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宇宙を駆ける狩猟民族がファンタジーに現れました

作者:獲物
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第一部
ファンタジーへようこそ
  さん

 
前書き
背凭れを破壊しました。 

 
 背凭れを破壊してしまったことを少々後悔しつつ、後頭部を摩りながら破片を集める。

……あとで超強力接着剤でお手軽に修復しよう。

 プレデターの科学力はやはり侮れない。
 もっと生活用品に科学技術を使っていこう。そうすれば、狭苦しい船内生活にも色が出てくるというものだ。

 ちなみに、この種族は本当に狩り以外にその高い技術力を使用することがあまりない。
 銃弾をも防ぐ対衝撃スマートフォンで敵をぶん殴るという、高い文明に野蛮な文化を形成しているのだ。
 何よりも、入浴するという習慣がない。そのため、かなり体臭がキツイのだ。これは元日本人として看過することなどできるはずもない。
 そもそも狩猟をすることにおいて、狩猟対象の武器の一つが臭覚であることはかなりの確率で存在する。
 なのに、その臭いを消さずに光学迷彩でステルス化したところですぐに悟られる。故に、私の船内には風呂に近い浄化装置を取り付けてある。
 ハッキリと言うが、この臭いを消すという行為によって狩りの成功率は格段に上がっているし、何よりも精神衛生上、自らのモチベーションにも繋がるのだから元日本人として、こればかりは譲れない。

 そうだ。母星に戻ったら風呂の布教活動をしよう。

 それが上手くいったら、次はウォシュレットだ。

 マッサージチェアも捨てがたいが、まずは衛生管理。人の進歩と繁栄はそこからだ!

 そんな妄想を膨らませて、しゃがんで背凭れの破片を黙々と拾っている私は全く気付かなかった。

 正確には気付くのが遅れた、というべきか。

 船内に響く、警告を鳴らすアラートに。

「うるさいよ!」

 そう言って顔を上げた私は、そこでアラートの意味を理解する。

 立ち上がってウィンドウを操作。

 空間の揺らぎ?

 ブリッジの防護壁をオープンにさせると、ゆっくりと左右に防護壁が開き、特殊ガラス越しから宇宙空間をその目で認めることができるようになる。

 我々の種族の視覚はかなり特殊で、蛇のピット器官のように赤外線などを視覚化しており、そのために視界のほとんどは赤く染まっている。その視角を補い、強化するのは専用のヘルメットの役割であるが、ブリッジに取り付けられている特殊ガラスにもその効果がある。

 今現在、特殊ガラス越しに補強された私の目に写るのは、アメーバのようにゆらゆらと広がる空間の揺らぎである。
 好き勝手にゆらぎの性質を集める船から、浮かび上がっているウィンドウに情報か送られてくる。
 ちらりとそちらに目を通せば、どうやら何かのエネルギーの塊であり、質量のようなものは検出できない。性質からして船や体に何かしらの攻撃性は見られない。かといって、このままそのゆらぎに突っ込む道理もないので、船を操作し反転させるようコードを打ち込む。

「……動かないだと?」

 何度もホロウィンドウにコードを打ち込むが、船が反応するどころか光学迷彩までも解除される。

「引き寄せられている? トラクタービームの類でもないが……」

 操縦席に座り直し、反転、旋回、緊急離脱用のブースターの起動、ワープの起動と、どのコードを打ち込んでも船が反応することはなく、いよいよ船の頭がその揺らぎへと侵入していく。
 音もなく飲み込まれて行くその先を伺い知ることもできず、遂にはブリッジに揺らぎが侵食してきた瞬間、急激に視界が真っ白に染まり、私の意識はそこで落ちた。







 私が目を覚ましたのと、ブォンという船が脈動する音はほぼ同時であった。
 頭を振って体を確認するが、特に異常も見られない。目で見る限り――といっても真っ赤だが――出血しているような様子もない。
 そこで特殊ガラスの向こうを見れば、どうやら地面に着陸しているらしく、鬱蒼と茂る木々を認めることができた。

