
座蒲郎「以後、気をつけます」
大事な話は終わったけど、そこで元帥から“休暇を取れ。”って言われて理由を聞いたところ、さっき言ってた書類の話だった。
海相「今後何かあれば連絡すると良い。必要な物もあれば、出来る限りの範囲でこちらで準備しよう」
座蒲郎「分かりました」
海相「では、話は以上だ。何か質問はあるか?」
座蒲郎「この世界の任務は、あなた方大本営から発令されるものなのですか?」
参謀総長「その通りだ。だが、それは滅多な理由が無ければ無い」
座蒲郎「そうですか」
そして元帥は、何かあれば連絡したり必要な物もあれば用意すると言ってくれた。
最後に質問する事無いか聞かれて任務について聞いてみたところ、発令されるものの、それは滅多に無いとの事だった。
司令長官「他に何かあるかな?」
座蒲郎「自分が指揮する横須賀鎮守府のように、鎮守府は他にもあるのでしょうか?」
司令長官「いや、提督…というより提督に相応しき艦隊指揮官なら沢山存在するが、君を除いてこの大本営で働いているから、この国の鎮守府は横須賀鎮守府のみだ。他の提督は、“艦娘とは相性が合わない。”とか“深海棲艦と戦うには才能が無い。”いった理由で鎮守府に就こうとはしないのだよ」
座蒲郎「そうでしたか」
更に俺が指揮する横須賀鎮守府以外に鎮守府があるか聞くけど、他の提督は大本営で働いてるらしくて、横須賀以外に鎮守府は無いらしい。
海相「他に聞きたい事は?」
座蒲郎「いえ、特に何もありません」
他に聞きたい事はあるか聞かれたけど、今のところ聞く事は無いから、俺は無いと答えた。
海相「ならば、ここであがっても良いぞ。今日はわざわざご苦労だった」
座蒲郎「はっ!では、失礼します」
長門「失礼します」
これで話が終わり、長門と共に部屋を後にした。
ーーーーーーーーーー
……アナザーサイド……
座蒲郎と長門が部屋を出た後……
海相「それにしても、本当に良かったのだろうか……」
部屋に残されたうちの海相が呟いた。
参謀総長「何がです?」
海相「あの提督はまだ若い。おそらく、ワシの孫くらいかもしれん。
才能があるとしても、そんな若者を提督に置いて本当に良かったのかと思うと、彼に提督を任せたワシ等が情けなくて仕方ない」
座蒲郎のような若者を提督とする事に、己が情けないと感じているようだった。
参謀総長「それは私も同じ考えです。ですが、鎮守府に就こうとする提督が居ないこの事態に、彼のような若者が望んで志願し、戦いに身を投ずるだけでも嬉しい事です。
我々に出来ることは、彼に対する充分な支援を怠らない事だけです」
司令長官「その通りです。今は彼のような若者が先導してくれることが、我々高齢層にとっての喜びです」
海相「そうだな。我々が怖気付いていては、彼の上司になる資格は無いな」
参謀総長「はい!」
司令長官「ええ!」
それは参謀総長や司令長官も同じではあったが、鎮守府に就こうとする提督が居ないこの時に、彼のような若者が戦いに身を投じるだけでも、彼らの様なお偉方には嬉しい事だった。
彼等は座蒲郎への支援を怠らない事を決め、自分達もしっかりやらねばと思いを胸に刻んだ。
参謀総長「ただ、心配になるのが……」
海相「なんだ?」
参謀総長「“彼を妬む者が居るのか?”っといったところでしょうね」
司令長官「十分考えられますね。あの若さですから、居ないとは考えられませんね」
海相「出来れば居て欲しくは無いが、居たら居たで大変なことになるし。
場合によっては、早急な対策が必要になるかもな」
「「……」」≪コクッ≫
他に心配になるのが、座蒲郎を妬む提督が居るのかという問題だった。彼等しては祖国の為にも座蒲郎の存在は必要不可欠なものだ。そんな時に彼を妬むような輩が居れば、それは祖国存亡の危機に直面する火種になりかねない。そんな危機感を抱きながら、参謀総長と司令長官は海相の意見に賛成した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
……主人公サイド……
≪カッカッカッ……≫
「「……」」
話が終わって、俺は長門の後について行きながら廊下を歩いていた。
が……
ーーーー
提督1「!おい、あいつってもしかして、横須賀鎮守府に着任したっていう……」
提督2「間違いない、沢小路 座蒲郎だ」
提督3「噂には聞いてたが、本当に若いな。あの若さで大戦果をあげたとは思えないぜ」
運が良いのか悪いのか、俺とそっくりな格好の人達と出会した。話を聞くからに、俺の話をしてるみたいで、長門曰くみんな提督との事。
≪ゾロゾロ……≫
提督4「なぁ、お前って、家族とか居るのか?」
提督5「彼女は居ないのか?居ないのなら、結構可愛い娘を紹介するぞ」
提督6「思い出に残る任務とかきかせてくれよ!」
提督7「好きな艦娘とか居るか?」
『ワイワイガヤガヤ……』
座蒲郎「えっ、ちょっ……!」
いつの間にか大勢の人達にとり囲まれて質問攻めに逢う俺、相手が多過ぎて対応出来ない。
『ワイワイガヤガヤ……』
座蒲郎「うう…長門、どうしよう……?」
長門「ううむ…仕方ない。
ついて来い、こっちだ!」
≪ガシッ!グイ……!≫
座蒲郎「ちょっ、なg……うわぁ〜〜!」
早く帰りたいけど、このままじゃ無理で長門に振ったところ、何か策が思い浮かんだと思うと、グイグイ引っ張られてその場から離脱。
提督8「おい、逃げたぞ!」
提督9「逃がすか〜、追撃だ追え追え〜〜!」
『わ〜〜〜‼︎』
≪ドタドタドタ……!≫
けれど逃がすまいと大勢で追い掛けて来る。
≪タッタッタッ……≫
長門「ちっ、面倒だな。提督、飛ばすぞ!」
≪グイグイ……≫
座蒲郎「いや待って…うわぁああ〜〜!」
≪ダダダダ……!≫
追い掛けて来る人達に舌打ちした長門は、彼らを撒こうと俺の腕を更に引っ張り加速。あまりの速さについて行けない俺を無視して長門は走り続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「「ハア…ハア…ハア……」」
それから大勢の人達に追い掛けまわされ、息を切らしながら横須賀鎮守府に戻ったのは、もう陽が落ちかけた夕暮れ時だった。
疲れた……
長門「ハア…ハア……流石にあれだけ走ると疲れるなぁ……ところで提督…昼食がまだだが…これから食堂に行くか……?」
座蒲郎「ハア…ハア……いや、その前に寝かせてくれ……ハア…あんなに走ったのは初めてだから…ハア…ハア……もう…限…界……」
長門「ハア…ハア……実を言うと……ハア…私も…だ……」
座蒲郎「ハア……だろう…なぁ……ハア…ハア……今日残った仕事は…明日やるとしよう……ハア…ハア……折角…休暇が…取れるし…な……」
長門「そう…だな……ハア…ハア……そう…しよう……」
追い掛けまわされたせいで昼飯と摂れてなかったから、長門に食堂に行くか聞かれたが、長い時間走ったせいですっかりくたびれた俺には、飯よりも休息が欲しかった。息を切らす長門も同じ意見で、今日残った仕事は明日やるとして、今日はその場で解散した。
(続く)
後書き
大勢に追い掛けまわされ、有名人とは辛いですなぁ〜。(他人事)
次回は鎮守府の休暇。
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