英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第41話
エルベ離宮で出会った橙色の髪を持ち、白いフリフリドレスを身に纏って眼鏡をかけ、どことなく色々とレンに似ている少女――――ユウナを保護したエステル達はユウナに事情を聞いた所、ユウナの両親はユウナをエルベ離宮に置いて姿をくらました事がわかった。
ひとまずギルドでユウナを預かる事にしたエステル達はユウナと共にギルドに戻るとそこにはクーデター事件時解決の際、昇進したシード中佐がいた。
シード中佐から話を聞くとアリシア女王が提唱した国家間の対立をできるだけ話し合いで解決するという『不戦条約』を妨害する為に様々な場所に脅迫状を送ってきた何者かが存在し、脅迫状が送られた各所で聞き込みをして欲しいという依頼を受け、脅迫状に送られた様々な場所で聞き込みをしたところ、どこも心当たりは見つからず、更にユウナの両親―――貿易商を営むヘイワーズ夫婦も同時に聞きこんでいたが、これといった情報は手に入らず、通信社に勤め、様々な業界事情に詳しいナイアルにも尋ねた所ナイアルの予想では愉快犯の仕業だと聞けたぐらいだった。
翌日、シード中佐に報告書を提出したエステル達がギルドに戻って今後の事を話し合っているとユウナがいつの間にかいなくなっており、エステル達は王都の各所を回ってユウナを探していると、オリビエが空港でミュラー少佐を見送っている所を見つけ、オリビエにユウナの事を尋ねるとオリビエはエステル達の背後にユウナがいる事を指摘し、その事に驚いたエステル達が振り向くといつの間にかユウナがエステル達の背後にいた。
その後仲間達やユウナと共にギルドに戻ろうとしたエステルだったがユウナに渡された手紙――――ヨシュアと思わしき人物が自分にあてた手紙の内容を読んだ後、仲間達に一言断って血相を変えてヨシュアと思わしき人物との待ち合わせ場所―――ロレントとグランセルを結ぶグリューネ門に向かった。
~グリューネ門・アーネンベルク・夕方~
「……あ………」
アーネンベルクに一人の人影を見つけたエステルは嬉しそうな表情をした。
~王都グランセル~
「ヒック……。フィリップのやつ、小言ばかり抜かしおって……。私をいったい誰だと思っておるのだ……。最高位の王位継承権を持つ……デュナン・フォン・アウスレーゼだぞ……」
一方その頃、クーデター事件に加担した罪で謹慎し続け、ようやく謹慎が解けたデュナン公爵は酔っぱらった様子で独り言を呟いていた。
「う~い……少しビールを飲み過ぎたか……。しかし、あのライスカレーというのはなかなかの美味であった……。たまには庶民の味も悪くない…………くそっ……。クローディア……それに遊撃士の小娘め……。どうしてこの私が…………あんな小娘どもに……あんな小娘どもの言葉に……心を乱さねばならんのだ……」
「公爵閣下のご心痛、お察し申し上げますわ。」
自分の独り言に答えた女性の声に気付いたデュナン公爵が声が聞こえた方向を見つめるとそこには驚くべき人物がいた。
「な……。お前はリシャールの……」
クーデター事件後行方を眩ませ、王国軍に指名手配されているはずの人物―――カノーネ大尉を見たデュナン公爵は驚き
「ええ、副官のカノーネです。公爵閣下におかれましてはお元気そうで何よりですわ。ふふ、あまりご機嫌は宜しくないようですけど……」
「な、何の用だ……。お前たちはたしか指名手配されている身では……」
不敵な笑みを浮かべて自分を見つめるカノーネ大尉に恐怖を感じたデュナン公爵が下がると、いつの間にか特務兵達がデュナン公爵の背後にいた。
「ひっ……!?」
「ふふ、そう警戒されると傷ついてしまいますわ。わたくしたちはただ……公爵閣下のお手伝いがしたいだけ。さあ、一緒に来て頂きますわよ。」
そしてデュナン公爵はカノーネ大尉達にどこかに連れて行かれた。
