英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~聖なる竜王女との契約~後篇
~マーテル公園~
「ええっ!?じゃ、じゃあセレーネ姫って”竜”なんですか!?」
「そ、そう言えばツーヤは”竜”だったな。」
「という事はツーヤの妹であるセレーネ姫も当然”竜”という事になるな……」
「……じゃあツーヤみたいに”竜”に変身できるの?」
説明を聞き終えたエリオットは信じられない表情をし、ツーヤが竜である事を思い出し、ツーヤの妹であるセレーネも竜である事に結びつく事にマキアスとラウラは気付き、フィーは興味ありげな表情でセレーネを見つめた。
「いえ。わたくしは”竜”としての力はまだまだ未熟ですから、ツーヤお姉様みたいに”パートナー”を見つけて”成長”しないと竜化はできません。」
「”成長”?」
フィーの指摘に答えたセレーネの言葉が気になったリィンは首を傾げた。
「えっと、”成長”とは――――」
そしてツーヤはリィン達に”パートナー”契約を結んだ”竜”はある一定の経験を積むと身体が成熟し、竜化も出来る事を説明した後、いつも持ち歩いてる自分にとって思い出の写真―――ミントと共に移っている幼い自分の写真をリィン達に見せた。
「わあ……!わたくしが知っているツーヤお姉様です!やっぱり貴女はツーヤお姉様で間違いありませんね!」
写真を見たセレーネは嬉しそうな表情をしてツーヤを見つめ
「ちょ、ちょっと待って!?今の話を信じるんだったらツーヤ、2年前までこの写真に移っている幼い姿だったの!?」
エリオットは混乱した様子でツーヤに尋ねた。
「ええ。ちなみにあたしの隣に移っている少女はミントちゃんが”成長”する前の姿ですよ。」
「なっ……この少女がミントさんなのか!?た、確かに面影は非常に似ているが…………」
「…………むう。一体どうやってその写真に写っている幼い姿からそんなスタイル抜群の姿に急成長したの?」
ツーヤの話を聞いたマキアスは信じられない表情をし、フィーは頬を膨らませて恨めしげに制服を着ていても膨らんで見えるツーヤの豊満な胸を見つめた。
「ア、アハハ……―――それよりリィンさん、どうかセレーネの頼みを聞いてあげてくれませんか?」
「ええっ!?ツ、ツーヤさんはそれでいいのか!?」
「はい。あたし達―――”竜”にとって自分の”パートナー”を見つける事自体、非常に難しく、自分の”パートナー”が見つかり、その人と共に生きて行くのが”運命”とも言われているくらい、”パートナー”の存在が大切なんです。」
「そ、そんな事を言われても……セレーネ姫は俺なんかでいいんですか?」
ツーヤの話を聞いたリィンは疲れた表情で呟いた後セレーネを見つめた。
「はい。アルフヘイムに戻れないのならば、一人の竜としてリィン様にお仕えする事がわたくしの”道”です……!」
「”道”………………」
セレーネの答えを聞いたリィンは呆け
「セレーネ姫がここまで頼んでいるんだから、聞いてあげたら?」
「そうだな。それにツーヤも大切な妹が赤の他人と契約するより、人柄を良く知っているリィンと契約してくれた方が安心できると思うぞ。」
「男なら覚悟を決めるべきだぞ、リィン。」
「その”パートナー”とか言うのに選ばれた責任を取るべきだね。」
「こんな可愛い娘がここまで頼んでいるのに、断ったら、ご主人様、結構酷い男よ?」
「ああもう、わかった!わかったよ!」
そしてエリオット達からの集中砲火を受けて、疲れた表情で答えた。
「えっと……もう一度確認しますが、本当に俺なんかでいいんですか?」
「はい。それとわたくしの事は呼び捨てにして気軽に接してくださいませ。わたくしはあなたにお仕えする竜なのですから。」
「わ、わかった。えっと……”セレーネ”。これでいいのか……?」
「はい、よろしくお願いします、”リィンお兄様”!」
リィンに呼び捨てされたセレーネは嬉しそうな表情で頷いてリィンを見つめた。
「へ?お、”お兄様”??」
「え、えっと。わたくし、お兄様がずっと欲しいと思っていたんですが……ダメでしたか?」
「セレーネにそんな願望があるなんて、初耳ね……」
戸惑いの表情をしているリィンを見つめたセレーネは寂しそうな表情をし、セレーネの言葉を聞いたツーヤは目を丸くした後苦笑し
「あ…………(ハハ、何だか妹がもう一人増えたみたいだな……)いや……特に気にしていないから、別に構わないよ。」
セレーネの寂しげな表情がエリゼやエリスの寂しげな表情と重なったリィンは苦笑しながらセレーネの頭を優しく撫でた。
「ありがとうございます!皆さんもどうか、わたくしの事は王女扱いせず気軽に接してくださいませ。わたくしもその方が嬉しいですので。」
「うん、わかったよ。僕はエリオット。よろしくね、セレーネちゃん。」
「僕はマキアスだ。よろしくな。」
「私の名はラウラ。よろしく頼む。」
「わたし、フィー。よろしく、セレーネ。」
「うふふ、ベルフェゴールよ。よろしくね♪」
「はい!――それではお兄様、”契りの儀式”をお願いします……」
エリオット達の言葉に嬉しそうな表情で頷いたセレーネはリィンを見つめ
「へ……」
セレーネの言葉に訳がわからないリィンが呆けたその時、セレーネの足元に魔法陣のような形が浮かび上がった。
「これは……」
「きれい……」
「幻想的だな……」
「ああ……」
「へえ……」
その様子を見守っていたエリオット達は幻想的な風景に見惚れ
「え、えっと、ツーヤさん、セレーネ?これは一体?」
