英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第36話
~遊撃士協会・ロレント支部~
「お、やっと帰ってきたか。」
「どうした?やけに遅かったじゃないか。」
「あれれ?そのシスターの人って、誰ですか??」
レン達がギルドに戻ると既に戻っていたルーク達がギルド内にいた。
「ええ、色々あってね。」
「お兄様たちがいるって事は鉱員の人達やママの護衛は無事終わったのかしら?」
「ああ、すでに向こうに連絡が行ってたらしくてな。すぐに出発できたから意外に早くかえってこれたぜ。」
「ただ、帰る途中で奇妙な魔獣が現れてな。しかもアネラスの方にも現れたらしいから、その事を話していたんだ。」
「―――もしかして霧の中から現れて、倒すと消滅する魔獣かしら?」
ルークとガイの話から何かを察したレンは真剣な表情で尋ね
「えっ!?レンちゃんが知っているって言う事は……!」
「そっちにも現れたのか……」
「こりゃ完全に狙って現れているとしか考えられないな……」
レンの質問を聞き、レン達も自分達が戦った魔獣と戦った事を察したアネラスは驚き、ルークとフレンは真剣な表情で考え込んでいた。
「先輩達は怪我はなかったんですか?」
「レン達の方は大丈夫だったんだけど……」
「…………………」
「何かあったみたいね。報告してもらえるかしら?」
アネラスの質問を聞き、言葉を濁しているレンと複雑そうな表情で黙り込んでいるシェラザードの様子から只事ではない事を察したアイナは真剣な表情で尋ねた。
そしてシェラザード達は農園で起こった出来事について一通り報告した。
「そう……一足遅かったみたいね。」
二人の報告を聞いたアイナは昏睡事件の犠牲者を増やしてしまった事に悔しさや無念を感じながら疲れた表情で溜息を吐いた。
「……あたしの失態だわ。もう少し上手く立ち回れば犯人を捕まえられたのに。」
「気にすることはないわ。どうやらあなた達は、罠にかけられたみたいだし。」
後悔しているシェラザードを慰めるかのようにアイナは真剣な表情でシェラザード達に非は無い事の理由を話し
「わ、罠!?」
「やっぱり、ね。」
理由を聞いたルークは驚き、レンは冷静な様子で頷いた。
「話を聞く限り、農園に入ったと同時に聞こえてきた鈴の音……。待ち伏せしていた霧の魔獣、そして鍵のかかった正面玄関……。ギリギリのタイミングでシェラザードたちが間に合わないよう計算された感じだな。」
「た、ただの偶然って事はありませんか?」
フレンの推測を聞いたアネラスは信じられない表情で尋ね
「いや、昏睡事件を考えても『黒衣の女』はかなり巧妙な女だ。シェラザード達が護衛する人々をわざわざ先回りして眠らせた………もしかしたら挑発しているかもしれねえな。」
「「………………………………」」
フレンの推測を聞き、心当たりがあるシェラザードは浮かない表情で、レンは真剣な表情で黙り込んでいた。
「そう言えば……そちらのシスターの方は何者かしら?もしかしてルーク達が帰る途中に会ったという”星杯騎士”の方かしら?」
その時ステラに視線を向けたアイナは尋ね
「いえ、私は”星杯騎士”の方達にお世話になっているだけで、厳密には違います。―――初めまして。ステラ・プレイスと申します。とある理由があって、この度イオン様達の任務に同行させてもらっています。」
「へ!?」
「ルーク?彼女を知っているのかしら?」
ステラが名乗った瞬間驚きの表情で声をあげたルークが気になったアイナはルークに訊ねた。
「い、いや、単に知り合いの名前と同じだったから驚いただけだよ、ハハ……」
「クク……」
とっさに思いついた嘘をついて必死に誤魔化しているルークの様子をフレンは笑いを噛み殺して見守っていた。
「ステラさん、でしたよね?理由があって星杯騎士の人達と行動をしていると仰いましたが、差し支えなければその理由を教えてもらっても構いませんか?」
「はい。…………以前のリベールのクーデターに関わったアリエッタさんから私がずっと探していた人を見かけたと聞きまして。”結社”と関係しているその人が再びリベールに現れる可能性が高いと思い、その人に会う為にしばらくリベールで活動をする事になったイオン様達に同行させてもらっているのです。」
「ええっ!?け、結社と関係していて、しかも以前のクーデターにも関わっているのですか!?それって一体誰の事ですか?」
「……もしかしてあのロランス少尉って言うアッシュブロンドの髪の凄腕の剣士の事かしら?」
アイナの質問に答えたステラの話を聞いたアネラスは驚いた後訊ね、ステラが探している人物がロランス少尉である事を推測していたシェラザードは真剣な表情でステラに訊ねた。