~グリューネ門・アーネンベルク~
「ヨ、ヨシュ―――」
人影を見たエステルは嬉しそうな表情でかけよったが、そこには自分が望んでいた人物ではなく
「あ……?」
「へっ……?」
なんと人影の正体はケビンであった。
「エステルちゃんか……?」
「ケビンさん……。ど、どうしてここに……?」
ケビンに驚いたエステルは辺りを見回して、ヨシュアを探したが、ヨシュアは見つからなかった。
「い、いない……」
「いや~、ひさしぶりやなぁ。しかし、こんな所で再会するなんてオレら、やっぱり縁が―――」
「ねえ、ケビンさん!ここで誰か他の人に会わなかった!?」
「へっ……誰かって。まさかエステルちゃんもここで待ち合わせしとんの?」
血相を変えて自分に尋ねるエステルに戸惑ったケビンは不思議そうな表情で尋ねた。
「う、うん……。……って、ケビンさんも?」
「ああ……手紙に呼び出されてな。」
「あ、あたしもだ。えへへ、面白い偶然もあるもんね。」
「はは、そうやねー。―――って、そんな偶然あるかいっ!」
「や、やっぱり?それじゃあケビンさんもヨシュアに呼び出されて……」
ケビンがヨシュアに呼び出された事に違和感を感じるエステルは戸惑いの表情で尋ねたが
「ヨシュア?それって……例のカレシやったっけ?」
「う、うん……」
「し、知らんかったわ……。ヨシュア君って実はいい年したオッサンやったんか。そりゃ、愛があれば年の差なんて問題あらへんけど……。それやったらオレかて充分チャンスは……」
尋ねられたケビンはヨシュアとは思えない風貌の人物象の事を口にした。
「あのー。微妙に話が噛み合ってないんですけど。ケビンさんは誰からの手紙で呼び出されたわけ?」
「ああ、グランセル大聖堂にオレ宛ての手紙が届けられてな。届けたのは、身なりの良さそうな中年男性だったらしけど……」
「ヨ、ヨシュアはあたしと同い年だってば!オジサンなはずないでしょっ!」
「あ、やっぱり?や~。オレもなんかおかしいと思ったんよね。」
「よく言うわよ……。でも、それって一体どういうことなの?………も、もしかして………」
苦笑しているケビンに呆れたエステルが何かを言いかけたその時
「―――どうやら僕達は何者かに罠にかけられたみたいですね。」
イオン達が姿を現し、エステルとケビンに近づいてきた!
「え……だ、誰?って―――あっ!貴女はアリエッタさん!」
イオン達の姿を見たエステルは戸惑ったがイオンの傍に控えているアリエッタに気付いて驚き
「久しぶり、です。」
驚いているエステルにアリエッタが話しかけ
(あの人がエステルさん………)
ステラは興味深そうな様子でエステルを見つめていた。
「久しぶり~、って今はそれどころじゃないわね。えっと。もしかして貴方がアリエッタさんの上司の?」
「――はい。イオン・ジュエと申します。貴女の事はルークやアリエッタ達から聞いています。」
「そうなんだ……それより、イオンさんだっけ?どうしてイオンさん達もここに来たの?」
「もしかしてそっちも誰かに呼び出されたんか?」
イオン達も何者かに呼び出された事に気付いたエステルとケビンはそれぞれ尋ねた。
「ええ、僕もケビンと同じで大聖堂に僕宛てに手紙を届けた方がいたそうなんです。何でも若い女性との事ですが……」
「手紙の内容は、アリエッタ達の任務が関係、していました、ので。」
「………もしかしてあたし達を纏めて始末するワナ!?」
イオンとアリエッタの話を聞いたエステルは考えんだ後ある結論に到って信じられない表情で叫び
「え………」
「なんやて……?」
エステルの答えにステラが呆け、ケビンが真剣な表情になった時、空を飛ぶ人形兵器が数体現れ、エステル達を包囲した!
「なっ……」
「マジか……」
「やはり……」
「人形兵器、ですね。」
「どうやら私達を狙っているみたいですね……」
「うん………来るわ!」
そしてステラの言葉に頷いたエステル達は戦闘を開始した!
