血の髑髏
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第九章
「しかし人の命を奪う」
「そうした恐ろしいものであることは確かですね」
「ですから」
「世に出してはいけないものですね」
「発見した瞬間に察してよかったです」
その髑髏に何か恐ろしいものをだ。
「あの時に犠牲者が出ていたかも知れませんし」
「この博物館に収めてからも」
「慎重に行ってよかったです」
「全くですね」
「はい、窃盗団は自業自得にしましても」
ものを盗もうとしたが故にというのだ。
「それでも気の毒ですね」
「命は命ですから」
「これ以上犠牲者が出てはいけないです」
「だからこそバチカンにお願いした次第です」
「もうあの髑髏はですね」
「この世に存在しなかった」
館長は博士にはっきりと言った。
「そうなりました」
「その通りですね」
「ではです」
「はい、これからはですね」
「普通の仕事に戻りましょう」
「普通の博物館で働く者達として」
「日常に戻りましょう」
館長は博士にも自分にも言い聞かせた、そして実際に日常の仕事に戻った。そうしたものがあったことは完全に記憶の奥深くに収めたうえで。血の髑髏はもうなかったことになっていた。窃盗団の者達のこともだった。
「彼等は警察に警備員達に射殺されたとです」
「そういうことになりましたね」
「彼等がどうなって死んだのか詳しいことはわかりませんが」
「警察にはですね」
「そういうことにしてもらいましたので」
「それが事実ですね」
「そうです」
館長はこのことも博士に話した。
「血の髑髏はなかったですし」
「窃盗団もですね」
「全員射殺されました」
そうなったのだった、事実はこう発表されて全ては終わった。
血の髑髏 完
2016・1・23
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