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秀吉と二人の前田

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第六章

「大名になれるというのに」
「さすれば官位も役職も違う」
「一介の浪人とは訳が違うぞ」
「それを断わるとは」
 こうそれぞれ驚いていた、しかし。
 断られた秀吉は口を大きく開いて笑ってだ、明るく言った。
「ははは、見せてもらったわ」
「それがしの傾奇をですか」
「よく見せてもらった」
 実にというのだった。
「やはり御主は天下の傾奇者じゃ」
「喜んで頂けましたか」
「実にな、ではこれからも好きなだけ傾くがいい」
「是非そうさせてもらいます」
「わしが許す」
 天下人である彼がというのだ。
「そしてこの天下を好きなだけ暴れるのじゃ」
「それでは」
 慶次は秀吉に笑顔で応えた、そしてだった。
 彼はこの日より天下の傾奇者としてさらに傾いた、その彼の話を聞いてだ。
 秀吉は話を聞く度に笑った、そのうえでこうしたことを言った。
「わしが間違っておった、ああした者は召し抱えるべきではない」
「好きにさせてですな」
「そうじゃ、傾かせてやるべきなのじゃ」 
 こう利家にも言うのだった。
「又左殿がそうである様にな」
「それがしもですか」
「好きでわしの傍におろう」
「如何にも」
「それはやはりな」
「傾いていると」
「又左殿も慶次も傾いておるわ」
 二人共、というのだ。
「その傾きをこれからも見せてもらう」
「では」
「その様にな、さて又左殿と慶次がこれからもどう傾くのか」
 大坂城において笑って話した。
「楽しく見せてもらいながら天下を治めよう」
「では殿下」
 すかさずだ、三成が言って来た。
「あの件ですが」
「うむ、それはな」
 傾きとは無縁の生真面目な石田にも笑みで応える、秀吉は二人の傾奇者を見つつ楽しみながら政もっ見るのだった。


秀吉と二人の前田   完


                        2016・1・18 
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