| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第4話

~某日・深夜~



「あそこか……」

「?あの。何だか様子がおかしくありませんか?」

ルークたちと共に物陰に隠れていたルフィナは出入り口付近に倒れている猟兵らしき存在をに視線を向けて呟き

「もしかして見張りの兵でしょうか?―――アリエッタ、建物内から人の気配はしますか?」

「はい。ですが、だんだんと減って、います。」

「ハアッ!?どういう事だよ、それは!?」

「まさか私達より先に襲撃をかけている何者かがいるというのか?しかし一体どの組織が……」

アリエッタの口から出た答えを聞いたルークは驚き、レイシスは建物内にいる謎の襲撃者達の正体を考え込んでいた。



「―――まさか。”身喰らう(ウロボロス)”の者達ではないでしょうか?」

「!!それは………!」

イオンの推測を聞いたルフィナは表情を固くし

「”身喰らう(ウロボロス)”?何だそりゃ。」

聞き覚えのない組織名にルークは首を傾げた。



「その事については後で説明します。ルーク、予備用の”リバースドール”は持っていますか?」

「へ?一個なら持っているけど……」

「でしたら万が一の事を考えてルフィナに渡してくれませんか?僕達の知る組織の者達が襲撃者ならば、相手は相当の手練れです。(中には”六神将”やあのヴァンにすら届く程の者達や彼らをも超える存在もいるそうです。)」

「!!わかった。ルフィナさんだっけ?よければ持っていてくれ。」

イオンに耳打ちをされて血相を変えたルークは荷物の中から人の形をした小さな人形を取り出してルフィナに渡した。



「!……………(まさか彼らも私のようにこの世界で新たな生を受けたのか……?)」

「あの。これは一体?」

見覚えのある人形を見たレイシスは目を見開いた後ルークやイオンを見つめている中ルフィナは不思議そうな表情でルークに自分に手渡した人形の詳細を尋ねた。

「えっと、俺の故郷だけに伝わっている”身代わりマペット”と同じようなものだよ。だけど効果はアレとは効果は段違いで、持ち主が死にかけても生き返してくれるんだぜ。」

「え。でしたら私よりもジュエ卿が持つべきです。私よりジュエ卿の身の方が大切ですし」

命の危機が訪れた時に身代わりとなる人形の効果を聞いたルフィナは目を丸くした後イオンに視線を向けた。



「僕は大丈夫です。同じ物を持っていますから。」

「それに、イオン様、アリエッタが守ります。心配する必要、ないです。」

「………わかりました。でしたらありがたく、受け取らせて頂きます。」

「後、ついでにこれも持っておいてくれ。この薬は命も呼び戻すと言われるほど効果が高い回復薬だから。」

「わかりました。こちらもありがたく受け取っておきますね。」

(あれはまさか”ライフボトル”か……?)

二人の説明を聞き、押し問答する時間もあまりないと判断したルフィナはルークから受け取った人形と透き通った水色をした液体が入った瓶と共に懐に入れ、その様子をレイシスは真剣な表情で見守っていた。その後ルーク達は建物内に入って行った。





~”D∴G教団”ロッジ・”楽園”~



「これは………下種共が。」

ルーク達が建物内に侵入したその頃、冷たい雰囲気を纏わせるアッシュブロンドの髪の青年は地獄絵図すら生温いと思われる部屋内を見回した後、身体中に十字の傷を残した二人の少女を見て憎悪がこもった目で呟き

「……こんな風になっても人は生きていられるのか……?これでも、生きていると言えるのか……?」

青年の傍にいる黒髪の少年は人形のようにまるで表情を動かさず、髪の色だけ違い、容姿が瓜二つの双子らしき少女を見つめていた。



「………この無数の十字傷(クロス)。これは自分達で付けたものだ。恐らく自分達を保つために必要だったのだろう。」

「………それでも、生きたかったのか………(これが生きている人間……)……レーヴェ、この子達が生きているところを見たい。”結社”で引き取れないか?」

「ヨシュア………そうだな……―――――!!」

少年の提案に青年は若干の驚きの表情を見せた後、建物内に入って来た新たな侵入者の気配を感じ取って目を細めた。



「敵の援軍?」

「いや………恐らくだが各国の軍部や遊撃士協会が集めた精鋭による壊滅作戦のメンバーだろう。奴等と鉢合わせるのはこちらとしても望ましくない。後の事は奴等に任せて行くぞ。」

