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剣士さんとドラクエⅧ

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23話 嫌味男

 
前書き
作者はマルチェロ好きですが初見で好感度が高い人は珍しいと思います。 

 
・・・・

「そんなところでボクは嘘を吐かないよ」

 ……それに関してはまぁ、そうなんだけど。……君って表情を操るのが上手いから正直分からないっていうか、単に「嘘は言ってない」けど真実も少ないのか判別出来ないんだけどさ。付き合いが長くても分からない時だってあるんだけど。

 で、まずいまずいと言いながらも満月草をむしゃむしゃしてるけど……。言ってる割にはまずそうでもないね?

 あ、食べ終わってから手鏡で顔をチェックし始めた。目を覗きこんで……ねえ、そこまで真っ青になるほど眼の色とかショックなの?僕はその紫色、嫌いじゃないけどな……。ちょっと悪役っぽい色ではあるとは思うけど。トウカだったらやる事なす事全てヒーローだから問題ないってフォローすべき?

 すぐに手鏡を片付けたトウカは無言で部屋の奥の洞窟に向かう。……ああ、そうだった、急いで行かなきゃ。今度こそドルマゲスを追い詰めないと。そもそもまだ僕たちは本人に会ったことすら無いのだけど、彼に対する因縁は最早溜まりに溜まっている。

・・・・

 ……。マイエラ修道院の院長さんの部屋に現れたドルマゲスは睨み付けるエルトを見て、気味悪く笑いながら消えた。私達にまでは視線すらよこさず、取り敢えず、何となく退いてやった、といった風に。

 単に私達と対峙するのが面倒だったからなのか、それとも院長さんが一人になるのを待っているのか。定かではない。

 だけど、あの赤い聖堂騎士さんの大切な人である院長さんが殺されることも傷付けられることもなくてよかった。……これからまた、ドルマゲスが彼を襲うとは思うのだけど、取り敢えずは。そこには安心する。

 少し見ただけだけど、私には理解できた。いや、理解させられてしまった。ドルマゲスはとても強いという事を。彼が魔法を使えるか使えないかは、魔力のない私には分からないけど、その身に宿る邪悪な力まで感じ取れないほど私は弱くなった覚えはない。どんな魔物よりも禍々しく、どんな下衆よりも悪い印象しかない。

 悪意、殺気、敵対心。そんな感じの負の感情に対しては、前も言ったが私は敏感だ。だから分かる。奴は危険な敵だと。それに、ドルマゲスはこの状況を楽しんでいるように見えた。そして、院長さんをとても殺したがっているんだってことも分かった。

 あの時、奴が何の気を起こして退いたのかは分からない。けれど、今の私達では身に余る強敵には違いないのだから、心底良かったと思っている。

 勿論、奴と対峙するのはそう先のことだとは思っていない。だから、今の私に出来ることは奴を刺し違えてでも倒す方法を考えることだ。普通に真正面から攻撃したって、返り討ちに合うことぐらいは簡単に想像できる。だから、勝機を探りたい。あいつを出し抜き、首を狩るにはどうすればいいのかを。

「……」

 ……で。今のこの、一応分かりにくい状況だったとはいえ冤罪にも程が有るこの状況はなんだろうね?なんか連行されて尋問受けてるんだけど。

 私達は院長さんを守ったかもしれないけど、間違っても命なんて狙っていないんだけどな。どうすれば分かってくれるだろう。このエムハゲ……失敬、まる「てぇ」ろ団長だっけ?言い難い名前をした、赤い聖堂騎士さんの上司は。

 あ、ちゃんとマルチェロ団長なのはわかってるよ?ただ、とっさにこの人の名前を口に出したらこな風に噛みそうだなって思っただけだって。うん、別に冤罪に苛ついて……破壊衝動を抑えてるわけじゃないよ。殴り飛ばしたいなんて考えてないよ。私は冷静だ、大丈夫。

 モノトリアの名前を使わず、暴力も振るわず……ううん、思いつかないな。ま、牢に囚われても……何故か力がみなぎっている今、ぶち抜ける気がするんだけどさ。でもそれ最終手段だから。どうしようかな。

