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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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絆の力

 
前書き
まさかのアクノロギアvs.アイリーンなのかな?アイリーンはエルザと関わりあるなら退場しないような気もするし、アクノロギアはラスボスのような気がするし、どうなるのかさっぱり予想できん!! 

 
遺跡のすぐ前へとたどり着いた俺たちは、謎の巨大生物を見上げる。

「こいつが生体反応の正体」
「でけぇ・・・」

その生き物は俺たちの何倍もの大きな体をした、蛇のような生き物だった。するとそこに、別の道から遺跡を目指していたスティングさんたち三大竜が駆けてくる。

「ナツさん!!シーサーペットだ!!」
「なんだって!?」
「海の魔物だよ。昔、そんな話を聞いたことが―――」
「陸だろここ!!」

この巨大生物の名前を知っているスティングさん。ナツさんがなぜ陸地であるはずのこの島で、海の魔物であるシーサーペットと呼ばれる生き物が生存できているのか、理解できていないようだった。

グアアアアア

「「「「「!!」」」」」

ナツさんが三大竜の皆さんに詰め寄っていると、シーサーペットが雄叫びをあげる。そして、その巨体を生かし、俺たちへと体当たりを仕掛けてきた。

「うおっ!!」

間一髪でそれを回避した俺たち。シーサーペットが衝突した地面は、その威力により大きくヘコんでいた。

「うわあああああああ!!」

それぞれ散り散りになってシーサーペットから逃げる。だが、海の魔物は俺やウェンディ、グレイさんたちには目もくれず、ナツさんとルーシィさんを巨体を地面に擦り付けながら追いかけ回している。

「なんでナツさんたちを!?」
「わかんないよ!!」

立ち止まって振り向いてみるが、シーサーペットは止まっている俺たちよりもなぜか動き回る彼らの方ばかり気になっている様子。
体の大きさによる差なのか、追い付かれかけてきたナツさんたち。彼らは目の前にある遺跡の中へと駆け込んでいき、シーサーペットはその入り口に突撃して一時的にその動きを止める。

「くっ!!」

鎧の中に手を忍ばせ、ラハールさんから手渡された信号弾を手に取るエルザさん。彼女はそれを天に掲げると、船で待つ評議院に見えるように打ち上げる。

ガアアアアアア

人間用の小さな入り口に体通らなかった魔物は、咆哮しながら岩で作られた遺跡の回りに体を巻き付けていく。

「エルザさん!!ナツさんたちは!?」
「あの遺跡の中だ!!」
「そんなぁ!!」

こちらに攻撃してこないと確信を持った俺たちは、遺跡の前へと集合して現在の状況を確認する。シーサーペットはよほどナツさんたちを気に入っているのか、遺跡に巻き付いたままこちらに攻撃を仕掛けてくる気配が一切ない。

「んん?」

そちらにばかり意識を向けていると、後ろから砲撃が放たれたような音がする。そしてその直後、空から飛んできた砲弾がシーサーペットへと激突する。

「評議院の攻撃か?」
「ここにいると俺らにも当たる!!一辺隠れるぞ!!」

エルザさんとグラシアンさんの指示通り、そこら辺に散らばっている遺跡の残骸の影に隠れて様子を伺う。その間にも、評議院による砲撃が巨大な海の魔物を次々と捉えていた。

「「「「「うわあああああああ!!」」」」」

その砲撃の振動に頭を抱えて耐えているウェンディとエクシード五匹。しばらく評議院が攻撃をしているのを見ていると、不意にドクンッという音が聞こえてくる。

「なんだ?」
「今の音って・・・」
「何か心臓の音みたいな・・・」
「心臓って」

その音は人間の心臓が鼓動したような、そんな印象を与える音だった。

「どこから聞こえてる?」
「そこまではちょっと・・・」

この心臓の音がどこから聞こえているのか、そこまではわからない。遺跡の方から聞こえたような気もするけど、それだとシーサーペットのものなのだろうか。でも、何か違う気がする。

ガアアアアアア

不思議な音が聞こえたのと同じ頃、船から砲撃をしていた評議院の攻撃が止み、シーサーペットが咆哮をする。そいつは自分が巻き付いている遺跡を破壊しようとしているのか、どんどん体に力を入れていき、岩で作られたそれは悲鳴をあげているように見える。

