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おぢばにおかえり

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第二十八話 誤解のもとその八

「今度は。何処に行くんですか?」
「今日は部活もないし」
「はい」
「だからこのまま寮に帰るつもりよ」
「寮ですか」
「そう、東寮よ」
 今の私のお家と言っていいです。もうそこに入って三年目。随分長くなってきています。最初は三年間やっていけるのかしらって思っていましたけれど。
「そこに帰るつもりよ」
「寮ですか」
「そのつもりだけれど」
「その東寮って何処にあるんですか?」
 今一つはっきりしない感じの質問でした。
「そこって。何処なんですか?」
「寮の場所知らないの」
「ええ、そうですよ」
「まあしらないのなら別にいいけれど」
「何でですか?」
「当たり前でしょ。女の子のいる場所よ」
 このことを言います。
「知らなくていいわよ」
「それがよくわからないんですけれど」
 まだよくわかっていないって感じです。
「どうしてなんですか?また」
「まさか忍び込むとかじゃないでしょうね」
 阿波野君をジロリと見て尋ねました。
「言っておくけれどそれは不可能だからね」
「不可能っていいますと」
「女の子の城はガードが固いのよ」
 これには定評があります。天理高校東寮といえばそれこそです。もう厳重この上ないセキュリテイです。それこそ難攻不落、大阪城のようなものです。
「大阪城を陥落させるようなものね」
「大阪城って落城したんじゃ?」
「例えよ例え」
 痛いところを突いてきます。
「熊本城ですよ。落ちなかったのは」
「西南戦争?」
「僕の母方の爺ちゃん熊本出身なんで。そうなんですよ」
「そうなの。お爺さん熊本の人なの」
「ええ。それでですね」
「熊本城のことも知ってるのね」
 熊本城のことはよく知らないです。というか熊本に行ったことはないんです。福岡に長崎、佐賀、それに鹿児島のことはありますけれど。
「熊本っていうとね」
「あまり御存知ないんですね」
「ええ。それはね」
「まあそれはそのうち教えさせてもらいますよ」
 少し頼りない感じの言葉になっていました。
「機会があれば」
「そうなの。じゃあその時御願いね」
「わかりました。それで」
 話を戻してきました。
「東寮ですけれど」
「何?」
「それで何処にあるんですか?」
 またこのことを尋ねてきました。
「その東寮って」
「どうしても知りたいの?場所」
「何なら自分で探しますし」
「ああ、それは止めた方がいいわ」
 どうも変なことをしそうなのでそれは泊めました。
「それはね。いいわ」
「いいんですか」
「仕方ない子ね」
 まずはこう溜息をつきました。 
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