Blue Rose
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十話 弱さその二
「そうなりますね」
「そうね、けれどね」
「それでもですね」
「芸術は誰も何も言えないものでしょ」
「その人の中にですね」
「それぞれあるものを出すものだから」
それ故にというのだ。
「いいのよ」
「じゃあ僕も」
「頑張って描いていって」
「わかりました、このまま」
「黒の時代を最後までね、そして」
「それからですね」
「別の絵を描いていってもいいのよ」
暗い絵ばかりでなく、というのだ。
「そうした絵もね」
「今は暗い絵ばかりでも」
「移りたいならね」
その暗い絵達からというのだ。
「蓮見君が」
「じゃあ」
「先生は何も言わないから」
優花がどうした絵を描いてもというのだ。
「テーマを出すことはあってもね」
「この美術部はそうですよね」
「ええ、あれしろこれしろではね」
「芸術は育たないんですね」
「そう、だからね」
そうした考えだからというのだ。
「先生は蓮見君がそうした絵を描いても」
「何も言われないんですね」
「そうよ」
笑顔での返事だった。
「そもそもピカソは誰かに制限されたらああした絵は描けたかしら」
「そう言われると」
「マグリットやダリもよ」
今度はシュールリアリズムの画家達だった。
「あの人達もでしょ」
「ああした絵を描くなって言われたら」
「それじゃあどうしようもなかったわね」
「そうですね」
「ゴッホもそうだったし」
絵の具をキャンバスに浮き出るまでに使い鮮やかなタッチで描ききっていた。死の直前にその芸術が注目されだしていた。
「芸術は束縛してはいけないの」
「あれこれ言わないで」
「そう、各自がね」
「描くものなんですね」
「彫刻もそうよ」
そちらの芸術もというのだ。
「自由であるべきなの」
「それぞれの人で、ですね」
「創っていくものよ」
「だから僕も」
「黒い絵を描きたいだけ描いてね」
「わかりました」
優花は微笑むことは出来なかったが確かな声で頷いた、そしてだった。
美術部での活動も続けていた、しかし。
暗い表情は変わらずだ、昼食の時に龍馬に問われた。
「最近暗いな」
「そうかな」
「食い方もな」
龍馬は彼のそのことについても言った。
「何か遅いな」
「元気ないかな」
「どうもな」
実際に、というのだ。
「そんな感じだよ」
「そうなんだね」
「食う量もな」
そちらもというのだ。
ページ上へ戻る