人形兵器達はそれぞれ同時に突撃して来たが
「ハァァァァァァ………!!」
エステルがコマのように回転して攻撃する技―――旋風輪を受け、エステル達から距離を取った。
「レイトラスト!!」
その時ステラがチャクラムを投擲して一体の人形兵器を傷つけ、さらに投擲されたチャクラムはブーメランのように戻って来て攻撃した人形兵器に追撃した後ステラの手に戻り
「そらっ!!」
ステラの攻撃によって傷ついた人形兵器にケビンがボウガンから矢を放つと人形兵器は煙を上げて墜落した!
一方残りの人形兵器の2体はエステルに銃撃で集中攻撃し
「いたっ!?」
導力弾による集中攻撃を受けたエステルは傷ついたが
「癒しの光よ……―――ファーストエイド!!」
ステラが発動した術によって銃撃によってできた傷は塞がり
「―――スパークウェーブ!!」
アリエッタが術を発動すると雷の球体が人形兵器を呑みこんで放電し
「止めです!シリングフォール!!」
イオンの術によって発生した上空から落下する岩石に圧し潰され、地面に叩き落とされた!
「な、なんだったのよ、こいつら………魔獣っていうより……」
「ああ、城の封印区画にいた人形兵器と同じみたいやね。もっともアレとは違って最近造られたものみたいやけど。」
「そう、ですね。もしかしたら、似せられているかも、しれませんね。」
倒した人形兵器の残骸を戸惑いの表情で見つめるエステルの意見に同意するようにケビンとアリエッタがそれぞれ答えた。
「それってどういうこと?」
「封印区画の人形兵器が古代遺物の一種とするなら……さっきのはオーブメントで駆動する現代の人形兵器ってところや。しかも性能は全然負けてへんみたいやね。」
「な、なるほど……。………………………………。どうしてケビンさんが封印区画のことを知ってるわけ?もしかしてケビンさん……イオンさんやアリエッタさんと同じ”星杯騎士”なの?」
ケビンの説明に納得しかけたエステルだったが、ケビンが王城の地下にあった区画の事を知っている事に違和感を感じた後、ジト目でケビンを見つめ
「……ギク。」
「フフ……」
「アハハ……」
ジト目のエステルに見つめられ、表情を引き攣らせているケビンをイオンとステラはそれぞれ苦笑しながら見つめていた。
「おい、何をしている!?」
「あ、兵士さん……」
するとそこに異変を感じ取った王国軍が部下の兵士を引き攣れてエステル達に近づいてきた。
「何やら騒がしいと思ったら……。お前たち、いったいここで何をしていたんだ!?」
「ちょ、ちょっと待って!あたしたち、ここで変な機械に襲われただけで……」
「変な機械だと……?」
「ああ、お騒がせしてエライすんませんでした。実は彼女、ギルドに所属する遊撃士でしてなぁ。とある連中を追って捜査中の身ってわけですわ」
「へっ?」
「遊撃士……本当なのか?」
自分達の話を怪しんでいる兵士に説明するケビンの話を聞いたエステルは呆け、兵士自身は目を丸くして尋ねた。
「ほら、エステルちゃん。ブレイサー手帳を見せてやり?」
「あ、うん……」
「……なるほど、本当らしいな。とある連中と言ったが、一体どういう奴等なんだ?」
そしてエステルが見せた遊撃士手帳を見た兵士は納得した様子で頷いた後尋ねた。
「それが『結社』とかいう正体不明な連中でしてなぁ。各地で妙な実験を色々としとるらしいですわ。そいつらの手がかりを追ってここに来てみたらケッタイな機械に襲われたんです。」
「………………………………」
ケビンの説明を聞いていたエステルはケビンが自分達が”結社”を追っている事を知っている事に気付いて口をパクパクさせた。
「そういえば司令部から『結社』とかいう連中について注意のようなものが来ていたな……。とすると周遊道に現れたのはその『結社』の者たちなのか……」
「え、ちょっと待って!周遊道に現れたって一体何が起こったの?」
「ああ、先ほどエルベ離宮の警備本部から連絡があってな。何でも武装した集団が離宮を襲撃してきたらしい。」
「あ、あんですって~!?」
