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真田十勇士

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巻ノ三十七 上杉景勝その九

「忍術も使われますな」
「真田の者なので」
「それ故にですか」
「それがしも忍術を身に着けています」
「そうですか、それは独特ですな
 真田家のとだ、本多も話を聞いて言う。
「道理で身のこなしが素早い」
「はい、山の中も駆けておりました」
「伊賀者の様に」
「伊賀者と言えば」
 その名を聞いてだ、信之はすぐに言った。
「徳川家が召し抱えておられますな」
「はい、そうです」
「そしてその棟梁がですな」
「服部半蔵です」
 その彼だというのだ。
「あの者です」
「一度お話したいのですが」
「はい、それではです」
「出来ますか」
「今は出ていますが」
 それで駿府にいないがというのだ。
「それでもです」
「暫くすればですか」
「戻ってきますので」
 この駿府にというのだ。
「ですから」
「はい、それでは」
 信之はここまで聞いて答えた。
「是非です」
「半蔵が戻れば」
「お話させてもらいます」
「そして手合わせもですな」
「はい」
 こちらもというのだ。
「したいですな」
「鍛錬としてですな」
「そうさせてもらいたいです」
「忍術もですな」
 本多は信之の言葉を受けて感心して言った。
「まさに十八般を備えられますか」
「学問と共に」
「それは真田家の次の主として」
「それにです」
 信之は再び本多との槍の手合わせに入った、彼に槍の一撃を何度も何度も繰り出しつつ彼に言うのだった。
「負けていられませぬので」
「負けてとは」
「弟にです」
「弟殿といいますと」
「今は上杉家にいっていますが」
「源四郎殿ですか」
「そうです」
 その彼にというのだ。
「負けていられませぬので」
「文武共に」
「源四郎は恐ろしいまでに鍛錬をします」
「そこまでですか」
「まさに鍛錬をしてです」
 そしてというのだ。
「己を高め続けています」
「その弟殿にですか」
「負けていられないので」
 そう思うが故にというのだ。
「それがしもです」
「鍛錬をされますか」
「学問もし」
 そしてというのだ。
「あらゆる武芸にです」
「励まれますか」
「そうします」
「そうですか、そして忍術も」
「左様です」
 そちらの術もというのだ。
「励んでいきます」
「それでは是非共」
「はい、服部殿ともお会いし」
「励まれて下さい」
 鍛錬、即ち修行にとだ。本多も強い声で応えた。そのうえで彼の槍を正面から受けて稽古の相手をするのだった。 
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