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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第67話

その後アルセイユは”翡翠の塔”の上空に到着した。



~アルセイユ・ブリッジ~



「”翡翠の塔”上空に到着した。」

「は~、さすがに速いわね。到着まで30分もかからなかったんじゃない?」

ユリア大尉の報告を聞いたエステルは感心した様子で呟いた。

「えへへ、そのくらいだと思うよ。定期船の3倍近くのスピードが出ているはずだから。」

「なるほど……」

(フフ、ガイでしたら彼女と話が合うでしょうね。)

(ハハ……その光景が思い浮かぶな。)

イオンに小声で囁かれたルークはかつての仲間とティータが楽しそうに談義している所を思い浮かべた。



「”翡翠の塔”の屋上はどのようになっていますか?」

「今、ディスプレイに出そう。」

ヨシュアに尋ねられたユリア大尉はディスプレイに”翡翠の塔”の黒い球体に包まれた屋上の様子を映し出した。

「な、なにあれ……」

「例の”ゴスペル”が生み出す黒い波動に雰囲気は似とるが……」

「じゃが、波動と違って広がらずに塔の屋上を包み込んでおる。いずれにせよ、これ以上は近づかない方が賢明じゃろう。」

「そう、ですね。恐らくですが、あの球体や球体の周囲には、”導力停止現象”の効果が、含まれているでしょうし。」

「ええ……下手に近づけば”導力停止現象”によってアルセイユが墜落するかもしれませんしね。」

「縁起でもない事を言うなよな……」

ディスプレイで翡翠の塔の様子を見たエステルは驚き、ケビンは真剣な表情で考え込み、ラッセル博士の忠告にアリエッタは頷き、アーシアの推測を聞いたフレンは疲れた表情で指摘した。



「ユリアさん。地上に降りるにはどうすればいいんですか?」

「あいにく”アルセイユ”が着陸できそうな場所がなくてね。滞空状態でリフトを降ろすからそれに乗って降りてほしい。」

「リフト?」

「榴弾砲を出す時などに使われる貨物用のリフトです。船倉に設置されているんですよ。」

ヨシュアの疑問に答えたユリア大尉のある言葉に首を傾げているエステルにクローゼは説明した。

「そっか……」

「それじゃあ、塔の内部を調査するメンバーを選ぼうか。」

そしてエステルとヨシュアは塔内部を探索するメンバーとしてクローゼ、ケビン、レイス、ルークを選んだ。



「そんじゃあ、準備も終わったし、そろそろ行くぞ。」

「待って、兄さん。その前に確かめる事がある。」

「?何を確かめるんだい?」

ルークを制したヨシュアの提案を聞いたレイスは不思議そうな表情で訊ねた。するとその時ヨシュアは真剣な表情でステラを見つめた。

「……ステラさん。――――貴女は一体誰ですか?」

「……ッ……!」

「あ…………」

ヨシュアに問いかけられたステラは息を呑んで一歩後ずさりし、その様子を見守っていたエステルは気まずそうな表情をした。



「ヨ、ヨシュアお兄ちゃん?」

「彼女は”剣帝”の幼馴染らしいけど……”剣帝”と幼馴染の間柄であったヨシュアは知らないのかしら?」

ヨシュアの質問の意味がわからなかったティータは戸惑い、シェラザードは不思議そうな表情で訊ねた。

「ええ。それどころか、”ステラ・プレイスという名の幼馴染は僕達の中には存在していません。”レーヴェにとっての幼馴染は僕と死んだ僕の姉さんだけです。」

「何……っ!?」

「そ、それじゃあ”剣帝”の幼馴染を名乗っているステラさんは……」

「……俺達を偽っていたという事になるな……」

「ステラ、どうして私達に嘘をついていたの?」

「フン、大方誰にも話せないような後ろ暗い事情があって、そんな仮面を付けて正体を偽っているに決まっているだろうが。」

(あのー……坊ちゃんだけは他人(ひと)の事は言えないと思うのですが……)

ヨシュアの答えを聞いたアガットは驚き、重々しい口調で呟いたバダックは不安そうな表情をしているクローゼと共にステラを見つめ、ステラを見つめて訊ねるソフィの疑問に答えたリオンにシャルティエは冷や汗をかいて指摘した。



「……ステラ殿、と言ったか。何故我々に偽りの事情を語って接していたのか、詳細な説明をして頂きたいのだが。」

「………………」

「うふふ、何も言えない所を見るとリオンお兄さんの言う通り、本当に人には言えない事情があるのかしら?」

「お、おい、レン!」

(ステラの事情を知っているくせに敢えて、あんな質問をするなんて性質の悪い性格をしていやがるな……)

「フム………黙ったままではますます私達に怪しまれて自分の立場が悪くなる事は理解しているのかい?」

警戒の表情をしているユリア大尉の問いかけに何も返さないステラの様子を小悪魔な笑みを浮かべながら見つめて問いかけるレンの様子にルークは焦った表情で声を上げ、フレンは疲れた表情でレンを見つめ、レイスは真剣な表情で問いかけた。



「待ってください。彼女が怪しい人物でない事は僕達が保証しますので、これ以上彼女を責めないでください。」

するとその時イオンがステラを庇うかのようにステラの前に出て説明し

「ステラが仮面をつけて、正体を偽っていたのは、アリエッタ達の極秘任務に、支障が出る可能性があるから、です。ステラは私達の事情に、付き合わされているだけで、ステラ自身は悪く、ありません。」