「とにかく、あいつを何とかしないと」
「あぁ!!中のナツさんたちが潰される!!」

遺跡の中に逃げ込んだナツさんたちのことを考えると、シーサーペットをこれ以上自由にしておくことはできない。

「みんな!!行くぞ!!」

剣を別空間から取り出し、いの一番にシーサーペットへと向かっていくエルザさん。彼女の後に続くように、俺たちも巨大な生き物へと駆けていく。

「ハアアアアア!!」

剣を大きく振り上げ、蛇のような体の尻尾を一刀両断する緋色の剣士。

「アイスキャノン!!」
「水竜の咆哮!!」

続けて氷の砲撃と水のブレスを彼女の後方から放つ。それを受けたシーサーペットは、ダメージが大きく現在の姿勢を維持できなくなり、遺跡に巻き付いていた体が離れていく。

「影竜の・・・」
「白竜の・・・」
「幻竜の・・・」
「「「咆哮!!」」」

そして、遺跡から完全に体が離れたのを確認すると、一気にダメ押しとなる連係攻撃を繰り出す剣咬の三大竜。彼らの一打を顔面に受けた海の魔物は、森の中にできている土の道へと崩れ落ちる。

「さすがスティングくんですね!!」
「いいよグラシアン!!」
「ローグも!!」

岩の影から戦況を見守っていたウェンディとエクシードたち。相棒たちに褒められたスティングさんやグラシアンさんは、得意気にそちらにピースをしている。

「気を抜くな!!まだだ!!」

しかし、エルザさんのその声で緩みかけた気持ちをもう一度引き締め直す。地面に叩き付けられたシーサーペットだったが、そいつはまだ倒されたわけではなかった。彼はその巨体をゆっくりと起こしつつ、上から攻撃を仕掛けた俺たちを見下ろしてくる。

ドクンッ

それと同時に、先程聞こえた心臓の音が周囲に響き渡る。その際紫の毒々しい何かが見えたような気がしたのだが、それが俺たちに向かってきたと思った途端、

「あ・・・」

後ろにいる天空の少女が倒れる。

「ウェンディ!?」
「どうしたの~!?」

シャルルとセシリーが突然倒れたウェンディに声をかける。彼女は顔色が悪く、まるで風邪でも引いたかのような、そんな風に見える。

「なんだか・・・体が・・・動かな・・・」

しゃべるのも辛そうなウェンディ。しかも、それだけでは終わらない。ウェンディを心配していたシャルルとセシリーも、彼女と同じように倒れてしまう。

「どうなってるの・・・」
「体に・・・力が~・・・」
「みんな!!うっ!!」

大切な人たちが苦しんでいるのを見て、慌てて彼女たちに駆け寄ろうとする。しかし、三人の元にたどり着くことができない。その理由は、足がおぼつき、膝をついてしまったからだ。

「どうした!?シリル!!」

胸に手を当てて乱れる呼吸をなんとか整えようとしていると、エルザさんが背中を擦ってくれる。だけど、それでも症状は一向によくならない。

「やられたのか!?」
「ドランバルト!!」

霞む視界、そんな中ウェンディの真後ろに一人の男が現れる。評議院の衣服に身を包んだ彼は、以前天狼島でS級魔導士試験にスパイとして紛れ込んでいたメストさんだった。

「突然ぶっ倒れたんだ!!訳がわかんねぇ!!」

何が起きて、どうなって俺たちが倒れたのか全く理解できていないため、事情も説明することもできない。

ガアアアアアア

倒れた俺たちを見て威嚇しているのか、シーサーペットが巨大な鳴き声をあげる。

「ウェンディとシリルたち、船に頼む」
「だが、お前たちはどうするんだ!?」
「いいから、行ってくれ!!」

ここに動けないメンバーを置いておくわけにはいかないと判断したエルザさん。メストさんは迷ったような顔をしていたが、ここは彼女の判断が正しいと考え、ウェンディとシャルル、セシリーを抱え込む。

