英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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外伝~リオン・マグナス~
~遊撃士協会・ボース支部~
「あ、市長さん!それにマリアンさんも!市長さん、あたし達の為に”川蝉亭”の特別チケットを用意してくれてありがとう!それとマリアンさんも、無事に目覚めて安心したわ!」
「お気遣いありがとうございます。」
「ふふっ、喜んで頂けて何よりですわ。竜事件解決のお陰で復興中の街にも活気が戻りつつありますし、マリアンもこうして無事目覚めてくれましたわ。」
「ふふ、メイベル様ったら。竜事件解決と私の事は関係ありませんよ。あの……それよりも今日は皆さんに訊ねたい事があるのですが……」
メイベル市長の言葉を聞いたマリアンは苦笑しながら答えた後不安そうな表情でエステル達を見つめて訊ねた。
「へ?あたし達に聞きたい事?」
「エミ―――いえ、リオン様がエステルさん達と一緒に竜と戦ったとメイベル様から伺ったのですが……」
「リオン?誰それ。そんな名前の人とは会った事もないけど。」
「……もしかしてジューダスの事を言っているのじゃないかしら?」
マリアンの質問にエステルが首を傾げているとアーシアが指摘した。
「あ……!でも、何で名前が違うのよ??」
「恐らく”ジューダス”は偽名なのだろう。ちなみにその”リオン”という者の特徴はエステルくらいの年齢の黒髪の男で、得物はエステル達の話にあった”ソーディアン”という意志を持つ特殊な剣と短剣か?」
「はい、間違いなくその方がリオン様です……!あ、あの、リオン様は今どちらにいらっしゃるのでしょうか……?」
バダックの確認の言葉に頷いたマリアンは懇願するような表情で訊ねた。
「それが……レグナートが去ってからボースに戻ろうとした時、廃坑の時のようにいつの間にか姿を消していて、あたし達もどこに行ったのかわからないのよ……」
マリアンの期待を裏切る事を申し訳なかったエステルは申し訳なさそうな表情で答えた。
「そう……ですか……」
エステルの答えを聞いたマリアンは肩を落としたが
「えっと……マリアンさん、だっけ。ソフィの話だとジュ―――いやそのリオンって奴はこのゼムリア大陸とは別の世界の出身の奴らしいけど、リオンの家でメイドをしていたマリアンさんもやっぱり……」
「……はい、リオン様と同じくこのゼムリア大陸とは異なる世界から来ました。」
ルークの質問を聞くとすぐに立ち直り、静かな表情で頷いた。
「ふえええええええ~~~っ!?」
「うふふ、これで異世界からのお客様はバルバトスという男も含めて4人目になるわね♪」
「あんな奴も”客”として勘定するとか、お前の頭の中はどうなってんだよ……」
「………その、メイベル先輩。先輩は一体どこでマリアンさんと出会われたのですか?」
マリアンも異世界の出身と知ったティータは驚き、興味ありげな表情をしているレンにアガットは呆れた表情で指摘し、クローゼは真剣な表情でメイベル市長を見つめて訊ねた。
「今から大体1年前くらいでしたわね……先日にも説明しましたが、ある日リラと共に屋敷に戻って来た時マリアンが屋敷の前で倒れていましたの。それで屋敷のベッドに運んで目を覚ましたマリアンから事情を聞いたのですが……目を覚ましたマリアンは自分の名前以外何も覚えていませんでしたの。」
「そうだったんだ……あれ?でも今のマリアンさん、その様子だと記憶も戻っているようだけど何でだろう?」
「多分だがあの竜事件が自分の事を思い出す切っ掛けになったんじゃねぇか?大怪我を負った後記憶を喪失したりする話はたまに聞くから、その逆がありえてもおかしくないと思うぜ。」
メイベル市長の話を聞いて首を傾げているエステルにフレンは自分の推測を答え
「恐らくそうだと思います。メイベル様を庇って瓦礫に埋もれた時今まで思い出せなかった事が次々と頭の中に入ってきましたから。」
「………東方では人は瀕死の状態になると、記憶の中から助かる術を高速で探す事でそれが過去の記憶を一気に思い出させる事になる『走馬燈』という言葉がある。恐らく彼女はその『走馬燈』のお陰で失った記憶を思い出せたのだろうな。」