「―――はい。本名はレオンハルト・ベルガー。特徴はアッシュブロンドの髪の20代半ばの男性でイオン様達の話によると今のレーヴェは”剣帝”と呼ばれているそうです。」
シェラザードの疑問にステラは頷いた後複雑そうな表情で答え
「そう言えば女王宮で戦った時、アリエッタお姉さん、あのアッシュブロンドのお兄さんの事、”剣帝”って呼んでいたわね………」
「―――決まりね。ちなみにステラさん。その様子からすると”剣帝”とやらとかなり親しかったようね?」
「愛称まで付けちゃってますもんねえ。もしかして昔の恋人とか?」
ステラの説明を聞いたレンは女王宮での戦いを思い出し、真剣な表情のシェラザードは苦笑しているアネラスと共にステラに尋ねた。
「………幼馴染です。正直私もどうしてレーヴェがそのような裏組織に入って多くの人々を傷つけようとしているのか、わからないんです。昔は正義感あふれる人で遊撃士を目指していた人でしたのに……」
「ゆ、遊撃士ぃッ!?」
「何か込み入った事情がありそうね。ちなみにその”剣帝”とやらはいつ頃貴女の前から姿を消したのかしら?」
肩を落として語ったステラの予想外の話にルークは驚き、アイナは考え込んだ後ステラに訊ね
「それは……」
「ふう、ただいま戻りました。」
アイナの質問に対する答えに困っていたステラが言葉を濁そうとしたその時、ロレント常駐の遊撃士が戻って来た。
「リッジじゃねえか。」
「確か護衛で王都まで行ってたんですよね?」
「ええ、朝早くに向こうを出てやっと戻って来られましたよ。それにしても……いったい何があったんですか?霧の範囲は広がってるわ、街を兵士が巡回しているわ……」
「実は昨日の夕方頃から色々大変なことが起こってね。」
状況を理解できていない遊撃士にアイナは事情を説明した。
「うわ……そんなことになってたんですか。マズイ時に出かけちゃったなぁ。」
「気にする事はねえと思うぞ。この霧の中、護衛をするのも大切な仕事だと思うしな。」
「あたし達がそういう仕事を請けている余裕はないからね。フォローしてくれて助かるわ。」
肝心な時に力になれていない事に気まずさを感じている遊撃士をフレンとシェラザードはそれぞれフォローした。
「こ、光栄です。そういえば……その『鈴の音』なんですけど。それって霧の向こうから聞こえてくるんですよね?」
「ええ、そうよ。」
「何のために鳴らしているのかはっきりしてないんだけどね。」
「そうか……」
「何か心当たりでもあるの?」
シェラザードたちの話を聞き、考え込んでいる遊撃士の様子が気になったアイナは尋ねた。
「さっき、エリーズ街道を通っていた時なんですけど……。かすかに鈴の音を聞いたんです。」
「ええっ!?」
「エリーズ街道のどのあたりで聞こえたの?」
遊撃士の話を聞いたアネラスは驚き、シェラザードは血相を変えて尋ねた。
「え、えっと……。グリューネ門から出てわりとすぐだったから……。ミストヴァルトの方ですね」
「ミストヴァルトか……」
「たしかロレント地方の南東に広がる森だったな。確かに木が生い茂っているあそこなら、隠れるのにもってこいだな。」
遊撃士の話を聞いたルークとフレンはそれぞれ真剣な表情で考え込んだ。
「最初、誰かいるのかと思って聞こえてきた方角に向かって大声で呼びかけてみたんですよ。でも、何の返事もないから気のせいかと思っちゃって……」
「うふふ、もしかしてさっきの農園のようにレン達を挑発しているのかしら?」
「どうします?ルーク先輩、シェラ先輩。」
自分達が挑発されている事にレンは不敵な笑みを浮かべ、アネラスは真剣な表情で先輩遊撃士達の判断を煽いだ。
「危険だけど今のこの状況を解決する為には行くしかないんじゃないか?」
「そうね……。罠の可能性は高いけど飛び込んでみるしかなさそうね。ルークの言う通り、招待に応じさせてもらいましょう。―――ステラさん、貴女はどうするのかしら?」
ルークの意見に賛成したシェラザードは自分達に協力を申し出たステラに尋ねた。
「勿論私も微力ながら協力します。レーヴェと再び会う為にも”結社”の動向を追うのが一番の近道だと思っていますし……」
「そう……くれぐれもあたし達から離れないようにしてね。」
「はい。」
その後ルーク達はミストヴァルトに向かった
~ミストヴァルト~
「……ここも完全に霧に覆われちまってるな。」
「ええ……。元々暗くて視界が悪いから歩きにくいことこの上ないわね。」
霧に包まれ、周囲がほとんど見えない様子にルークとシェラザードは気を引き締め
「気を抜いたらすぐに迷ってしまいそうですね。」
「ちゃんとコンパスを確認した方が良さそうだな。」
不安そうな表情で呟いたアネラスの言葉にフレンが答えた。するとその時霧の魔獣が2体ルーク達の目の前に現れた!