「すぐいく!!待ってろシリル!!」

彼は意識がほとんど残っていないウェンディたちを抱えると、瞬間移動(ダイレクトライン)でこちらへとやって来る。

「大丈夫か?」
「微妙な感じです・・・」

膝をついている姿勢すら辛くなってきて、四つん這いになりながら答える。その状況で天竜の顔色を確認して、あることに気付いた。

「これって・・・毒?」
「何!?」

化猫の宿(ケットシェルター)にいた頃、読んだことがある本の中にこれと似たような毒の症状を見た記憶がある。もしこれが毒だったら、治癒魔法で治せるはず。

「メストさん・・・ウェンディを地面に置いてもらえますか?」
「あ・・・あぁ。それと俺の名はドランバルトだ」

メストさん・・・じゃなくてドランバルトさんは言われた通りにウェンディたちを地面に寝かせる。その少女たちに途切れそうな意識の中、治癒魔法を施してみる。

「うぅ・・・」

すると、予想通りと言うべきだろうか、血の気が引いていたウェンディの顔に、赤みが戻ってきた。

「おおっ!!」
「よかっ・・・た・・・」

治癒魔法が得意なウェンディを治せたことで安心した俺は、その場に崩れそうになる。しかし、ドランバルトさんが地面に着く直前で支えてくれて事なきを得た。

「あれ?シリル?」

体調が良くなったことで意識を取り戻したウェンディか体を起こす。彼女は真っ青になっている俺の顔を見て、心配そうに駆け寄ってくる。

「ウェンディ、これは毒の症状らしい。君の治癒魔法でシリルたちを治すんだ」
「わ!!わかりました!!」

冷静さを保っていたドランバルトさんがウェンディに説明してくれたおかげで、彼女は俺やシャルル、そしてセシリーにそれぞれ治癒魔法をかけてくれる。

「助かった。ありがとうウェンディ」
「ううん。私こそありがとうね」

ニコッと微笑みかけてくれるウェンディ。その笑顔で頬が緩んでいると、後ろから猫たちのニヤニヤとした視線を感じたので慌てて表情を引き締め直す。

「メス・・・ドランバルトさん。船に戻ってこのことを伝えてきてもらっていいですか?」
「あぁ。報告が終わったらまた戻ってくる」

なんで毒なんかに犯されたのかわからない。なので、頭が良さそうなラハールさんに調べてもらおうと考え、ドランバルトさんにお願いする。彼が瞬間移動(ダイレクトライン)で評議院の船に戻ったのを確認してから、シーサーペットと戦闘しているエルザさんたちの方へと向き直る。

ドクンッ

「くっ・・・」

また心臓の音のようなものが聞こえたかと思うと、突然地面に手を付く氷の魔導士。

「グレイ!!あっ・・・」

剣を構えていた緋色の女性が声をかけるが、彼女も頭を押さえてその場に崩れ落ちる。

「なんだ・・・一体・・・」
「どうなってんだ?・・・」
「力が・・・入らねぇ・・・」
「フロッシュ・・・」

気が付くと二人だけでなく、スティングさんとグラシアンさん、ローグさん、さらにはエクシードの彼らの相棒であるエクシードたちまで顔を真っ青にし、地面に崩れ落ちている。

「皆さん!!大丈夫ですか!?」
「すぐに治癒を!!」

どうやらエルザさんたちも毒に犯されてしまったらしい。しかし、原因が分かれば問題ない。ウェンディと俺はすぐに倒れている皆さんに治癒の魔法をかけていく。

ガアアアアアア

治癒魔法をグレイさんたちにかけているのを見計らってなのか、シーサーペットは巨大な体を上空に大きく伸ばしていく。そして、重力を味方につけて一気に地上にいる俺たちへと突進してくる。

「くっ!!」

今動けるのは俺とウェンディ、そしてシャルルとセシリーだけ。俺がグレイさんとエルザさんの服を掴んでその場から回避し、他のみんなも同じように誰かしらを掴んでその場から退避する。

「みんな!!大丈夫!?」
「えぇ!!」
「なんとか~」
「ギリギリだったけど・・・」

スティングさんとレクターを持つシャルルとローグさんとフロッシュを持つセシリー、そしてグラシアンさんとキセキを引きずって回避してくれたウェンディが答える。ちなみに俺もグレイさんたちを引きずって避けたから、二人の服が少し破けてしまったけど、仕方ないよね?

「って!!そんなこと考えてる場合じゃなかった!!」

自分で自分に突っ込みを入れた後、気を取り直して皆さんに治癒魔法をかけようと手をかざす。だが、魔力を高めた途端、体がグラリと揺れた。

「くっ・・・」

一度治癒させたなら抗体ができるかとも考えたけど、そう甘くはなかった。辺りを見回すとウェンディたちも再び毒に感染したようで、うずくまり動けなくなっている

「ルーシィは・・・」
「ナツさんたちも・・・」
「動けないとすると・・・」
「こいつは・・・」
「まずいな・・・」

足に力を入れて起き上がろうとしているものの、そこから先の姿勢に動かせない。遺跡の中にいるナツさんたちも同じようになっていると考えると、これは本当にまずい。

「フロッシュ・・・レクター・・・キセキ・・・」
「シャルル・・・大丈夫?」
「セシリー・・・」

遺跡を締め上げているシーサーペット。その足元では意識が完全に途絶えたエクシードたちを抱えたローグさんとウェンディと俺が、彼らに声をかけている。しかし、一向に反応が返ってこない。

