英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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もう一つのプロローグ~運命の出会い~
~半年後・ブライト家~
「ねぇ、お母さん、お父さんまだ~?」
「ギルドの連絡では今日帰ってくるそうだからもう少し待ってなさい。」
食事の準備をしているレナと食卓に座って自分の趣味の本を読んで待っているエステルは、父親の帰りを待っていた。
「レンは出張に行ったルーク兄に付いて行っちゃったし、シェラねぇは修行で王国一周旅行してるし………あー、つまんない。ゴハンの前にもういちど棒術の練習でもしよっかな。」
「もう、この娘ったら……少しはレンを見習って女の子らしい趣味を持てないのかしら?」
愛娘の趣味にレナは呆れた様子で溜息を吐いた。
「おーい、今帰ったぞ~。」
「おとーさん!」
「お帰りなさい、あなた。」
毛布を抱えているカシウスが玄関を開けるとエステルとレナはそれぞれカシウスに近づいた。
「ただいま、エステル、レナ。待たせちまったようだな。エステルはいい子で留守番していたか?」
「ふふん、あったりまえよ☆とーさんの方も何もなかった?魔獣と戦ってケガしてない?」
「おお、ピンピンしてるぞ。それよりエステル。実はお前達にお土産があるんだ。」
「え、ホント!?釣りザオ?スニーカー?それとも棒術の道具とかっ?」
父からお土産がある事を聞かされたエステルは嬉しそうな表情で尋ねた。
「ハァ……一体どこで育て方を間違えたのかしら?」
「あのなぁエステル、レンのように何か女の子らしい物はほしくないのか?ぬいぐるみや服とかアクセサリーとか。」
娘の女の子らしくない答えを聞いて頭痛を感じたレナは疲れた表情で溜息を吐き、カシウスは呆れた様子で尋ねた。
「ぬいぐるみはレンがいつでも貸してくれるし、キレイな服は好きだけど汚しちゃうもん。アクセサリーも遊んでいたら壊れるからヤだし。それより、とーさん。その大きな毛布、どうしたの?ひょっとして、それがお土産?」
「お、鋭いな……よっと……」
「…………………」
カシウスが抱えている毛布の中身をみせるとそこには気を失った黒髪の少年が眠っていた。
「…………ふえっ?………………………」
「……え。…………………」
「まあ、こういうわけだ。割とハンサムな坊主だろう?」
親娘が呆けている中カシウスは笑顔で言った。
「な、な、な、なんなのー、この子!?」
その時我に返ったエステルが声を上げてカシウスを睨んだ。
「大きな声を出すなって。起こしちまうじゃないか。」
「起きちゃうって……この子、生きてるの?なんかグッタリしてるけど。」
「手当ては済ませたからもう命の危険はないはずだ。だが、とりあえずは……休ませる必要はありそうだな。ベッドに運ぶからレナはお湯を沸かしてくれ。エステルは飲み水の容易だ。」
「わかりました。」
「らじゃー!」
そしてカシウスは少年をベッドに寝かせた。
「よく寝てる……この子、あたしと同じくらいのトシだよね。こんな、真っ黒のカミ、あたしはじめて見るかも。」
エステルは初めて見る少年の容姿を興味深そうに見つめていた。
「確かに見事な黒髪だな。ちなみに瞳はアンバーだぞ。」
「ふーん。」
「………さてと。あなた、これは一体どういう事かしら?」
「うっ。」
微笑みを浮かべたレナに見つめられたカシウスは突如襲ってきた恐怖感によって身体を震わせながら大量の冷や汗をかき始めた。
「この子、ダレなの?なんでケガしてるの?どうしてとーさんがウチまで連れてきたの?ひょっとして隠し子?おかーさんを裏切ったの?」
レナの微笑みで身体を震わせているカシウスに追撃するかのようにエステルはカシウスを睨んで尋ねた。
