英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第74話
課題内容を一通り消化したリィン達は通信で来たレーグニッツ知事による追加課題―――宝飾店の盗難事件の調査の為に、宝飾店に向かった。
~ガルニエ地区・宝飾店”サン・コリーズ”~
「すみません、あなたが宝飾店の責任者でしょうか?」
「僕達、帝都庁から盗難報告について話を聞いてきたんですけど……」
「え、ええ……私がここの店長ですわ。ということは、皆さんがトールズ士官学院の……」
リィンとエリオットに話しかけられた宝飾店の店長は恐る恐る尋ね
「はい、特科クラス”Ⅶ組”、A班の者です。」
「ああ、よかった――!これでうまくいけば、”紅蓮の小冠”も―――」
マキアスが名乗ると店長は明るい表情をした。
「”紅蓮の小冠”……それが被害に遭った品の名か。」
「ええ、嵌められた最大級の紅耀石が見る者の心を奪う―――今回の展示の目玉も目玉―――その価値は1億ミラとも言われる国宝級のティアラですわ!」
「い、一億ですか……!?」
「あれって、そんなにしたんだね。」
(もしかしてわたくしのティアラもそれ程の高値なんでしょうか……?)
ラウラの質問に興奮した様子で答えた店長の話を聞いたツーヤは驚き、フィーは目を丸くし、セレーネは自分が頭に乗せていたティアラを思い出して冷や汗をかいた。
「あ、ああ……正直想像もつかない額だな。だがまさか、盗まれてしまうなんて……」
「ですが、一体どうやって?確か、今回の展示に合わせて最新鋭の導力防犯システムを搭載したと聞いたのですが……」
「ううっ……それは偏に私どもの不手際が招いた結果ですわ。防犯システムには何の不備もございませんでしたが……かの”怪盗B”にまんまと上を行かれてしまいまして。」
「”怪盗B”って、あの――――」
「噂はあったが、まさか本当に現れるなんて……」
店長の話を聞いたエリオットは目を丸くし、マキアスは驚き
「……………………(まさか、あたしがエステルさん達のようにブルブランの謎かけに挑戦する羽目になるなんて……)」
「??(お姉様、どうなされたのかしら……)」
表情を引き攣らせた後疲れた表情になったツーヤの様子に気付いたセレーネは首を傾げた。
「”怪盗B”……どこかで聞いたことがあるような……」
「エリオットとマキアスは知ってるんだ?」
リィンが考え込んでいる中、フィーは犯人に心当たりがあるエリオットとマキアスに尋ねた。
「う、うん……帝都では結構名の知れた盗賊だからね。」
「確か……『美の解放活動』だったか。数年前、自らの盗賊行為にそのような名前を付けて、世間を騒がせたこともあったな。その手口は大胆かつ華麗で、一部に熱狂的なファンすら存在するそうだ。」
「そうか、思い出した―――確か帝国軍から、導力戦車すら盗み出したとんでもない盗賊だよな。」
「うん、その話は有名だよね。」
「ふむ、それなら私も噂程度に聞いた事があるな。」
「導力戦車を泥棒……一体どうやったんだろ。ちなみに、今回はどうやって盗まれたの?」
「怪盗Bは、いつも事前に犯行予告を記したカードを送りつけることで有名ですが……やはり今回も送られてきたのでしょうか?」
犯人の手口が気になったフィーとマキアスはそれぞれ質問した。
「ええ、お察しの通りです。そして―――カードにはこう書かれておりました。『既にティアラは、ダミーと交換させてもらった』と。ですが……それこそが怪盗Bの仕掛けた罠だったのです。防犯設備を信頼してはいたものの、相手はなにせ、あの”怪盗B”……念のため、中を確認しようとケースを開けた瞬間……まさにそこを突かれてしまいまして。」
「ということは……その時に直接盗まれたんですね。」