「くそ・・・全然立てねぇ・・・」
「船酔いと車酔いが一辺に来たみてぇだ・・・」
「これは・・・毒というよりウイルスなのか?」

顔をうつ向かせ四つん這いになり、立ち上がろうと懸命に力を入れるスティングさんとグラシアンさん。その隣で剣を杖変わりに立とうと試みるエルザさんがそう言う。

「ナツ・・・何やってんだよ・・・」

中から戻ってくる気配がないナツさんに苛立っているグレイさん。彼が視線を向けた先にいる海の魔物がこちらに尻尾を振り下ろしてくる。

「!!」

それに気付いたローグさんがフロッシュたちを抱えて横っ飛びする。

「危ねぇ!!」
「くおっ!!」

彼らが交わした尻尾がエルザさんとウェンディに迫ったのを見た俺とグレイさんは、いうことを聞かない体にムチをうち、彼女たちを抱えて間一髪回避する。

「大丈夫か!!」
「サンキューローグ」

フラフラしながら大切な友を守ってくれた影の竜に歩み寄る二人の青年。そんな彼らに、シーサーペットはまたしても攻撃を繰り出してくる。

「イルズィオーン!!」

頭から突撃してきた巨大な生物に、似たような大蛇になりながら対抗しようとするグラシアンさん。しかし、本調子ではないせいで、徐々に押されているのがわかる。

「グラシアン!!」
「大丈夫か!?」

彼の足元にいる二頭の竜が声をかけるが、それに答えられるほど余力のない竜は、後ろにいる俺たちを守るために歯を食い縛り耐えている。

「やべ・・・ムリ!!」

しかし、体調不良で力が抜けたのか、大蛇は元の人間の形へと戻り、地面に倒れる。

「グ・・・ラ・・・」

全身にウイルスが回ってしまったのか、とうとう全員が地面に伏してしまう。意識がなくなりかけたその時、突然遺跡から一筋の光が見えてくる。そして、その光が大きくなっていくと、遺跡は破裂音と共に爆発し、中から巨大な怪獣のような何かが姿を見せる。

「シリル!!ウェンディ!!エルザ!!グレイ!!」

粉々になった遺跡からこちらへと駆けてくる三つの影。それは、同じ滅竜の魔を持つ男と、その相棒の猫、そして、星霊の魔を操る女性であった。

「ウイルスが・・・」
「ウイルス!?」
「やっぱりこの煙毒だったんだ!!みんなしっかりして!!」

やっとの思いで口を開いたエルザさんから事情を聞き、驚いているルーシィさんとハッピー。その後ろでは、俺たちの何倍もある巨大な二頭の生物が、激しく体をぶつけ合わせていた。

「違うの!!この煙は毒じゃない!!」
「え!?」

煙?彼女たちが何を言っているのか理解できず、わずかに目を開けていく。すると、俺たちの周囲に緑色の霧が漂っているのが見えた。

「あの中で煙と一緒だった私たちはウイルスに感染してない!!逆なのよ!!ケモケモの体から出ている煙は、毒じゃない!!ウイルスを放出しているのはこの島自体で、あれはウイルスを浄化する煙!!」

興奮気味にそういうルーシィさん。その話を聞いていると、さっきまで動かなかった体が、動くようになっていく。

「浄化だと?」
「確かに・・・体が動きます!!」

血の気の引いていたみんなの顔が良くなっているのがわかる。俺自身も自由に体が動くのを感じながら、上半身を起こしていく。

「あれが・・・ケモケモなのか?」

シーサーペットと戦っているケモケモを見上げて驚愕しているグレイさん。彼の問いに、ルーシィさんはうなずく。

「ケモケモは動物じゃない。ウイルスを浄化してくれる、植物の神様なのよ!!」
「クルー!!」

見た目に似合わぬ高めの声で鳴きながら、ウイルスを浄化するための煙を吐き続けるケモケモ。

「あいつ!!俺たちをずっと守っていてくれてたのか」

笑みを浮かべ、シーサーペットと交戦しているケモケモを見上げるナツさん。ケモケモは口から彼のように炎を吐き、シーサーペットを圧倒している。

「ケモケモ!!お前だけにやらせるか!!いくぞハッピー!!」
「あいさー!!」

ハッピーに掴まれケモケモの頭上に投下されるナツさん。火竜(サラマンダー)のブレスと植物の神のブレスが混じり合い、海の魔物を飲み込む。

「この島は、昔から隆起と沈降を繰り返してきた。そして、隆起した時にウイルスを出すのよ」

しかし、かつてこの島にそのことを知らずに文明を開拓した人たちがいたらしい。その際、彼らを救ったのがケモケモだったのだ。ウイルスを浄化し、人々を守る。それがケモケモの役割らしい。