「ふう、どこでそういう言葉を仕入れてくるんだか……」
「シェラちゃんよ。」
「まったくあの耳年増め……」
娘の口から出た予想外な言葉を教えた人物を思い浮かべたカシウスは呆れた様子で溜息を吐いた後説明をし始めた。
「この子は、父さんも仕事関係で知り合ったばかりだ。まだ名前も知らなかったりする。」
「仕事って、遊撃士の?」
「まあな。おっと――――」
身動きし始めた少年に気付いたカシウスは目を丸くした。
「えっ?」
「あら……」
「目を覚ますぞ。」
「ん……」
少年は琥珀色の瞳をゆっくりと開けた。
「わ、ほんとにコハク色……」
「………ここは……」
包帯を巻かれている少年は見覚えのない景色に戸惑った。
「坊主、目を覚ましたか。ここは俺の家だ。とりあえず安心していいぞ。」
「…………………どういうつもりです?」
「ふえっ?」
(何て冷たい目………一体どんな悲しい体験をしてきたのかしら……)
冷たい目でカシウスを見つめて尋ねる少年をエステルは首を傾げて見つめ、レナは不安そうな表情で少年を見つめていた。
「正気とは思えない……どうして……放っておいてくれなかったんだ。」
「どうしてって言われてもなぁ。いわゆる、成り行きってヤツ?」
責めるような視線で自分を見つめる少年にカシウスは場の雰囲気を明るくするかのように笑顔で答えた。
「ふ、ふざけないで!カシウス・ブライト!あなたは自分が何をしてるのか……」
一方カシウスの答えを聞いた少年は声を上げて反論しようとしたが
「こらっ!」
「あら。」
「グッ!?」
エステルの飛び蹴りによる衝撃を受けて口を閉じた。
「ケガ人のクセに大声出したりしないの!ケガにひびくでしょっ!」
「………………………だれ?」
自分を睨んで怒鳴る少女が誰なのかわからない少年は目を丸くして尋ねた。
「エステルよっ!エステル・ブライト!」
「俺の娘の一人だよ。お前さんと同じくらいの娘と、更にその下の娘がいるって話しただろう?」
「そういえば……って、そんな話をしてるんじゃ!」
カシウスの話を聞いて考え込んでいた少年だったがすぐに状況を思い出して反論しようとした。しかしその時エステルが少年に何度も飛び蹴りを命中させた。
「あたっ!?」
「おおきな声を出さないっ!ケガに響くでしょうが!」
「わ、わかったよ……でも君の行動のほうがよっぽどケガに響くんじゃ……」
「なんか言った~~?」
「いや、だから君の行動が……」
少年はエステルに反論しようとしていたが
「な・ん・か・言・っ・た~~~?」
「なんでもないです……」
エステルの綺麗で凄みのある笑顔に圧されて口を閉じた。
「ま、この家の中では女性達には逆らわん方がいいぞ。こいつらが本気になったら俺達男共はかなわないからな。」
「そうみたいですね……」
カシウスの笑顔での忠告を聞いた少年は呆けた様子で呟き
「……あなた?その事について聞きたい事があるので、後でゆ・っ・く・りと話をしましょうね~~~?」
「ハイ………」
レナに綺麗で凄みのある笑顔を向けられたカシウスは疲れた表情で肩を落とした。
「ところであんた。なんか忘れてることない?」
「え……?」
「名前よ、名前。あたしもさっき言ったでしょ。こっちだけが知らないのってくやしいし、不公平じゃない。」
「………あ…………………」
エステルが浮かべたまるで太陽のような笑顔を見た少年は呆けた後考え込んだ。
「まあ、道理だな。今更隠しても仕方あるまい。不便だし、聞かせてもらおうか?」
「…………わかり………ました………僕は………僕の名前は……………ヨシュアです……」
後にカシウスが突如連れ帰って来た少年――――ヨシュアはブライト家の一員となり、エステルやルーク達と共に暮らし始める事となった。
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