 取り合えず、早々にカモフラージュするのが懸命だろう。

 ウィンドウを操作して光学迷彩を起動させる。
 どうやら今度は問題なく起動することができたようで、船は光を屈折させて周囲へ溶け込む。しかし、船に火を入れようと操作しても、動力炉はうんともすんとも言わない。
 『うん』までは言うのだか、その後すぐに『すぅん』とヘタレてしまう。各種計器に目を通してみても、特に動力炉の異常は見当たらない。

「逝ったか?……これ」

 無駄に広い額をペチペチと叩き首を傾げる。

 単独で恒星間移動をすることから、ある程度の修理、修復なら自らの手で行うこともできるが、流石に一から組み立てとなるとそうはいかない。認めたくはないが、自分は戦士でありエンジニアではないのだ。
 そもそもこの星にそんな技術体型があるのか、または代替となる機材があるのかすら不明だ。

……いや、待てよ。ここは好意的に受け止めよう。この地を安住の地とすれば、無理に船を直す必要はないのではないか?

 なんという天啓!

 これぞ逆転の発想!

 危険と隣り合わせの脳筋種族とはおさらばだ!

 あまりの嬉しさに大声を上げて笑ってしまう。端から見れば醜い化け物が叫んでいるようにしか見えないだろうが、船内には私しかいない。遠慮など不要である。

 であるならば、まずは周囲の探索だ。

 辺りの地形や生物の分布がどのようになっているのか、調査が必要になる。
 危険な生命体がいれば倒せばいい。敵わないようなら逃げに徹しよう。場合によっては知的生命体の有無の確認と、必要ならば接触を試みるべきか。

 そうと決まれば善は急げだ。早速装備を整えて出掛けることにしよう。

 右腕ガンドレッドには刃渡り60センチの伸縮可能なリストブレイド、左腕には光学迷彩の制御を始め、各種装備の調整や制御を行なったり、立体映像の表示や生体情報の分析、音声の録音などが可能なコンピューターガントレット。我々の種族が用いるハイテク機器のコントロールに最も必要なもので、自爆や証拠隠滅用の小型のプラズマ爆弾もセットされている。
 場合によってはコンピューターガントレットに装備を増設することが可能で、狩りの内容によっては人間の体を容易に切断することのできる、巻き取り式のネットランチャーや、矢尻のような物を飛ばし、電撃を発生させるプラズマボルト、コンピューターガントレットの動力を利用してパンチ力を高めるナックルダスターなどがある。
 しかし、今回は探索になるので素早く動けることが重要になるため、コンピューターガントレットにこれらの装備を増設するのは止めておく。
 合わせて両ガントレットに装備することのできる、シミターブレイドも今日のところは必要ないだろう。

 つらつらと考えながら移動し――ブリッジから一直線ではあるが――格納庫の扉を開ける。
 八畳ほどの広さを持つスペース、そのすぐ右手には数多くの武器を含めた、狩猟に必要な装備品が壁や台座の上にところ狭しと置かれており、左手にはこれまたいままで狩り獲ってきた生物の頭蓋骨、あるものは脊髄が繋がった状態で飾られている。
 これはトロフィーであり、我々種族が収集しているものだ。あまり個人のスペースにこういったものを置きたくはないのだが、郷に入りてはとも言うし、仕方なく陳列させている。

 そんな戦利品を尻目に、私は装備品を吟味していく。

 常に素肌には保温機能が搭載されている網目状のボディースーツを着用してあり、この上から鎧を着込むことになる。
 また、下半身、特に股間部分は布や褌を巻いて、腰鎧と足首から膝辺りまでの足鎧を装着するのだが、元文明人として流石にこれはいただけなかった。