「早速来たわね……」
「うふふ、歓迎されているわね♪」
霧の魔獣を見たシェラザードは真剣な表情をし、レンは小悪魔な笑みを浮かべて武器を構えた。するとその時両手にそれぞれ円輪状の投擲武器―――チャクラムを構えていたステラが片方のチャクラムに魔力を込めて投擲した!
「ホーリースティア!!」
魔力が込められた影響で光を放つチャクラムは魔獣達の中心地に止まって回転し、光の刃で霧の魔獣達の身体を切り裂き続け
「集え、光よ!――――フォトン!!」
更に短い詠唱を終えると魔獣達の中心地に光の魔力が集束した瞬間、爆発を起こし、爆発に呑みこまれた魔獣達は消滅し、回転していたチャクラムはステラの手に戻った。
「ヒュウ。やるじゃねえか!」
ステラの戦闘能力を見たフレンは感心し
「この様子なら、フォローは最低限で良さそうですね。」
「ええ。それにしてもアリエッタさんの時も思ったけど、ホントに魔法みたいよね、”法術”って。」
心強い協力者の様子にアネラスとシェラザードは口元に笑みを浮かべ
「ハ、ハハ………(なんでこっちの世界の人間が譜術を使えんだよ!?もしかしてイオン達が教えたのか??)」
ステラが使った”術”の正体がわかっていたルークは冷や汗をかきながら表情を引き攣らせていた。
「うふふ、ステラお姉さんが戦う所をステラお姉さんが探しているその”剣帝”とやらが見たらビックリするんじゃないかしら?」
「ふふっ、レーヴェを見つける為といつまでも守られてばかりではいけないと思って、イオン様達に保護された時から戦い方を教えてもらい続けた甲斐があったわ。」
小悪魔な笑みを浮かべるレンに見つめられたステラは苦笑しながら答えた。
そしてルーク達は視界が悪い中、時折現れる魔獣と戦いながら先に進むと、敵の仕掛けらしき迷路をも抜け、奥にある大樹に到着した。
~セルべの大樹~
「!?おい、あれって……!」
「リシャール大佐が使っていた黒のオーブメント―――『ゴスペル』じゃねえか!」
大樹の真ん中についている見覚えのある漆黒のオーブメント『ゴスペル』を見たルークとフレンは驚き
「水面から沸き起こる霧……。ひょっとして、ここから霧が生まれているのかも……」
レンは小さな湖から沸き起こっている霧を見つめて真剣な表情で考え込んでいた。
「だ、だったら早く『ゴスペル』を外しましょうよ!そうしたら、この霧も晴れて眠っている人達も起きるかも……!」
そしてアネラスが焦った様子で提案したその時
「アネラス、待ちなさい!」
アネラスの行動を見たシェラザードが警告をした。すると
チリーン………
なんと鈴の音が鳴り響き、そしてルーク達の目の前に霧がかかった後、今まで現れた霧の魔獣の倍はあるであろう大きさの魔獣達が現れた!
「霧の魔獣!?で、でも大きさが今までとは比べ物になりませんね……」
現れた魔獣を見たステラは驚いた後戸惑い
「農園で戦った連中とは格が違うみたいね……」
「うふふ、少しは楽しませてもらえそうね♪」
敵の強さを感じ取ったシェラザードは真剣な表情をし、レンは不敵な笑みを浮かべ、ルーク達と共に戦闘を開始した!