「ええ……お恥ずかしながら。」
「なんという……」
「何だか物語の中に出て来そうな泥棒さんですね……」
「そ、そうだね。(加えてオリビエさんと思考が似ているから、あんまり関わりたくないんだよね……)」
店長の説明を聞いたマキアスとセレーネは驚き、ツーヤは冷や汗をかいて疲れた表情になっていた。
「ちなみに、犯人の顔は確認できなかったのだろうか?」
「ええ、その瞬間、店内の照明が全て落とされてしまいましたので。再び明かりが点いた時にはもう……ティアラはどこにもありませんでした。」
「そ、そうでしたか。」
「怪盗B……只者じゃないね。」
(まあ、執行者だから、只者でないのはあっていますけどね……)
怪盗Bを警戒するフィーの言葉を聞いたツーヤは苦笑していた。
「ちなみに……俺達に依頼があったのはどういう経緯なんでしょうか?」
「ええ、これを見てくださいまし。」
リィンに尋ねられた店長はリィンに一枚の”B”が記されたカードを渡し、リィン達はカードの裏側に書かれてある内容を読んだ。
サン・コリーズの店長殿へ。
”紅蓮の小冠”―――――確かに頂戴した。
ただし、次の条件を満たせば無事にお返しすることを約束しよう。―――これは取り引きだ。
一、事件を鉄道憲兵隊には報せぬこと。
二、同封したもう一つのカードを、トールズ士官学院、特科クラス・Ⅶ組A班に渡すこと。
三、Ⅶ組A班のメンバーがカードに書かれた我が試練に打ち克つこと。
――怪盗B
「こ、これは……」
「面白がられているようで何とも複雑な気分だが……」
カードの内容を読み終えたマキアスは驚き、ラウラは複雑そうな表情をし
「お兄様達って凄いですね!こんな凄い泥棒さんに指名されているんですから!」
「う、うーん……」
「………………(”怪盗紳士”は一体何を考えているんですか!いえ、考えるだけ時間が無駄ってエステルさん達が言ってましたね……)」
セレーネに感心されたリィンは困った表情をし、ツーヤは頭を抱えて疲れた表情になった。
「でもこれって……僕達の行動次第でティアラを返してくれるってことだよね。」
「確かに、そう取れるね。」
カードの内容から手練れの盗賊が盗んだ品を返してくれることに気付いたエリオットの推測にフィーは頷き
「ちなみに、このもう一つのカードというのは?」
「ええ、お渡ししておきますわね。」
リィンに尋ねられた店長はカードを渡し、リィン達はカードの裏側に書かれてある内容を読んだ。
トールズ士官学院、特科クラス・Ⅶ組A班へ。
宝に至らんとするならば、我が挑戦に応えよ。
鍵は全て緋色の都にあり。始まりの鍵は……『獅子の心を持つ覇者。その足元を見よ。』
「これは……謎かけというやつか。」
「緋色の都……もちろん帝都のことだよね。それと『獅子の心を持つ覇者。その足元を見よ。』か。」
「この言葉をヒントに街で宝探しをしろってことかな。」
「うん、おそらくそうなのだろう。」
「??どうしてわざわざお兄様達にそのような事をさせるのでしょうか??」
カードの内容を読んだマキアス達がそれぞれ考え込んでいる中、ある事が気になったセレーネは呟いたが
「セレーネ。気にしたら負けだから、気にしないで。」
「?ハ、ハア……」
疲れた表情で指摘したツーヤの様子に戸惑いながら頷いた。
「あの、それで皆さん……協力していただけますでしょうか?」
「ええ、もちろんです。」
「ああ、ここまで挑発されて黙ってなんかいられないしな。」
「よし、ではさっそく向かうとしようか。」
「ありがとうございます!――どうかよろしくお願いします!」
そしてリィン達は”紅蓮の小冠”を取り戻す為に怪盗Bによる謎かけの解読を開始した。
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