デビルシスター
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4部分:第四章
第四章
「狐ごときが私に勝てるわけないでしょ」
「勝てないの」
「殺生石だって叩き割ってみせるわよ」
その九尾の狐がなったという石である。石になってなお魔力で人々を苦しめたと言われている。九尾の狐の魔力はそこまで恐ろしいのだ。
「一撃でね」
「それで工作員が粛清されても平気なのね」
「地獄の業火の中で苦しむがいいわ」
こう言う有様だった。
「未来永劫ね」
「そんなこと言ってるとお姉ちゃんも工作員を追っかけることになるわよ」
「地獄!?上等よ」
未来の今の言葉にもうそぶく有様だった。
「私が閻魔大王に替わって地獄の管理人になってやるわよ」
「それでどうするの?」
「亡者共を一層苦しめてやる所存よ」
少なくとも選挙の所信表明としては問題外の所存であった。
「それこそ三倍、いえ十倍の苦しみを与えてやるわ」
「やれやれ」
「それで未来」
妹が呆れたところで彼女に切り替えしてきた。
「あんたこれからトルコ料理の勉強ね」
「トルコ料理って!?」
「知らないの?世界三大料理の一つよ」
トルコ料理と聞いてその大きな目をしばたかせる未来に対しての言葉だった。
「知ってるわよね、それは」
「そうだったの」
未来の返答はこの言葉をまたしばたかせる目であった。
「そうだったの。トルコ料理って」
「あらっ、知らなかったの」
「グラスバンドがトルコ起源なのは知ってるけれど」
彼女が知っているのはこれ位だった。グラスバンドはオスマン=トルコの軍隊からはじまっているのだ。その音楽を聴いただけで敵軍は震え上がったという。
「トルコ料理って世界三大料理の一つだったの」
「そうなのよ。中華料理とフランス料理」
彼女は語るのだった。
「それと合わせて世界三大料理なのよ」
「ふうん、そうだったの」
「で、あんた今日からそれの特訓ね」
またこのことを未来に言い渡してきた。
「それでいいわね」
「何で私がトルコ料理なの?」
とりあえず聞きたいのはそこだった。
「大体お姉ちゃん料理得意じゃない」
「まあね」
また胸を張って答える優だった。彼女の才能は料理に関しても如何なく発揮されている。少なくとも性格以外はかなり恵まれているのである。
「けれどよ。和食洋食中華はできるけれど」
「ええ」
「トルコ料理は駄目なのよ」
こう未来に話すのだった。
「全然ね。作ったことないのよ」
「そうなの。けれど何で私が作るの?」
「決まってるでしょ。映士さんの為よ」
優の彼氏だ。優と同じ八条大学に勤務しており三十歳になる。文学博士であり文学部の助教授である。三十歳でそれだから彼もまた優秀なのがわかる。
「あの人がトルコ料理食べたいっていってね」
「で、私が作るの」
「作ったことになるのは私よ」
こう来た。
「で、あんたは食べるだけ」
「全然逆じゃない、実際と」
ここまで話を聞いてその大きな目をむっとさせた。
「私が作ってお姉ちゃんが食べるんだから」
「わかったわね。じゃああんたトルコ料理の特訓ね」
「私トルコ料理作ったことないんだけれど」
「けれどあんた料理部じゃない」
彼女は学校では料理部に所属しているのである。作って食べるのが好きだから所属している。それは中学校から続けているものである。
「だったらできるわよね。反論は許さないわよ」
「いつも通りなのね」
「そう、いつも通り」
実にわかりやすい言葉であった。
「わかったわね」
「はあい」
嫌々姉の言葉に頷く。
「わかったわ。それじゃあ」
「失敗した時はわかってるわね」
「わかってるわよ」
ふてくされた顔で応える。
「罰ゲームよね」
「今度は巨人グッズに身を包んで甲子園の一塁側で試合の最初から最後まで応援してもらうわよ」
「私巨人大嫌いなんだけれど」
「安心しなさい、私も大嫌いよ」
二人共このことは一致していたりする。
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