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美食

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5部分:第五章


第五章

「そして美味いんだよね」
「それも保障しますよ」
「君に勧めた立場で悪いけれど」
 そして前置きをしてからまた言うのだった。
「ちょっとね。趣味じゃないから」
「そういうものは食べないのですか」
「うん、ちょっとね」
 こう答えるのである。
「止めておくよ」
「わかりました。僕も無理強いはしません」
 利樹もまたこう返すのだった。
「じゃあ僕一人で」
「話だけ聞かせてくれ」
 友人は言った。
「それでね」
「はい、じゃあ」
 こうして彼はその内臓料理を楽しみに行った。そしてその次の日だった。彼は得意満面な様子の顔で友人に対して話すのであった。
 今二人は学校の喫茶店にいる。そしてそれぞれホットミルクを飲みながら話をするのだった。
「内臓はいいですよ」
「所謂ホルモンだよね」
「そうですよ」
 まさにそれだと答える利樹だった。答えながらその手にミルクのカップを持っている。持っているカップもその中のカップも純白である。
「それを焼いたり煮たりしたのです」
「それだけ聞けば普通だね」
「またその味付けが」
 彼はその得意満面な調子の顔で話を続ける。
「凄いものなんですよ」
「凄いのかい」
「猿のハツを、胡椒や大蒜と一緒に焼いていて」
 猿についてはそうなのだという。
「あとフルーツバットのはトマトと一緒に煮ていて」
「欧風だね」
「そうなんよ。これがまた食べやすくて」
「食べやすいのかい」
「そしてね」
 話はさらに続く。
「ムササビのは」
「それはどんな料理だったんだい?」
「焼き鳥みたいに串刺しにしたものだったんです」
 それだったというのだ。
「これもよかったですよ」
「そうだったのか」
「あとヤモリも食べましたよ」
 それもだという。
「オオヤモリ、東南アジアのあれを串刺しにしたのを」
「それも美味しかったのかい」
「鳥みたいな味でよかったですよ」
 その味まで語るのだった。
「あとお酒も飲みましたけれど」
「お酒は何だったんだい?」
「マムシ酒を」
 これまた随分とある意味において有名なものであった。
「もらいましたよ」
「また随分凄い酒を飲んだんだな」
「ああ、最初は俺もびっくりしましたけれど」
「美味しかったのかい」
「はい」
 明るい笑顔での返答だった。
「それもかなり」
「そうなのか」
 友人はそれを聞いていぶかしむ顔になっていた。その顔で語るのだった。
「そうは思えなかったけれど」
「蝮だからですか」
「うん、蝮だからな」
 やはりそれにあるというのである。
「何か如何にも癖が強そうじゃない」
「癖が強いのは確かですね」
 それは利樹にしろ否定しなかった。
 
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