「この子達の事も任せるの?」

「…………連れて行くのは一人が限度だ。」

「わかった。じゃあ一番近くの橙色の髪の子でいい。」

「ああ。――――行くぞ、ヨシュア。」

そして夕焼けのような橙色の髪の少女を抱き上げた青年は少年と共にその場から音もなく立ち去った。



「これは……!」

一方建物内に入り、そこら中に散乱している猟兵や研究者らしき人物達の死体を見たルフィナは驚き

「ぜ、全員、殺されてやがる………!」

「やはり”彼ら”の仕業ですか。」

「…………彼らを殺した者達が何者か気になるが今は誘拐された子供達の居場所を探り当てる事に優先した方がいいだろう。」

ルークは信じられない表情で呟き、心当たりがあるイオンは重々しい雰囲気を纏い、真剣な表情で考え込んでいたレイシスはルーク達に自分達の優先事項を実行するように促した。

「……そうだな。それじゃあ―――――!!」

「来るぞ……!」

レイシスの言葉に頷きかけたルークだったが何かの気配を感じ取って血相を変え、ルークと同じように敵意のある気配を感じ取っていたレイシスは声をあげ

「…………………――――!!散って!!」

目を閉じて周囲の気配を探っていたアリエッタが叫んだその時、声に反応したルークたちが散開すると共に天井が破壊され、僅かに人間だった風貌を残した異形の者が落下して来た!



「オォォォ…………」

「な、なんだコイツは!?」

「悪魔?い、いえ、人間!?」

突如現れた異形の存在にルークとルフィナは戸惑い

「その人、元人間、です。変な事、言って、ます。”グノーシス”、と。」

「!!報告にあった教団が開発していた薬物ですか!」

「ハアッ!?」

「な―――あの魔物のような存在が人間だというのか!?」

「まさか――――”悪魔化(デモナイズ)”!?」

イオンの口から出た聞き覚えのある話を思い出したルークとレイシスは驚き、ルフィナは信じられない表情で異形の存在を見つめた。



「オォォオオォォッ!!」

「チッ、やっぱりこうなるか!」

「早急に制圧するぞ!」

飛び掛かって来た異形の存在の攻撃を跳躍して回避したルークとレイシスはそれぞれ剣と細剣(レイピア)を鞘から抜いて構えた。



「―――”空の女神(エイドス)”の名の元に貴方を浄化します。アリエッタ、ルフィナ!行きますよ!」

「「はい!」」

静かに祈った後号令をかけたイオンの号令にルフィナとアリエッタは頷き、ルーク達と共に戦闘を開始した。



「それっ!!」

「ガァッ!?」

イオン達と共に自らの得物であるボウガンを構えたルフィナは矢を数本を放った。放たれた矢は異形の存在に刺さり、刺さった場所から血を噴出させたが

「オォォオオッ!!」

異形の存在はまるで痛みを気にしないかのように猛スピードでルフィナに詰め寄り、剛腕を振るった瞬間

「アクアプロテクション!!」

アリエッタの声が建物内に響くと同時にルフィナの前に大気中の魔力が集束して水の盾となり、異形の存在の剛腕を受け止めた。



「風雷神剣!!」

「グッ!?」

その時レイシスが疾風のように雷を宿したレイピアで切り込み

「爪竜斬光剣!!」

「ギャッ!?」

続けて残像を残す程の凄まじい速さで一気に詰め寄って斬撃を叩き込んだ後光の大爆発を起こしてダメージを与えた。その時ルークとイオンが地面を蹴って同時に異形の存在に詰め寄り



「烈破掌!!」

「掌底破!!」

「グギャアッ!?」

それぞれ手を守る手甲を付けた片手に闘気を纏わせた拳を異形の存在の側面に命中させる瞬間、纏わせた闘気を爆発させ、二つの闘気の爆発を受けた異形の存在は吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた!