・・・・

「……」
「……」
「だから!あたしたちは悪くないって言ってるでしょ!」
「俺たちが」
「……あ、ヤンガスはちょっと黙ろうか。君が言うと脅しみたいだし」
「……分かったでがす、エルトの兄貴」

 何がどうなってこうなった?ククールさんに言われた通りマイエラの院長の様子を見に行けば、案の定ドルマゲスが居るし、ドルマゲスがいなくなった瞬間に僕たちは冤罪で連行されるし。タイミング悪すぎだろとしか……言えない。

 ここで下手に騒いでも駄目だけど、僕も出来るならこの馬鹿……じゃなかった、勘違い野郎……じゃなかった、エムハゲ……じゃないな、マルチェロ団長に文句を言いたい。でも文句ならゼシカが言ってくれてるからこれ以上言う必要が無いって言うか……何というか。言っても火に油注ぎそうだし……。

「取り敢えず私達を犯人に仕立てあげたいならご自由になさってくれて構いませんが、私達は犯人ではないので……真犯人をうろちょろさせたままにしておく団長殿が滑稽……いや、失礼。お考えがあるんでしょうね、崇高な無知ってやつですかそうですか」
「何言ってんの!その通りだけど!」

 ちょっと、トウカ!何やってんの!こんな時に必要な冷静な貴族モードをどこにやったの!間違ってもトウカはこの状況で火に油を注いだり、言いたくても嫌味なんて言ったりしないと思ってたのに……!

 この団長の事は確かに気に食わないけど、取り敢えず僕らを拘束するのは間違ってないんだから!まぁ、こっちの意見も少しは聞けって感じだけどさ……。

「しかし、あの状況で犯人はあなた達しかいない」
「魔法はなんのためにあるのでしょうね」
「あなた達が黙っているなら、こちらにも打つ手、というものが有りましてな」
「……」

 ばたん、と扉が開かれ、二人の聖堂騎士が入ってくる。

 その瞬間、黙殺されたトウカから、こっちまで息苦しくなるような殺気が噴き上がった。……ああ、うん。僕もだね。こんな風に冷静な考えを持てているのが不思議なぐらいだ。

 打つ手、というのは陛下のことだった。無礼な聖堂騎士に連れて来られた陛下はこちらに助けを求められた。勿論陛下は、怪しげな魔物じゃない。でも、そのことはこいつには判別できないようだった。仮にも教会の人間が……。聖堂騎士団長という立場でありながら!無能かこいつ!教会関係の建物に入れる邪悪な魔物なんているか!

「おい、その薄汚い手を陛下からお離ししろ。さもなければ」
「その魔物を殺すことはたやすいのですぞ?」
「……」
「埒が明きませんな。では、暫く牢に入っていただきましょう」

 無知って怖い……その気になればこの部屋の聖堂騎士を瞬殺できるというのに。それをしなかったのはトウカも冷静だったのかもしれない。口調こそ……僕の求めていた冷静さとは程遠かったけど。単に陛下に血を見せないためだけに耐えたのかもしれないけれど。

 そして、僕たちは、連行された。薄暗く寒い地下の牢屋に入れられ、頑丈な鍵までしっかと掛けられたのだった。

 ……ちらりとあの赤い聖堂騎士さんを見かけたのだけど、なんで助けてくれなかったんだろう。上司に刃向かえない、とかかな……それとも恩知らずだったりするのかな……。

 誰か助けて。

・・・・
 
 
 

 
後書き
ククール「殺気が怖すぎて原作通り部屋に行けなかった」

制作秘話。

ドルマゲスとの邂逅シーンはもっと詳しく次回書くのでご勘弁を……と思いつつカット。プロットはまるっと無視して書いているのでこの話はわりとおかしな表現が多いかもしれません。

暴力しないとか言いつつすぐに手が出かけるトウカに手を焼きながら……なんで私はエルトの怒りは表現できないのか。マルチェロの嫌味をもっと出せないのか。ええ、これは文章力不足なんですが、次とか次の次とかを際立たせる為でして(大嘘)。

未だに名前が呼ばれない悲劇のキャラクターククールの明日はどっちだ。 
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