「!?みんな!その魔獣達と戦う時、気を付けて!右の魔獣は物理攻撃を、左の魔獣はアーツ攻撃を吸収するって情報にあるわ!」
戦闘開始時、オーブメントにつけられてある目の前の敵達を瞬時に解析するクオーツ――――『天眼』をつけていたレンは頭の中に入って来た敵の情報に驚いた後ルーク達に警告した。
「チッ、厄介ね……!」
「だったら、片方が物理が効く奴を相手して、もう片方はアーツが効く奴を相手するぞ!」
レンの警告を聞いたシェラザードは舌打ちをし、フレンは瞬時に判断して叫んだ。
「よし……!フレン、アネラス!俺達で左の魔獣―――物理が効く奴を相手するぞ!」
「ああ!」
「了解しました!」
「あたし達は残りを相手するわよ、レン!―――ステラさん!貴女は後方からあたし達の援護をして!」
「はい!」
そしてルーク達は二手に分かれてそれぞれが相手する魔獣へと向かって行った。
「スタンブレイク!!」
フレンは電撃を流し込んだトンファーを魔獣の正面に叩きつけたが
「……………」
「っと!」
正面からトンファーを叩きつけられたにも関わらず、魔獣は拳を次々と繰り出し、フレンはトンファーで繰り出される拳をガードしていた。
「貫く閃光!翔破!裂光閃!!
「さあ、行くよっ!まだまだまだまだまだぁっ!――止めっ!!」
フレンを攻撃している間にルークとアネラスは挟み撃ちにして怒涛の速さで連続突きや連続斬撃を叩き込み
「ゼロ・ブレイク!!」
二人による挟み撃ち攻撃を受け、怯んでいる敵にフレンはトンファーを叩きこむと同時に零距離で闘気を爆発させた!すると弱っているのか魔獣は霧状の身体を薄っすらとさせて、フラフラしていた。
「ハァァァァ……燃えちまえ!」
「ハァァァァ………切り裂け!」
敵が弱った瞬間ルークは炎を纏わせた剣を、アネラスは風を纏わせた剣を振り上げ
「―――龍炎撃!!」
「―――業嵐撃!!」
それぞれ同時に強烈な一撃を叩きつけ、止めを刺された魔獣は消滅した!
「レン!駆動が終わるまでの時間稼ぎを頼んでもいいかしら?」
「ええ、任せて!――魔神剣・双牙!!」
シェラザードと共に自分達が相手する魔獣に向かったレンは二本の小太刀を振るって衝撃波を魔獣の横を通り過ぎさせて自分に注意を引きつけた。
「……………」
レンを標的に決めた魔獣は両手から風の刃をレンに放ったが
「二の型・改――――双波洸破斬!!」
レンは神速の抜刀によって発生した鋭い衝撃波を放って襲い掛かる風の刃を相殺した!
「やあっ!ストーンインパクト!!」
レンが注意を引きつけている間にオーブメントの駆動を終えたシェラザードは上空から巨大な岩石を降り注がせるアーツを発動し、岩石に圧し潰された魔獣は一瞬怯んだが、すぐに立ち直って何かの溜め動作をしていた。
「―――何をするつもりなのかしらないけど、させないわよ!ヴァリアブルトリガー!!」
その時レンが双銃による神速の狙撃を放って敵の傷を回復させたが、溜め動作を中断させた。
「裁きの槍達よ、我が敵を貫け!―――シャイニングスピア!!」
そして詠唱を終えたステラが叫ぶと上空から光の槍が降り注いで敵を貫いた瞬間数本の光の槍が敵の周囲に発生して次々と敵を貫き
「やあっ!ソウルブラー!!」
そこにシェラザードが放った駆動時間が短い下級アーツが命中して止めを刺され。止めを刺された魔獣は消滅した!
「普通の奴よりタフだったな……」
「フウ。先輩達がいなければ、こんな簡単に片づけられなかったでしょうね。」
戦闘を終えたフレンとアネラスは安堵の溜息を吐いたが
「気を抜かないで!今のはただの使い魔よ!操っていた術者がどこかにいるはずだわ!」
何かに気付いていたシェラザードが警告した。
「!!」
「もしかして”黒衣の女性”かしら?」
「一体どこに……」
シェラザードの警告を聞いたルークは目を見開いてレンと共に周囲の警戒を始め、ステラが不安そうな表情で呟いたその時!
「ふふ……なかなか頑張ったわね。それではみんなにご褒美をあげましょう。」
どこからともなく女性の声が聞こえて来た後、樹に嵌められてある『ゴスペル』が妖しく輝いた!
「!!!」
「な……!」
「しまった……!」
そしてルーク達は意識を失った……
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