異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
三度目の正直
じっとこの怪物は僕の方を見ている。
次に何が来るのか。
それを考えていてもいいけれど、何かをなされる前に、
「“蒼き光の炎”」
再度、蒼い“魔法結晶石”を使用する。
先ほどの氷の攻撃ではこの怪物は倒せなかった。
けれど抵抗すらも見せなかった。
つまり氷の攻撃はこの怪物にとって、あまり問題の無い攻撃だった。
一方、炎の攻撃は自らが氷の攻撃を振りまいて、抵抗した。
となると、炎の攻撃は“有効”と考えられる。
だから先ほどの青白い炎を再び生み出して攻撃する。
先ほどは全て防がれたけれど一つくらいは……そう僕は思ったが、大人しく倒されてはくれないようだ。
全てが先ほどの氷の塊で消されてしまう。
というか、今の攻撃で危険と判断されたらしく大量に氷の塊がこちらにうちつけてくる。
レイアが氷の壁を再び這ってくれてその幾つかを防いでくれはしたけれど、
「炎と氷は、無理そうか。というか短時間で蹴りを付けないといけないか」
「颯太、他に何か手があるのですか?」
「あるにはあるんだけれど……砲丸投げはあまり得意ではないんだけれど、そんな事は言っていられないか。えっと挑戦できる個数は、10個。……きっと十分だよね」
「風の属性ですか?」
「うん。推測だけれど、出てきたら水属性かなと思っていたから炎以外にも、もう一つ熱的な意味でも効果がありそうな魔法があったんだ。でもそのためには僕の腕力とコントロールが試されている」
そう冗談めかして言うとレイアが笑う。
本当の事だけれど、ちょっとでもレイアには笑っていて欲しかったからそんな事を言ってしまった。
さて、頑張ろうと僕は“魔法結晶石”の風属性の元を取り出して作りあげる。
そこそこの長さのあるそれを持って、僕はその黒い物体に向かってまずは一本。
外れた。
少し手前の海に落ちてしまう。
もう一度、震える手で投げる。
今度は右側にそれてしまう。
やはり緊張がよくないのだろうか。
仕方がないので一度大きく深呼吸をして息を吐く。
大丈夫、まだ、幾つも元はある。
安心するよう自分に言い聞かせて、
「よし、今度こそ成功させてやる!」
僕は自分を鼓舞するようにそう言って、もう一度“魔法結晶石”を投げた。
空高く跳びあがり、それがやがて放物線を描きながらその黒い怪物の頭上に飛びあがり、そこで、
「“白き神の槌”」
一言呟いた。
そこで発動するよう願って。
その黒い怪物の頭上で、僕の投げた“魔法結晶石”が破裂して、白い光の帯となり海めんに落ちて、そこでその黒い物体を中心とした光の魔法陣が浮かび上がりそして。
ドンという音とまばゆい白い光が、行く筋も空から降ってきて黒い怪物に降り注ぐ。
何本も何本もそれは、その怪物を次々と襲い、
「ぐあああああああ」
そんな断末魔の方向と共に、黒い怪物が黒い靄上の物になり、消滅した。
よし、三回目で成功したと僕が思ったのもつかの間。
怪物が消えたためか、僕達の方に大きな氷が飛んできて、それを避けようとして僕はレイアと共に海の中に投げ出されてしまったのだった。
ページ上へ戻る