「クルー!!」
「紅蓮爆炎刃!!」

二人の炎が同時に放たれ、シーサーペットを焼き尽くす。彼らの驚異的な一撃を受けた海の魔物は、跡形もなく消滅する。

「やったぞ!!すげーぞケモケモ!!ん?」

喜びを分かち合おうと友に話しかけるナツさん。しかし、彼はある異変に気付いた。それは、ケモケモの体から白い煙が出ていることだ。さらに、俺たちの足元がグラグラと揺れているのだ。

「あれ!?この島沈んでません!?」
「本当だ!!」

隆起してウイルスを振り撒く島は、その役割を終えたということなのだろうか。再び海の中へと帰ろうとしているようで、ゆっくりと沈み始めている。

「ヤバイぜナツさん!!」
「島が沈み始めている」
「俺たちも沈むぞ!!」

ケモケモの上から降りてこようとしないナツさんに三大竜の皆さんが声をかける。しかし、ナツさんはケモケモと何か話しているようで、降りてこようとしない。

「「「「「あ・・・」」」」」

続いて、ケモケモの体からたくさんの木々が生えてくる。まるで、自然に返ろうとしているかのような、そんな風に俺には見えた。

「ナツ」
「!!お前・・・話せるのか?」
「今思い出した。言葉も・・・役割も・・・」

自然と一体になろうとしているケモケモは、自身の体に乗っているナツさんの何かを伝えようと口を開く。

「ほら、起きろよ。一緒に帰ろう」

手を差し出し、ギルドに連れて帰ろうとしているナツさん。しかし、それに対し、ケモケモは首を縦には振らなかった。

「僕は残るよ」
「え?」
「僕の体は木と一体化してる。この島と共に沈むんだ」
「何言ってんだよ!!」

彼の言葉に納得できずにいるナツさん。その間にも、ケモケモの体に生えている木は、どんどんどんどん大きくなっている。

「島のウイルスは僕は吸い込むから。ナツはみんなと一緒に戻って」
「ダメだ!!お前も一緒だ!!」
「・・・ごめんね」

泣きそうな表情と声で自分を孵してくれた大切な人に謝罪するケモケモ。

「なんで謝るんだよ!!」
「みんなを・・・これ以上守らないから・・・早く逃げて。お別れだよ、ナツ」
「お別れじゃねぇ!!いけるわけねぇだろ!!」

なおも増え続ける木々がナツさんとケモケモを引き剥がしていく。ナツさんが何度も何度も名前を呼ぶが、彼らの距離は大きくなる一方だ。

「ナツ・・・僕も・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員・・・だったよね?」
「あぁ!!そうだ!!お前は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員だ!!俺たちの家族だ!!」
「ありがとう・・・楽しかったよ・・・」

彼の口から“家族”と言ってもらえたケモケモは、嬉しそうに微笑んで、森の中へと溶け込んでいった。

「返事しろって!!うおっ!!」
「ナツ!!」

声が聞こえなくなり、叫ぶナツさん。彼はバランスを崩し、ケモケモの体だった場所から、下へと落っこちる。

「なんでだよ!!」
「いこう」
「いやだ!!」

エルザさんに呼ばれてもうなずこうとしないナツさん。そんな彼の頭に、一つの木の実が落ちてくる。

「ケモケモの・・・種?」
「・・・いくぞ」

木々と一体になったケモケモから降ってきたそれを握り締め、エルザさんの後についてくるナツさん。彼の顔かはは、悔しさが滲み出ていた。






















評議院の船に乗り込み、沈んでいく島とケモケモを見送る。だが、ナツさんだけはそちらをまっすぐに見れず、手に握り締めた木の実をじっと見つめていた。

「俺・・・あいつを守れなかった・・・家族なのに・・・」
「いや、それは違う。遺跡に記されていた、古代文明の時と同じだ。ケモケモはあの島の、神のような存在」
「うん。そして、自分の使命を果たしたのよ」

エルザさんとルーシィさんにそう言われ、手に持つ木の実に再び視線を落とした彼は、吹っ切れたのか、笑顔を見せる。

「またいつか、会えるよな?」

ケモケモから最後に送られた木の実(プレゼント)。ナツさんはそれを、自宅の庭に埋めたらしい。いつかまた、彼と会えることを信じて・・・




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
やりたいこともほとんど終わっていたため、大分雑になっちゃいました。
以上でケモケモのストーリー(ほとんどお遊び)も終わりです。
次は例のあの地獄のお話です。 
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