「……もしかして情報部の残党でしょうか?」
「その可能性は高い、です。」
兵士の話を聞いて声を上げたエステルとは逆にイオンとアリエッタはそれぞれ冷静な様子で考え込んでいた。
「幸い、シード中佐によって難なく退けられたらしいがな。現在、周遊道を封鎖してその集団を追っているところらしい。」
「は~。エライことが起こったなぁ。こりゃオレらもギルドに戻った方がええかもな。」
「アリエッタ、ステラ。僕達も二人について行って状況を確認しましょう。」
「「はい。」」
「え、あ……」
「ああ、ひょっとしたら君たちが追っている連中と同じなのかもしれない……。よし、付近の警備はこのまま我々が当たるとしよう。君たちは急いで王都のギルドに戻るといい。」
「おおきに!ほな戻るとしよか。」
「ちょ、ちょっと……」
どんどん話が進んでいる事にエステルが戸惑っている中、兵士達はその場から去って行った。
「ちょっと待って!一体どういうことなの!?」
「あ~……。やっぱり納得せぇへん?」
兵士達が去った後エステルに怒鳴られたケビンは苦笑しながら尋ねた。
「あ、あたり前でしょ!あなた……いったい何者なの!?あたしたちの動きとか『結社』のこととか知ってたり……。本当にただの神父さんなわけ!?」
「正真正銘、七耀教会の神父やで。まあ、確かに……ただの神父とはちゃうけどな。」
「それってどういうこと?やっぱりアリエッタさん達と同じ”星杯騎士”な訳?」
ケビンの答えに満足していないエステルは頬を膨らませて尋ねた。
「その説明はまた後でな。さっきも言ったけど今はギルドに急いだ方がええ。ひょっとしたらとんでもない騒ぎが起こるかもしれん。」
「とんでもない騒ぎって……ああもう……アタマがグチャグチャになりそう!なんで……なんでヨシュアに会えるはずがこんな事になっちゃうのよ……」
「そのカレシからの手紙なんやけど……。それ、本当にカレシからか?」
「えっ……?う、うん。手紙を預かった子の話ではヨシュアとしか思えないし……」
ケビンの質問にエステルは戸惑いながら答えた。
「その子はカレシのことを知っとるわけないんやな?だとしたら、似たような特徴の別人を用意させた可能性もある。」
「で、でも……ヨシュアの字に似てるし……」
「筆跡なんちゅうもんはある程度似せられるもんや。動揺しとる人間を簡単に騙せるくらいにはな。ちなみにオレが大聖堂で受け取った手紙はコレやで。」
「僕が受け取った手紙はこれです。」
戸惑っているエステルにケビンとイオンは懐から手紙を出して、エステルに見せた。
「あ……」
「へへ、どうやら同じ種類の封筒らしいな。ちなみに手紙の中身はオレが調べていることについての情報を提供するって申し出やった。」
「僕の方も大体同じ内容ですね。」
「ということは……同じ連中の仕業ってこと?一体誰が、どうして!?」
二人の話を聞いて驚いたエステルは信じられない様子で尋ねた。
「それは俺にも分からんわ。確実に言えるのは……お互いハメられたってことやね。」
「………………………………。……けんじゃ……わよ。」
「へ?」
「エステル?」
そして身体を震わせているエステルの異変に気付いたケビンとイオンは首を傾げた。
「何者か知らないけどふざけてんじゃないわよ……。ヨシュアを騙って……あたしを呼び出したですって?許せない……絶対に許さないんだからあっ!」
「いきなり声を上げて、うるさい、です。」
「まあまあ……探していた人物を騙って騙されたのですから。当然の反応ですよ。」
(フフ、エステルさん……ヨシュアの事を本当に大切にしているのね……)
「ひえっ……落ち着き、エステルちゃん。ここで熱くなったらまさに相手の思うツボやで。とにかくギルドに戻って情報の整理をしよ?」
エステルの怒鳴り声に眉を顰めているアリエッタをイオンが宥め、ステラはエステルを微笑みながら見つめ、ケビンは驚いた後エステルを宥めた。
「わかった……。だけど、ケビンさんのこと……完全に信用したわけじゃないわ。騙したりしたら……本気でぶっ飛ばすからね?」