「フッ、不幸中の幸いとはこの事を示すのだろうね。」
マリアンとジンの話を聞いたオリビエは静かな笑みを浮かべて呟いた。
「ちなみに貴女はどうやってこの世界に来たの?」
その時自分の世界に戻る方法の参考になると思い、ソフィは真剣な表情でマリアンに訊ねた。
「その……実は私、自分の世界では海に身を投げて自分の命を絶とうとしたのです。」
「ええっ!?そ、それって……!」
「”投身自殺”じゃの……何故自殺をしようとしたのじゃ?」
マリアンの答えを聞いたエステルがその場にいる全員と共に驚いている中信じられない表情をしていたルグランは真剣な表情で訊ねた。そしてマリアンは自分とリオン・マグナスの関係――――マリアンが死んだリオンの母親に似ていた事から雇われた当初はリオンの世話係兼母親代わりとしてリオンが幼い頃から接していた為互いに親しかった事、そして自殺しようとしていた理由――――かつて自分が働いていた屋敷の主―――ヒューゴ・ジルクリストが”神の眼”という凄まじい力を秘めたレンズを使って世界を破滅させようとし、リオンを自分達の手駒とする為にマリアンを人質に取り、その結果リオンはマリアンを守る為にヒューゴの悪事を未然に防ごうとしたかつて盗まれた”神の眼”を共に奪還したリオンの仲間達と戦う事になって死亡し、リオンが自分の為にリオンにとって大切な友人や仲間達を裏切り、死んだ原因が自分である事をずっと罪悪感を感じ続け、ついに罪悪感に耐えられず、ある日自分がいた世界では既に死んだリオンの元に向かう為に海に身投げした事を語った。
「私のせいでリオン様が……エミリオが…………もしヒューゴ様達に捕われた時自ら命を絶っていれば、エミリオはスタンさん達を裏切る事なく、命を落とす事も無かったのに……!う、ううっ……!」
「マリアン…………」
「そんな……そんな事って……」
「あまりにも惨い話ね……」
「クソ野郎が……!」
「ヒック……!どうしてその人はそんなひどい事ができるんですか……!?」
マリアンの話を聞き終えたメイベルやクローゼは悲痛そうな表情で話を終えた後涙を流して泣いているマリアンを見つめ、シェラザードは重々しい様子を纏い、アガットは人質を取って仲間を裏切らせたヒューゴに怒りを抱き、ティータは涙を流して泣いていた。
(そ、そんな!?それじゃあ坊ちゃんは何の為にスタン達を裏切ったと思っているんですか!?肝心の貴女が自分から死んでしまったら、坊ちゃんの想いや命を賭けた行動は全て無駄になる所だったじゃないですか!)
「…………………………………………」
一方ギルドの外でマリアンの話を聞いていたシャルティエは驚いた後怒り、ジューダスは目を伏せて身体を震わせながら黙り込んでいたがやがて目を見開いて決意の表情になってその場から離れた。
「……なるほどね。だから彼―――リオン・マグナスは”ジューダス”を名乗っていたのね。」
その時アーシアは複雑そうな表情で呟いた。
「アーシアさん?」
「リオンが名乗っていた偽名に気づいた事でもあるのか?」
アーシアが呟いた言葉の意味がわからないエステルは不思議そうな表情をし、フレンは訊ねた。
「……”ジューダス”という名前を聞いた時からずっと疑問に思っていたの。”ジューダス”の意味を考えたら、普通は人の名前として使わないもの。」
「へ……」
「”ジューダス”という言葉に何か深い意味があるのか?」
アーシアの説明を聞いたルークが呆けている中、バダックは真剣な表情で訊ねた。
「ええ……――――”裏切者”。それが”ジューダス”の意味よ。」
「う、”裏切者”って……!」
「……なるほどね。例えどんなに深い理由があったとしても、世界を……仲間達を裏切ったから、彼は”裏切者”を名乗っていたのか……」
そしてアーシアの答えを聞いたエステルが信じられない表情をし、レイスが重々しい様子を纏って呟いたその時
「フン、スタンの能天気な所も受け継いだあの馬鹿にそこまで考えてその名前を思いつく知能がある訳がないだろうが。」
ジューダスがギルドに入ってきた!
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