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練習中のものをまとめました

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それでも歌い続ける

 
前書き
機種が変わったので新しく作りました。
一からやり直しです。
あちらのアカウントはもうつかうことはないと思います。 

 
俺は、パーカーから歌いてになろうと誘われた。初めは歌が下手だからと断っていたが、ある日、パーカーのお気に入りだという曲を聴かせてもらった。パーカーは、「これを聴けばなにか変わると思う。」と笑った。そこまでいうのなら、と思い早速流してもらった。

その歌は機械が歌ったようなそんな曲だった。初めはそれのどこがいいのかよくわからなかった。パーカーが聴いているような曲だから、俺には理解できない領域だとも思っていた。けど歌詞の一つ一つをよく聴いてみた。深く考えてみた。

パーカーが俺に言ったことを思い出した。


「大切なのは気持ちだよ。上手いか下手かじゃない。」


よく、こういう曲が批判されているコメントを見たことがある。
「感情がない。」「機械のどこがいいの?」
俺も正直思っていた。そもそも曲に興味すら持っていなかったから。でも、パーカーが教えてくれた。大切なのは気持ちだと。

だから、歌詞の意味を考えてみた。
深く、深く。そしたら、なんだかこの曲を作った人の気持ちがわかってきた気がした。俺は国語や、道徳の相手がどう思っているかなんて問題は嫌いだ。わからない。けど、やっとわかってきた。


「俺さ、この曲を歌いたいんだ。伝えたいんだ。歌一つ一つの気持ちを。多くの人に。歌が下手だって言われても構わない。批判されたって我慢する。何言われたって気にしない。だから、俺と歌ってくれないかな。」


震えた声でパーカーが言った。顔はとても真剣だった。曲が終わって部屋が静かになった。


「今の気持ちは、若いうちにしか覚えられない。俺は、だからやりたい。ケイトは、どんな気持ちになった?」


俺の気持ちは・・・・


「・・・・。お前がそう思うのなら、一緒だろ・・・・。俺は道徳的なことは苦手だ。歌も下手だ。お前みたいに根性がない。」


ああ、なに言ってんだろう。

「けど、それでもお前がいいっていうなら。俺は歌う。」

カッコつけたような、ぎこちないような、普段言わないような、そんな言葉だった。今まで、誰にもこんなこと言ったことがなかった。わざわざ自分の悪い部分ばかり言ったこともなかった。まるで認めてほしいと言わんばかりに。

・・・・きっと初めて真剣になった瞬間だろう。

こんなに相手の顔をまっすぐに見たことがない。
見すぎて目が疲れそうだった。疲れそうなのにパーカーと目が離せなかった。・・・・なんて返すのだろうか。決まっているセリフを考える。

答えは・・・・

「・・・・逆だよ。俺はケイトがいいっていうなら。歌おうと思ってた。ケイトじゃなきゃ歌わないよ。だって、ケイトと歌いたかったんだ。」

「・・・・。」

「ケイトが隣にいるから、ますます感情がこもってきて、歌も今まで以上に感情をいれるようになってきたんだよ。誰に伝えたい?聞いてくれた人?世界中の人?歌を知らない人?・・・・ケイトだよ。一番はケイトなんだって。」


そうか。
パーカーが普段。俺に必死になって、しつこくして、歌について細かく言っていたのはそれだったのか。俺は前に、「音痴の歌は聴きたくないのが普通」なんて言ってしまった。そうじゃなかったのか。

なんだろう。とても言葉じゃ表せない気持ちになってきた。すごくドキドキしていて、言葉が詰まるのに、思考は停止せずに動き続けて。単語と文がたくさん出てくる。

再び、さっきの曲が流れた。
パーカーが歌い始めたのに気づいた。・・・・出会ったときと違う。もう、違う。今にも泣きそうな表情をして歌うパーカー。サビ部分で少し明るめの表情をして歌うパーカー。その全部が、まるであったかのように。見たこともない情景が浮かんだ。これがパーカーのいう大切なこと。これが・・・・本当の歌。

最後のサビ前の息づかいも再現して。
あとは、自分なりに、自分が伝えたい言葉を丁寧に歌い。それから俺は歌の練習をして、声を入れて歌うことになった。歌詞をよく思い出して。これを伝えようとした、パーカーの気持ちになって。そして、俺が伝えたい気持ちを考えて。
・・・・自然と感情がわいてきた。下手でもいい。何言われたって気にしない。ただ、誰かのために伝えたい。そんな俺たちの気持ちは、この曲にぴったりだった。

俺たちの思いは重なり、声となり、歌となり、しっかり歌におさまった。初めてできた一つの曲。それは、俺たちのものではないけど、俺たちの曲と言っても間違えではない気もした。

「ケイト!」

自分の名前を呼ばれて我に返った。気がつけば歌い終わっていたことに気づく。「お疲れ様!」というパーカーの声。顔を見るととても楽しそうな顔。

「良かったと思う!あとは編集して、あげるだけさ!」

「そっか。」

俺がそう返すと、急に俺の顔を伺って「・・・・これからもさ、一緒に歌ってくれるよね?」と聞いた。

「当たり前だろ。今更やめねーよ。」

・・・・そう。
この気持ちは、もう誰にも止められない。だから、何があってもやめない。例え、俺達が批判されて叩かれても。決めたんだ。
・・・・それでも・・・・歌い続けるって。

パーカーがいるから。パーカーのために。

・・・・俺らしくない考えも、新たな俺だと認めて。
なるべく素直になって。

歌を響かせるんだ。 
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