 間違っても私にはそんな癖はない。

 故に、下半身には袴に近い、太股あたりがふっくらするようなズボンを纏い、その上から足鎧を装着している。
 上半身は全身鎧のような物ではなく、胸全体と左脇腹を保護するような形の鎧を身に付け、左肩アームにプラズマキャスターを取り付ける。
 左側はプラズマキャスターやコンピューターガントレットといった、我々の生命線ともいえるハイテク機器が搭載されており、防御力を高めるために若干重圧を増してある。
 プラズマキャスターに至っては、我々と敵対関係にある、バーサーカー種族のプラズマキャスター1挺と、我々クラシック種族と呼ばれるプレデターのプラズマキャスター2挺を三角形になるようにアームに装着し、装備しているため、左肩甲骨あたりにジェネレータ―と冷却装置を増設しているのも重圧になっている原因だ。
 通常、プラズマキャスターを複数持つようなことは忌諱されており、誉められたようなものではない。しかし、私は冒険者になった頃から氏族には所属せずにいるため、ある意味特例のようやものだ。
 他にも、トラブル処理のクリーナーなどがそういった掟から逸脱した存在であると言える。

 また、余談であり、これは私の完全な趣味であるが、デザインは戦国時代の甲冑に近くしてある。

 ロマンは男を奮い立たせるのだ。

 更に台座から小型で、グリップの周りに6枚の『く』の字型の鋭い刃がついている、通称シュリケンと呼ばれる武器を左右の腰のホルダーに2枚ずつ、計4枚収納する。
 非使用時にはグリップ内部に刃は収納されており、刃を展開させて投げつけてよし、手持ちで切り裂いてもよしと、チャクラムのように使用できるなかなかに使い勝手のいい武器の一つである。
 ちなみに、成人前のプレデターが斬りつけても人体を骨ごと軽く両断し、投げつければ石壁に突き刺さる威力を持っている。

 次に壁に立て掛けてある、長さ2メートル50センチほどの、船を漕ぐオールのように柄の両サイドに薙刀の刃がついているダブルブレードを手に取る。
 すると、両端の刃は中間から割れて柄に収納され、更に2段階に縮み、長さが80センチほどまでになったところで腰に差す。

 おっと、忘れちゃいけない医療キットを腰へ装着。

 最後に2本の角が額から突き出た、鬼の顔の造形を模したヘルメットを顔に当て、プシッと軽い空気の抜けるような音を聞きながら装着する。

 充分重武装じゃないかって?

 いえいえ、デフォです。

 左右のガントレット、プラズマキャスターは固有武装で、私の場合はダブルブレードだが、一般的にはスピアを装備し、腰にはシュリケン、もしくはスマートディスクという円盤状の鋭い刃がついた武器を携帯している。

 ほら、普通。

 プラズマキャスターのプラス2挺は私の特権です。

 主に死にたくないので。



 船内の後部まで移動し、ガントレットで操作してハッチを解放する。
 ゴウッと、圧力が掛かる音を聞き、更にヘルメット内で光学迷彩の起動スイッチを2対4本の牙の一本を動かしてオンにすると、バチバチと体に纏わり付くように紫電が走る。
 それも一瞬のうちに収まると、既に私の体は辺りの風景と同化していた。



 さあ、探検に参りますかね! 
 

 
後書き
プラズマキャスターの設定は独自解釈です。

プラズマキャスターはやろうと思えば連射が可能なようですが、狩りにならないのでやらないそうです。AVP2では、クリーナーが手持ちで撃っており、更に肩部に装着して撃ったときよりも、次弾を撃つまでにかなり長い時間チャージが必要でした。そのことから独立したジェネレータ―がプラズマキャスターについているとは思いますが、冷却装置はついていないものと考えました。ですが、本来の使い方ではないため、そう考えると、左肩甲骨辺りのアーマーだけもっこりしていることから、ジェネレータ―と冷却装置を搭載しているものと勝手に解釈しました。 
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