「ああ、かまへんで。エステルちゃんにぶっ飛ばされるなら本望や。惚れた女のためなら身体を張る覚悟はできとるしな♪」
「な、なに言ってるのよ。まったくもう……調子狂っちゃうわね。」
ケビンの言葉にエステルは照れた後、呆れた様子で溜息を吐いた。
「和み系目指しとんねん。それじゃあエステルちゃん。それにイオンさんとアリエッタさんにカリンさんも。とっととギルドに戻ろうか?」
「うん、わかった!」
「「「はい。」」」
そしてエステル達は急いで王都のギルドに向かい、王都に戻ると既に夜になっており、更に偶然エステル達を見つけたフィリップからデュナン公爵が姿を消した話を聞き、ギルドに一報が入っていないか確かめる為にエステル達はフィリップと共にギルドの中に入った。
~遊撃士協会・グランセル支部~
「エルナンさん、ただい……」
エステルがギルドに入って受付を見ると、なんとエルナンが倒れていた。
「エ、エルナンさん!?」
「なんと……!?」
「そ、そんな………!?」
「まさか……!」
「毒、でしょうか。」
「クソ、そう来たかい!」
エルナンの状態に驚いたエステル達はエルナンに駆け寄ってエルナンの状態を確かめた。
「エルナンさん!?エルナンさんってば!」
「呼吸は安定しとる……。どうやら眠っとるみたいやな。この人が王都支部の受付か?」
「う、うん……。……みんな!?」
エルナンの状態を調べたケビンの問いに答えたエステルは嫌な予感がして、2階に向かった。
「あ………」
エステルが2階に上がると、全員が倒れていた。
「アガット、アーシアさん、オリビエ、ジンさん!」
アガット、アーシア、オリビエ、ジンは机にうつ伏せて、眠っていた。
「ティータ、クローゼ!」
ティータ、クロ―ゼの3人は本棚の近くで横になって倒れていた。
「あっちゃあ……。全員やられたみたいやね。」
その時ケビン達が2階に上がって来た。
「どや、無事そうか?」
「う、うん……。眠ってるみたいだけど……。一体全体、どうなっちゃってるのよ~!?」
「ふむ、どうやら一服、盛られてしまったようですな。皆さん、急に睡魔に襲われ崩れ落ちたように見受けられます。」
「た、確かに……」
「おお、鋭いですやん。」
フィリップの推測にエステルとケビンは感心し
「……問題は一体誰が一服”盛った”かですね。」
「もしかして、”結社”の仕業、でしょうか。」
「それに何の為に、遊撃士協会の人達を眠らせたのでしょう?」
イオンとアリエッタはステラと共に真剣な表情でアガット達に睡眠薬を持った相手が誰であるかやその目的を考え込んでいた。
「あれ、この手紙………」
そして辺りを見回したエステルはアガット達が倒れている机の上に置かれてある手紙に気付いた。
「ちょっと待て……。それ、俺らが受け取った封筒と同じとちゃうか!?」
「う、うん!」
ケビンに急かされたエステルは手紙の内容を読み始めた。
娘と公爵は預かった。返して欲しくば『お茶会』に参加せよ。
「あ、あんですって~!?」
「こ、公爵閣下が……!?」
手紙の内容を読み終えたエステルは驚き、また内容を聞いていたフィリップも驚いた。
「『お茶会』の場所はやっぱり王都やったか……。そこに書いてある娘ってのは誰か分かるか?」
「はっ……!」
ケビンに言われたエステルはギルド内でまだ見かけていない人物――――エルベ離宮で保護した少女、ユウナの事に気づいた。
「ユウナ!?ユウナ、どこにいるの!?」
血相を変えたエステルは3階に上がって捜したが、目的の人物はいなかった。
「どうやらその子が掠われたみたいやな……。エステルちゃんの仲間か?」
「ううん、ある事情で預かっている子なんだけど……。よりにもよってこんな事に巻き込んじゃうなんて……!」
「エステルちゃん……」
「エステル様……」
「「…………………」」
「???(二人ともどうされたのかしら……?何だか厳しい表情をしているようだけど……)」
