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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)

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第27話 絵本 砂漠の王子様

 
前書き
歌丸師匠が司会を引退ですと......

明日から私は何を糧にして生きていけば 

 
砂漠の王子様
とある緑豊かな国に大きなお城がありました。
お城は国の真ん中にあり、多くの人々は豊か自然に囲まれて幸せに暮らしていました。
しかし、それを妬ましそうに見ている悪い魔女がいました。
魔女は、隣の砂漠にある国に住んでいました。
窓から見える景色は、砂、砂ばかり
なんにも面白くありません
四季の変化も楽しめません
いつも砂嵐ばかりで退屈していました

四季の変化を感じ取れる隣の緑豊かな国が羨ましくて仕方ありませんでした
そこで、魔女はある恐ろしい計画を考えました。
緑豊かな国にいる王様を殺して、自分が新たな女王になろうと考えました。
魔女はさっそく緑豊かな国に呪いを掛けました。
緑豊かな国に雨を降らなくする呪いです
一週間経っても一ヶ月経っても雨降りません。
更に国の人に病をもたらし、次々と倒れていきました。
国の王様も病に倒れ、息も絶え絶えとなりました。
王様には可愛い娘がいました。
水を操り、木や植物に愛される王女様です
そして勇敢でした

お父様
わたくしが必ず悪い魔女をこらしめて呪いを解いてみます

娘や
魔女は砂漠の真ん中じゃ
お前の足ではとてもじゃないが難しいじゃろ
何処にも行かないでくれ

王様は可愛い娘を外に行かせたくありませんでした
願わくば、家族で静かに暮らしたい

しかし、王様の願いは叶いませんでした
王様は死んでしまいました
悲しみに暮れる民の人々
容赦なく照りつける太陽の光に緑豊かな国は、段々と干上がっていきました。
もう飲み水もありません

このままでは国が滅んでしまう
そう思った時
悪い魔女が現れました

水が欲しいかい?
欲しいなら我を新しい女王にしな

魔女が呪文を唱えると雨が降り出しました
久しぶりの雨に人々は歓喜し、魔女を新しい女王として迎えました
魔女は、お城に入ると先代の王の娘を追い出しました
水が無ければ何もできない王女様
砂漠の中に捨てられました

辺りを見渡しても何もない砂ばかり
王女様は途方に暮れて、砂漠を歩きました
何日もさまよいました
お城から渡された食料も残りわずかです

王女様は倒れました
もう限界でした
薄れゆく意識の中で王女様は、ある事を思い出します
夜寝る前に、聴かされたお話がありました

砂漠には誇り高き、赤毛の一族がいる
世界が悪に直面したときに、何処からともなく現れて助けてくれる

王女様は眠りにつきました
何日も歩き通しで、休みなんて取っていません
熱い砂の上で横になりました

目を覚ますと、涼しい木陰の下です
近くには池もあります
赤毛の少年が倒れている王女様を心配そうに見ています
王女様は興奮して話し掛けます

あなたが砂漠の赤毛の人ですか?


オレは砂漠の国の王子をしている
何かあったか?

お願いします
わたくしの国が悪い魔女に乗っ取られてしまいました

オレにいい案がある

赤毛の男性は、砂を集めると呪文を唱えました
みるみる砂は、純白の美しい白馬となりました

これで城の中に入る
行くぞ

はい!ありがとうございます


数日後
茨で覆われたお城で毎日、パーティを開き贅沢三昧をしている魔女がいました
人々から巻き上げた税金で綺麗なドレス、おいしい料理を楽しんでいます
手下のモンスターを従わせて、兵士は牢屋に入れています

