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夜空の武偵

作者:コバトン
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プロローグ。伝説の始まり

「何だ……これ?」


黒い、真っ黒な世界に俺はいる。
意識はあるが、手足は動かない。
声が出る感覚はあるが、口を動かした感覚はない。
目を開けているのかもわからない感覚の中、次第に光が差してくるのが解る。
視力で確認したわけではない。なんとなく、「あ、明るくなった!」という認識をしたのだ。
何が起きてるのか解らない。
どうして自分がこんなところにいるのかも解らない。
そして、自分自身がどこの誰か、なんてことも実はよく解っていない。
ただ解ることは。
自分は漫画や小説が大好きだったということ。
年が近い妹がいたこと。
産まれた時からあまり身体が丈夫ではなかったということ。
そして……。
頭、頭部に角のような出来物があったこと。

(くっ、頭が痛い……何だ? この痛みは……⁉︎)

ズキン、ズキンと頭痛に悩まされていたその時だった。

『おめでとうございます~‼︎』

とあるアニメ映画のような台詞が聞こえ。

『貴方は、選ばれました~』

俺の意識は完全に覚醒した。
突然の声に驚き、思わず。

「……は?」

と声を上げてしまった……。

いやいや、今何て言った?

おめでとう? 選ばれた?

何を言ってるんだ?

というか……誰?

この光は何?


『はじめまして‼︎ 僕は世界を管理する管理者。君達の世界を担当している神の一人だよ‼︎』

……イカン。

幻聴が聴こえてきた。

『幻聴じゃないよ……君は死んで、この何もない創造の最果て。神界と人界の境界線に堕ちてきたんダヨ?』

創造? 境界線?
なんだそれ?
わけがわかない。
待て……コイツ今なんて言った?
俺が死んだだと⁉︎

『うん、病気になってね……。
胃ガンと肺炎が同時に発症して手遅れだったみたいだね。ご愁傷様……あ、もう死んでたね?
ってへへ♡』

殴りてぇ。
殴ってもいいよな?

『暴力反対』

「ま、やんねえけど」

面倒だし。それより、そうか。死んだのか……。
まだ、今週のジャ●プ読んでないのに…。

『そこなの⁉︎ 死よりもジャ●プの方が気になるって……君って面白いな』

「ま、冗談だけど」

『冗談なんだ?』

「死のうが生きようがどうでもいいからな」

『若いのに病んでるね。そんなに現実は嫌いかな?』

「ああ、現実なんてクソゲーだ!!
あのまま生きててもどうせ無価値でどうにもならなくて、ただ同じことの繰り返す無意味な時間だけが過ぎていくからな。特に俺みたいな病人はな」

だからいいんだ、もう、いいんだ……。
俺は主人公になれない、いや脇役すらなれなかった……ただの出来損ないなんだから」

(フム、やっぱりこの人にするかな。
心に深い傷を持ってて絶望を知っている人……まさに僕が選ぶ条件にピッタリだ!!)

『……ねぇ、転生してみない?』


「転生?」

『うん。そう、転生。実は、神々の間で代理戦争っていう人間界をも巻き混んだゲームが流行っていてね。君の魂はその駒……げふん、げふん。参加者として見事当選したんだよ。
選考の結果。君が転生する世界は『緋弾のアリア』に決まったんだ』

「げっ! 何だそりゃあ。しかも……よりによってアリアかよ⁉︎
危険じゃん。パワーインフレおかしい世界だろうが」

『あっ、知ってるんだ?』

「原作持ってたけど、武偵殺しとか魔剣(デュランダル)とかブラドとかヤバいやつばかり出てくるだろ! 主人公(キンジ)みたいに特殊な体質とか、アリアみたいな『イロカネ』を使えるとか、そういった能力ないと即死だぜ?」

『あ、それは平気だよ。転生特典で能力をあげるから』

「能力ねぇ……因みに選べるの?」

『ううん、ランダムだね。何がつくかはパルプンテ並みにお任せだよ?』

「『何が起きるかわからない』か、でも、まぁ、それならそれでいい……」

……。
っていいわけあるか⁉︎
何流されそうになってるんだ俺よ!
いかん、いかんぞ。
ここで流されたら……キンジ並みの『逸般人』になっちまう。
それは絶対に嫌だ!

『というのは冗談だけど、ある意味君が考える以上の人外にはなるかもね。というわけで主人公みたいな『逸般人』になっちゃいなよ』

「いや、む「無理って言うの禁止!!ってアリアちゃんに言われちゃうぞ?」っ……本気かよ?」

『もちろん。
本気だよ……あんまり時間ないし、さっさと行ってらっしゃい~♪』

「はっ!?
ちょっ……待……」

『駄目、待たない。いってらー』

自称神の少年がそう告げた時。
チリン、チリンと、鈴が鳴った。
その鈴の音を聞いた俺は。

駄目だ……なんだか眠くなってきた。

突然、意識が朦朧としてきて。グラン、グランと身体が揺れるような感覚を感じたのを最後に。俺は意識を失った。
薄まる俺の意識だが、途切れそうになったその瞬間。
少年の、神と名乗ったものの声が聞こえた。


『あっ、名乗り忘れたけど僕の名は(テラス)。よろしくね~!!
そうそう、能力だけどラノベ『ゼロの使い魔』に出る伝説の使い魔の力にしといたから~♪
『それが武器なら、どんな武器も操れる力』。その力があればこれから行く世界でかなり有利に闘えると思うからね~‼︎ それじゃあ、気をつけて~♪』


(ふざ……け……ん……な)


誰にも届くことはない呟きを残して。
俺はブラックアウトした。






こうして、俺は転生させられ。
のちに世界を驚愕させる伝説を残すことになる俺の第二の人生は始まったのだ。  
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