「――――来て、光の鉄槌!」

その時アリエッタが魔力を纏わせたぬいぐるみを掲げた瞬間、異形の存在の頭上が光り

「リミテッド!!」

「ガアアアッ!?」

光の柱が落下し、異形の存在を貫いた!



「行け!――――インフィニティスパロー!!」

魔を貫く光の柱を受けて怯んでいる異形の存在を逃さないかのようにルフィナは法剣の刃を飛び回らせ、飛び回る刃は次々と悪しき存在の身体を傷つけた。

「開口!無窮に崩落する深淵!」

イオンの声に反応するかのように異形の存在を囲むようにドーム型に空間が歪み始めた。

「グラヴィティ!!」

「ガアアアアアアアアッ!?」

歪んだ空間は異形の存在を圧し潰すかのように強烈な重力を与え、突如襲ってきた重力に逆らう術もない異形の存在は地面に叩きつけられた。そこにレイシスと共に同時に地面を蹴ったルークは天井に届くほどまで跳躍し、レイシスは凄まじい速さで敵に詰め寄り

「大雪斬!!」

「邪霊一閃!!」

空中と地上、それぞれから強烈な一撃を叩き込み、その攻撃によって斬られた異形の存在は人の血とは思えない青色の血を噴出させながら絶命した!



「何だったんだよ、コイツは………」

剣に付着した血を一振りして振り払ったルークは異形の存在の死体を見つめながら剣を鞘に収めた。

「………今は子供達の救出が先決です。行きましょう、ルーク。」

「ああ。」

そしてルーク達は建物内を探索したが一向に子供達は見つからず、まだ探していない最後の部屋に入ると信じられない光景があった。



「うっ!?」

「こ、これは………!?」

「みんな、バラバラ、です………」

「すまない……!私達がもっと早く駆けつけていれば……!」

女神(エイドス)よ………どうかこの子達に安らかな眠りを………」

グチャグチャになった子供らしき死体や体が別れた状態の死体が散乱している地獄絵図すら生温い光景を見たルーク達はそれぞれ絶望の想いを抱えた。あまりにも悲惨な部屋の状態を見て、ルーク達は吐くのを必死に我慢しながらも生存者がいないか確かめた。そして奥に行くと一人の傷だらけの菫色の髪を持つ少女が倒れていた。



「脈が僅かだけど、まだある!待っててくれよ!今、助けてやるからなっ!!」

菫色の髪の少女の脈を計ったルークは荷物を乱雑な動作で探って透き通った水色の液体が入った瓶を取り出して少女の口の中へと流し込んだ。

「僕も手伝います!―――我が深淵に眠りし、碧き刻印よ……」

一方イオンは背中に神聖な気配を漂わせる何かの紋章を顕させた。



「イ、イオン!?一体何をしようとしてんだ!?」

「!?ジュエ卿、それを使うのは……!」

イオンが教会内でも極秘とされる力を他者がいる目の前で使おうとしている事にルフィナは血相を変えて止めようとしたが

「イオン様の、邪魔しちゃ駄目、です。それに、教会の秘密を守る為に、助けられる子供を見殺しに、するのですか?」

「!!申し訳ありません、アリエッタさん。私が間違っていました。」

アリエッタに指摘され、真に守るべきものは何なのかをすぐに気付いて頭を下げた。



「わかったなら、手伝う、です。――――清純なる命水よ、メディテーション!!」

「女神よ、お慈悲を!――――ホーリーブレス!!」

「せめて君だけは助かってくれ……!―――アセラス!!」

アリエッタとルフィナ、レイシスが発動した術やアーツによって少女は淡い光に包まれ、少女の身体に刻み込まれた十字傷(クロス)は徐々に塞がって行き

「大いなる七耀の慈悲にて、彼の者に命の焔を!――――セブンス・アイドス!!」

イオンが紋章を輝かせると少女の頭上から虹色の光の球体が降りて来て少女に同化し、光が消えると少女の傷は全てなくなると共に土気色になっていった顔色は熱を取り戻したかのように赤くなり、少女は規則正しい寝息をたてていた。