なんと楽しいことか
我の国
我だけの国

人々は、女王に逆らえません
女王に反抗すれば雨が止まります
どうすることもできません

城に一通の手紙がやってきました
新女王に会いたいという内容の手紙でした
差し出しは、近くの王国からです
美しい顔をし、お金もいっぱいある国です

手紙の最後には
ぜひ、我が国の王子と婚姻を結んで欲しいとあります

魔女は大喜びしました
もう、国のお金はなくなりそうでした
魔女の身勝手な買い物のせいです

結婚がうまくいけば、また贅沢三昧ができる
更に、美しい王子も我が手に

魔女は、王子様を迎える用意をしました
豪勢な料理に派手な食器
金や銀を散りばめたナイフやフォークを用意させました

人々の生活は更に苦しくなりました
働いても女王にお金を持っていかれてしまいます
今日食べていく分の食べ物さえありません
道には、住む家を失った人々で溢れました

人々は後悔しています
魔女を女王にするのは間違いだった
優しい王女様が戻ってくれれば.......と

しかし、もう遅い
王女様は、今頃は砂漠で死んでいるはずです

かつて緑豊かな国も木々は枯れていき
植物も枯れていきました
あるのは、城を覆う茨です

そこに
美しい白馬に乗った赤毛の王子様が来ました
気品のある立ち振る舞いに一際輝いて見えました

魔女は笑顔で迎えます
ドレスを着て、胸元には大きなダイヤモンドがはめ込まれています

おお!よく来てくれた

女王陛下、お会い出来て光栄です

赤毛の王子は白い王族の服で挨拶をした

その頃、白馬の中に潜んでいた王女様が白馬から出てきました
最初から中に隠れていたのです

王女様は魔女の魔法の秘密を解かなければなりません
魔女を倒しても呪いのせいで雨が降らないのでは、国が滅びます
王女様は走りました
国を救いたいという強い気持ちです

魔女の魔法の源は、魔力が込められた杖でした
杖は城の地下にある宝物庫にありました
外にはモンスターが見張っています
王女様は、赤毛の王子に渡された砂を投げました
砂はモンスターを包むと固まりました
扉には鍵が掛けられていて、簡単には入れません

王女様は、水を操り扉の鍵穴に流し込みました
水を回転させるとガチャと音がして開きました

宝物庫に入ると台座があり、魔法陣の中心に魔女の杖が刺さっていました

王女様は、力を込めて台座から杖を外そうと握りしめます

その頃、魔女はお城で一番豪華な部屋では赤毛の王子に豪勢な食べ物を食べさせていました

我と結婚すれば
このような豪華な料理が味わえるぞ

王子様は何も言ってくれません
何も口にしません
気に入らないように首を横に振るだけです

結婚をしたい魔女は、必死にアピールします
このドレスは綺麗だろ
この食材は素晴らしい味など
次々と口に出していきますが
王子様は静かに座っています

魔女は我慢の限界でした
何が望みだ?
お前が欲しいものを用意させよう
言ってみるが良い

赤毛の王子は答えました

緑豊かな国
幸せな人々
この国の全てが欲しいと

そう言いました

魔女は怒りました
王子の首を引き裂こうと、呪文を唱えますが
魔法が発動しません

そこへ、王女様がやってきました
手には魔女の杖を握っています

魔女は更に怒り狂いました
王女に向けて、鋭い爪で切り掛かり殺そうとします
王女様は、鬼のような形相で迫ってくる魔女に恐怖を覚えて目をつむりました

目を開けてみると
腕から血を流している赤毛の男性が王女様を庇っていました

大丈夫ですか
王女様?