悔しそうな表情のエステルを心配そうな表情で見つめるケビンとフィリップとは逆に厳しい表情で黙り込んでいるイオンとアリエッタの様子に気付いたステラは首を傾げた。
「ごめん、フィリップさん……。ひょっとしたら公爵さんもとばっちりを受けたのかも……」
「いえ、そうとは限りますまい。仮にそうだとしてもこんな時間まで1人きりで遊び呆けている閣下の責任です。どうかご自分を責めないでください。」
「そうやで、エステルちゃん。まずは手紙の『お茶会』が何なのか突き止めるのが先や!」
「う、うん……」
2人に元気づけられたエステルは『お茶会』を突き止める為に手紙を読み直した。
「そういえば『お茶会』って特務兵の残党の話が出たときにエルナンさんが言ってたような……。……って、ケビンさん。さっき手紙を読んだとき、『やっぱり王都やったか』とか言ってなかった?」
「なんや、聞こえてたんか。んー、実はちょっとした事情があるんやけど……」
「……その事情は俺達が説明するぜ。」
そしてエステルに尋ねられたケビンが事情を話そうとしたその時、ルークがシェラザードとフレンと共に下から上がって来た。
「お、ナイスタイミング!」
「久しぶりですね、ルーク。」
「へ……ル、ルーク兄!?それにシェラ姉とフレンさんまで……!?」
ルーク達の登場にケビンとイオンは明るい表情をし、エステルは驚いた。
「久しぶりね、エステル。ずいぶん大変なことになっているみたいじゃない?しかしケビンさん。お互い間に合わなかったみたいね。」
「ええ、面目ないですわ。」
「ど、どうしてシェラ姉達がここに……。それになんでケビンさんと話が通じちゃってるわけ!?」
ケビンと知り合いの様子のシェラザードに驚いたエステルは尋ねた。
「あたし達が特務兵のアジトを発見したのは聞いていると思うんだけど……。ちょうどその時、この人と知り合ってね。消えた残党の捜索に今まで協力してもらってたのよ。」
「勿論、お前らが”結社”を追っている事も話しておいたぜ。」
「そ、そっか……。だから事情に詳しかったんだ。」
「へへ、そういうことや。」
シェラザードとフレンの話を聞いてようやく納得したエステルは安堵の表情でケビンを見つめた。
「シェラ先輩!」
「お兄様!」
その時、アネラスとレンも走って上がって来た。
「あ、アネラスさん!?それにレンも!?」
「あら、エステルは眠らされてなかったのね。」
「エステルちゃん!よかった、無事だったんだ!それにケビンさんやイオンさん達もこっちに来てたんですね!?」
自分達の登場に驚いているエステルをレンは目を丸くして見つめ、アネラスは安堵の溜息を吐いた後ケビン達に視線を向けた。
「ああ、オレ達の方も間に合わへんかったけどな。」
「で、下の通信器はどうだった?」
「駄目です……。パーツが抜き取られたらしくてすぐには使えそうにありません。」
「しかも御丁寧に予備のパーツまで盗まれていたわ。」
「とすると……」
アネラスとレンの報告を聞いたシェラザードは3階に備え付けて合った予備の通信器を調べた。
「駄目ね、こっちも同じだわ。」
「それって……『敵』が壊したってこと?」
「もしかして”結社”の連中の仕業か?」
「間違いないわ。一体、何を狙ってこんな事をしたのか……」
「そうだ、シェラ姉!この置手紙なんだけど……」
そしてエステルはシェラザード達に手紙を見せて、事情を説明した。
「…………………」
「『お茶会』……。ようやく全てが繋がったわね。そのユウナって子と公爵を掠ったのは特務兵の残党に間違いないわ。しかも背後には『身喰らう蛇』がいるはずよ。」
事情を聞き終えたレンは呆けた様子で黙り込み、シェラザードは真剣な表情で頷いた後推測した。
「うん、あたしたちも変な機械に襲われたし……でも『お茶会に来い』ってどこに行ったらいいのか……」
「とにかく心当たりを捜してみるしかないわね。アネラス、フレンさん。一つ頼まれてくれない?」
「はい、何ですか?」
「『エルベ離宮』の警備本部にこの事を連絡してきてほしいの。周遊道に現れた武装集団はおそらく陽動に間違いないわ。」