「……………………」

(ケビン………)

アリエッタはイオンに続くように説明し、目を伏せて黙り込んでいるケビンをアーシアは複雑そうな表情で見つめていた。

「え……アリエッタさん達―――”星杯騎士団”の極秘任務にですか?」

「そう言えば以前もそんな事を言っていたわね……」

「何だと……?その女が正体を隠さないと何で七耀教会の裏組織の極秘任務とやらに支障が出るんだよ?」

アリエッタの説明を聞いたクローゼは驚き、シェラザードが考え込んでいる中アガットは目を細めてイオンとアリエッタに問いかけた。



「申し訳ありませんが、任務の内容や彼女が正体を隠さなければならない理由は答えられないのです。ですがリベールで暗躍している”結社”がリベールから去った後、彼女の正体や彼女が正体を隠さなければならなかった理由に関しては皆さんに答える事をこの場でお約束しますので、どうかステラの事を信じてはもらえないでしょうか?」

「ちなみにその極秘任務とやらは”輝く(オーリオール)”の件とは別件なのか?」

イオンの説明を聞いて考え込んだジンは真剣な表情でイオンに訊ねた。

「ええ。勿論その極秘任務の内容がリベールや皆さんの弊害となる目的ではない事を”空の女神(エイドス)”に誓い、お約束します。」

「イオン様………あの、事情があったとはいえ、皆さんを騙し続けていた事は本当に申し訳ないと今でも思っています。”結社”がリベールから去った後必ずこの仮面を外して素顔を顕わにして、私が何故レーヴェの幼馴染を名乗っていた事も含めて全て答える事をお約束しますので、その時まで誠に申し訳ないと思いますが”ステラ・プレイス”として皆さんに接しさせてください。」

必死に自分を庇うイオンの様子を見つめていたステラはイオンの隣に出て頭を深く下げた。



「(”ステラ・プレイス”……………―――――!?まさか……そんな……ありえない……!だって姉さんは僕達の目の前で…………それに姉さんの遺体もレーヴェの手で…………)……ステラさん、貴女は……………………いえ、何でもありません。」

ステラの名前に隠された意味がわかってしまい、ステラがある人物の可能性がある事を悟ってしまったヨシュアはステラを見つめて問いかけようとしたが、すぐに辛そうな表情になって止めてしまい

「……………(ごめんなさい、ヨシュア………今はまだ………)」

「(ヨシュア……?)えっと……さ。ステラさんやイオンさんがここまで言ってくれたし、それにステラさんはロレントや王都の時も自分から申し出てあたし達を手伝ってくれたんだし、イオンさん達が保証してくれているんだから少なくても怪しい人じゃないだろうから、今はステラさんの事を信じようよ。」

ヨシュアの様子をステラが辛そうな様子で見守っている中、不思議そうな表情でヨシュアを見つめていたエステルは仲間達を見回して提案した。



「エステルさん………」

「エステルの言う通りだな。第一”星杯騎士団”――――七耀教会の幹部のイオンやシスターのアリエッタが保証しているんだから、そこまで怪しがる事はないと思うぜ?」

「うむ。それに俺やルークはその二人と古い知り合いだからこそわかる。二人は嘘を平気で付けるような器用な性格はしていない。よって、彼女は間違いなく俺達の味方だ。」

「フフ、貴方が僕の事をそんな風に見ていた事は少々驚きましたが、褒め言葉として受け取っておきます。」

「アリエッタ、アニスと違い、今まで嘘をついた事は、ありません。」

自分を庇うエステルをステラは驚いた様子で見つめ、ルークに続くように答えたバダックの説明を聞いたイオンは苦笑しながら答え、アリエッタも続くように答えた。

「フフ、本当にこの娘ったら呆れるほどお人好しね。」

「うふふ、それがエステルの数少ない取り柄なんだから仕方ないわよ。」

「でも、そんなエステルだからこそ、こんなにも多くの仲間が集まったのだと思うわよ?」

「ああ。例えばリオンとか典型的な例だろ。」

「何故そこで僕を引き合いに出す……!」

(アハハ……実際スタンやカイル並みの彼女のお人好過ぎる性格のお陰で、長年の恋が叶った今の坊ちゃんがいますしね……)

「フフッ、そう言う所もアスベルに似ているね……」

そして苦笑しながら呟いたシェラザードの意見にレンは小悪魔な笑みを浮かべて同意し、アーシアは微笑みながら答え、自分に視線を向けられたフレンを睨むリオンをシャルティエは苦笑しながら指摘し、ソフィは微笑みながらエステルを見つめた。



「ったく、しょうがねぇな。―――だが、約束をしたからにはキッチリと守らねぇと、落とし前を付けてもらうからな。」

「ア、アガットさん~。幾らなんでも脅し過ぎですよ~。」

「やれやれ、まだまだ青いのう。」

イオン達を睨むアガットをティータが宥めようとしている中、ラッセル博士は呆れた表情で溜息を吐き

「フフ、本当に良い友人と出会えたんだね、クローディアは。」

「はい……エステルさんと出会い、友達になれた事も”空の女神”のお導きかもしれませんね。」

レイスに視線を向けられたクローゼは微笑みながら答えた。

「皆さん………本当にありがとうございます……!」

「………………………」

そして頭を下げて自分達に感謝の言葉を送るステラの様子をヨシュアは複雑そうな表情で見つめていた。



その後エステル達はリフトを使って、地上に降りた…………… 
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