赤毛の男性は優しく言いました
コクリと王女様は頷くと赤毛の少年は、笑いました
王女様の持っている杖を赤毛の少年が持って、杖にある目玉のような宝玉を割りました

苦しむように魔女は金切声をあげました

キィアアアアアア
魔力がぁぁぁ

魔女はみるみる醜い老婆になりました
魔女は宝玉の魔力で自分を美しく若い姿を保っていたのです

腰は曲がり、綺麗な黒髪が白髪になっていきます
老婆はヨボヨボの手で食卓を照らしていたロウソクを掴むと窓の外にある茨に投げ捨てました
茨が勢い良く燃えていきます

燃えるがいいさ

しゃがれた声で叫ぶと老婆となった魔女は隠し階段から外に逃げ出しました

きゃあああー
どうしましょう

落ち着け
地下水を操って消火しろ

王女様は水を地下からお城の中へと流し込みました
火は水により勢いをなくして消えました

やった
魔女を追い出したわ

よく頑張った

外に逃げ出した魔女は、森の中をヨボヨボとした足取りで逃げていましたが
空が曇り出し、雷が落ちてきました
雷は魔女にだけ当たり、燃えて死んでしまいました

神様は怒っていたのです
自分勝手に天気を操っていた魔女に罰を与えました

こうして魔女の支配が終わりました
お城からは、いつでも綺麗で新鮮な水が噴水のように流れています

新しい女王が決まりました
国を取り戻すために、頑張ったあの王女様です
人々は、優しい新女王を迎えました
木も植物も戻り、昔のように緑豊かな国になりました

しかし、赤毛の王子はどこにも居ません
魔女を追い払ってから、王子は姿を消しました
王女様は必死に探しました

不思議なことに王女様が休んだ池も木陰も砂漠の中にありませんでした

伝説には続きがあったのです
赤毛の一族は、事が済んだら姿を消してしまうのです

王女様は探しました
お触れを出して、赤毛の王子の行方を探しました
何年も何年も探しました

気がつけば、王女様は立派な女性に成長していました
しかし、赤毛の王子の事を片時も忘れていません

お願いします
あの時に助けてくれた赤毛の王子に会わせてください

女王は祈りました
不憫に思った神様は、女王の前に現れました
そして、赤毛の一族について説明しました

昔、赤毛の一族はもともと神様の一族でした
不思議なチカラを使い、魔法を使うことができました
寿命も長く、どの種族よりも長生きです

ある時、赤毛の一族は神様にこう言いました

困っている人間を助けたい

赤毛の一族は、優しい性格でした
困っている人を見ると放っておけません
神様の地位から下りて、赤毛の一族は人間として生活をしました

赤毛の一族は、人間と暮らしました

しかし、人間の中に赤毛の一族を恐れるものが現れました
奇妙で恐ろしいチカラを使う赤毛の一族を差別し始めたのです

迫害が始まり、赤毛の一族は何度も分かってもらおうと話し合いの場を作りましたが効果はありませんでした

赤毛の一族は、人間を憎まずに逃げました
自分達が居るだけで恐れられてしまうんだ
赤毛の一族は、散り散りになり人間が簡単に入って来れない場所に移り住みました

深い森の中
深い海底
砂漠の中

赤毛の一族は、過酷な環境に身を置き続けました
しかし、人間の迫害は止みません

神様は、ある魔法を使いました

人間の目から赤毛の一族を見えなくする魔法です
しかし、赤毛の一族は困っている人間を助けたいと言いました
そこで、神様は困っている人間にだけ見えるようにして、解決したら見えなくしました

王女様はその話を聴いて驚きました
なんとか彼に会わせて欲しいと神様にお願いしました

しかし、人間は赤毛の一族を迫害する
それはできないと言いました

私の国は迫害しません
イジメません
迫害を許しません

約束できるかい?

はい!

女王様は力強く言いました

分かった
彼に会わせよう
約束を破るでないぞ

神様は魔法を掛けました
女王様の目の前には、赤毛のたくましい男性が現れました

女王様は大喜びしました

王女よ
なぜオレを?
いえ、女王様

また会えて嬉しいわ
わたくしと結婚してくださらない?

オレで良いのか?

もちろんですわ

翌日、お城で盛大な結婚式が行われました
人々は、誰も赤毛の男性を差別しません
みんな魔女から助けてくれたのが彼だと知っていたのです

二人は緑豊かな国でいつまでも幸せに暮らしました
めでたし めでたし


湾内は、小さい頃から読んでいた絵本を読み返していた。
何度も何度も読んだので表紙がボロボロになっているが大切な宝物だ。

「赤毛の王子様......」
あの時、助けてくれた赤い髪をした少年に想いを馳せる。
胸の前で絵本を抱き抱えた。
一体誰なのか分からないが、一目見た時から運命を感じてしまった。

しかし、湾内には気掛かりなことがありました。
赤毛の王子は、困っている人の前にしか姿を現さない
そして、事が済んだら見えなくなってしまう。
なんとか探し出して、また逢いたい
お礼を言いたい

高鳴る鼓動を抑えながら、ベッドに横になる。
こんなにドキドキしたのはいつ以来だろう?
目を閉じれば、赤い髪の少年が走り去っていくのが思い出される。

「はあー」
枕に顔を埋めた。
名前はなんだろうか?
彼の情報をもっと知りたい

湾内はそんな事を考え、絵本を大事そうに机の上に置いた。

ちょうど、ルームメイトの泡浮がシャワーから出てきたので、次に入っていく。

そして、翌日から赤い髪の少年を探す事に決めて、いつもより幸せな眠りへと落ちていった。
 
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