「す、すげぇっ!イオン、今のは何なんだ?まさか今のも”ダアト式譜術”なのか??」

「いえ、”聖痕(スティグマ)”の力を借り、失った命をも蘇らせる事ができる”奇蹟”です。―――僕がこの世界で目覚めてすぐに使えるようになった力なんです。」

「”聖痕”?何だそりゃ。」

「シスタールフィナの先程の反応を考えると教会に秘匿されている秘術のようなものに感じたが……」

「!!ジュエ卿!ルークさんとレイシス殿下にそれ以上の説明は……!」

教会でも秘匿とされる言葉を口にしたルフィナは血相を変えた。



「僕は最も信頼している人の一人である彼に隠し事はしたくありません。それに彼は口が固い方ですし、リベール王家にはいつもお世話になっているのですから、このくらいの情報開示はするべきだと僕は思っています。」

「………わかりました。ジュエ卿がそこまで仰るなら。」

(一体何なんだ……?)

(恐らくは極光術のような凄まじい”力”なのだろうな……)

重々しい様子を纏う二人を見たルークが首を傾げている中、イオンが使った術の正体をある程度察したレイシスは真剣な表情をした。



「ルーク、”聖痕”についての詳しい説明は”身喰らう(ウロボロス)”の件と一緒に後で説明します。とにかくまずはその娘だけでもここから安全な場所に運ばないと。――――ルフィナ。貴女は先にこの建物から出て、後方に控えている部隊に状況の連絡をお願いします。……遺体となった子供達を”親元”へ帰さなければなりませんし。それとレイシス殿下はお手数ですが念の為にロッジ内を見回って”教団”や子供達の生き残りがいないか探してください。」

「わかりました。」

「了解した。」

そしてイオンの指示に答えたルフィナとレイシスは部屋から出て行った。



「なあ、イオン。さっきの術でここにいる奴等全員を蘇らせる事はできねぇのか?」

「そうしたいのは山々なんですが……先程の術は身体や精神に負担がかかる影響で、何度も連続で使えない上、この”どの部分が誰かわからない状態”で蘇らせる事ができると思いますか?」

「……悪ィ。お前の性格だったら、間違いなく使っているだろうに辛い事を聞いちまったな。」

辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているイオンの様子からイオンの心情が理解できたルークは辛そうな表情で謝罪した。



「イオン様、悪くない、です。悪いのは、”D∴G教団”の人達、です。」

「……慰めてくれて、ありがとうございます、アリエッタ。―――とにかくまずはその娘の安全を確保する為にもここを一端出ましょう。ルークはその娘をお願いできますか?」

「ああ。」

イオンの言葉に頷いたルークはコートで裸の少女を包み込んだ後少女を背負ってイオン達と共に部屋を出た。



(……………?誰………?)

ルーク達がどこかに向かっている中、少女は目覚めかけ、疲労や謎の薬物を投与された影響によっておぼろげにしか開けない目を開いて自分を背負う赤き髪の青年の後姿を見つめていた。



「それにしてもイオンって、前とは比べ物にならないくらい強くなっているじゃねえか。それにアリエッタも。」

「フフ、ルーク程ではありませんよ。」

「今度こそイオン様を、守る為に、強くなる必要、あるから、です。」

(もしかしてレンを迎えに来てくれた本当の家族?やっと迎えに来てくれたんだ………!やっとレンは本当の”パパ”と”ママ”に会えるんだ………!名前は……ルーク……お兄………様………)

少女は目が覚めたがルークの背中の居心地に安堵を感じ、再び眠りについた。



こうして作戦は無事終了したが、生存者は別のロッジを襲撃したカルバードとエレボニアに挟まれ、領有権問題が起こっている自治州――――クロスベル自治州の警察のチームが助けた少女を合せてわずか2名という余りにも少ない救助者の数となった。誘拐した子供達に余りにも惨すぎる事をした外道たちは全員自決し、更には外道の集団に支援していた有力者達も何名か拘束したが、拘束した者達も氷山の一角で、支援していた者達全てはわからなかった。



また、今回の作戦によってルークは昇格し、公式上最高ランク――――A級正遊撃士に昇格し、カシウス・ブライトは非公式の最高ランク―――S級正遊撃士に昇格した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