Blue Rose
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第九話 戸惑う心その八
「だからね」
「そうだよな、じゃあ」
「荒れるかも知れないね」
「近いうちにな」
「そうなっても不思議じゃないよ」
「あの魚が出たからか」
「本当に不思議なお魚だよ」
そのリュウグウノツカイはというのだ。
「詳しいことは殆どわかっていないしね」
「深海にいてな」
「飼育してみてもいつもすぐに死ぬらしいし」
「すぐにか」
「一時間もしないうちに死んだとかいう話があったらしいよ」
「本当にすぐだな」
「だから詳しいことは殆どわかっていないんだ」
とかく謎の多い魚だ、人間の知識は大海の中の小匙一杯分というがこの魚についてもそういうことなのであろう。
「残念なことにね」
「けれどそうしたこともだな」
「言われてるのよ」
「そうなんだな、じゃあ荒れても」
「おかしくないね」
優花は自分の女言葉に気付いたが気付かないふりをして話を続けた。
「その時は」
「覚悟はしておくか」
「荒れる時もね」
「いきなりとかな」
「そうだね、僕いつも鞄の中に傘を入れてるから」
折り畳み式である、用意がいい優花はいつも急に雨が降った時に備えているのだ。
「だからね」
「安心出来るんだな」
「雨になってもね」
「じゃあ俺もだな」
「傘はいつも用意しておいた方がいいよ」
鞄の中にというのだ。
「万が一の時にね」
「よし、それじゃあな」
龍馬は優花のその言葉に頷いた。
「俺も傘を入れておくな」
「そうしておいてね」
「雨がいきなり降ってきたらな」
天気が荒れてだ。
「困るからな」
「そう、用心はしておくことだよ」
「備えあれば憂いなしか」
「うん、絶対にね」
「そうするな、しかし優花ってな」
「僕は?」
「いつも用意がいいな」
彼のこのことについてだ、龍馬は言った。
「何かとな」
「だから備えあればじゃない」
「そういうことか」
「ずっと家事してるとね」
両親が亡くなり優子と二人で暮らしてきたその中でだ。
「何があるかわからないから」
「それでなんだな」
「いつも備えている様にね」
「しているんだな」
「そうなんだ」
「奥さん、いや奥さんでもな」
家庭の主婦をだ、龍馬は例えに出した。
「そこまでの人滅多にいないだろうな」
「そうかな」
「そう思うぜ」
実際にというのだ。
「本当にな」
「僕みたいな人は」
「何でも用意周到でな」
尚且つというのだ。
「しかも手際もいいからな」
「だからなんだ」
「そこまで出来る人はな」
例え家庭の主婦でもというのだ。
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