歌集「春雪花」
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217
偽りて
沈みし春の
雨雲は
ただ侘びぬれて
雨ぞ降らせり
毎日同じ…自分を偽り生きるしかない…。
春だからと浮かれることもなく…ただ虚しく歩むだけ…。
彼を恋しく想い、侘しさに耐える私に…雨雲は春の柔らかな陽射しを覆い隠して雨を降らせる…。
人とは何と馬鹿馬鹿しい生き物だと言わんばかりに…。
あぁ、私も…そう思う…。
雲に隠れ
見えぬも在りし
夜半の月
求め虚しも
想いけるなり
真夜中…空は雲に覆われて月もなく、肌寒い風が気儘に吹いてゆく…。
確かに…月明かりはそこにはないが、雲の上には出ているはずだ…。
ただ、見えないだけなのだ…。
そんな月を求めて空を見上げても、虚しいだけだと分かっている…。
それはまるで…この国に生きる彼に会えないことと同じ…。
遠すぎることもまた…同じなのだ…。
それでも尚、彼を想い続けるだけ…。
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