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変装の果てに

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2部分:第二章


第二章

「その時は私からお金を払いますよ」
「えっ、いいんですかそんなこと」
「これが私の芸ですから」
 にこりと笑って話す竜蔵だった。
「そうさせてもらいます」
「そうですか、そこまで仰るのなら」
「はい」
「そっくりにですよ」
 若者からの言葉だ。
「本当にそっくりに」
「わかっています。では」
「よし、それじゃあ」
「見せてもらおうかな」
「そうよね、一体何処までそっくりになれるのか」
「是非ね」
 周りもその言葉に乗る。こうしてだった。
 竜蔵はすぐにメイクをはじめた。それは瞬く間であり気付けばだ。鏡がそこにあった。
「うわ・・・・・・」
「これはまた」
「本当だったなんて」
「いや、全く」
 まず周りが唖然となった。
「そっくり」
「鏡があるみたいよ」
「嘘じゃなかったんだ」
「如何でしょうか」
 髪型までそのままにしてだ。竜蔵は周りに尋ねた。
「鏡になっているでしょうか」
「うん、確かに」
 若者からの言葉である。
「なってますよ。ほら」
 彼が鏡を出すとだった。鏡に彼が二人いた。それを見ればそれだけで明らかであった。
 言葉通りだ。まさにであった。竜蔵の言ったことは嘘ではなかったのだ。
 若者はそのことに満足してだ。それで言うのであった。
「若し失敗した時はお金を払うって言いましたよね」
「はい、確かに」
「凄いですよ、本当に俺そっくりです」
「有り難うございます」
「失敗した時は貴方が払うってことですから」
 またこう言ってであった。
「鏡になったんですから。それじゃあ」
「そうだよな、ここはな」
「いいもの見させてもらったし」
「それじゃあ」
 周りもこう言ってであった。そして。
 若者だけでなく周囲もお金を出してきた。千円や二千円ずつだったがそれなりに数がいるので。かなりの額になったのだった。
 その全てが竜蔵の手に入った。彼は笑顔で周りに言う。
「有り難うございます」
「いや、ここまで凄い変装ができるなんて」
「これは才能だよな」
「全くだよな」
 そのうえでこう話されるのだった。彼のその変装のテクニックは完璧と言っていいものだった。
 それはだ。噂通り性別が違ってもできた。
 ある日老婆に変装を頼まれるとだった。これまた。
「あんれまあ、こんなごつなったとよ」
 九州の言葉がそのまま出ていた。何と自分自身がそこにいたのだ。
 銀色の髪に眼鏡で痩せた顔、まさに彼女自身だった。
 その顔を見てだ。九州弁そのままで彼に言う。
「いやお兄さんあんたすごかとよ」
「そうですか、そんなに」
「これは才能ばい」
 そして笑顔でこう告げたのだった。
「あんた天才ばいよ。ここまで出来る人おらんとよ」
「有り難うございます」
「うん、はいこれ」
 そしてだ。お金を出したのだった。竜蔵が足元に立てている変装代の二千円をだ。彼に出したのである。他にも見たいマジックもあった。こっちはかなり格安であり五百円だった。
「受け取りんしゃい」
「はい、それでは」
「いやあ、こんな人がおるとよ」
 老婆は九州弁で喜んでいた。とにかく誰にでも変装できる彼だった。
 
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