リィンは戸惑いの表情でツーヤとセレーネを見つめた。
「あたし達―――ドラゴンと人が互いの事を”パートナー”である事を誓う儀式なんです。この儀式によって魔力の繋がりができますので、あたし達ドラゴンにとって絶対に必要な儀式です。」
「え、えっと……その”儀式”は何をすればいいんだ?」
ツーヤの説明を聞いたリィンはベルフェゴールとリザイラと契約する時にした”儀式”を思い出して冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「うふふ、ご主人様ったら、どうしたのかしら♪」
(ふふふ、私達と同じ”儀式”をしなければならないと思っているのかもしれませんね。)
からかいの表情で言ったベルフェゴールの言葉に答えるかのようにリザイラは静かな笑みを浮かべた。
そしてリィンの疑問に答えるようにセレーネは両手で腰まで伸ばしている銀髪を持って首を見せた。するとうなじの部分に小さな魔法陣が浮かんでいた。
「わわっ!?」
「魔法陣か……?」
セレーネのうなじにある魔法陣を見たエリオットは驚き、マキアスは眉を顰め
「……今浮かび上がっているわたくしの紋章に口づけをして下さい。そうすれば儀式は完了です。」
「(ほ……)わ、わかった。」
契約方法を知ったリィンは安堵の表情をした後、緊張した様子でセレーネに近づいた。するとセレーネの身体から発せられる光がいっそう強くなり、リィンは紋章が浮かび上がっているセレーネのうなじに軽い口付けをした。その瞬間、光は強く輝いた後竜巻となって空へと消え、セレーネの紋章も消えた。
「えっと……これでいいんだよな?」
「はい!よろしくお願いします、リィンお兄様。」
戸惑いの表情をしているリィンをセレーネは優しげな微笑みを浮かべて見つめた。その後ホテルに手配魔獣の撃破を報告した後、実習期間中セレーネを自分達が泊まっている元遊撃士協会支部の建物で留守番してもらおうかと考えたが、セレーネはリィン達と共に行動する事を強く希望し、戦闘もある”特別実習”にセレーネを連れて行くのは危険と判断したリィン達はセレーネを説得しようとしたが、セレーネは魔術を使える上、剣術も出来る事を伝え、セレーネが言っている言葉を確かめる為に試しに武器屋でセレーネが得意としている得物―――レイピアを持たせると華奢な見た目とは裏腹に軽々と扱い、その事に驚いたリィン達は本当に戦闘ができるのか確認する為に公園で確かめる事にした。
「ラウラ、本当にいいのか?何だったら俺が変わるが……」
「心配無用だ。練武場で父が教えている見習いの門下生達の相手もした事がある。」
リィンに尋ねられたラウラは答え
「―――どこからでもかかってくるがよい。そなたが本当に足手纏いにならないのか、私が確かめてやろう。」
レイピアを構えているセレーネを見つめて言った。
「はい。―――それでは行きます!―――えいっ!!」
そしてセレーネはラウラに直線移動で詰め寄って突きを放つ剣技―――ミラージュピアスを放ち
「ほう…………」
大剣でセレーネの突きを受け止めたラウラは大剣ごしに伝わって来る衝撃に感心し
「一!二!!」
「!!」
続けて放たれた斬り上げから薙ぎ払いへと連携攻撃する剣技―――クロスラッシュも大剣で攻撃が来た方向を見切って次々と防御したが
「失礼します!」
「!?」
セレーネの全身を回転させて足払いをするクラフト――――ターンアラウンドに驚き、咄嗟の判断で後ろに跳躍して回避した。
「――聖なる雷よ!―――シャインボルト!!」
「!!」
そしてセレーネが発動した魔術によって頭上から落下して来た白き雷を回避し
「七色の光よ!矢となりて、我が敵を貫け!――――プリズミックミサイル!!」
「ゆくぞ――――洸円牙!!」
更にセレーネの両手から次々と放たれた7色の光の矢を大剣で薙ぎ払って無効化し
「――そろそろ反撃させてもらうぞ!鉄砕刃!!」
そのままセレーネに向かって跳躍してセレーネの目の前に大剣を叩きつけようとした。
「ハァァァァ…………―――ラファガブリザード!!」
するとその時全身に魔力を纏ったセレーネが魔力を解放すると共に自分の周囲に吹雪を発生させ
「なっ!?グッ!?」
突如発生した吹雪に驚いたラウラは吹雪によって吹き飛ばされ、空中で受け身を取って着地した。
「―――そこです!爆ぜよ、我が魔力!―――マジックバースト!!」
しかしその瞬間、ラウラが着地した地面を中心に小規模な魔法陣が描かれ、魔力の爆発が起こった!
「ラ、ラウラ!?」
「だ、大丈夫か!?」
Sクラフト―――マジックバーストをラウラがまともに受けてしまった様子を見ていたエリオットとマキアスは驚き
「へえ、幼いのにやるじゃん。さすがツーヤの妹だね。」
「フフ、そうですか?」
感心しているフィーに視線を向けられたツーヤは微笑んだ。
「クッ……中々良い一撃だったぞ。これなら足手纏いにはならないな。」
爆発の煙が晴れるとラウラは感心した様子でセレーネを見つめ
「ありがとうございます。今、傷を回復しますね。―――光よ、癒しの力を。キュア・プラムス!!」
セレーネはラウラに近づいて治癒魔術をかけて、ラウラの傷を回復した。
「―――リィン、これなら心配なかろう。後は実戦を積んで行けば、自然と我らについて行けるようになるだろう。」
「ああ…………―――改めてよろしくな、セレーネ。」
「はい!」
こうしてリィンは新たな仲間を手に入れた…………!
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