「なるほど……」
「やはり狙いは王都やね。」
「確かにもし”敵”が特務兵なら、王都を狙う可能性は高いだろうしな。」
シェラザードの推測にエステルは頷き、ケビンとルークは真剣な表情で呟いた。
「わかりました!それじゃあ離宮までひとっぱしりしてきます!」
「アネラスさん、フレンさん、気を付けて!」
「お前らも気を付けろよ!」
そしてアネラスとフレンはエルベ離宮に急いで向かった。
「―――では僕達は城にこの事を知らせてきましょう。もし王都を狙っているのなら、真っ先に狙うのはグランセル城――――アリシア女王でしょうし。アリエッタ、ステラ、行きますよ。」
「はい、イオン様。」
「…………………」
イオンの指示にアリエッタは頷いたがステラは迷った様子でエステルとイオンを何度も見比べ
「その様子ですとエステル達を手伝いたいようですね……―――わかりました。ステラはエステル達を手伝ってあげてください。」
「!はい、ありがとうございます……!」
自分の気持ちを汲み取ったイオンの心遣いにステラは嬉しそうな様子を見せながら頷いた。
「ルーク。彼女の事をお願いします。」
「ああ。」
そしてイオンとアリエッタもその場から去り
「あれ?今気付いたけど……その仮面のシスターさんって、誰??イオンさん達と一緒に行動していたって事は……”星杯騎士”の人なの??」
ステラの存在にようやく疑問を抱いたエステルは首を傾げてステラを見つめた。
「私の名はステラ・プレイス。今は私の事を気にするよりも攫われた方達の救出に向かうべきです。」
「う、うん。(あ、あれ?一瞬ステラさんがヨシュアに見えたような気がするけど……気のせいよね??)」
正面からステラをよく見た瞬間一瞬ステラがヨシュアと重なったように見えたエステルは首を傾げ
「…………………」
(?どうしたんだ、レンの奴。)
真剣な表情で黙り込んでいるレンに気付いたルークは首を傾げて不思議そうな表情で見つめていた。
「執事さんは悪いんだけどギルドで待機していてくれる?公爵閣下は必ず取り戻すから。」
「……かしこまりました。待機している間、皆さんの介抱をさせて頂きましょう。どうか閣下をお願いします。」
そしてその場をフィリップに任せたエステル達はルーク達と共にギルドを出た。
~エルベ離宮・紋章の間~
「現在、周遊道北西エリアで第1~第2小隊が展開中。まもなく包囲が完了します。」
「南東エリアでは特務兵数名がロマール池のさらに向こうに逃亡中。第3~第4小隊が追撃を続けています。」
一方その頃、シード中佐は兵士達から現状の報告を聞いていた。
「ご苦労。現状を維持しつつ両集団の確保に努めてくれ。」
「は!」
シード中佐の指示に敬礼をした兵士達はそれぞれの持ち場に戻った。
「しかし解せませんねぇ……。一体、何を考えているのやら。まさか陽動のつもりですかね?」
「グランセル城には一個中隊を配備している。我々をここに留めたところで彼らに制圧するのは不可能だ。それとも我々の知らない切り札があるというのか……?」
「切り札、ですか?」
「失礼します!」
シード中佐の推測に副官が首を傾げたその時、一人の兵士が入って来た。
「どうした?」
「要塞司令部への連絡は完了。ただ、遊撃士協会の王都支部への連絡ですが……。何かトラブルでもあったのか先方に通じない状態です。」
「なに……?」
「いかがしますか?」
「ふむ、そうだな……。……念のため保険をつかわせてもらうか。副長、ここは任せた。私はしばらく通信室に詰める。」
「了解しました。して、どちらに連絡を?」
「もう一度、要塞司令部だ。」
そしてシード中佐は通信室に向かい、誰かと通信をした。
一方その頃、エステル達はギルドを出た時、ジークが現れ、エステル達を案内するようにどこかにゆっくりと飛んで行ったのでエステル達はシークを追って波止場に到着した………
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