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歌集「春雪花」

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 眺むれば

  過ぎてやけふの

   侘しさを

 問う人もなき

    春の宵かな



 ふと見渡せば、日も落ちて暗くなり…あぁ、今日も終わりだと思うと、無性に寂しくなってしまう…。

 この寂しく…心の置き場のない私は、一体どうしたら良いのだろうか…。

 そう問いたくも…私の周囲には誰もいない…。
 問う人さえも…思い付かない…。

 そんな静かで淋しい…だけの…春の宵…。



 花ぞ咲く

  卯月の空の

   生彩も

 褪せて見ゆるは

    君のなきゆえ



 見渡せば、桜の咲き誇る春に彩られた時節となった。
 そんな四月の晴れ渡る青空を眺めても、私の愁いは消えることがない…。

 桜だけでなく、この山里では桃の花や梅も咲く…足下には蒲公英や繁縷、いぬふぐり…山の斜面には一輪草に片栗の花…。

 こんなにも美しい季節だと言うのに、私には褪せて見えてしまうのは…彼がここにいないからなのだな…。

 溜め息ばかりの昼下り…影が落ちるだけ…。



 
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